FC2ブログ

ロード・ダンセイニ 『夢見る人の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「「あの人は人間に対して罪をおかしただけだよ。ぼくらがあれこれいう筋合いのことじゃない」
 「いたわってあげましょうよ」」

(ロード・ダンセイニ 「潮が満ちては引く場所で」 より)


ロード・ダンセイニ 
『夢見る人の物語』
 
中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-2

河出書房新社 2004年8月10日初版印刷/同20日発行
368p 文庫判 並装 カバー
定価850円+税
デザイン: 粟津潔
カバーフォーマット: 佐々木曉
カバーデザイン・彩色: 坂野弘美
装画: シドニー・H・シーム



本書「訳者あとがき」より:

「河出文庫のダンセイニ短篇集第二弾である本書は、The Sword of Welleran (一九〇八年)と A Dreamer's Tales (一九一〇年)の全作品を収録している。既訳のあるものも新たに訳した。また、(中略)原書に収められていたシドニー・H・シームの挿し絵も全点収録した。」


挿絵(モノクロ)19点。


ダンセイニ 夢見る人の物語


カバー裏文:

「現代ファンタジーの源流ロード・ダンセイニの幻想短篇集成、第二弾。大地と同じほど歳を重ね、星々を姉妹とするバブルクンド。海の伝説と化し、若者を魅了するポルタニーズ。謎めいた響きの名を持つ数々の都市が驚異をもたらし、世界の涯では、夢見るものだけが垣間見ることのできる、妖精、英雄、盗賊の物語が繰り広げられる。全二十八篇収録。」


目次:

I ウェレランの剣
ウェレランの剣
バブルクンドの崩壊
妖精族のむすめ
追い剥ぎ
黄昏の光のなかで
幽霊
渦巻き
ハリケーン
サクノスを除いては破るあたわざる堅砦
都市の王
椿(つばき)姫の運命
乾いた地で

II 夢見る人の物語
序文
海を臨むポルターニーズ
ブラグダロス
アンデルスプラッツの狂気
潮が満ちては引く場所で
ベスムーラ
ヤン川を下る長閑(のどか)な日々
剣と偶像
無為の都
ハシッシュの男
哀れなビル
乞食の一団
カルカソンヌ
ザッカラスにて
野原
投票日
不幸な肉体

訳者あとがき (中野善夫)




◆本書より◆


「バブルクンドの崩壊」より:

「そうこうするうち話をする旅人の上に夜の帳(とばり)はおごそかに冷たくおりて、わたしたちは毛布にくるまりバブルクンドの姉や妹である星々に見守られて砂の上に横になった。夜どおし沙漠はさまざまなことを低い声でささやくように語ったが、なにを語っているのかわたしにはわからなかった。ただ、砂にはわかっていて、身をもたげて身もだえてからまた身を低くした。風にもわかっていた。そうして夜が更けてゆくにつれ、砂と風は神聖な沙漠を侵したわたしたちの足跡に気がついて、混ぜかえして掻き消した。そのうち風はやみ砂は安らいだ。やがてまたしても風が立ち砂が舞った。これが幾度もくりかえされた。そのあいだ沙漠はずっとわたしたちにはわかりもせぬことをささやきつづけた。」

「バブルクンドではルビー売りはルビーの歌をうたい、サファイア売りはサファイアの歌をうたいますが、どの宝石にもそれぞれ歌がございましてね、宝石売りはその歌であきなう品を告げ知らせることになっております。
 ところが正午にはこうした喧噪(けんそう)もみな途絶え、市場の宝石売りは木陰を見つけて横たわり、王侯貴族は涼しい場所を求めて宮殿にもどり、ぎらつく大気のなかでバブルクンドはまったき静寂(しじま)につつまれるのでございます。けれども夕刻が迫って涼しくなり、王の楽人のひとりが故郷の夢から覚めて竪琴かなにかの弦に指を走らせますと、その調べとともに、〈歌の島々〉にそびえる山々の峡谷に立つ風の記憶などが呼び起こされたりもいたします。」



「妖精族のむすめ」より:

「少女はまた、通りを人々がのんびり悠々と歩いている様子を眺めた。目には見えないが、彼らの間を縫うように大昔の幽霊たちが彷徨(さまよ)っていて、生きた人間には聞えない声で過ぎ去りしことについてお互いにひそひそと語り合っている。そして東へと通じるあらゆる道の先に、また家々のどんなに細い切れ目からでも、あの壮大な沼地の風景をかいま見ることができた。」

「彼はダマスコを流れるアバナとパルパルという川の話をした。メアリー・ジェインはそんな名前の川があると聞いてうれしくなった。」

「小さきものは一目散に走り、出口を見つけるとランプに照らされた通りに走り出た。
 たそがれどきに生まれた人間には、北か東に向かう道ならどの道でもまっしぐらに駆け抜けていく小さきものを見ることができたかもしれない。その生きものはランプの光のもとでは姿を消し、光のないところに来ると頭上に鬼火を戴いた姿で再び現れるのだ。」
「ロンドンの猫は一匹残らずたそがれどきに生まれたものだから、その生きものが走り抜けるとおびえたような鳴き声を上げた。」



「潮が満ちては引く場所で」より:

「最後の人間がいなくなって数日が過ぎたころ、ロンドンに小鳥たちが舞いおりました。歌が得意なあらゆる種類の小鳥です。わたしに気づいた小鳥たちはそろって小首をかしげて様子をうかがっていましたが、そのうち少し離れたところに飛んでいってさえずりあいました。
 「あの人は人間に対して罪をおかしただけだよ。ぼくらがあれこれいう筋合いのことじゃない」
 「いたわってあげましょうよ」
 小鳥たちはそばまでちょんちょん跳ねてくるとうたいはじめました。」



































































































































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本