中野美代子 訳 『西遊記 (九)』 (岩波文庫 旧版)

「「やつらが解散したのをたしかめたところで、唐僧をひっぱり出し、たたいてこま切れにしてから、茴香(ういきょう)を加え煎(いた)めましょうよ。いい香りのするやつを、みんなでひと切れずつ食べたら、長生きできますぜ」」
(中野美代子訳 『西遊記 (九)』 より)


中野美代子 訳 
『西遊記 (九)』
 
岩波文庫 赤 32-020-9

岩波書店 1997年11月17日第1刷発行
387p
文庫判 並装 カバー
定価660円+税
カバー: 杉松欅
カバー写真: 小笠原周



岩波文庫旧版『西遊記』全十冊。(一)~(三)が小野忍訳、(四)以降が中野美代子訳。
本文中挿絵(モノクロ)20点。


西遊記 (九)


カバーそで文:

「三蔵の凶星はいまだ消えず。ひとり無底洞にさらわれ、めかしこんだ女怪になまめかしく迫られる。ようやく難を逃れた先は滅法国。そこでは、和尚一万人を殺すという国王の願掛けが、あと四人で満願になるところ。一行は頭巾であたまをつつみ、長持にもぐりこむ。」


目次:

第八十一回 鎮海寺にて心猿(ごくう) 怪を知ること/黒松林にて三衆(でしたち) 師を探すこと
第八十二回 女怪 陽(おとこ)を狙(ねら)うこと/三蔵 道を護ること
第八十三回 心猿(ごくう) 丹頭を識(し)りたること/〓(漢字: 女+宅)女(たじょ) 本性に還(かえ)りたること
第八十四回 祈祷は滅(めっ)し難く大覚を円(まっとう)すること/法王は正を成し天然を体すること
第八十五回 心猿(ごくう) 木母(はっかい)に妬(や)きもち焼くこと/妖王 三蔵を呑まんと計ること
第八十六回 木母(はっかい) 威を助けて怪物を証(あか)すこと/金公(ごくう) 法を施して妖邪を滅(ほろぼ)すこと
第八十七回 鳳仙(ほうせん)郡 天を冒(おか)して雨を止めること/孫大聖 善を勧(すす)めて霖(あめ)を降らすこと
第八十八回 三蔵 玉華に到り法会(ほうえ)を施すこと/心猿(ごくう) 木母(はっかい)と共に門人を導くこと
第八十九回 黄獅の怪 虚(むな)しく釘鈀(まぐわ)宴を設けること/金(ごくう)木(はっかい)と土(ごじょう) 計りて豹頭(ひょうとう)山を閙(さわ)がすこと
第九十回 師と獅 授受するは同一に帰すること/道と禅 纏繞(からみつき)により九霊を鎮めること

訳注



西遊記 (九)1



◆本書より◆


「第八十六回」より:

「悟空がそのホールを飛びながら、あちこちながめまわしたところ、脇に小さな門がありました。しっかり鍵がかかっているので、すきまからもぐりこんでいきますと、ひろい庭になっています。かすかに泣き声がきこえますので、まっすぐ奥へと飛んでいきました。すると、こんもりとした大木の下に、だれかふたり、しばりつけられています。そのうちのひとりは、ほかならぬ三蔵ではありませんか。よろこびのあまり、つい本相を現わしてしまった悟空が、
 「お師匠さま!」
と声をかけますと、三蔵もわかって、涙をこぼしながら、
 「悟空や、来てくれたか。さあ、はやく助けておくれ」
 「しーっ。名前を呼ぶのはやめてください。すぐそこに、だれかいますからね。うっかりばれたらことです。(中略)妖怪のやつらときたら、あなたを食べてしまったと言って、にせの生ま首でおれたちをだましたんです。こっちも、やつらとさんざん戦っていますから、ご安心を。もうしばらく辛抱してくださいよ。妖怪めをやっつけたら、縄をほどきにきます」
 悟空は呪文をとなえ、からだを揺(ゆ)するや、またもや羽蟻に化けました。中央ホールにもどり、梁(はり)の上にぴたり貼りついて見ておりますと、傷を負っていない小妖どもが集まって、わいわいがやがや、うるさくさわいでおります。なかの一匹が、妖王のまえにとび出し、
 「大王さま、やつらは、ふさいだ門をぶちこわすことができないものですから、あきらめて、にせ生ま首を墓に葬りました。今日とあした、まるまるふつか泣いて、あさって死後三日目の招魂をすませたら、いずれにしても立ち去るでしょう。やつらが解散したのをたしかめたところで、唐僧をひっぱり出し、たたいてこま切れにしてから、茴香(ういきょう)を加え煎(いた)めましょうよ。いい香りのするやつを、みんなでひと切れずつ食べたら、長生きできますぜ」
 すると、べつの小妖も手をたたいて、
 「だめ、だめ! やっぱり蒸(ふか)したほうがうまいぞ」
 べつの小妖、
 「煮れば、薪(たきぎ)の節約になるぞ」
 また、べつのやつ、
 「これは珍味なんだから、塩漬けにすれば、長くたのしめるぞ」
 梁の上の悟空、もうカーッとあたまにきて、
 「てめえら、師匠になにか恨みでもあるのか。食う算段ばかりしやがって」」









































































































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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