FC2ブログ

T・G・E・パウエル 『ケルト人の世界』 (笹田公明 訳)

T・G・E・パウエル
『ケルト人の世界』 
笹田公明 訳


東京書籍 1990年7月11日第1刷発行
297p 口絵(カラー)8p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,500円(本体2,427円)
装幀: 東京書籍AD



本書「訳者あとがき」より:

「本書は、T・G・E・パウエルによる “The Celts”(Thames & Hudson, 1980 New Edition)の日本語訳である。(中略)原著は最初、テームズ&ハドソン社から一九五八年に出された「古代の人々と土地」シリーズ(全六巻)のうちの一つとして出版されたが、改訂版として単独で同社から一九八〇年に復刊された。本書はこの改訂新版を全訳したものである。」

スチュアート・ピゴットによる「新版へのまえがき」より:

「一九五八年に出版されたT・G・E・パウエルの「ケルト人」は、この古代のヨーロッパ人に関する初めての博識かつ学術的な論文であった。それは、考古学上の証拠と文学上の証拠を結びつけたものであり、分かりやすく書かれているうえに、図解も豊富に入れられている。本書は学者および一般の人々の間で熱烈に支持されており、ケルト人研究に多くの進展があったものの、二十年後の今日も本書に取って代わるものは出ていない。著者自身による改訂は、その死により不可能になったので、一九五八年版のものをそのまま「古代の人々と土地」シリーズの新しい体裁に合わせて(ただし図版を増やした)再出版することが決められた。」

口絵図版(カラー)12点、本文中写真(モノクロ)97点、図38点。


ケルト人の世界1


帯文:

「Barbarian Europe
未開のヨーロッパにたくましく生きた
「幻の民」の実像に迫る!」



帯背:

「ヨーロッパ先住民の
生活・芸術・宗教」



帯裏:

「本書は、歴史学、考古学、言語学のさまざまな証拠を駆使して、東のバルカン半島からフランス、スペイン、そして西のイギリス、アイルランドにいたるまで「未開のヨーロッパ」に生きたケルト人の生活、芸術、宗教全般を鮮やかに描いている。従来、「幻の民」と呼ばれてきたケルト人を、その起源から最後の軌跡まで、初めて総合的に解説した記念碑的名著である。カラー口絵はじめ160点に及ぶ写真・図版を掲載。」


ケルト人の世界2


目次:

はじめに
新版へのまえがき (スチュアート・ピゴット)
主要年史表 (考古学上)/(歴史上)

第一章 ケルト人を求めて
 情報源と定義
 古代史の中のケルト人
 ガリア人
 ガラテア人
 ベルガエ族
 ブリテンとアイルランド
 ヨーロッパ先史時代の背景
 新石器時代の移住民
 牧農民の出現
 原始時代の金属使用
 「戦斧」とその背景
 馬
 インド=ヨーロッパ人
 「ビーカー」とその背景
 青銅器時代における人間集団の融合と連続性
 北方山岳文化圏
 「骨壺葬」文化の先駆者
 問題多き時代
 乗馬者と首領
 紀元前六世紀における民族としてのケルト人
 ブリテンへの移住
 アイルランドのケルト人

第二章 ケルト人の生活
 ケルト人の肉体的特徴
 服装
 装飾品
 ケルト人気質
 社会制度
 アイルランドの社会制度
 ガリアにおける社会制度
 農業経済
 居住地の対照
 ラングドック
 ブリテン
 アイルランド
 畑および農耕
 家屋
 砦と「町」
 穀物の貯蔵
 手工業と交易
 ワイン交易の文化的重要性
 「ラ・テーヌ」美術工芸
 ケルトの貨幣と現物交換
 価値の単位
 戦闘
 武勇
 戦闘方法
 裸のゲサタイ
 首狩り
 乗馬者
 英国諸島の武力闘争
 ケルト人の宴会

第三章 ケルト人の神霊
 ケルト人の原始的宗教
 年間行事
 部族神と自然神
 三組神
 神霊界
 ガロ=ローマ時代の記念物
 ローマ時代のブリテン
 その土地本来の神の具象化法
 聖なる円柱と木
 聖なる区域
 ケルトの社
 ローマ=ケルトの神殿
 雄牛と猪の彫像
 供物の堆積
 供犠
 魔術師と聖人
 口述学習

第四章 ケルト人の軌跡
 キンブリー族とチュートン族
 「ゲルマン人」
 古代チュートン人
 デンマークでのケルト出土物
 チュートン人のケルト人からの借用
 ローマ後のケルト的伝統
 ローマのブリテン
 カレドニア人とピクト人
 スコットランド人
 ブルターニュ人の起源
 「ゲール人」の起源
 連続性の糸

訳者あとがき

写真類の補遺説明
参考文献
索引



ケルト人の世界3



本書より:

「古代アイルランドの言語と文献の体系的な研究は、ここ数百年のことにすぎないし、ある点ではほんの予備研究が完成したにすぎない。法律的な論文、叙事詩的で神話的な物語のいくつかの内容は、先史時代からつづくアイルランド人の生活を照らし出し、大陸のケルト人に関する多くの古典的な言説に解明の光を与えている。また、それは言語学の分野に劣らず、インド=ヨーロッパ人の慣習と神話学のもっと広範な分野に、重要な比較のための資料を提供している。アイルランドのケルト人は、インド北部のアーリア人がインド=ヨーロッパ人の東洋の要塞でありつづけたように、インド=ヨーロッパ伝統の西縁部の要塞でありつづけた。地理的には中間にあるその共通の親が消えたにもかかわらず、これらは長い間生き残った。」

「ケルト人は、今日ではキリストに先立つ千年間のうち前半の方の数百年間に、アルプスの北の地域に姿を現した結合のゆるい未開民族として論述されている。
社会制度や言語における共通の要素をはじめ、物質文化と農業経済における共通の要素は、すべてはもっと昔の地域的な共同体と、少なくとも部分的には侵略的な骨壺葬文化の人々との混交に由来するものであるが、それらの共通の要素は、主としてハルシュタットの墳墓とラ・テーヌ文化に代表される王朝の興隆とともに、相互に結合しあったものと思われる。紀元前五世紀と四世紀にケルト人は最も栄え、ヨーロッパの全域に広がった。彼らは最終的にはカエサルの手で死命を制せられたのであるが、そうなったことについては特別の原因はなく、自然に衰退しつつ事実上大陸では忘れられる運命をたどった。そしてケルト人という名称ではなく、その土地土地の呼称の下にケルト的遺産を保持していた人間集団が、中世に入っても生き残ったのは、ブリテンと最後にはアイルランドにおいてのみであった。」

「ケルトの女神たちは土地とか領地に結びついているのであって、その土地が占領されれば女神も同じ運命をたどって、懐柔されたり、征服されたり、はたまた奴隷化されたりもしたのである。女神たちは豊饒と破壊的側面の両方を表しており、太陽と月はもとより、動物形象や地形学でも象徴化され得るものであろう。
その当時、女神たちはサァオイン祭で嘆願されるべき神霊の力であったが、その前日の夜こそが、この世界が魔術の力によって蹂躙されると考えられた一年の内の大変な時であった。不思議な軍勢が洞穴や塚から発進し、個々の人間はこれらの王国に受入れられたのであろう。一方、王家の砦に向かっては怪物たちによる炎と毒の攻撃がなされた。」



ここでいったん本書よりの引用を中断しますが、これは「ハロウィン」の起源とおぼしいケルトの祭儀について述べている文章ですが、「個々の人間はこれらの王国に受入れられたのであろう」という訳文の意味がよく分りません。ネットでさくさくっと検索してみたところ、原文が見つかりました。

「......the night of its eve was the great occasion in the year when the temporal world was thought to be overrun by the forces of magic. Magical troops issued from caves and mounds, individual men might even be received into these realms; whilst against the royal strongholds, assaults by flame and poizon were attempted by monsters.」

訳文の無味乾燥にひきかえ、これはうっとりするような名文ではありませんか。「magical」「mounds」「men might」 etc. の「m」音と、「received」「realms」「royal」 etc. の「r」音が、「s」音の火花を散らしつつ交錯し、掉尾の「monsters」に向って収斂していきます。リア充人間たちの常識という傲岸な砦を打ち砕くべく魔物の群れが「時は今」とばかりに攻撃をしかける。じつにわくわくするではありませんか。がんばれモンスター。くたばれ人類。
失礼しました。
「the temporal world」「royal strongholds」は人間たちの領域である現世・世俗世界、「these realms」「caves and mounds」は魔物たち「Magical troops」の世界、従って、「これらの(魔物の)領域に迎え入れられる人間もいたかもしれない」のようになるかと思います。

本書よりの引用を続けます。


「男性神でも女性神でもケルト人の神々のもう一つの特徴は、三組神(トライアッド)になっていることである。(中略)三組神というのは、三つで一つの神になっていることと考えがちだが、そうではなく、また三つの別々の神が結合しているという考えのものでもない。実際のところそれは、個々の神の途方もない力を表現したものである。それは「三というものが持つ力」になぞらえることができよう。三という数字は、インドでも同様に、ケルト人の世界を越えてはるかに神聖で縁起のよいものであった。」

「魔術師の力が主にいかなる能力にあると考えられたのか。それは、見えないものを見る能力、人より先に知識を得る能力であった。
アイルランド語の言語研究が示しているように、知識は「見る」ということであった。そしてこれは、恍惚状態、精神錯乱、あるいはある種の鼓舞された霊感を通して達成されたのである。
恍惚状態の最も興味ある実例の一つは、タラで新しい王を選んだ時の物語の中の一頭の牛が殺されドルイドがその肉を貪り食う、というものである。その後ドルイドは恍惚状態に陥り、その間彼の上で呪文が唱えられた。正気に戻ると彼は、正当な権利の主張者のうち誰がタラに登位するかを予言することができた。この儀式はターブフェイス、すなわち「牛の夢」として知られている。熱狂、恍惚、自分の姿を意のままに変えること、呼称はどうあれこれらはすべて、ケルトの魔術師とユーラシア北方地帯のシャーマンとの間に、ある種の関係が存在することを示している。」






























































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本