『澁澤龍彦全集 3』

「ふつう、人間は労働を真面目なものと考え、遊びを不真面目なものと考えがちであるが、この関係はむしろ逆ではあるまいか。砂場で砂の山をつくっている子供の遊びほど、真剣な仕事があるだろうか。会社で事務をとっているサラリーマンの労働ほど、不真面目な遊びに似た労働があるだろうか。」
(澁澤龍彦 「ユートピア あるいは遊びのすすめ」 より)


『澁澤龍彦全集 3』
犬狼都市/毒薬の手帖/補遺 1962~63年

編集委員: 巖谷國士/種村季弘/出口裕弘/松山俊太郎

河出書房新社 1993年8月1日初版第1刷印刷/同12日発行
452p 口絵
20.6×15.6cm 丸背布装上製本 貼函
定価5,800円(本体5,631円)
装幀: 菊地信義

月報3(16p):
インタヴュー「妹からみた兄龍彦 2」澁澤幸子(著者の妹) 聞き手: 出口裕弘/図版(モノクロ)11点



小説集『犬狼都市』は1962年4月、桃源社刊。
手帖シリーズ②『毒薬の手帖』は1963年6月、同じく桃源社刊。


帯裏:

「井上究一郎 全集刊行に寄せて 彼の宇宙に遊ばれんことを
 澁澤龍彦は彼が残した傑作中の傑作『唐草物語』の「あとがき」のなかで、アラベスクという言葉をボードレールへの意識の底から選びだしたと書いている。『唐草物語』の作者の内部には、怪奇幻妖の次元をボードレール的な「精霊=少年」が自由に駆け抜けているという気がする。私は特に「鳥と少女」「金色堂異聞」の二つの世界に感銘を覚えるが、全集の読者がカタカナ表記や和漢語のアレルギーから脱却して融通無碍に彼の宇宙に遊ばれんことを願ってやまない。」



目次:

口絵 1964年2月(35歳)

犬狼都市(キュノポリス)
 犬狼都市(キュノポリス)
 陽物神譚
 マドンナの真珠
 あとがき(文庫版)

毒薬の手帖
 序
 古代人は知っていた
 血みどろのロオマ宮廷
 マンドラゴラの幻想
 ボルジア家の天才
 聖バルテルミイの夜
 ふしぎな解毒剤
 ブランヴィリエ侯爵夫人
 黒ミサと毒薬
 毒草園から近代化学へ
 砒素に関する学者の論争
 さまざまな毒殺事件
 巧妙な医者の犯罪
 集団殺戮の時代
 新版のためのあとがき
 あとがき(文庫版)

補遺 一九六二―六三年
 哲学小説・エロティック革命――二十一世紀の架空日記
 東野芳明『パスポートNO. 328309』(書評)
 伊達男とズボン――その性誇張
 エロティシズム断章 I
 諸神混淆について――エロティシズム断章 II
 異端について――エロティシズム断章 III
 ルネサンス・アラベスク――エロティシズム断章 V
 ルネサンス・アラベスク――エロティシズム断章 VI
 ユートピアとは「探す」ものか?
 ハダカの芸術家
 J・K・ユイスマン『さかしま』初版 あとがき
 マゾヒズム(「術語(ことば)の手引き」)
 ピエール・ボエチュオ『不可思議物語』(「ふる本発掘」)
 空間恐怖について
 サド裁判に無罪となって
 彼女は虚無の返事を怖れる
 プロゼルピーナの地獄について
 人形塚
 桃源社版『マルキ・ド・サド選集』発刊にあたって
 桃源社版『マルキ・ド・サド選集』第一巻 あとがき
 桃源社版『マルキ・ド・サド選集』第三巻 あとがき
 奇怪な日本語
 空想のアンソロジー――フランス幻想文学の系譜
 ナルシストの結合
 加藤郁乎の握手と写楽
 R・レヴィンゾーン『心臓――この未知なるもの』(書評)
 悪魔の復権のために
 ルドンの「聖アントワヌの誘惑」
 東京感傷生活――ふたたび焼跡の思想を
 わたしの夢
 ユートピア あるいは遊びのすすめ

解題 (出口裕弘・種村季弘・巖谷國士)




◆本書より◆


「毒草園から近代化学へ」より:

「近代の法医学の発達によって、毒物検出の方法もいちじるしく進歩したが、それと同時に、かつては想像も及ばなかったような複雑巧緻な毒殺事件や、また毒物そのものの種類の増加も見られるにいたったので、おそらく、科学の進歩と毒殺術の進歩とは、平行しているとしか考えられないのである。」


「集団殺戮の時代」より:

「工場の煙や残滓による大気や河川の汚染、銅や放射能元素の土壌中における蓄積も、近代生活を蝕ばむ怖ろしい作用をおよぼす。技術文明のおかげで、地球上いたるところ、土や水まで不浄になってしまって、真に自然の名に値するものが少なくなってしまったのである。」

「次に紹介するのは、毒と妖術の奇妙な結びつきを示す物語である。ハイチ島からアメリカ本国へ向けて、ヴードゥーの儀式に使われる人形が輸出されたことがあった。ところがこの人形を買った人は必らず毒にやられる。ジョージア州のアトランタでは、この人形に手をふれた五十人の学生たちが、妙な気分の悪さを感じた。人形が不幸をもたらすという信仰があるが、まさかそんな迷信を信ずるわけにも行くまい。というわけで、アメリカの保健省が不審に思って、調査に乗り出した。すると、この人形はカシュー(インド産まめ科の有毒植物)の樹で出来ていることが分った。
 人形の頭には、カシューの油が染みこませてあって、毒性の蒸気が発散しているのだった。人形をいじってから四五十分もすると、もう皮膚が変色してくる。さらに人形の刳り抜かれた眼の中には、子供一人ぐらい楽に殺せるほどの、アブリンという毒が入っていた。」



「桃源社版『マルキ・ド・サド選集』 発刊にあたって」より:

「サドは、何百年の時代をへても永遠に古びない稀有な作家である。こんな永遠の「新らしさ」をもった作家もめずらしい。その秘密は、おそらく、サドの作品中にばらまかれた激烈な「毒」である。現代という閉塞的な時代にあって、毒くらい美味しい御馳走はない。」


「ユートピア あるいは遊びのすすめ」より:

「ふつう、人間は労働を真面目なものと考え、遊びを不真面目なものと考えがちであるが、この関係はむしろ逆ではあるまいか。砂場で砂の山をつくっている子供の遊びほど、真剣な仕事があるだろうか。会社で事務をとっているサラリーマンの労働ほど、不真面目な遊びに似た労働があるだろうか。」



























































































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難破した人々の為に。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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