『齋藤磯雄著作集 III 翻譯詩 他』

「夙に幼少の頃より、孤獨感。家庭にあつても、――特に、朋輩のさなかにあつても、――永遠に孤獨なる運命を擔つてゐるといふ意識。」
(シャルル・ボードレール)


『齋藤磯雄著作集 III 翻譯詩 他』
編集委員: 宇佐見英治・窪田般彌・渋沢孝輔・安藤元雄・矢内原伊作

東京創元社 平成3年10月25日初版
xiv 683p 口絵(モノクロ)i 
A5判 丸背布装上製本 貼函
定價11,000圓(本體10,680圓)
装釘: 日下弘・足立秀夫
口絵: 「越生梅林にて (昭和53年)」

付録3 8p
清河八郎と齋藤磯雄 (小山松勝一郎)/磯雄先生のこと (大野順一)/齋藤磯雄と日夏耿之介、長谷川潔 (井村君江)/郷里 磯雄さんのこと (佐藤三郎)
図版: 「長谷川浩、齋藤磯雄、佐藤四郎」



第三回配本。本文正字・正かな。


齋藤磯雄著作集3-2


帯文:

「高潔な精神、清雅にして鋭敏な語感、
稀有なる文人の半世紀にわたる文業
第III巻 翻譯詩他 責任編集・窪田般彌
近代フランス詩集、七寶とカメオ、
譯詩拾遺、火箭・赤裸の心」



帯裏:

「齋藤磯雄氏はボードレールをはじめとするフランス象徴詩の卓れた研究者であり、翻訳者であり、また、漢詩文についての豊かな教養をそなえた、詩心ある重厚な文人であったが、その著書は、新潮文庫に収められた『フランス詩話』を除いて、あまり弘くは読まれていなかったようである。いま、名篇「ピモダン館」をはじめとして、氏の数多くの珠玉の文字がまとめられて、全四巻の著作集として刊行されることは、ひとり蔭ながら氏を畏敬し、愛読してきた私だけの喜びにとどまらず、それはわが文苑の記念すべき慶事となるだろう。この著作集をひろく江湖に推薦したいと思う。
富士川英郎」



齋藤磯雄著作集3-1


目次:

近代フランス詩集
 マルスリイヌ・デボルド・ヴァルモオル夫人
  サアヂの薔薇
  わが部屋
  かの人のために祈れる
  哀歌
  花失せし冠
 アルフォンス・ド・ラマルチイヌ
  谷間
 ヴィクトル・ユゥゴオ
  闇よりの脱出
 ジェラアル・ド・ネルヴァル
  幻想
  金色の詩
  車中の目ざめ
 バルベエ・ドオルヴィリイ
  シッド・カムペアドオル
 テオフィル・ゴオティエ
  ラメント
  蝶
  三聯詩
  隊商
  ひそめるゆかり
 ルコント・ド・リイル
  フィディイレ
  禿鷹の眼
 テオドル・ド・バンヴィル
  友に寄す
 アルマン・シルヴェストル
  秋
 ステファヌ・マラルメ
  あらはれ
 シャルル・クロス
  ノクチュルヌ
 シュリイ・プリュドオム
  揺籃
 ジャン・ラオオル
  悲しき歌
 フランソワ・コペ
  夜すでにして……
  アダジオ
  百合の花
 ポオル・ヴェルレエヌ
  月の光
  さをとめ
  マンドリン
  感傷的な對話
 モオリス・ロリナ
  泪の味
 シャルル・グランムゥジャン
  めぐりあひ
 アルチュウル・ランボオ
  醉ひどれ船
 ジョルジュ・ロオダンバック
  われとわが手を……
  女人らの雙の眼は……
 エミイル・ヴェルアラン
  貧しい人びと
 アルベエル・サマン
  たそがれの乙女
  アミモオヌの雉鳩
  クレオパトラ
  エレジイ
  薄暮
 ルミ・ド・グウルモン
  水車
  聖堂
 ジュウル・ラフォルグ
  死者忘却の嘆きぶし
  深淵の閃き
  幼き心臓肥大症患者の唄
  不可能
  冬の落日
 シャルル・ヴァン・レルベルグ
  雨は妹
  ゆるしておくれ
  主、その幼な兒に……
 モオリス・マアテルランク
  小唄
  小唄
  冬の欲念
 スチュアル・メリル
  悲しみの裡に誌せる
 アンリ・ド・レニエ
  抒情小曲
  黄ばめる月
  秋の夜
  もてなし
 ヴィエレ・グリファン
  秋
  殘る、とは愚かしい……
 フランシス・ジャム
  學ある驢馬
  食堂
  秋になると……
  小曲
 ポオル・クロオデル
  バラアド
  流謫の歌
 ピエエル・ルイス
  パンの笛
  髪
  ナイヤァドの墓
 ポオル・ヴァレリイ
  海邊の墓地
 カミイユ・モオクレエル
  たまゆら
  おもかげ
 ポオル・フォオル
  ベルジュロのいふ
  恢復期
 シャルル・ゲラン
  老婆
  ああ御主……
 ロオズモンド・ジェラアル夫人
  しだれ柳
  森の牝鹿
  ねむり
 アンナ・ド・ノワイユ夫人
  面影
  亡靈たち
 ジェラアル・ドゥヴィル夫人
  夜の苑生
  なぐさめ
  後記

七寶とカメオ (テオフィル・ゴーチエ)
 序詩
 ひそめるゆかり (割愛)
 女體の詩
 手の習作
  I イムペリア
  II ラスネール
 ヴェネチアの謝肉祭 變奏曲
  I 街にて
  II 入海にて
  III 謝肉祭
  IV 感傷的な月の光
 白・長調の交響樂
 死後の嬌態
 心のダイヤモンド
 春の最初の微笑
 コントラルト
 青い眼
 ロンダルラ
 オベリスクの郷愁
  I パリのオベリスク
  II ルークソールのオベリスク
 ナポレオン麾下の老兵たち
 海上の悲しみ
 薔薇いろの衣裳に
 世間は意地惡
 シエラのイネス
 アナクレオン風の抒情小詩
 けむり
 アポロニー
 盲目
 歌曲
 冬の幻想
 泉
 火葬と墳墓
 甲冑の晩餐
 懐中時計
 海の妖精
 鬢の捲毛
 茶薔薇(ローズ・テ)
 カルメン
 燕らの語れる
 基督降誕祭
 死んだ娘の玩具
 新聞の文藝欄の後に
 囘想の城
 椿と雛菊
 エジプト女
 黒人奴隷
 屋根裏部屋
 雲
 つぐみ
 春をつくる花
 末期のねがひ
 歎きの雉鳩
 良夜(あたらよ)
 藝術
  譯註
  七寶とカメオ

譯詩拾遺
 ステファヌ・マラルメ
  秋の嗟歎
 ジョゼ・マリヤ・ド・エレディヤ
  鷲の死
  奴隷
 ポール・クローデル
  闇
 ポオル・ヴァレリイ
  紡ぐ女
 マックス・ジャコブ
  瞑想
  バビロンの都
 ヴァンサン・ミュゼリ
  酒徒の賦
  屑屋たち
  四行詩
   鳥たち
   蛇たち
   白鳥
   嵐の前
 アルチュウル・ランボオ
  オフェリヤ
 ルコント・ド・リイル
  夜の寒風

火箭・赤裸の心 (シャルル・ボードレール)
  火箭
  赤裸の心
  火箭 註解
  赤裸の心 註解
   後記

解題
解説 「創作」としての訳詩 (窪田般彌)
収録作品原題



齋藤磯雄著作集3-3


◆本書より◆


テオフィル・ゴーチエ「燕らの語れる」より:

「すでに枯葉の幾枚かが
黄いろな芝生に散らばつてゐる。
朝夕、風は冷えびえとして、
たのしい日々も、ああ、おしまひだ。」

「雨は泉水にあぶくをたてて、
燕のむれは屋根に集り
秘密會議を開催する。
冬が、寒さが、やつて來たのだ。

幾百となく群がるつばめ、
さあ出發の打合せだ。
中の一羽が、『ああ、アテナイの
城壁の上、そりやすてきよ。」

「べつの一羽が、『あたしの部屋は
スミルナの町、カフェの天井。
日向ぼっこの囘教徒(ハッヂ)が、戸口で、
琥珀(こはく)の珠數を爪繰つてゐる。」

「ふち狹苦しい刳形(くりがた)の上、
叫びを放ち羽ばたきしながら、
錆びつく森の色を眺めて、
燕のむれはこんなおしやべり。

その語らひのすべてがわかる、
なぜなら詩人もまた、鳥だから。」



シャルル・ボードレール「火箭」より:

「暮春の頃の、しつとりとした夕ぐれの、綠の闇。」

「測り知れぬ深い意味を湛へた市井の言ひ廻し、あれは幾代かの蟻によつて穿たれた穴だ。」

「唐草模様は、模様のなかで最も精神主義である。」

「私を愛してくれた人々はいづれも輕蔑されてゐた人々であつた。」

「静かな水の上に微かにゆれ動いてゐるあの美しい巨船、閑(のど)やかにしかも郷愁を抱くかに見えるあの逞しい船舶は、無言の言葉で我々にかう告げてゐるのではあるまいか、『いつ私たちは、幸福へ向つて出發するのか』と。」

「私は「美」の、――自分の「美」の定義を發見した。それは熱烈なしかも悲しい何物かであり、いささか漠然としてゐて、揣摩臆測の餘地を殘してゐる何物かである。(中略)「憂愁」は「美」の謂はば﨟たけたる伴侶であり、およそ「不幸」の存在しない「美」といふものが私には全然考へられないくらゐである(中略)。次のやうに結論せざるを得ないことを了解して貰へるだらう。即ち、男性的な「美」の最も完全な典型は、――ミルトンの描いたやうな、サタンである、と。」

「人の生涯には折ふし、時間と空間とがいつもよりひとしほ深味を増して、生存の意識がはてしなく増加したやうに感じられる瞬間がある。」

「何ぴとの感受性をも軽蔑してはならぬ。各人の感受性こそ、各人の精髄なのだ。」

「私は快感を恐怖を覺えつつ我とわがヒステリイをはぐくみ育てて來た。今や私は不斷に眩暈を覺える。そして今日、一八六二年一月二十三日、私は或る奇怪な警告を受けた、私は癡呆の羽風が頭上を吹きよぎるのを感じた。」

「オンフルールへ行かう、出來るだけ速く、これ以上落ち込まぬうちに。」



シャルル・ボードレール「赤裸の心」より:

「役に立つ人間であるといふことが、私には常に何かしらひどく醜惡なことに想はれた。」

「夙に幼少の頃より、孤獨感。家庭にあつても、――特に、朋輩のさなかにあつても、――永遠に孤獨なる運命を擔つてゐるといふ意識。」

「除け者の眞の偉大さについて。」




こちらもご参照下さい:
齋藤磯雄 譯 『ボオドレエル全詩集 惡の華・巴里の憂鬱』
窪田般彌 『一切合財みな煙』


































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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