『定本 西脇順三郎全集 X 文学論 4』 

『定本 西脇順三郎全集 X 文学論 4』 
William Langland 現代英吉利文学 英米思想史 
近世英文学史 欧文エッセイ他

筑摩書房 1994年9月20日初版第1刷発行
viii 739p 口絵i
A5判 丸背紙装上製本 貼函
定価8,800円(本体8,544円)

月報: 
1972年9月初掲/1994年9月再録 8p
存在のをかしさ(山本健吉)/旅人のひとりごと(多田智満子)/永遠の謎(吉増剛造)/素描(那珂太郎)/図版1点(1971年)



本書「後記」より:

「本巻に収めた(中略)各英文学論は、すべて初版本(横組)を底本とした。」
「『William Langland』は図版7葉(中略)、巻末に年表、書目、索引を収録してあるが、本巻ではそれらを割愛した。」
「『現代英吉利文学』は挿絵6葉(中略)、巻末に索引を収録してあるが、本巻ではそれらを割愛した。」
「近世英文学史』には、研究課題、研究の手引、参考書目を収録してあるが、本巻ではそれらを割愛した。」
「旧漢字表記はすべて新漢字表記に改めた。ただし仮名は旧表記に従った。」


この巻は全体的に横組になっています。


西脇順三郎全集10-1


目次:

William Langland (昭和8年 研究社)
 はしがき
 I 概説
 II 教会と修道院
 III 封建制度
 VI キリスト教と道徳及び風俗
 V 都市生活
 VI 言語と文学
 VII Langland の思想
 VIII Langland の伝記

現代英吉利文学 (昭和9年 第一書房)
 はしがき
 I
  I 一般論
  II 詩
  III Thomas Hardy の世界
  IV 愛蘭土文学
  V Mackenzie 氏の戦前文学批評
 II
  I 序説
  II 一般論
  III 小説
  IV 旅行記・伝記
  V 随筆・田園文学
  VI 戦争文学
  VII 作家論
  VIII 詩
  IX 劇
  X 文学論
  XI 芸術論
  XII 文化論
  XIII 参考書目

英米思想史 (昭和16年 研究社/昭和30年 荒地出版社)
 I 中世紀
  I Anglo Saxon 時代
  II Middle English 時代
 II 近世
  I 近世初期一般論
  II 十七世紀
  III 十八世紀
  IV 十九世紀
  V ヴィクトーリア女王時代
 III 亜米利加

近世英文学史 (昭和23年 慶応通信教育図書株式会社)
 I 十六世紀前半
  I ルネサンス概説
  II 英国の古典学者の思想
  III 宗教制度改革と聖書翻訳
  IV 詩歌の傾向
  V SATIRE の文学流行
  VI 散文作品
  VII 一般大衆文学
  VIII 劇文学
  IX ルネサンス思想回想
 II エリザベス時代
  I 一般情勢
  II Edmund Spenser
  III William Shakespeare と劇文学
  IV 詩歌
  V 散文文学
  VI エリザベス朝の文学回想
 III 十七世紀
  I 一般情勢
  II James I 時代
  III Charles I 及 Commonwealth 時代
  IV John Milton
  V Restoration 時代
  VI John Dryden
  VII 清教徒派の文学
  VIII 演劇
  IX 散文
  X 詩文
  XI 十七世紀回想 (1)
  XII 十七世紀回想 (2)
  XIII 十七世紀回想 (3)
 IV 十八世紀
  I 一般情勢
  II 詩文
  III 散文
  IV 演劇
  V 旅行記
  VI 後半期の一般情勢
  VII Samuel Johnson
  VIII 散文
  IX 小説の発達
  X ロマン派の詩文
  XI 十八世紀回想 (1)
  XII 十八世紀回想 (2)
 V 十九世紀 (1)
  I 一般情勢
  II ロマン主義文学
  III 小説、随筆、批評
  IV 十九世紀回想 (1)
 VI 十九世紀 (2)
  V ヴィクトーリア時代一般情勢
  VI 実利主義と自由主義
  VII 一般風潮に反対した批評家
  VIII Matthew Arnold
  IX 新しい宗教運動
  X 文芸批評
  XI 論説その他
  XII 散文
  XIII 小説
  XIV 世紀末文学
  XV 劇文学
  XVI 十九世紀回想 (2)

欧文エッセイ他
THE GENIUS OF JAPANESE ART (「英語文学」 大正9年6月)
A PASTORAL (「英語文学」 大正9年8月)
A SHORT STORY FROM ALFRED DE MUSSET (「英語文学」 大正9年9月)
THE ART OF THOMAS CARLYLE (「英語文学」 大正10年3月)
A NOTE ON THE POEMS OF MR. NOGUHI (「三田文学」 大正10年11月)
A SLAVE OF MORTIFICATION (「三田文学」 大正11年1月)
A NOTE ON ROMANTIC POETRY ROUND ABOUT OXFORD IN THE 18TH CENTURY (「English Literature and Philology」 昭和5年4月)
AN ESSAY ON ESSAYS (「津田文学」 昭和12年3月)
THE VIRTUOSITY OF T.S. ELIOT (『T.S. Eliot: A tribute from Japan』 研究社 昭和41年12月)
ON THE APPRECIATION OF SHAKESPEARE (『文学、慶応義塾創立百年記念論文集』 昭和33年11月)
THE POET AND THE WORLD OF MAN (「Études Littéraires」 昭和43年12月)

後記 (鍵谷幸信・新倉俊一)



西脇順三郎全集10-2

口絵 (1931年)。



◆本書より◆


『William Langland』「はしがき」より:

「序は僕にとつては単に申訳をのべる外はない。ラングランドの評伝を考へた僕は寧ろ comic である。この企てについてのあらゆる欠点に対しては世の学者の寛容を先づ乞ふものである。中世紀を研究する力は僕にはないのであるが、しかし中世紀に対する趣味だけは、ひそかに抱いてゐるらしい。中世紀の寺院の薄暗い中へ這入つて行く一つの気持で僕は中世紀の文学や哲学の中へ心を置くことになる。
ラングランドの文学は色々の点で中世紀の文学の特色をもつてゐる。先づ「夢物語」と allegory の形式で書かれてゐる。また当時の realism の上に立つてゐる文学で、そして当時の intellectualism の文学である。中世紀文学の一つの重大な分派としての social satire の文学でもある。そして英国のダンテとも相当し得るものである。またヨーロッパ全体からみても一大 Christian Humanist であつた。」
「十九世紀の Humanists の如く、例へば Carlyle 等の思想に類似する gospel of work を説いたものである。労働者の福音を説いたとも考へることが出来る。
神を恐れ、苦しみ、そして柔和な心を得ることである。ラングランドは Humility といふことを重大なものとした。また神学とか学問とかの知識の力を認めないで、或る仏教の宗派の如く念仏によつて極楽浄土へ行けると考へるものに等しい。知識ある僧も地獄に沈むことがあるが、しかし貧しい農夫も牧人もただ Pater-noster の短い祈祷だけの助けによつて天国へ行ける。」



『現代英吉利文学』より:

「この本は現代英吉利文学を一般学校教室で読むやうな組織的な構造をもつて観たのでなく、簡単にいつたら、時々に書いた現代英文学に関する essays を集めたものである。
現代英吉利文学を展望する塔ではなく、またわざと曲げて造つたピーザの斜塔でさへない。ただ地方的な粗野な観察者にすぎない。花の咲いた葦の髄から天上をのぞく一つの牧人の文学論にすぎない。また支那人のいふ本当の意味の管見である。或は麻の藪の中で夢みるものである。」

「Hardy の悲劇的な小説は個々の人間の悲劇を描く目的であつたといふよりも、彼の自然観を啓示するためのものであつたといふことが出来る。」
「この自然主義は Hardy の irony の哲学を生むことになる。盲目の自然の力は人間の希望や意志に関係なく動くといふことを定命説にする。人間の希望は寧ろその希望と正反対は結果を生むことがあるとする。人間は盲目の「機械に直面してゐる。」人間の創造の宇宙意志は何であるか、如何なる答を得ることも出来ない。「希望するといふことは即ち争闘であり、苦しみである。」 Hardy は自然科学的には因果応報をみとめてゐるが宗教的には認めないことになる。この点で Hardy は無神論者といはれるのである。」
「十九世紀の哲学系の中に無意識の世界の哲学があつた如く、Hardy の盲目説もそれと同様な考へ方であると考へられる。ただ Hardy の盲目説は無意識の哲学と自然科学的な定命説とが混入して、所謂世界は盲目のメカニズムであるといふ説の自然主義であつた。今日ではこんな説は忘れられてしまつた。」
「Hardy の小説に出て来る人物は田舎の人達が多い為か、皆センティメンタルな感情的な人間ばかりである。これは単に小説の状態からくる必然的な性格かも知れないが、Hardy 自身さういふ心的傾向があつたのではないかとも考へられる。」
「Hardy の人物は大体に於て感情的で子供らしく単純である。」
「Hardy の小説の中心になる衝動は恋愛である。その恋愛の性質は暗黒な神秘的な力の運動である。また土壌から湧き出る生々しい生温い盲目の茎のやうなものである。」
「Hardy の心的傾向は、要するに、感情と情緒の世界に大部分根ざしてゐる。また彼の事物に対する態度には irony、pathos、humour などがあることが普通であつた。」
「Hardy の小説のみではないが、一般に悲劇的な小説には、苦しみが或る二つの相反する力の衝突から来る。自然の力と社会の力との争闘で人間が苦しむ。そしてその結果自殺するか死刑になるといふ悲劇を生む。」
「Hardy は文明に興味をもたなかつた。殆んど一生、しかも樫の木のやうに長く、一生を田園の中に送つた。田園の哲学としては世界でも唯一のものであらう。Woolf 女史が尊敬してゐる理由は小説の構造などの問題でなく、其の暗黒の田園の世界にある。(中略) Hardy のウェセックス小説や詩を読んでみると、田園の哲学としての《神曲》を読む感がある。Hardy といふヴァーヂルの指導のもとに、我等の心はダンテの心の如く重く、ウェセックスといふ自然の世界を彷徨ふやうなものである。」
「「人間の生の大部分は暗黒で地下にあるやうなもので、無限に接触してゐる暗黒の中の根の如きものである。」」
「Hardy の自然主義には宇宙の神秘といふことが到るところに説かれてゐる。《八月の真夜中》といふ詩に種々の虫が洋燈のホヤに集つてブンブン浮びつ沈みつ動いてゐるのをみて「彼等は私の知らない地上の神秘を知つてゐる。」といつてゐる。また《最後の菊》の終りに「それは偉大な顔を隠す多くの仮面の一つに過ぎない。」などがある。」

「二十世紀の新しい文学の重要な傾向となつてゐるものの一つに、非人間化する事(dehumanizing とか inhumanity)がある。先づ humanity とは如何なることであるかといふ問題になる。ヒュウマニティといふものの内容は時代により、また世界観により、倫理観により、民族によつて異つてゐる。与へられた一つの社会と時代とに於て、最も流通してゐる人間の思考、感情、モラルの性質が、其時代と社会に於けるヒュウマニティの内容であると考えられる。(中略)それで dehumanize するといふことは前述した通俗の人間性を取去ること、または修正することである。文学でいふと通俗文学に反対し、修正し、新しい進んだ文学を作らうとすることである。」



『近世英文学史』より:

「ミルトンが勉強家であつたといふことは有名であつた。俗にいふ糞勉強をやつたらしい。彼の唯一の親友で医者であつた前述の Charles Diodati がギリシア語で書いてミルトンに宛てた手紙に「君は過労の殉道者だ――僕が君より優れてゐる点は僕の勉強には節度があることだ」といふ意味のところがある。またミルトン自身ラテン語で書いたものゝ中で「猛烈に勉強を急いだので十二歳の時から夜半前に勉強をやめて床へ就いたことがなかつた」それがためにミルトンは四十五歳位までに全く失明してしまつた。」
「彼の Il Penseroso といふ詩の中で
 Or let my lamp, at midnight hour,
 Be seen in some high lonely tower
といつて、夜半淋しい高楼で燈火に親しみ、古典文学を読んだ。プラトー、ホーマ、ギリシア悲劇などを読み耽つたらしい。これこそミルトンの「象牙の塔」である。」



「A NOTE ON THE POEMS OF MR. NOGUCHI」より:

「When a mere boy I read with interest, in a certain magazine, the story of a poet, who had tramped a merry journey over American plains: surely a stream of water did duty for a mirror when, on his way, he had streets or villages to pass through as an artist of pleasing aspect; or the starshine faintly reflected on the waves inspired him with a real poetical sensibility as he was camping out on the beach.
Many years afterwards I was a student of the dismal science at Mita, on the cool hill, with its expansive outlook over a misty bay beyond a graveyard of house-tops. One temperate autumn noon, when the flavescent gingko leaves were beginning to fall slowly, and the distant sea grew airy under the deepest blue of sky, I saw a sallow-complexioned professor, whose looks seemed to give me an idea of what the languidness or grief of poets should be like. Then, for the first time, I certainly had the honour of seeing the poet in question.」


(Mr. Noguchi =野口米次郎)


西脇順三郎全集10-3














































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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