パオロ・ロッシ 『普遍の鍵』 清瀬卓 訳 (世界幻想文学大系)

パオロ・ロッシ 
『普遍の鍵』 
清瀬卓 訳

世界幻想文学大系 45
責任編集: 紀田順一郎+荒俣宏

国書刊行会 
昭和59年10月25日 印刷
昭和59年10月30日 初版第1刷発行
370p 索引xxxviii 口絵(折込)
四六判 丸背紙装上製本 貼函 
定価3,200円
造本: 杉浦康平+鈴木一誌
挿画: 渡辺富士雄

月報 45:
パオロ・ロッシのこと(近藤恒一)/記憶術の沿革と実際(渡辺剛彰)/不思議の国のアルス――パオロ・ロッシ『普遍の鍵』周辺 (高山宏)



本書は小説ではなく、ヨーロッパの「記憶術」に関する学術書です。
本文中図版(モノクロ)多数。


ロッシ 普遍の鍵 01


本来は函にカバーが付いていて、いろいろ文字が書いてあるのですが、紛失しました。


本書「訳者あとがき」より:

「本書は Paolo Rossi, Clavis universalis - Arti mnemoniche e logica combinatoria da Lullo a Leibniz -, Milano-Napoli, Riccardo Ricciardi, 1960. の初版を邦訳したものである。但し、一般読者の便宜を鑑み、補遺として巻末に付された未刊行資料および余りに専門的と思われる脚註は割愛することにした。そのかわりとして、本書巻末には詳細な人名註と事項註を訳者の手で付した。」
「英国文化史家フランセス・A・イエイツの『記憶術』(The art of memory)第一版が、ロンドンで上梓されたのは、一九六六年であった。じつに『普遍の鍵』初版発行に遅れること六年である。したがって本訳書は当時書かれていた唯一の記憶術研究書であり、イエイツ女史にとって掛け替えのない水先案内人であったことはいまさら言うまでもない。同じ記憶術という主題を論じながらも、ロッシとイエイツ両者のめざすところは、大きく異なっている。そもそもロッシは純粋に科学思想史の観点から、今日のコンピュータ・システムや人工知能開発へと結びつく〈知〉のコード化を、歴史的にたどってみようとするのである。一方イエイツは『記憶術』の序文からも明らかなように、ブルーノの思想形成とその展開という文化思想史的興味から出発して、とりわけ秘伝的側面に注目しながら、記憶術の役割りをその起源から近世にいたるまで跡付けたのであった。」
「しかし実証的研究法を尊重する点において、両者とも甲乙つけがたい。あくまでもブルーノに焦点をしぼり、あえてルネサンス思想の暗部とされるカバラ、錬金術、魔術等の伝統にまで触れたイエイツに対して、ルネサンス研究の泰斗エウジェニオ・ガレンの薫陶を汲む実証主義者ロッシは、そうした秘伝的系譜への言及を徹底して避けている。」



ロッシ 普遍の鍵 02


目次:

日本語版に寄せて (パオロ・ロッシ)



Ⅰ 十四、十五世紀にみるイメージと場所記憶
 1 記憶の「規定」に対する人文主義者の反論
 2 古代、中世における記憶術の典拠
 3 十四世紀における記憶術と説教術
 4 十五世紀における記憶術
 5 ピエトロ・ダ・ラヴェンナ『不死鳥』
 6 自然と技術
 7 記憶術・アリストテレス思想・医学
 8 イメージの組み立て

Ⅱ 十六世紀百科全書思想と結合術
 1 ルルス思想の復興
 2 アグリッパと大いなる術の特質
 3 ルルスの伝統にみる術・論理学・宇宙論
 4 知恵の樹と十六世紀百科全書派
 5 ライムンドゥス・ルルスの書にみる記憶力増強
 6 ベルナルドゥス・デ・ラヴィニェータ――結合術と場所記憶
 7 記憶論理学

Ⅲ 世界劇場
 1 象徴思想と記憶術
 2 記憶術のイギリス、ドイツへの普及
 3 シュパンゲルベルギウス
 4 グラタローロの記憶医学
 5 世界劇場にみるルルス思想とカバラ

Ⅳ ジョルダーノ・ブルーノの空想論理学
 1 ブルーノのルルス記憶術著作
 2 十七世紀における結合術・記憶術・自然魔術

Ⅴ 人工記憶と新しい論理学――ド・ラ・ラメー、ベーコン、デカルト
 1 ピエール・ド・ラ・ラメー――論理学の一部門としての「記憶」
 2 ベーコンとデカルト――記憶を玩ぶ人々にたいする論争
 3 ベーコンとデカルトにみる記憶術とルルス思想
 4 記憶術の新しい論理学への仲間入り

Ⅵ 百科全書思想と汎智論
 1 普遍記憶術体系――ハインリッヒ・アルシュテート
 2 汎智論と大教授学――コメニウス
 3 十七世紀の百科全書思想と結合術
 4 ジョン・ヘンリー・ビスターフィールドの哲学的アルファベット

Ⅶ 普遍言語の形成
 1 イギリスのベーコン学派――普遍言語構想
 2 言語記号と数学記号
 3 コメニウス学派――普遍言語と普遍キリスト教
 4 完全言語の形成
 5 普遍言語の記憶作用――自然科学にみる分類法
 6 普遍言語と対峙するデカルトとライプニッツ

Ⅷ ライプニッツ記号法の淵源

ヨーロッパ古代・中世百科全書思想の系譜 (清瀬卓)
事項索引
人名索引



ロッシ 普遍の鍵 03



◆本書より◆


「序」より:

「普遍の鍵(クラヴィス・ウニヴェルサーリス)ということばは、千五百年代(チンクェチェント)から千六百年代(セイチェント)にかけて、表面的現象つまり「イデアの影」の彼岸に、実在の本質を構成する理念の筋書きを把握できるような方法とか普遍学をさすものであった。世界のアルファベットを読みとってゆくこと。神の精神が自然という偉大な書物に刻印した記号を手ぎわよく判読すること。根源的形相と人間理性の連鎖との間にまったき対応関係をみいだすこと。人間を記号でなく事物そのものに触れさせることによって曖昧なものを拭いさり、本質を開示してくれるような完全な言語を構想すること。宇宙のなかに現存する調和を忠実にうつしだす鏡ともいうべき包括的百科全書や整然とした分類を生みだすこと。千三百年代(トレチェント)中葉から十七世紀末にかけて、こうした成果の具現に努め、それと関連する立場や世界観を検討、擁護し、普及させようとした人々は、ルルス思想の主題を論じ、人工記憶法則を教示し、壮麗な百科全書や世界劇場を編みだし、想念のアルファベットを探求して、みずから汎智論の願いのみならず人類の全的解放と平安の悲願をも支持するものたらんとした。
当面の問題は当時おおいにおこなわれた思想的立場、試み、主題であるが、それらは論理学、修辞学研究に決定的な重要性をもった。こうして、ひとつの確固とした立場から、言語問題や記憶の問題のみならず、トピカ、分類法、記号、象形文字、象徴、イメージをめぐる問題が考察され、ほりさげられていった。こうした一連の問題にささげられた刊行物が文化一般ひいては哲学にどれほどの重要性をもっていたかを、われわれ現代人が理解するのはけっして容易なことではない。論述法則と推論、説得の規則をねること、記憶術の基本原理(カノン)を定め、記憶術の場所とそこにおさめられるべきイメージとの間に実在する結合タイプを教えること、ルルスの大いなる術がもっている格を研究して結合術(コンビナトーリア)の煩雑な規則を完成すること、これらのことに初期ルネサンスからライプニッツ時代にいたる学識者たちは、幾世代にもわたって専念したという事実があるにすぎない。」
「あれほど特異なブームを呼ぶにいたったそもそもの原因はなにか、どうしてアグリッパ、ブルーノ、ベーコン、デカルト、ライプニッツといった哲学者、アルシュテートやコメニウスといった人々、ボイルやレイといった科学者たちがこうした議論に正面から取り組み、その役割り、意義を斟酌しようと努め、それらを解釈し、もっとこみいって多様な思想上の立場に適合させようとしたのか、そこが問題なのである。」




こちらもご参照下さい:

フランセス・A・イエイツ 『記憶術』 玉泉八州男 監訳
M・H・ニコルソン 『月世界への旅』 高山宏 訳 (世界幻想文学大系)









































































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