『稲垣足穂全集 第十一巻  菟東雑記』

「決心しないことも仲々に重要である。」
(稲垣足穂 「糸屑巻きタルホノオト」 より)


『稲垣足穂全集 第十一巻 
菟東雑記』

Classiques de Inaguaqui Taroupho 11

筑摩書房 2001年8月25日第1刷発行
538p 目次9p 
20.2×14.2cm 
並装(フランス表紙) 本体カバー 函 
定価5,400円+税
編者: 萩原幸子
装幀: 吉田篤弘・吉田浩美(クラフト・エヴィング商會)

月報11 
8p 18.7×11.7cm
タルホの葉巻箱: 世界の果て The End of the World
タルホ・ヴァリアント・セレクション: 天狗考(抄)(初出「作家」昭和33年5月号)
星の声(萩原幸子): きっぱり
 


本全集「凡例」より:

「一、本全集は、稲垣足穂自身が昭和四十三(一九六八)年に作成した目録を基本に編んだものである。
一、改題、増補、改作、合併、編入、改訂をくり返した作品については、その経過を巻末の「解題」で明らかにし、本文には基本的に最終稿とみなされる作品を収録した。」
「一、『稲垣足穂大全』(中略)に稲垣足穂自身が追加訂正を書き込んだものについては、それを最終稿とした。
 また、『大全』以後の『増補改訂 少年愛の美学』にも、刊行後大幅な加筆訂正がなされており、それを最終稿に、「ロバチェフスキー空間を旋りて」は大幅に加筆訂正した生原稿を最終稿とした。
一、表記は、原則として、新字、新かな遣いとした。」



本書「解題」より:

「本巻には足穂が昭和二十五年二月に京都に移ってから晩年までに発表した短篇、中篇のエッセイを収録した。」


目次:

春は曙(あけぼの)の記
兜率上生(とそつじょうせい)
零点哲学
香なき薔薇(ばら)
秋風菟堤曲(とていきょく)
文学者の本分
四次元談義
月への気球 「書き出し」
僕の蕪村手帳
朝日山の山桃の木に想う
夜長
日本バガボー
須弥山(しゅみせん)さわぎ
僕の弥勒浄土(みろくじょうど)
心霊学流行に因(ちな)んで
仏教の将来
蜷(にな)の区域
海と「存在」
酒壜(さかびん)天国
オブジェ・モビール
今は哀しき釜掘りの唄
神の夢
     ☆
雲雀(ひばり)の世界
紅薔薇(べにばら)の小径(こみち)
ボクの剪定法(せんていほう)
永劫流転(えいごうるてん)
二人の女弟子――梁(やな)雅子と山本浅子
庚子(かのえね)所感
オブジェの魅力
梅日和(うめびより)
『一千一秒物語』の倫理
肉体とその自由
聖道門への憧(あこが)れ
『弥勒(みろく)』 「わが小説」
軒近き松原山の記
病院の料理番人の文学
本ぎらい
額縁だけの話
田端時代の室生犀星(むろうさいせい)
武将と飛行機
西山金蔵寺
我が家の女たち
ガス灯へのあこがれ
クリスマスケーキ
 へんな蛍
 散歩しながら
 卓上キネオラマ
 前菜
 アーラビカ夜叉(やしゃ)と世尊との対話
視(み)る!
私は世界の果てからネクタイを買いに来た
世界のはて
『死後の生活』
アフロディテ=ウラニア
アド・キルー「映画とシュルレアリスム」を読んで
無限なるわが文学の道
転がり込んだ百万円の賞金 週間日記
大きな三日月に腰かけて
清貧の魅力
銷夏(しょうか)特別番組
旅順海戦館と江戸川乱歩
わが稲垣足穂小全と読者群
コリントン卿登場――散文詩
     ☆
山風蠱(さんぷうこ)の頃
酒につままれた話
タルホ的万国博感
読書界を裏返した男
銀河鉄道頌(しょう)
神への漸近(ぜんきん)線上
神戸三重奏
中性子星の話
三島ぼし隕(お)つ
ウオぎらい
ユメと戦争
空間の虹色のひずみ
オールドゥーヴル――なつかしの名作から
わたしの神変自在なソロバン
タルホ・ファンタジー自註
貴婦人はアランポエポエとす
加藤郁乎カプリチオ
“慎重にやれ”の意を含み 平木国夫著『空気の階段を登れ』
アドラティ=バウァナ
我が見る魔もの お化けの哲学
「非ユークリッド」との因縁
朔太郎オナニスト
サド侯爵の功績
桃山暮し記
「生」の陰の「犠牲」
“すでに肉体が真理である” 笠井叡「天使論」
「後庭花」雑話
一筆遺書参らせ候
バブルクンドの砂の嵐 新居にはいって
パリティーの崩壊
初っちゃんの話
「ニセモノ」としての美女――わたしの欲望論
窮乏礼賛
「文科」の頃
「GGPG」の思い出
「黒」の哲学
狂気か死にまで行くべし
平和の鷹が平和の天使を悦楽の園へ導く
最近の来信
少年自身
キャプテン・カポロを送る
     ☆
糸屑巻きタルホノオト
タルホ=コスモロジー――同人雑誌「作家」発表作品自註


解題 (萩原幸子)




◆本書より◆


「『一千一秒物語』の倫理」より:

「といって、私は、自分が玄人(くろうと)だなどと夢にも思っていない。玄人になっていたら、そうなった瞬間から、自分の書くものはよし「文学的」ではあっても、どこにも「文学」であることを止(や)めてしまったに相違ない。チェホフの、批評家に対する言葉として憶えている。「この二十五年間、一つとして価値ある指示なく、善い忠告を聴いたことがない。只(ただ)、スカビチェフスキーが印象を残した。こんなものを書いていたら、おしまいには酔態のままで人家の塀(へい)の下で死ぬだろうと」
 芸術家に限らない。人間とは、その純粋な部分では、塀の下で死ななければならぬものなのだ。われわれは誰しも原則的にはそうあるべきだ。これは、「技術」以前の基本的な心がまえである。「歴史」ではなくて、「歴史がそこから始まっている処」に関する知識である。それは Ent-Stand である。「このアトム化と歯車の時代にロビンソン・クルーソーになるためには怠惰(たいだ)と失敗のほかに何の手段も無い」――『成功しない秘訣(ひけつ)』の著者はいうけれど、相当に水増しした云い方だ。そもそも私が思うのに、現代にあって何が最も欠けているかといえば、否定の精神である。それも絶対的な歴史否定の立場である。」



「本ぎらい」より:

「「今は何者も無差別に、たえて何物も欲することなし。我は自らのなお此処(ここ)にありや否やを知らず」
 静寂派のギュイヨン夫人の自叙伝の終りにある言葉だそうであるが、私はこれを増富平蔵訳『ショーペンハウエル随想録』で知ったのである。」



「糸屑巻きタルホノオト」より:

「「私は星が好きです、夜が好きです、悲しいものが好きです、終わりが好きです、無機物が好きです、女でも男でもありません」と書いてよこした、少年のような美少女。」


「タルホ=コスモロジー」より:

「英国の退役海軍中尉で南極探険家のシャックルトン卿が、私の生れた一九〇〇年に次のような新聞広告を出している。本篇を結ぶに当って、この文句を若い文学志望者諸君への餞(はなむけ)としたい――

 MEN wanted for hazardous journey.
 Small wages, bitter cold,
 Long months of complete darkness,
 Constant danger, safe return doubtful.
 Honour and recognition
 in case of success.
 
      1900 Sir Ernest Shackleton」







































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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