カール・ケレーニイ 『ギリシアの神話 ― 神々の時代』 (植田兼義 訳/中公文庫)

「夜の女神に対してはゼウスですら怖れかしこんでいたという。(中略)運命の三女神モイライはこの夜の子供たちであった。(中略)モイライの力はひょっとしたらゼウスの支配権よりずっと古い時代のものかもしれない。」
(カール・ケレーニイ 『ギリシアの神話――神々の時代』 より)


カール・ケレーニイ 
『ギリシアの神話 ― 神々の時代』 
植田兼義 訳
 
中公文庫 ケ-2-1

中央公論社 1985年4月10日初版/1992年9月20日10版
370p 目次8p 地図2p 文庫判 並装 カバー 
定価600円(本体583円)
表紙・扉: 白井晟一
カバーデザイン: 丸山邦彦
カバー: ディオニュソス(古代ギリシア壺絵)



『ギリシアの神話――英雄の時代』所収「訳者あとがき」より:

「本書は Karl Kerényi: Die Mythologie der Griechen, (Rhein-Verlag, Zürich, 1951) と Die Heroen der Griechen, (1958) の翻訳であるが、序論と、地名、事物の索引は割愛した。本書は二巻から成り、ギリシアの神々と英雄の物語を網羅し、神話辞典としても十分活用できるものである。」


ギリシアの神話1-1


カバー裏文:

「西欧の理解に不可欠なギリシア神話の森――天上の神ゼウス、愛の女神アプロディテから、アポロン、冥界の神ハデス、ディオニュソスまで、膨大な説話を異説を含めて体系的に収集。図版多数とともに収める、おおらかな神々の物語篇。」


目次:

第一章 万物の始め
 1 オケアノスとテテュス
 2 夜、卵、エロス
 3 カオス、ガイア、エロス
第二章 ティタン神族の物語
 1 ウラノス、ガイア、クロノス
 2 クロノス、レア、ゼウス
 3 神々とティタン神族の戦い
 4 テュポエウス(またはテュポン)、ゼウス、アイギパン
 5 巨人族(ギガンテス)との戦い
第三章 モイライ、ヘカテ、オリュンポス神族以前の他の神々
 1 運命の女神たち(モイライ)
 2 女神エウリュビア、ステュクス、ヘカテ
 3 スキュラ、ラミア、エンプサ、およびその他の妖怪変化
 4 テテュスとオケアノスの年上の娘たち
 5 「海の老人たち」、ポルキュス、プロテウス、ネレウス
 6 女神老婆たち(グライアイ)
 7 エリニュスたち、またはエウメニスたち
 8 ゴルゴンたち(ステンノ、エウリュアレ、メドゥサ)
 9 エキドナ、ヘスペリスたちの蛇、ヘスペリスたち
 10 アケロオスとセイレンたち
 11 タウマス、イリス、ハルピュイアたち
 12 ネレウスの娘たち
第四章 愛の大女神
 1 アプロディテの誕生
 2 アプロディテとネリテス
 3 アプロディテ、アレス、ヘパイストス
 4 ピュグマリオンの物語
 5 アドニスの物語
 6 アプロディテとアンキセス
 7 アプロディテの異名
第五章 神々の大母神とそのお供たち
 1 イデ山のダクテュロスたちとクレスたち
 2 カベイロスたちとテルキネス
 3 アッティスの物語
第六章 ゼウスとその妻たち
 1 ゼウスの誕生と幼年時代
 2 ゼウスとヘラ
 3 ゼウス、エウリュノメ、カリスたち
 4 ゼウス、テミス、ホーライ
 5 ゼウス、ムネモシュネ、ムーサイ(ミューズたち)
 6 ゼウス、ネメシス、レダ
 7 クレタ島の物語
 8 オルペウスの物語
 9 ゼウスとヘラの異名
第七章 メティスとパラス・アテナ
 1 アテナの誕生
 2 アテナの父たちと養育者たち
 3 アテナとヘパイストス
 4 ケクロプスの娘たち
 5 アテナの異名
第八章 レト、アポロン、アルテミス
 1 レトのさすらい
 2 レトとアステリア
 3 アポロンの誕生
 4 アポロンとその敵たち
 5 アポロンとその恋人たち
 6 アスクレピオスの誕生と死
 7 アルテミスの物語
 8 ブリトマルティスの物語
 9 アポロンとアルテミスの異名
第九章 ヘラ、アレス、ヘパイストス
 1 ヘラの受胎
 2 アレスとアロアダイ
 3 ヘパイストスの墜落と教育
 4 縛られたヘラ
 5 ヘラ、イクシオン、ケンタウロイ
第十章 マイア、ヘルメス、パン、ニンフたち
 1 ヘルメスの誕生と事始め
 2 ヘルメス、アプロディテ、ヘルマプロディトス
 3 パンの誕生と情事
 4 プリアポスについて
 5 ニンフたちとサテュロスたち
第十一章 ポセイドンとその妻たち
 1 ポセイドンの誕生と雄羊の結婚
 2 ポセイドンとテルキネス
 3 デメテル、ポセイドンの雄馬の毛紺
 4 ポセイドンとアンピトリテ
 5 アンピトリテの子供たち
第十二章 太陽、月、その一族
 1 パエトンの物語
 2 セレネとエンデュミオン
 3 エオスとその恋人たち
 4 オリオンの物語
 5 風の神々について
第十三章 プロメテウスと人類
 1 人類の起源
 2 プロメテウスとゼウスの争い、火の盗み
 3 パンドラの物語
 4 プロメテウスの罰と解放
 5 ニオベの物語
 6 テティスと世界の未来の支配者
 7 人類の運命
第十四章 ハデスとペルセポネ
 1 ペルセポネの掠奪
 2 誘拐、慰め、地上回帰の物語
 3 冥界の物語
第十五章 ディオニュソスと彼に従う女たち
 1 ディオニュソス、デメテル、ペルセポネ
 2 ディオニュソスとセメレ
 3 ディオニュソスの供の女と敵対する女
 4 ディオニュソス、イノ、メリケルテス
 5 海上のディオニュソス
 6 ディオニュソスとアリアドネ
 7 ディオニュソスの異名

原注
索引
地図



ギリシアの神話1-2



◆本書より◆


「運命の女神たち(モイライ)」より:

「夜の女神に対してはゼウスですら怖れかしこんでいたという。(中略)オルペウス教徒の物語によれば、ニュクス(夜の女神)そのものが三身一体の女神であったといわれる。運命の三女神モイライはこの夜の子供たちであった。(中略)オルペウス教徒によると、彼女らは天にある池のほとりの洞窟に住んでいて、その池の白い水は、この洞窟からほとばしっていたという。これは月光の明るい光景である。モイライ(単数はモイラ、複数はモイライ)という名前は「分け前」を意味し、そしてその三という数は――オルペウス教徒の主張によれば――月の三つの「分け前」に一致する。そのために、オルペウスは「白い衣を着たモイライ」を歌うのである、といわれている。
 そのほか、モイライは、第一のモイラだけがクロトと呼ばれるだけであるが、クロテス、つまり「紡ぎ女」として知られている。第二のモイラはラケシスで「分け前をはかる女」であり、第三のモイラはアトロポスで「免れがたい女」であった。ホメロスの語るモイラはたいていただ一人のモイラであって、それも「強い」「耐えがたい」「破壊的な」糸を紡ぐ女でしかない。モイライの紡ぐ糸は、われわれの人生の長さであって、そのうちの一日はのがれられない死の日となる。人間のそれぞれにどれくらいの長さの糸を分け与えるかは、モイライ次第で、ゼウスですらその決定を変えることはできない。(中略)モイライの力はひょっとしたらゼウスの支配権よりずっと古い時代のものかもしれない。」
「さて、夜の女神ニュクスの子供たちの名を簡単に数え上げておこう。この子供たちはその一部だけが神々からなる暗い一族であり、おそらくヘシオドスも、万物の系譜を物語ったついでに名を挙げたものであろう。彼によれば、死は三つの名で呼ばれ、モロス、ケル、タナトスである――これらの名のはじめの名はモイラの男性形である――。死のほかにその兄弟ヒュプノス(「眠り」)と夢たち(オネイロイ)のすべての族(やから)がいる。モモス(「非難」)、オイジュス(「苦悩」)、オケアノスの彼方で黄金のりんごの番をするヘスペリスたち(「黄昏(たそがれ)の娘たち」)、女神ネメシス(中略)、アパテ(「欺瞞」)、プロテス(「愛着」)、ゲラス(「老齢」)、エリス(「争い」)、など、みな夜の子供である。エリスの子供たちは神々の物語には加えられない。彼らはのちに冥界の入口に住むことになる。」



「スキュラ、ラミア、エンプサ、およびその他の妖怪変化」より:

「ヘカテは、天、地、海に力の分け前をもっていたが、けっしてオリュンポスの女神にはならなかった。(中略)彼女は、路上を歩きまわらないときは、自分の洞窟にこもっていた。彼女の娘である海の妖怪スキュラも洞窟に住んでいた。」
「船乗りの語るところによれば(中略)、そこに二つの絶壁があって、その一方はなめらかな石でできた高く空にそびえる岩で、その頂きは見えない。そしてその中央にスキュラの洞窟があった。この洞窟は西方のエレボスの、はかり知れない闇に向かって開いている。そのなかに、若い雌犬のように、おそろしげに吠えるスキュラが棲んでいたといわれる。彼女の十二の足は(中略)発育不全で奇形であった。おそろしい六つの顔がそれぞれ長い首に坐っている。(中略)彼女は洞窟の奥から首をのばし、岩のあいだにいる、いるか、あざらし、もっと大きい海の怪獣を捜し求めては捕えていた。」
「もう一方の岩の絶壁の下にはカリュプディスが棲んでいた。(中略)カリュプディスは、日に三度海水をすすっては、日に三度海水を吐き出していた。向かいあっている絶壁スキュラほどには高くない絶壁の上に、野生のいちじくの木が一本生えていた。カリュプディス自身には見えなかった。」
「ラミアあるいはラモとは、名前の意味からすれば、「呑みこむ女」のことである。(中略)ある物語によれば、ラミアは女王で、リビアを支配していたといわれている。それどころか、リビアには彼女の洞窟があって、人々はそこを訪れたのである。ゼウスは彼女を愛し(中略)、二人のあいだに子供が生まれた。この子供たちは嫉妬するヘラの犠牲になってしまった。それ以来ラミアは、悲しみのため醜くなり、そねみから他の母親たちの子供を奪った。ラミアは自分が眠っている間も見張れるように、自分の眼をはずすことができた。それにどんな姿にも変身することができた。もし彼女をとらえることができれば、ラミアが奪った子供たちをその腹のなかから生きた姿で取り返すことができたのである。」



ギリシアの神話






















































































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分野: パタフィジック。

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