ガストン・バシュラール 『大地と休息の夢想』 (饗庭孝男 訳)

「子供に一つの孤独な場所、一つの隅を与えてやりさえすれば、深い生活を与えることが出来るのだ。」
(ガストン・バシュラール 『大地と休息の夢想』 より)


ガストン・バシュラール 
『大地と休息の夢想』 
饗庭孝男 訳


思潮社 1970年2月15日初版第1刷発行/1983年6月15日5刷発行
367p
A5判 並装 本体カバー 函
定価3,200円
装幀: 田辺輝男
Gaston Bachelard : La terre et les rêveries du repos, 1948



バシュラール


目次:

序 
第一章 物質的内密性についての夢想
第二章 争う内密性
第三章 質の想像力 運動化と調性化
第四章 生誕の家と夢幻の家
第五章 ヨナ・コンプレックス
第六章 洞窟
第七章 迷宮
第八章 蛇
第九章 根
第十章 錬金術師の葡萄酒と葡萄の樹

註(原註・訳註)
あとがき (訳者)




◆本書より◆


「第一章」より:

「外的領域を超えると、内的空間はなんと広大なものであろう! この内密的雰囲気はなんと休息感を与えるものであろう! 例えばここに、アンリ・ミショーの『魔法』の忠告の一つがある。《私はテーブルの上に一つのリンゴを置く。ついで私はそのリンゴの中に入る。なんという静謐さであろう!》(中略)そうしてみたいと思うすべての夢想家は、微小化されて、このリンゴの中に住むことになろう。想像力の規準として、夢想された事物は、決してその次元を持たないと述べることが可能である。又、その事物は、どんな次元の中にも固定されることがないのだ。そして真に所有的な夢想、つまりわれわれに対象をもたらす夢想は、極めて小人国的(リリプシアンヌ)夢想である。この夢想こそわれわれに事物の内密性のあらゆる宝庫をもたらしてくれるのである。ここに、真に弁証法的視角、いわば小さい対象の内部は大きいという逆説的な形の中で表現しうるような倒置された視角が現われるのである。マックス・ジャコブが述べたように(中略)《微小なるものは巨大なるもの》である。それを確かめようとすれば、想像力によってそこに住もうとするだけでよい。」
「微小なるものの世界で、夢み、考えようとする時、あらゆるものが大きくなる。無限に小さい現象も、一つの宇宙的性質を帯びる。」

「逆説的方法で、夢想家は自己自身の裡に帰ることも可能である。ペョートル草からつくられた微細な薬を飲んだルイエの被験者は述べている。《私は、私の頬をとおして私の部屋をながめながら、私の口のなかにいます。》このような幻覚は、薬を飲むことによって自己表現が可能になるのである。だが、この幻覚は、普通の夢の中でも稀ではない。」

「シェクスピヤーの中にも、同じ内密性のイマージュを見ることが出来る。ローゼンクランツはハムレットに言う。《あなたの御理想が高いために、デンマークもあなたには牢獄となり、あなたの魂も、ここでは狭すぎるとお感じになるでしょう。》するとハムレットは答える。《とんでもない。私はくるみの殻に閉じこめられても、そこを広いと思い、無限の大宇宙の王だと思うことが出来るのだ……もし悪い夢を見なければ。》」

「このように、微細な想像力は、いたるところに滑り込もうとし、われわれを、単に、われわれの殻の中に戻るようにしむけるばかりではなく、すべての殻の中に入りこみ、そこで真の隠れ場を、内巻的生を、自己の上に身をかがめて生きる生を、要するに休息のあらゆる価値を生きるように誘うのである、ここにジャン・ポール(引用者注: ジャン・パウルのこと)の忠告がある。《君の生の領域を、君の部屋のどの棚をも、どの隅をも訪ねることだ。そして君のかたつむりの最後の、もっとも内密的螺旋の中に住むように身をちぢめることだ。》棲家となる対象の目じるしとは、《すべてが殻である》ということになろう。そして夢見ている存在は、《すべてが私にとって殻である。私はあらゆる固い形態の中でまさしく自分を守ってくれ、あらゆる対象の中で、まさしく守られているという意識を持つ柔らかい物質である》と答えるだろう。」

「内密的には大きいという微小なものの幾何学的矛盾につづいて、その多くの矛盾が内密性の夢想の中に現われる。」
「このような対照的な夢想は、中世の《共通の真理》の中では、力動的に働いているのが感じられる。つまり、輝くような純白の白鳥が、内部では黒さそのものなのだ、と。」
「事実に反して、白鳥の内部は黒い、という断言がたびたび繰返されたのは、それが弁証法的想像力の法則を満足させていたからである。根源的心的現象力であるイマージュは、観念よりも強く現実的経験よりも強いものである。」

「黒い色は《空虚や虚無の色から遠く、寧ろ深い実体を浮き出させる能動的な色彩である。そして、この結果、あらゆる事物の暗がりである》と、又、ミシェル・レーリスは述べている。」



「第五章」より:

「さなぎは、包まれたあらゆる形態の魅力をおのずから備えている。それは丁度、動物の胎児のようなものである。しかし、さなぎが、毛虫と蝶の中間的存在と考えれば、全く新しい価値の領域が出来上る。」
「『我々の時代の黙示録』の中で、ロザノフは、さなぎの神話に一つの寄与を行なった。彼にとって《毛虫と、さなぎと蝶は、心理学的な説明をうけ入れず、宇宙進化論的な説明をうけ入れるのである。(中略)つまり、生きているものはすべて、どんな例外もなく、幾分とも、生と墓と復活の性質をこのように帯びているものである。》」
「ロザノフは、こうして、さなぎとミイラのイマージュの関係を詳細に研究するのである。ミイラとは、まさしく人間のさなぎである。」

















































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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