佐竹昭広 『閑居と乱世』 (平凡社選書)

「「自然」の命ずるところに従って、己れの「まじめ」をいきるべく一歩二歩踏み出したかれは、その結果、絶体絶命の窮地に追い詰められた。」
「時代に蟷螂の斧をかざしつつ、「まじめ」に生きようとあがく人間の前途に待ち受ける運命は、発狂か入信か、はたまた死か。漱石は、「それから」先、「門」「彼岸過迄」「こゝろ」「行人」「明暗」と、執拗にこの問題を追求して行く。」

(佐竹昭弘 「代助と二郎」 より)


佐竹昭広 
『閑居と乱世
― 中世文学点描』
 
平凡社選書 224

平凡社 
2005年11月22日 初版第1刷発行
259p 初出一覧2p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,800円(税別)
基本デザイン: 中垣信夫
カバーデザイン: 東幸央



佐竹昭広(さたけ・あきひろ)は1927年生、国文学。本書は1969年から1999年にかけて様々な機会に書かれた文章を集めたものです。


佐竹昭広 閑居と乱世


帯文:

「方丈の讃歌(方丈記)から、倍々果報の祝言(文正草子)まで
乱世の無常の現実のなかで、方丈の記へと彫琢された閑居の愉楽。
求道と懈怠をめぐる兼好の周到な認識、御伽草子に満ち溢れる哄笑と寿福、
乱世に身を沈め、乱世に乗ずる、文学の中世の多様な展開を
自在な筆が点描するとき、この時代のこころがその大きな輪郭を見せる。」



カバー裏文:

「文学史の中世は、12世紀半ばの保元の乱に始まり、17世紀初め、大坂落城後の元和偃武、泰平の世の謳歌に終わる。「保元以後ノコトハミナ乱世」(愚管抄)の時代のなかで、文学は多様な展開を遂げる。乱世が強いる無常の認識のなかで、方一丈の庵室をすみかとする閑居独処の愉楽を結晶させた鴨長明の方丈の記、懈怠をつづけていきなり無常に肩をつかまれてしまう惧れを繰り返し警告する一方、あまりに「明日なしと思ふ心」をも斥ける徒然草の透徹した思考、また、上杉本洛中洛外屏風に描かれた「面白の花の都」の衆庶の多様な声と言葉、乱世のエネルギーを身にたいして、あるいは乱世のさなかの福徳を祈願して、哄笑と祝言に満ちた御伽草子の世界……。蓮如はおろか、漱石、荷風にも筆を及ばせ、中世文学の意味(こころ)の多彩なきらめきを自在にとりだしてみせる、宝石箱のごとき論集。」


目次 (初出):

閑居の文学 (『岩波講座文学6 表現の方法3――日本文学にそくして 上』、岩波書店、1976年/原題: 中世の言語表現――閑居の文学)
方丈記を読む (『日本文学全史3 中世』、學燈社、1978年/原題: 方丈記)
方丈記再読 (新日本古典文学大系39 『方丈記 徒然草』、岩波書店、1989年/原題: 方丈記管見)
方丈記三読 (『千年の息吹き 京の歴史群像』 上巻、京都新聞社、1993年/原題: 鴨長明――失意のはてに「方丈」賛歌)
「死なざるが故に」 (『いまは昔むかしは今5 人生の階段』、福音館書店、1999年)
雪山の烏 (「国文学 解釈と教材の研究」 14-4、1969年3月/原題: 懈怠ということ)
代助と二郎 (「国文学 解釈と教材の研究」 15-5、1970年4月+同 16-12、1971年9月/原題: 漱石における「真面目」+漱石における「怠惰」)
上杉本洛中洛外屏風 (岡見正雄・佐竹昭広 『標注 洛中洛外屏風 上杉本』、岩波書店、1983年/原題: 絵を見る人あれども――標注抄記)
放下の歌 (『いまは昔むかしは今4 春・夏・秋・冬』、福音館書店、1995年)
矢走舟 (『いまは昔むかしは今2 天の橋 地の橋』、福音館書店、1991年)
御文様 (「文学」 41-4~8、1973年4~8月/原題: 御文様+あなかしこ+自然の時+鶯の狂言+烏を鷺)
東寺の塔 (『いまは昔むかしは今3 鳥獣戯語』、福音館書店、1993年)
御伽草子の位相 (鑑賞日本古典文学26 『御伽草子・仮名草子』、角川書店、1976年)
乳母二人 (『いまは昔むかしは今1 瓜と龍蛇』、福音館書店、1989年/原題: 二人の姫君――『乳母の草紙』について)
文正草子再読 (「古典と現代」、中央公論社、1974年)
文学史の中世 (『岩波講座日本歴史26 別巻3 日本史研究の現状』、岩波書店、1977年/原題: 中世の思想文化 二 文学と芸能)

あとがき
初出一覧




◆本書より◆


「方丈記三読」より:

「閑居を一人楽しむ生活の中から「方丈」の「記」という一編の讃歌が生まれた。最終段、方丈の楽しみを懐疑するかのような文章は、「記」という形式の約束であって、楽しみの否定ではない。最終段は「自謙」の文と解されねばならない。方丈記の本質は、一貫して方丈の讃歌である。」
「方丈記の文章は冒頭から否定表現で始まる。否定表現は肯定表現よりも時に遥かに強い。(中略)方丈記は方丈の讃歌であるが故に、長明の昂揚した気分は自ら強い否定表現を採り、その結果、逆に方丈閑居の全肯定という性格を露わにしているように私には思われる。」



「「死なざるが故に」」より:

「「死なざるが故に已むことを得ず生きてゐる」(『日乗』 昭和二十年九月二十二日)」
「荷風には『新方丈記』を書く構想があった。しかし、成稿には至らなかった。」
「「人と栖」の転変に寄せる荷風の感慨は、すべて東京の転変に帰する。」
「東京という都の「人と栖」の幾変転を叙した断腸亭日乗の四十余年は、それ自体、江戸・東京半世紀の点鬼簿であり、壮大な『東京方丈記』であった。」




























































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