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『新装版 現代詩読本 瀧口修造』

「ぼくは発狂する
ぼくは熟睡する。」

(瀧口修造 「地上の星」 より)


『新装版 
現代詩読本 
瀧口修造』


思潮社 
1985年10月1日 発行
281p 
20.5×14.5cm 並装 カバー 
定価1,800円(本体1,748円)
表紙・目次・アルバム=レイアウト:  菊地信義



元版は1980年刊、本書はその新装版です。
頁数には口絵(カラー)4p、別丁図版(モノクロ)8pが含まれます。
本文中図版(モノクロ)多数。


瀧口修造 現代詩読本 01


カバー:

「天使よ、この海岸では透明な悪魔が薔薇を抱いている。 薔薇の頭髪の薔薇色は悪魔の奇蹟。 珊瑚のダイナモに倚りかかりおまえの立っているのは砂浜である。 神が貝殻に隠れたまうとき破風に悪魔の薔薇色の影がある。 それは正午である。
――「ポール エリュアールに」」



内容:

◆討議
渋沢孝輔・大岡信・岡田隆彦 「未完結性の世界――書くことの違和」
 瀧口作品の語法の源
 家・風土からの離脱
 出身と言葉のリアリティ
 鉱物質のイメージと輝き
 注目すべき漢語の使い方
 個人に宛てた作品
 未完結性の魅力
 年齢の意識
 夢の記述

◆論考
西脇順三郎 「瀧口修造の芸術」
佐藤朔 「瀧口修造の実験室」
花田清輝 「コロンブスのタマゴ」
小野十三郎 「私のなかの瀧口修造」

東野芳明 「東京ローズ・セラヴィ」
澁澤龍彦 「卵形の夢――瀧口修造私論」
武満徹 「充実した沈黙」
宮川淳 「透明幻想――瀧口修造「詩と実在」の余白に」
磯崎新 「卵型の部屋」

◆代表詩30選――渋沢孝輔・大岡信・岡田隆彦 編
『瀧口修造の詩的実験 1927-1937』
 ETAMINES NARRATIVES
 断片
 地球創造説
 仙人掌兄弟
 花籠に充満せる人間の死
 ポール エリュアールに 
 DOCUMENT D'OISEAUX 鳥たちの記録
 MIROIR DE MIROIR 鏡の鏡
 実験室における太陽氏への公開状
 絶対への接吻
 地上の星
 五月のスフィンクス
 マックス エルンスト
 ホアン ミロ
 マン レイ
 イヴ タンギー
 遮られない休息
 睡魔
 影の通路
 妖精の距離
 風の受胎
 夜曲
『余白に書く』
 黄よ、おまえはなぜ……
 星は人の指ほどの――
 影像人間の言葉
『寸秒夢』
 寸秒夢、あとさき
「未刊詩篇」
 アララットの船あるいは空の蜜へ小さな透視の日々
 旅程

◆論考
巖谷國士 「瀧口修造論への序」
岡田隆彦 「娑婆で見た瀧口修造」
天沢退二郎 「瀧口修造論のための二つのメモ及び補足」
飯島耕一 「ファタ・モルガナ」
入沢康夫 「瀧口さんの「転機」についての走り書」
安藤元雄 「白衣の太陽」
岡井隆 「両棲類私注」
窪田般彌 「瀧口修造の詩的実験」
鶴岡善久 「瀧口修造論――日本シュルレアリスム詩運動の流れのなかで」
藤井貞和 「精神の革命、いま絶えず綜合の夢」
赤瀬川原平 「瀧口ブレーキ論」

◆往復書簡
大岡信 「瀧口修造様」
瀧口修造 「大岡信様」

◆エッセイ
加藤郁乎 「余白頌」
粟津則雄 「瀧口修造寸描」
富岡多恵子 「スタインの最初の読者」
鈴木志郎康 「瀧口修造氏は鞏固に存在すると思った」
吉増剛造 「焰の手紙」
金井美恵子 「箱のなか」
瀧口綾子 「終焉の記」

◆資料
瀧口修造 「自筆年譜」
鶴岡善久 「瀧口修造 執筆・著作年表」
岡田隆彦 「参考文献目録」

口絵
アルバム



瀧口修造 現代詩読本 02



◆本書より◆


討議「未完結性の世界」 より:

岡田 彼がものすごく日本の封建的な慣習とか、三島由紀夫の割腹事件のようなものに対して、醜悪であるとかその否定の激烈さというのはものすごいんですね。」
大岡 川端康成が選挙の応援をしたことがあったね。あの時ものすごく怒ってカンカンだったね。あの人が怒ったのを何回か見ているけれど、そのうちの一つはその川端さんのことね。」



「自筆年譜」より:

「一九〇三(明三六)〇歳」
「書庫代りの二階の一室にはおびただしい漢法医書と近代医書が並んでいて、(中略)明治の文芸書や雑誌も揃っていて、少年時代はこの室にひとり閉じこもることが多く、井上円了や中江兆民の著書などが妙に記憶に残る。性の秘密を知るのもこの部屋である。」

「一九〇六(明三九)三歳
 おそらくこの年頃から自分で絵を描くこと、絵を人に描いて貰うことの飽くことのない楽しみを覚える。(中略)耳の遠い独り言の癖のある絵の器用な出入りの大工に森羅万象思いつくままに絵をせがんだ。(中略)二月、祖母の死。優しいまぼろし。愛犬もその日殉死したとの伝説。」

「一九一〇(明四三)七歳」
「学校に恐怖を抱き、当初は柱にしがみつき泣き叫びながら登校を拒んだ鮮烈な記憶がある。(中略)この学校への怖れと一種の嫌悪感は中学・大学を通じて多かれ少かれ跡をひく。」

「一九一三(大二)一〇歳
 姉みさを(十九歳)(中略)嫁す。その輿入れは定紋入りの高張提灯、たんす長持の行列がならび、少年の心にうつくしく物悲しいロマンとして映る。(中略)この姉は勝気で、美しかった。絵(日本画)もよくした。(中略)この姉の里帰りを弟は待ち焦がれ、(中略)だが彼女の最後はあまりにも悲惨であった。(後出)」

「一九一四(大三)一一歳
 この年(あるいは次年か)(中略)夏目漱石に手紙を書き、(中略)返事を貰う。冒頭に参銭切手を封入してあったから書きます、とあり、文学少年を叱責して、まじめに学校の勉強にはげみなさいときびしく諭したものであった。まず参銭切手の件で恥しさを感じ、屈辱感ともなんとも知れぬ気持ちからその巻紙を二つに引き裂いた。それがまた長く良心の苛責となる。支那製らしい巻紙に子供にも読めるよう仮名まじりで書かれた美しい手紙であったと思う。当時捨てることもならず、人にも(特に当時は姉に)見せられず、長く手筐の底に隠匿していたが、郷里に残してあった幼年時代からの所持品とともに戦災で焼失した。」

「一九一五(大四)一二歳」
「父は死の数日前、珍しく私を連れて富山市の赤十字病院を参観させ、最後に解剖室を覗かせる。卒倒しそうになる。その夜、小料理屋に上り夕食を共にし「大きくなったら医者になりたいか」と聞かれたとき、つよく頭を横に振る。」

「一九二一(大一〇)一八歳」
「医科への進学は宿命的に決められていたが、医者になることを嫌うより以前に、生来の学校嫌いのため、受験勉強はおろか進学を断念しようとして絶えず母と言い争う。(中略)ついに健康を理由に願書を出さず、毎夜遅くまで文学書、美術書などに読み耽る日々、隣室から母の忍び泣く声を幾度聴いたことか! とはいえ文士や作家になりたいという確とした夢もなかった。ただトルストイなどを読み一種のユートピア的な生活を想い描く。」

「一九二二(大一一)十九歳」
「母の急死によって医科進学を秘かに断念し、入試をうけず。田端の叔父の家に寄宿、入試をうける振りして浅草公園にかよっていたことが発覚、一騒動起す。春、(中略)劉生の「麗子像」を見てふしぎな感動を覚える。(中略)ドストエフスキーに読みふけり強度の神経衰弱にかかり田端脳病院に連れて行かれる。田端の家の近く芥川龍之介、室生犀星の家あり、散歩姿をしばしば見かける。」

「一九二三(大一二)二〇歳」
「三田文科に多少抱いていた期待は裏切られ、教室よりも図書館にこもり、ブレイクなどを原書ではじめて読み耽ける。(中略)長髪で歩いていたので竹槍をもった自警団に追跡されたこともある。(中略)当時、株券となっていたらしい学資金が無に帰す。すでに学校に失望していた矢先、それを理由に叔父の説得をしりぞけて退学届を出し、姉の強いすすめもあって、十二月雪深い北海道小樽に渡る。(中略)山中の分教場のようなところで代用教員をして子供たちを相手に一生を送る決意をしていたが、ついに職にありつけず、心ぐるしい寄食生活をつづける。(中略)もともと学校嫌いの自分が児童教育へ傾斜したのは一種の反動とも見られるが、ブレイクから感得した「イノセンスの思想」を自分なりに生活と合致させようとしたのであった。」

「一九三一(昭六)二八歳
 この年早々か前年の暮れ近くかに、赤坂檜町の義兄の家の真裏にあった乃木坂倶楽部に移り、食費に困ると姉の家に出かける。この古風な木造の洋式アパートの最も安い室を借り、鉄のベッドに義兄が都合してくれた古い兵隊毛布を着て寝る。最後は室代の安い窓のない部屋に移り、昼は電源が切れるので石油ランプを使う。三月慶応大学英文学部を卒業する。卒論は英国の形而上派詩人について短い英文のエッセイを出したが、内容なく粗末なもので、西脇教授から「論文はもっと長い方がよい」と軽く評される。アングロ・サクソン語の試験に下手な答案を書くのが恥かしく白紙を出して零点を貰う。しかし私はベオウルフを愛し、なんとか原文で読みたいと思ったが、ついて行けなかった。この年の前後は、現実の問題が幾層にも錯綜するなかで激しい渇望に憑かれた緊迫した時代であった。幾人かの妖精が私の前を通り過ぎた。」

「一九三九(昭一四)三六歳」
「小樽の長姉の病重しとの報に急行、子宮後屈の手術後おそらく手当ての失敗から悪化し、ついに死に至る。もはや担当の医師や看護婦すら寄せつけず、最後は私だけに局部の手当をゆるす。あわれ幼い頃の美しいまぼろしはかくも地獄変となる。」

「一九四〇(昭一五)三七歳」
「特高と情報局からの圧迫が周辺に押しよせる。自己矛盾と同時に孤独感につつまれる。シュルレアリスム観の瓦解、深刻な挫折がわが内部で進行していた。初冬、再び胃潰瘍で吐血する。ある友人が来て、あなたは完全にバスに乗りおくれたという。」

「一九四一(昭一六)三八歳」
「警視庁特高刑事三名に寝込みを襲われる。(中略)杉並署の留置場に連行される。(中略)太平洋戦争勃発、しばらくは周囲より白眼視される。」



瀧口修造 現代詩読本 03














































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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