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金関丈夫 『発掘から推理する』 (岩波現代文庫)

「台湾の山地人で入墨をする連中は、その理由を、これをやらないと、死後祖先のところへ行ったとき、その子孫であることを認知されない恐れがあるからだ、といっている。」
(金関丈夫 「むなかた」 より)


金関丈夫 
『発掘から推理する』
 
岩波現代文庫 社会 S 130


岩波書店 
2006年3月16日 第1刷発行
viii 270p 付記1p 
文庫判 並装 カバー 
定価1,000円+税


「本書は一九七五年六月、朝日新聞社より刊行された。」



本文中図版(モノクロ)47点、図・地図2点。



金関丈夫 発掘から推理する 01



帯文:

「残されたモノから
広がる古代世界
――異才の人類学者による案内――」



カバーそで文:

「矢尻が刺さった女性の頭骨。彼女の死はいったい何を意味するのか。抜歯の習俗や勾玉等の装身具からどのような精神世界が探れるか。占い・入れ墨の風習の伝来はどうだったか。博覧強記の人類学者・金関丈夫が、発掘の成果を世界の民族例を参照し、古文献を駆使して綴った軽妙なエッセイ。古代世界への想像力を刺激する一冊。」


目次 (初出):

発掘から推理する (「朝日新聞」 1963年9月―64年1月)
 前線で戦死した巫女――ヤジリがささった頭骨
 土井ケ浜の英雄――十六本の矢をうけた男
 長い弓と短い弓――射魚用から起った日本の弓
 南方戦士の族――隼人が眠る遺跡
 日本の毒矢――軽太子が使った新兵器
 琉球王の宝刀・千代金丸――鉄の和名の由来
 魂の再生――子供墓考
 魂の色――まが玉の起り
 死霊に対するカムフラージュ――抜歯の起り
 カンシャクを起した孔子――東夷蛮風の改善
 花妻とはねかずら――日本古代の歯ぐろめ考
 双性の神人――山と山との恋愛が意味するもの
 男のお産――景行天皇とウス
 ヤマトタケルの悲劇――双生児の運命
 シッポのある天皇――神武東征伝の成り立ち
 南は東だった――邪馬台国の方角
    *
卜骨談義 (「島根新聞」 1963年8月)
 日本最古の卜骨
 文献にある日本の占法
 卜骨と卜甲
 古代中国の卜法
 殷人の占法
 近世までのこっていた日本の卜骨、亀卜
 弥生文化に伴って渡来した大陸の風習
 集団の統率者だった占術師
種子島広田遺跡の文化 (「FUKUOKA UNESCO」3号、1966年)
 豪勢な貝文化の遺跡
 双性の呪師が存在
 中国古代文化の文様と酷似
 楚と関連の疑い
 日本最古の文字
 広田遺跡の文化はどこにつながるか
 江南と種子島との交流
 渡来人の遺跡であった
竹原古墳奥室の壁画 (「MUSEUM」215号、1969年)
 大陸渡来の天馬思想
 中国の竜馬思想
 すぐれた絵画的統一
 水辺に馬を牽き竜種を求める
 高句麗と飛鳥の中間を埋める美術
 漢代古墳壁画との類似
    *
あた守る筑紫 (「九州文学」 1955年2月号)
 「仇」と「隼人」
 ネグリト族と隼人
 固有名詞から普通名詞へ
 アタの地は異族の他称地名か
むなかた (「九州文学」 1965年1月号)
 文身と竜蛇信仰
 北九州のムナカタ氏と弥生文化
髑髏盃 (「バッカス」2号、1957年)
 頭蓋にやどる霊力
 日本の髑髏盃
洗骨 (『世界大百科事典』17、平凡社)
 世界各地にある洗骨の風習
 死体の前処理
 洗骨
 洗骨後の後処理
海南島の黎族 (「世界の秘境」 1963年9月号)
 長耳、文身、男の髷
 糸紡ぎと紅毛
 女小屋、シンデレラの下駄
 祈祷師、祭りのバンブーダンス、土器づくり
 死者への恐れ
     *
十六島名称考 (「島根新聞」 1962年6月)

あとがき

解説 (金関恕)
初出紙誌一覧
図版出典・提供




◆本書より◆


「南方戦士の族」より:

「中国の文献で辺境の民族のことを記載するものに、しばしば「男逸女労」、すなわち女が労働し、男は遊んで暮らすように書いたものがある。台湾の高砂(たかさご)族や、琉球島民に関するものにも、その例が多い。
 高砂族は最近まで、あるいは今なお、男は原則として労働はしない。ただ三年に一度、焼畑(やきはた)するときに、山刀で山の木を伐る。これがほとんど唯一の労働である。
 しかし、彼らは三年に一度の労働以外に、何もしないのではない。狩猟をする。それから、今は止まったが、敵対部落と戦争をする。そして、少なくとも一生に一度は、儀礼用の首狩りをする。これが男の仕事だ。狩りも戦争もないときは、のらくらと煙草をふかして遊んでいる。ときどき子守りをおおせつかる。
 その生活は江戸時代のさむらいそっくりだ。といって、主君もちの養われ者ではない。貧乏ではあっても、手内職をやるような落ちぶれ者でもない。さむらいの中でも、最も純粋なものだといえよう。
 だから、日本の巡査どもが、道路を造るといってはひっぱり出す。宿舎を建てるからといっては材木を担がせる。元来がさむらいの仕事ではない。強制と多少の賃銀のほしさから、やるにはやるが、いさぎよしとしているわけではない。その賃銀をごまかされたり、強制が苛酷だったときに、山刀をふるって、役人どもの首をちょん切る。これが昭和五年(一九三〇)の霧社(むしゃ)事件の発端である。
 大和朝廷が隼人(はやと)を屈服させると、この徴用がやってくる。人に仕えることを知らなかったさむらいどもの耐え得るところではない。ある日、血の気の多いやつが、役人の首をちょん切る。それがやがて大きな反乱にふくれあがる。これを繰りかえしたのが、大隅、薩摩の隼人の歴史だ。反乱以外に彼らの歴史はない。」
「ともあれ、いまわれわれの身体の中には、なんとなくこの南方戦士の族を愛しあこがれる血が流れている。爛熟した文明を頽廃から救うのに、この血が有効でないとはいえないだろう。」



「双性の神人」より:

「オロチを退治する前のスサノオノミコトは、頭に櫛(くし)をさす。これは女装を意味している。ヤマトタケルも女装してクマソタケルを退治する。アマテラスも神功皇后も、大事の前には男装を必要とした。五条橋の牛若や、ヒヒ退治の岩見重太郎に至るまで、みなこれである。これらの話は、社会の害を除くのにこうした双性神の霊力を必要とした思想の反映である。
 この思想から、単なる女巫や男覡ではなく、一身に両性をかねた双性の神人が崇められることにもなる。琉球では、こうした神人を尊ぶ風が今でものこり、現に女装の覡(みこ)が存在している。」



「むなかた」より:

「台湾の山地人で入墨をする連中は、その理由を、これをやらないと、死後祖先のところへ行ったとき、その子孫であることを認知されない恐れがあるからだ、といっている。水中にはいって魚介を採る連中が文身によって蛟竜の害を避けるというのにも、もともとこれに似た信仰があったのであろう。海神よ、わたしはこのとおりあなたの子孫です。願わくば害をまぬかれさせたまえ、というわけで、その査券(パスポート)として入墨したのだ。水神はすなわち竜蛇神であり、揚子江以南では、現実的にはワニだった。南方の説話では、竜神とワニはしばしば置きかえられる。『日本書紀』に豊玉姫(とよたまひめ)を、一書には竜といい、一書には八尋(やひろ)のワニという。これをトーテムとする海人が胸に入墨して、種族の表徴としたのである。
 それならば、どうしてその入墨の形が「文」の字形をとったか。思うに文の形は下むきの三角を含む。のちの鱗形(うろこがた)である。すなわち蛇の鱗形を胸に彫ったのである。」




金関丈夫 発掘から推理する 02


「飾り貝器をたくさんつけた双性の呪師の骨。」





こちらもご参照ください:

大林太良 『葬制の起源』 (中公文庫)
フィリップ・アリエス 『図説 死の文化史』 福井憲彦 訳
















































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