泉鏡花 『鏡花全集 巻十八』

「謀叛も時には、成佛得脱(じやうぶつとくだつ)の捷徑(ちかみち)でござる。」
(泉鏡花 芍藥の歌」 より)


泉鏡花 『鏡花全集 巻十八』

岩波書店 昭和15年12月25日第1刷発行
/昭和50年4月2日第2刷発行
673p 目次1p 
四六判 丸背紙装上製本 貼函
定価2,200円
正字・正かな/本文総ルビ

月報18(16p):
泉斜汀について(伊狩章)/お作のなかから(久保より江)/泉名月蔵 新資料(6) 芥川龍之介の鏡花宛書簡/鏡花小説校異考(十八)(村松定孝)/同時代の批評・紹介(生田長江/里見弴/水上瀧太郎/中谷德太郎)/編集室より/図版2点(春陽堂版「鏡花全集」開口の原稿/「鴛鴦帳」見返し、小村雪岱画)



目次:

鴛鴦帳 (大正7年6月)
芍藥の歌 (大正7年7月)




◆本書より◆


「鴛鴦帳」より:

「「私は思ふが、寐(ね)られない夜(よ)の明方と云ふものは、夢と心と、自分の身體(からだ)と、とろとろと一所に成つて、境(さかひ)が無くなるものらしい。……身體から抜出した魂の有象無象が、恁(か)う木の葉だの、海月(くらげ)だのと同じような形に成つて、目鼻の附(つ)いた金盥(かなだらひ)や、大口開(あ)いた石臼や、角(つの)の生えた石燈籠など、一所に、ふはふはと宙宇(ちゆう)を徜徉(さまよ)ふ。それが東の空の太陽の一條(ひとすぢ)の光明に追はれて、本體(ほんたい)にハツと返る。それ、出て行(ゆ)く時は魂が離れるのだが、歸(かへ)る時は一所に成る。魂と、心と、夢と、自分と一所に成る。正夢などと言ふものは、曉方(あけがた)が多いと云ふよ。」」


「芍藥の歌」より:

「「世間も一皮裏へ廻つて、末生(うらなり)の落(おち)へ來ると、怪しげな繪(ゑ)ででも無くつては、有りさうもねえことがザラだからね。」」

「「一體(いつたい)、繪なぞと言ふものは、批評はすべしだけれども、審査はすべきもので無いのです。神樣ならば知らない事、おなじ人間同士、批評は出來ても審査の出來よう譯(わけ)がない。するのは罰當(ばちあた)りです、僭越(せんゑつ)です。――されるものも不心得です。」」

「峰(みね)は眉を展(ひら)いて言下に應(おう)じた。
 「縁を切ります。――絶縁するんです。」」
「「金子(かね)で肯(き)かなければ逃亡だ、遁(に)げるんです。」
 「執念(しふね)く追へば、」
 「隱れます。」
 「見出して迫りましたら、」
 「抵抗します。」
 「對手(あひて)も暴力を用ひますと。」
 「殺して了(しま)ひます。」
 と峰は自若(じじやく)として言つた。」

「「自分は、自分の意志だけで、私なら決行します、が、人に教へる事ではありません、教へないのではない、教へられないのです。」」

「「否(いゝえ)、(男の御方が……女冥利に……もしお二方ある時は、落魄(おちぶ)れた人の方へ、必ず其の身を差上げるものだよ、)と母が何時も申しました。」」

「「娘が言ふには、(新道(しんみち)の幾世(いくよ)さんを助けるのに、峰さんも私も、もしかお財(たから)がなかつたら、屹(きつ)と人殺しを。峰さんも私も、屹と人殺しをするわね。)此の意氣を買はずんば――これから強請(ゆす)るんだ。」」

「「謀叛も時には、成佛得脱(じやうぶつとくだつ)の捷徑(ちかみち)でござる。」」

「人間のでない、正眞(しやうしん)の鬼は、拜(おが)めば佛樣(ほとけさま)、」






























































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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