ロード・ダンセイニ 『最後の夢の物語』 (中野善夫ほか訳/河出文庫)

「「世界はもうすっかり科学的なものになっているのですよ」
 「それが問題なのです。それを正すのがあなたではありませんか」」

(ロード・ダンセイニ 「名誉会員」 より)


ロード・ダンセイニ 
『最後の夢の物語』
 
中野善夫・安野玲・吉村満美子 訳
河出文庫 タ-1-4

河出書房新社 2006年3月10日初版印刷/同20日発行
616p 「収録作品」1p
文庫判 並装 カバー
定価1,200円+税
ロゴ・表紙デザイン: 粟津潔
フォーマット: 佐々木曉
カバーデザイン・彩色: 坂野弘美
カバー装画: シドニー・H・シーム



本書「訳者あとがき」より:

「本書には、Fifty-One Tales (一九一五年)および The Man Who Ate the Phoenix (一九四九年)収録の全作品、くわえて In the Land of Time And Other Fantasy Tales (二〇〇四年)で始めて単行本に収録された作品の中から幻想的な味わい、あるいは不思議な味わいのある作品を二篇収録した(発表年は一九四七年と一九五二年)。」


ダンセイニ 最後の夢の物語


カバー裏文:

「不死鳥を食べて幽霊や妖精を見る不思議な力が備わった男の顛末を描いた中篇「不死鳥を食べた男」を表題作とする本邦初紹介の短篇集に、稲垣足穂に絶大な影響を与えた、日常の中に神話的世界が混ざり合うコント集『五十一話集』を初の完全版で合わせて収録。
ロード・ダンセイニの幻想短篇集成全四巻、遂に完結!」



目次:

I 五十一話集
 あいびきの約束
 カロン
 パンの死
 ギゼーのスフィンクス
 めんどり
 風と霧
 筏づくり
 鳶職人
 連れの客
 〈死〉とオデュッセウス
 〈死〉とオレンジ
 花の祈り
 〈時〉と職人
 小さな町
 草だに生いぬ野
 蛆と天使
 歌もたぬ国
 最新のもの
 煽動政治家と娼婦
 巨大な罌粟
 薔薇
 金の耳飾りの男
 カルナ=ヴートラ王の夢
 嵐
 ひとちがい
 兎と亀の駆けくらべの真相
 不滅なる無比の者たち
 教訓的小話
 歌は還りて
 街角に春が
 敵がスルーンラーナを訪いし事の次第
 勝ち目のないゲーム
 ピカデリーを掘る
 劫火のあと
 都
 〈死〉の糧
 哀しき神像
 テーベのスフィンクス(マサチューセッツ州にて)
 報い
 リーフィグリーン街の災い
 霧
 畑づくり
 ロブスター・サラダ
 流浪者たちの帰還
 〈自然〉と〈時〉
 くろうたどりの歌
 使者
 背の高い三人の息子
 駆け引き
 成れの果て
 パンの墓碑
 詩人、地球とことばを交わす

II 不死鳥を食べた男
不死鳥を食べた男
林檎の木
皆の仕事が知られた町で
薔薇の迂回路
老人の話
いかにして鋳掛け屋はスカヴァンガーに到ったか
オパール鏃
スルタンの愛妾
カーシュのスルタンの血統
警官の予言
森を吹く風
虎の毛皮
ジュプキンス氏との邂逅
悪夢
マルガー夫人
選択
ローズ・ティベッツ
当世の白雪姫
帰還
狂った幽霊
理由
無視
リリー・ボスタムの調査
第三惑星における生命の可能性
オールド・エマ
如何にしてアブドゥル・ディンが正義を救ったか
最初の番犬
チェス・プレイヤーと金融業者ともう一人
名誉会員
実験
金鳳花の中を下って
悪魔の感謝
晩餐後のスピーチ
言葉ではいい表わせないもの
ポセイドン
九死に一生
犬の情熱
記憶違い
四十年後
鉄の扉
大スクープ

III その他の物語
妖精助け
忘れ得ぬ恋

訳者あとがき (中野善夫)




◆本書より◆


「都」より:

「「あの都にはなにか恐ろしいことが降りかかる運命にちがいない。詩人や芸術家は虫の知らせでこっそり逃げ出したんだ。ふつうの者には虫の知らせなんぞないのだろうさ」」


「帰還」より:

「わたしはほんとうに遠いところから、この芝生を再び眼にするために、ここに建つこの古い屋敷を眼にするために帰って来たのです。迂回するようにドアへと向かうと、ドアに嵌め込まれたガラスが虚ろにわたしを見返していました。その後ろには鎧戸があって、しっかりと鍵がかかっていました。そこにいる犬がわたしのほうを見ました。玄関の前に置いてある樽の中で腹ばいになって入口を護っていた犬が、不意にわたしを見て吠えたのです。それでも、屋敷の中からは何の音も聞こえず動きも感じ取れません。長い旅の終わりが近づいてきていることが判りました。ここの二階の部屋への通路にある楢材の羽目板には、奇妙な古(いにしえ)の王の彫刻があって、年月に黒ずみ、かつてわたしの子供部屋だった部屋へと通じる廊下を端から端まで暗くしていました。そのとき、この装飾が彫り込まれている楢材がわたしの旅の終着点だと知りました。屋敷に入ると、犬がまた吠えました。
 眼前は何もかもまっ暗でしたが、そこによく知っている階段がありました。明かりは必要ありませんでした。その階段の一段一段、曲がり具合も知り尽くしています。それぞれの段の板が軋んでたてる音の響きの違いまでも。わたしは階段を一気に上がりました。あの犬は今や長い震えるような声で吠えていました。二階へ上がると、暗い古い廊下がありました。変な顔をした古の首があって、わたしを見つめていて、長い旅がはじまってから初めて受けた歓迎のように思えました。犬の吠える声がますます大きくなって、とうとう屋敷の人を起こしてしまったようです。遠くで足音がするのが聞こえてきました。その足音はわたしのほうへと向かって来ていました。」
「少し離れたところのドアが開きました。足音が近づいてきます。蝋燭を手に持った女の人が廊下を歩いてきます。ゆっくりと、不安そうに辺りを見回しんがら。ちょうどそのとき、村の古い教会の塔から、真夜中の鐘の音色が霧の中を越えて聞こえてきました。その瞬間、百年が終わったんだという感じがしました。」











































































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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