『ヘルダーリン全集 2 詩II 〈1800-1843〉』 (責任編集: 手塚富雄)

「いまこそ来たれ、火よ!」
(ヘルダーリン 「イスター」 より)


『ヘルダーリン全集 2 詩II 〈1800-1843〉』 
責任編集: 手塚富雄


河出書房新社 昭和42年5月31日日初版発行/平成2年6月28日13版発行
428p 口絵3p 目次1p 詳細目次5p
四六判 角背布装上製本 貼函 定価7,800円(本体7,573円)
装幀: 山崎晨

月報(8p):
ヘルダーリン小感 (山室静)/《詩人の故郷》① (浅井真男)



本書解説より:

「本書「詩II」には、一八〇〇年から没年までのヘルダーリンの詩をおさめた。成熟期のヘルダーリンの詩世界がここでその全容をわたしたちに示すのである。」


ヘルダーリン2-1


帯文:

「ヘルダーリンの全創作活動の頂点をなす、一八〇〇年以後の詩を収録
現代人の運命を先取し、リルケ、ハイデガーをはじめ生の問題を思索する人に深刻な影響をおよぼした書「多島海」「ディオティーマ哀悼歌」「パトモス」「平和の祝い」「唯一者」「ライン」等」



目次:

口絵
 詩「唯一者」の原稿
 ディオティーマ像
 ライン瀑布
 デロス島キュントス山頂から多島海を望む
 スーニオン岬

詩II (手塚富雄・浅井真男 訳)
 オーデ
  ドイツ人の心が歌う (手塚)
  平和 (浅井)
  ドイツ人に寄せる(二詩節) (手塚)
  ドイツ人に寄せる (手塚)
  ルソー (浅井)
  ハイデルベルク (手塚)
  神々 (浅井)
  ネッカル川 (浅井)
  故郷 (手塚)
  愛 (浅井)
  生の行路 (手塚)
  ディオティーマの快癒 (浅井)
  別れ 第二稿 (浅井)
  ディオティーマ (浅井)
  故郷に帰る (手塚)
  祖父の肖像 (浅井)
  婚約者のまぢかい帰還を待つある女性に (手塚)
  はげまし 第一稿 (浅井)
  はげまし 第二稿 (浅井)
  自然と技術 あるいはサトゥルヌスとユピテル (浅井)
  エドゥアルトに (手塚)
  アルプスの麓で歌う (手塚)
  詩人の天職 (浅井)
  民衆の声 (手塚)
  盲目の詩人 (浅井)
  キローン (浅井)
  なみだ (手塚)
  希望に寄せる (浅井)
  ヴルカーノス (手塚)
  詩人の意気 第一稿 (浅井)
  詩人の意気 第二稿 (浅井)
  意気消沈 (浅井)
  束縛を破った河流 (手塚)
  ガニュメート (手塚)
 エレギー
  エレギー (浅井)
  メノーンのディオティーマ哀悼歌 (浅井)
  さすらい人 第二稿 (浅井)
  野外へ (浅井)
  シュトゥットガルト (手塚)
  パンと葡萄酒 (手塚)
  帰郷 (手塚)
 さまざまな詩型
  多島海 (浅井)
  永眠した人々 (浅井)
  ランダウエルに (手塚)
  齢い (浅井)
  ハールトのはざま (浅井)
  生のなかば (手塚)
  あたかも祝いの日の明けゆくとき…… (手塚)
 後期の讃歌
  母なる大地に (浅井)
  ドーナウの源で (浅井)
  宥和するものよ…… 第一稿 (手塚)
  宥和するものよ…… 第二稿 (手塚)
  宥和するものよ…… 第三稿 (手塚)
  平和の祝い (手塚)
  さすらい (浅井)
  ライン (浅井)
  ゲルマニア (手塚)
  唯一者 第一稿 (手塚)
  唯一者 第二稿 (手塚)
  唯一者 第三稿 (手塚)
  パトモス (手塚)
  追想 (手塚)
  イスター (浅井)
  ムネーモシュネー 第一稿 (浅井)
  ムネーモシュネー 第二稿 (浅井)
  ムネーモシュネー 第三稿 (浅井)
 讃歌草案
  あまねく知られた者に寄せて (浅井)
  ドイツの歌 (浅井)
  鳥の群がゆるやかに…… (浅井)
  まるで海辺に…… (浅井)
  故郷 (浅井)
  葡萄づるの水気が…… (浅井)
  黄ばんだ葉の上に…… (浅井)
  人間の生はなんだろう…… (浅井)
  神とはなんだろう?…… (浅井)
  マドンナに寄せる (手塚)
  巨人族 (浅井)
  あるときわたしはムーサに…… (浅井)
  しかし天上の者たちが…… (浅井)
  むかしは、父なるゼウスよ…… (浅井)
  あなたは思うのか…… (浅井)
  鷲 (浅井)
  堅固に築かれたアルプスの山脈よ!…… (浅井)
  身近なもの 第三稿 (浅井)
  ティニアン島 (浅井)
  コロンブス (浅井)
  領主に (浅井)
  半神や族長の生涯に…… (浅井)
  まことに深淵から…… (浅井)
  ヴァチカンは…… (浅井)
  ギリシア 第一稿 (浅井)
  ギリシア 第二稿 (浅井)
  ギリシア 第三稿 (浅井)
 最後期の詩
  友情、愛…… (浅井)
  遠くからわたくしの姿が…… (浅井)
  ある子供の死に寄せて (浅井)
  名声 (浅井)
  ある子供の誕生に寄せて (浅井)
  この世の快さを…… (浅井)
  ツィンマーに(生の流れの……) (浅井)
  天から…… (浅井)
  ツィンマーに(どんな人間についても……) (浅井)
  春(野に新しい歓喜が……) (浅井)
  人間(善をうやまう者は……) (浅井)
  楽しい生 (浅井)
  散歩 (浅井)
  墓地 (浅井)
  満足 (浅井)
  かならずしもすべての日々を…… (浅井)
  展望(人間たちが楽しい気持でいるのは……) (浅井)
  ル・ブレ氏に (浅井)
  春(なんという喜びだろう……) (手塚)
  秋(かつてあって……) (手塚)
  夏(取り入れの畑が……) (手塚)
  春(新しい日が……) (手塚)
  遠望(緑が平坦な遠方から……) (手塚)
  春(日はかがやき……) (手塚)
  より高い生 (手塚)
  より高い人性 (手塚)
  精神の生長 (手塚)
  春(人間は心のうちから……) (手塚)
  夏(こうして春の花期が消えると……) (手塚)
  冬(蒼白の雪が……) (手塚)
  冬(樹々の葉が……) (手塚)
  冬(野は荒涼と……) (手塚)
  夏(年の時間はまだ……) (手塚)
  春(光があらたに……) (手塚)
  秋(自然の光輝はいま……) (手塚)
  夏(谷には小川が……) (手塚)
  夏(日々は柔和な……) (手塚)
  人間(人間がおのれ自身によって……) (手塚)
  冬(季節のもろもろの……) (手塚)
  冬(年が変り……) (手塚)
  冬(年の日が傾き……) (手塚)
  ギリシア(人間とともに……) (手塚)
  春(日はめざめ……) (手塚)
  春(太陽は新しい……) (手塚)
  春(深みから……) (手塚)
  時の霊 (手塚)
  友情 (手塚)
  遠望(人間の安住する生が……) (手塚)
 断片 (浅井)
 記念帖に (手塚)
 献呈のことば (手塚)

解説 1800年以後のヘルダーリンの詩について (手塚富雄)



ヘルダーリン2-2



◆本書より◆


「ルソー」より:

「そしてあまたのひとびとは自分の時代を越えて遠くを眺める。
彼らは神によってはるかなところを示されるのだが、あなたはあこがれながら
岸辺に立っていて、あなたの同胞にはいまわしい者、
影と思われているそ、あなたも決して彼らを愛しはしない。」

「気のどくなひとだ、あなたの広間のなかには人声ひとつ響かない。
そこであなたは埋葬されない死者のように、さだめなく
さ迷い歩き、いこいを探し求めるが、たれひとり
あなたが歩むようにときめられた道を示すことはできない。」

「あなたはあの使者たちの声を聞き、あの異邦の者たちの言葉を理解し、
彼らの魂を解き明かしたのだ! あこがれを抱(いだ)く者には
合図だけでことたりたのだ。そして合図は
遠いむかしから神々の言葉なのだ。」



「ディオティーマ」より:

「あなたは黙って耐え忍んでいる、ひとびとはあなたを理解しないから、
高貴な生(いのち)よ! うるわしい日にも地に眼を伏せて
黙っている、ああ! どんなにあなたが
陽の光のなかに自分のともがらを探し求めてもむだだからだ。」



「ヴルカーノス」より:

「なつかしい火の神よ、さあ来て、
女たちのやさしい心を柔和な雲、
金いろの夢につつんでくれ、そして護ってくれ、
いつも悲しみの深いこのひとたちの咲き匂うやすらかさを。」



「メノーンのディオティーマ哀悼歌」より:

「日ごとにわたしたちは家から出て、つねにちがったところを探す、
もうとうにこの国の道をすべてひとに問いただしてしまった。
かなたの涼しい丘々も、樹陰(こかげ)も、泉も、
すべて訪れる。霊はのぼりくだりしながらさまよい歩いて、
ひたすら憩いを求めるのだ。矢に当って傷ついた獣も同じように森に逃げこむが、
いつもならば、そこで真昼にも暗闇のなかで安全に憩うことができたからだ。
だがいまは、緑の臥所(ふしど)も彼の心を慰めることはなく、
うめき声をあげながら、まどろみもせずに傷の痛みに追い立てられる。
光の温(ぬく)みも、夜の冷気もやくにはたたず、
流れの波に傷をひたしてもかいはない。
こうして大地がその元気づける薬草を彼に与えてもあだになり、
煮えかえる血はいかなるゼピュロスも静めることができないが、
わたしもまた、愛するものたちよ! それと同じらしい。そして
わたしの額(ひたい)から夢の重荷を取り去ることは、だれにもできないのか?」

「わたしは祝いたいのだ、だが、なんのために? また、ひとびととともに歌いたいのだ、
だが、かくも孤独ではわたしには神々(こうごう)しいものはなにひとつ残ってはいない。
これなのだ、これこそはわたしの欠陥、それをわたしは知っている。ある呪いが
わたしの脚を萎(な)えさせていて、歩きはじめればたちまち倒れるのだ。」

「そうだ! いまもあのひとはむかしのままだ! いまも全き姿をもって、
むかしのままに静かに歩みながら、アテナイ乙女としてわたしの前にただよう。
そして、親しい霊よ! あなたの光が、明るい思いに満ちた額(ひたい)から、
祝福しつつ確実に現身(うつしみ)の者らのあいだに落ちるとき、
あなたはそのことをわたしに證(あかし)し、わたしがほかのひとびとに語り伝えるようにと、
わたしに命ずるのだ。なぜなら、ほかのひとびとも信じないからだ、
喜びは憂いや怒りよりも不滅であって、
日々はつねに終りには金色(こんじき)の一日であるということを。」



「野外へ」より:

「あるいはまた、ほかのひとたちが好むなら、大工が屋根の頂きに立って、むかしどおりに演説をするでもあろう。なぜならば、そういう風習は古いもので、
神々はあまたたびそういうことをするわれらを微笑をもって眺めてきたのだから。」



「パンと葡萄酒」より:

「町は静かにやすらっている。ひっそりと街路に灯(ひ)はともり、
松明(たいまつ)をかざして馬車はときに音立てて過ぎる。
昼の喜びに満ち足りて人々は家路につき、
抜かりのない商人はわが家(や)にくつろいでその日の
損益を思いはかる。忙(せわ)しかった広場には
いまは葡萄も花も手芸の品々もない。
だが 遠くの園からは絃(げん)のひびきがきこえてくる。おそらくは
恋するもののすさびであろうか、それとも孤独な者が
遠い友らを また若き日を 偲んでいるのだろうか。噴泉は
絶えまなくほとばしって、匂やかな花壇を濡らしている。
静かに暮れすすむ空にはいま打ち鳴らす鐘がひびき、
夜警は時の数を告げて過ぎてゆく。
ふと風が起こって林苑の梢をうごかす。
見よ、われらの大地の彫像 月もいま
ひそやかに立ち昇る。思念に酔う夜が
満天の星をちりばめてやってきたのだ。われらのいとなみにはかかわりなく
この驚嘆すべきものは 人間の世に異郷の客としてかがやき出る、
山々の背から、悲愁をおびて壮麗に。」

「この崇高の極みのもの 夜の不思議な恵みは測りがたい。」

「またわれらは、(中略)おのが心魂を隠そうとしても、
(中略)それをなしおおせるものではない、
誰がそれらを圧伏できよう、その喜びを禁じえよう。
神々の焔も 昼となく夜となくわれらに
起てと迫る。だから行こう、(中略)
おのれ固有のものを、たとえそれがどんなに遠くにあろうと 探し求めるために。」
「万人に共通なひとつの尺度は つねに存している。
しかし それぞれの人間にはまたかれ固有のものが授けられている、
そして人はそれぞれ おのれの進みうるところへ進み 行ないうることを行なうのだ。」

「まことに 何をすべきか 言うべきかを
わたしは知らない、そして乏しい時代に詩人は何のためにあるかを。
けれど詩人は(中略)聖なる夜に
国から国へめぐり歩いた酒神の聖なる司祭たちにひとしいのだ。」

「かれこそ地上に留まって 遁れ去った神々の痕跡を
みずから暗黒のなかの神なき人間たちのあいだにもたらすものであるからだ。
古代の人たちが神の子らを予言して歌ったこと、
それは、見よ、われらなのだ、われら 夕べの国の果実のことなのだ。」

「こうしてやさしくすかされて大地の腕のなかにあの巨人らは夢み 眠っている、
あの嫉み深いもの 地獄の番犬ツェルベルスさえも 飲み そして眠っている。」



「帰郷」より:

「そしてさらにいや高く光の上に いと浄(きよ)らの
至福の神は住んで 聖なる光の嬉戲を喜ぶ。
ひそやかに神はひとり住む」

「われわれは しばしば沈黙しないわけにはいかない、
聖なる名称が欠けているのだ。」

「このような憂いを、好むと否とにかかわらず、
歌びとは魂(こころ)のうちにしばしば抱(いだ)かねばならぬのだ、しかし他のひとびとはそうでない。」



「宥和するものよ…… 第三稿」より:

「すなわち見よ、いまは時代の夕べなのだ」


「ライン」より:

「しかし神々の息子たちというものは
最も盲目なものなのだ。人間ならば
おのれの家を知り、けものにも
巣を作るべきところが与えられるが、神々の息子たちには、
いずこへゆくのかを知らないという欠陥が、
経験のない魂のうちに与えられているのだ。

純粋に生じてきたものは謎だ。歌にさえ
この謎を解くことは許されてはいない。なぜならば、
あなたははじまったときのままにとどまるだろう、
どんなに困苦と訓育とが
働きかけようとも。」



「イスター」より:

「いまこそ来たれ、火よ!
われらはこがれる思いで
日を見るのを待っている、」

「ここでは高いところには強い香りがただよい、
猟人(かりうど)が好んでさすらう谷間は
真昼にも唐檜(とうひ)の森におおわれて暗く、
イスターの樹脂の多い樹々からは
その成長の音が聞き取れるのだ。

ところがイスターはほとんど
引っ返してゆくように見え、
わたしには、この川が
東方から来たとしか思えない。」



「ティニアン島」より:

「              花々があるが、
それらは大地によって生れたものではなく、おのずから
ゆるんだ地盤のなかから萌え出るので、
陽の反映であって、それを摘むのは
ふさわしいことではない。
なぜなら、まことに葉もないその花々は
すでに金色(こんじき)をなして立ち、
いささかの用意もなく、
さながら思想のようなのだ。」



「ギリシア 第三稿」より:

「清澄な日々には
光は銀色をなしている。大地は
愛のしるしとして菫(すみれ)の青みをおびている。
取るにたらぬ者のもとにも
大いなるはじめがやってくることもありうる。
日常には人間たちへの愛のために
くしくも神は衣服をまとう。」



「遠くからわたくしの姿が……」より:

「あれはうるわしい日々でした。けれども
そのあとにはわびしいたそがれが訪れたのでした。

あなたはうるわしい世界のなかでまことにひとりぼっちだと、
いつもわたくしにおっしゃいました、愛するひとよ!」



「天から……」より:

「高いところに生える葡萄の下には
階段をなす道がくだり、そこには果樹が花咲きながらかぶさり
荒れはてた垣には香りがただよい、
下には人目に隠されたすみれが萌(も)え出ているのだが、

水はしたたり落ち、そこでは日ねもす
せせらぎがかすかに聞こえる。
しかしこのあたりの村々は
午後のあいだじゅう静まり黙(もだ)している。」



「満足」より:

「ある人間が生を脱却することをえて、
生がどういう感じを持つかを理解するならば、
それは良いことだ。危険から抜け出した者は、
あらしと風を脱出した人間に似ている。」



「断片」より:

「         相違というものは
       よいものだ。おのおのの者が
                      そして各自が
   おのれのものを持っている。」

「いまはじめてわたしは人間を理解する、わたしが人間から遠ざかって孤独のなかで生きているいま!」







































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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