W・B・イエイツ 『ケルト幻想物語集 I アイルランド各地方の妖精譚と民話 上』 (井村君江 訳/妖精文庫)

「たくさんの神を信じるということは、ぜんぜん信じなかったり、神はただ一人だと思うことより、ずっとはるかにいいことである。」
(W・B・イエイツ 『アイルランド各地方の妖精譚と民話』 より)


W・B・イエイツ 
『ケルト幻想物語集 I 
アイルランド各地方の妖精譚と民話 上』 
井村君江 訳

妖精文庫 ⑨

月刊ペン社 昭和53年3月20日初版発行/昭和57年4月5日3版発行
247p 口絵4p(うちカラー2p)
四六判 丸背紙装上製本 カバー 定価1,200円
装幀: 秋山道男
カバー・イラスト: リチャード・ドイル
コラージュ・着色: 秋山道男

妖精文庫月報⑧ 4p
妖精画廊: リチャード・ダッド絵 “The Fairy Feller's Masterstroke”
妖精郷だより: 〈イエイツ案内〉II (荒俣宏)



『ケルト幻想物語集 III』「あとがき」より:

「この翻訳本三巻に亘る『ケルト幻想物語集』(中略)には、W・B・イエイツの編纂した二冊の本『アイルランド各地方の妖精譚と民話』(Fairy and Folk Tales of The Irish Peasantry 1888)と『アイルランドの妖精譚』(Irish Fairy Tales 1892)を全篇収録した。これらは過去二百年にわたってアイルランド各地方に残っていた民間伝承物語を、イエイツ自身及び多くの優れた文学者たちが採集して、ゲール語より英語に直し発表したものの中から、イエイツが選択して編集したものである。」


ケルト幻想物語集3


帯文:

「ケルト民族の夢のエッセンス!!
群れをなす妖精たち、ひとり暮らしの妖精たち、取り替え子、海の精・メロウ など、いまもアイルランドの人々の生活の一部をなす妖精物語を分類・集大成した 詩人W・B・イエイツの労作。」



目次:

序文
群れをなす妖精たち
 妖精 (詩) (ウィリアム・アリンガム)
 フランク・マーティンと妖精たち (ウィリアム・カールトン)
 牧師の晩餐 (T・クロフトン・クローカー)
 ラグナニの妖精の泉(フェアリー・ウエル) (詩) (サミュエル・ファーガスン)
 タイグ・オケイン(タイグ・オ・カハーン)と死体 (英文はダグラス・ハイドによるアイルランド語からの逐語訳)
 パディー・コーコランの女房 (ウィリアム・カールトン)
 クシーン・ルー (詩) (原文はJ・J・カラナンによるアイルランド語からの翻訳)
 白い鱒――コングの伝説 (S・ラヴァー)
 妖精の茨(フェアリー・ソーン) (詩) (アルスター地方の民謡 サミュエル・ファーガスン卿)
 ノックグラフトンの伝説 (T・クロフトン・クローカー)
 ドニゴール地方の妖精 (レティシア・マクリントック)
取り替え子(チェンジリング)
 卵の殻の醸造 (T・クロウhトン・クローカー)
 妖精の乳母 (詩) (エドワード・ウォルシュ)
 ジェミー・フリールと若い娘――ドニゴールの物語 (レティシア・マクリントック)
 盗まれた子供 (詩) (W・B・イエイツ)
 メロウ
 魂の籠 (クロフトン・クローカー)
 フローリイ・キャンティロンの葬式 (クロフトン・クローカー)
ひとり暮しの妖精たち
 レプラコーン、クラリコーン、ファー・ダリッグ
 レプラコーン 妖精の靴屋 (詩) (ウィリアム・アリンガム)
 主人と家来 (T・クロフトン・クローカー)
 ドニゴールのファー・ダリッグ (レティシア・マクリントック嬢)
 プーカ族
 笛吹きとプーカ (「『シュゲーリヨホタの書』のアイルランド語からの翻訳」) (ダグラス・ハイド)
 ダニエル・オロールク (T・クロフトン・クローカー)
 キルディア・プーカ (パトリック・ケネディ)
 バンシー
 トーマス・コノリーがバンシーに会ったいきさつ (J・トドハンター)
 嘆きの歌 (詩) (クラレンス・マンガン訳)
 マック・カーシー家のバンシー (T・クロフトン・クローカー)
幽霊
 夢 (詩) (ウィリアム・アリンガム)
 グレース・カナー (レティシア・マクリントック)
 ティロンの伝説 (詩) (エレン・オレアリー)
 黒い子羊 (ワイルド夫人)
 幽霊の歌 (詩) (アルフレッド・パーシヴァル・グレイヴス)
 輝く子供 (クロウ夫人)
 フランク・マケナの運命 (ウィリアム・カールトン



ケルト幻想物語集4



◆本書より◆


「序文」より:

「たくさんの神を信じるということは、ぜんぜん信じなかったり、神はただ一人だと思うことより、ずっとはるかにいいことである。」


「タイグ・オケインと死体」より:

「何とも奇妙で恐ろしい所にやってきたものだ、と、タイグがなおもあたりを見回していると、冷たくなっている死体が耳もとで囁いた、「さあ、おれを埋めてくれ、今、埋めてくれ。鋤もあるから、土を掘りかえせ」。見ると、祭壇の脇に鋤がある。それを取り上げると、その刃を側廊の中央にあった敷石の下に当て、柄に全身の重みをかけて敷石を持ち上げた。(中略)下の土は柔らかくて楽に掘り返せたが、シャベル三杯か四杯分の土を掘り起こすと、鋤が何か肉のような柔らかいものに触ったような感じがした。まわりの土をさらに三、四杯ほど掘り起してみると、それは埋められていた別の死体だった。
「ひとつの穴に死体を二つ埋めるなんて、ぜったいに駄目だろうな」と、タイグは心に思った、「背中の死体さんよう」と彼はたずねた、「ここにおまえさんを埋めてもいいかな?」しかし、死体は一言も答えなかった。」
「タイグはもう一度鋤を地面に突き立てた。おそらく、もう一つの方の死体を傷つけたのだろう、そこに埋められていた死人が墓の中に立ち上がると、恐ろしい声で叫んだ、「フー! フー!! フー!!! 行け! 行け! 行け! さもなきゃ、おまえは、死、死、死ぬぞ!」そう言うと、死体はまた墓の中に倒れた。」
「タイグは側廊を少し扉の方に進み、背中の死体の墓を作る場所は他にないかと、また敷石を起こしはじめた。そして、敷石を三、四枚持ち上げると脇に置き、それから土を掘った。間もなくすると、シャツ一枚のほかは何も身につけていない婆さんを掘り出した。その婆さんは先程の死体より元気だった。というのは、婆さんのまわりの土をどけるかどけないうちに、起き上がって叫びはじめたからである。「ホー、この無骨者めが! ハー、この無骨者め! 墓がないなんて、そいつは今までどこにいたのかい?」
可哀そうにタイグは後ずさりした。婆さんは返事がないのを知ると、おとなしく目を閉じ、生気を失って、静かにゆっくりと土の中に倒れた。タイグは先程男にしたように、婆さんにも土をかけ直し、それからその上に敷石を置いた。
タイグはまた、扉の近くを鋤で掘りはじめたが、二、三度土をすくうかすくわないうちに、男の手があらわれた。「もう掘るのはやめだ」(中略)タイグはそこで、また男の上に土を投げ入れると、もとどおりに敷石を置いた。」
「何度となく道を曲がり、曲がりくねった小径を何度となく歩いて行くうちに、とうとう道の傍に古い墓地があるのが見えてきた。」
「タイグはこの古い墓地に近づいていった。しかし、二十メートルも行かないうちに目を上げると、何百という幽霊が――男や女、それに子供の幽霊が――墓地の周囲の塀の上に腰を掛けたり、塀の内側に立ったり、あるいは駈足で行ったり来たりして、彼の方を指さしているのが目に入った。タイグには、幽霊たちがまるで話し合ってでもいるかのように、口をぱくぱくさせているのが見えたが、そのことばはおろか、音ひとつ聴こえなかった。」



「ドニゴール地方の妖精」より:

「そのとおりなんです。あの連中の気分を害すのは、確かによくないことなんです。怒らせれば妖精たちは薄情な隣人にもなるし、親切に取り扱えば、良き隣人にもなるのです。」


「幽霊」より:

「死者の魂はときに動物の姿になる。スライゴーの町のある家の庭園でのことだが、その家の前の持ち主が兎になって現われるのを庭番が見かけたという。死者の魂はまた虫、とくに蝶になることがある。死体のそばをひらひら舞っている蝶がいたら、それはその人の魂で、永遠の至福へ入っていった徴(しるし)である。『アイルランド諸地方概観』(一八一四年)の著者は、ある婦人が蝶を追い回している子供に、こう言うのを聞いたそうである、「それはおまえのお祖父ちゃんの魂かもしれないんですよ」。十一月祭の晩には、死者が戸外で妖精たちと踊る。」」




































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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