玄奘 著/水谷真成 訳 『大唐西域記』 (中国古典文学大系 22)

「外道(げどう)の服飾はごたごたして変わった仕立てである。あるものは孔雀(くじゃく)の羽根を衣(き)たり、あるものは髑髏(どくろ)の瓔珞を飾ったり、あるものは衣服をつけず露形であったり、あるものは草や板で体を掩(おお)ったり、あるものは髪を抜き髭(ひげ)を切ったり、あるものは鬢(びん)をばさばさにし、椎髺(さいづちまげ)にしたり、衣裳に定めもなく、赤白不定である。」
(玄奘 『大唐西域記』 より)


玄奘 著/水谷真成 訳 
『大唐西域記』
 
中国古典文学大系 22

平凡社 昭和46年11月27日初版第1刷発行/昭和47年9月10日初版第4刷発行
463p 索引5p 目次15p 地図(折込)1葉
菊判 丸背クロス装上製本 貼函
定価1,600円
装幀: 原弘

月報 48 (8p):
『大唐西域記』の新訳に寄せて(榎一雄)/砂漠の王座(森豊)/劉師培をめぐる人々(二)(丸山松幸)



本書「解説」より:

「『大唐西域記』一部十二巻の書は唐僧玄奘(げんじょう)法師が、太宗・貞観三年(六二九)八月渡印のため長安を出発してより、十九年(六四五)正月長安に帰朝するまで、実に前後十有七年の間に、自ら体験し見聞した西域・インドの季候・風土・民族・習俗・言語・境域・物産・伝説等、諸般の事項を記したかれの「志記」(記録)に基づいて編纂された「地志」(地誌)である。」


本文中図版(モノクロ)多数。


玄奘 大唐西域記1


目次:

凡例



巻第一 
 序
 一 古代印度の世界像(須弥山説)
 二 贍部洲の四主
 三 諸国の異俗
 四 胡人の習俗
 五 阿耆尼国
 六 屈支国
 七 跋禄迦国
 窣利
 八 笯赤建国
 九 赭時国(石国)
 一〇 〓(漢字: りっしんべん+市)捍国
 一一 窣堵利瑟那国
 一二 颯秣建国(康国)
 一三 弭秣賀国(米国)
 一四 劫布〓(漢字: 口+旦)那国(曹国)
 一五 屈霜你迦国(何国)
 一六 喝捍国(東安国)
 一七 捕喝国(中安国)
 一八 伐地国(西安国)
 一九 貨利習弥伽国
 二〇 羯霜那国(史国)
 〓(漢字: 者+見)貨邏
 二一 〓(漢字: 口+旦)蜜国
 二二 赤鄂衍那国
 二三 忽露摩国
 二四 愉漫国
 二五 鞠和衍那国
 二六 鑊沙国
 二七 珂咄羅国
 二八 拘謎〓(漢字: こざとへん+施のつくり)国
 二九 縛伽浪国
 三〇 紇露悉泯健国
 三一 忽懍国
 三二 縛喝国
 三三 鋭秣〓(漢字: こざとへん+施のつくり)国
 三四 胡寔健国
 三五 〓(漢字: 口+旦)剌健国
 三六 掲職国(〓(漢字: 者+見)貨邏国南境)
 三七 梵衍那国
 三八 迦畢試国
 
巻第二 
 一 印度総説
 北印度
 二 濫波国(北印度の境)
 三 那掲羅曷国(北印度の境)
 四 健駄邏国(北印度の境)

巻第三
 一 烏仗那国
 二 鉢露羅国
 三 〓(漢字: 口+旦)叉始羅国
 四 僧訶補羅国
 五 烏剌尸国
 六 迦湿弥羅国
 七 半笯蹉国
 八 曷邏闍補羅国

巻第四
 一 磔迦国
 二 至那僕底国
 三 闍爛達羅国
 四 屈露多国
 五 設多図盧国
 中印度境
 六 波理夜〓(漢字: 口+旦)羅国
 七 秣菟羅国
 八 薩他泥湿伐羅国
 九 窣禄勤那国
 一〇 秣底補羅国
 一一 婆羅吸摩補羅国
 一二 〓(漢字: 貝貝+隹)霜那国
 一三 堊醯掣〓(漢字: 口+旦)羅国
 一四 毗羅刪拏国
 一五 劫比他国
 
巻第五
 一 羯若鞠闍国
 二 阿踰陀国
 三 阿耶穆佉国
 四 鉢羅耶伽国
 五 憍賞弥国
 六 〓(漢字: 革+卑)索迦国

巻第六
 一 室羅伐悉底国
 二 劫比羅伐窣堵国
 三 藍摩国
 四 拘尸那掲羅国
 
巻第七
 一 婆羅痆斯国
 二 戦主国
 三 吠舎釐国
 四 弗栗恃国
 五 尼波羅国

巻第八
 摩掲陀国上
 一 概観
 二 波吒釐子城
 三 鶏園寺およびその付近
 四 鞮羅択迦伽藍およびその付近
 五 仏陀成道前の史跡
 六 仏陀成道地の史跡

巻第九
 摩掲陀国下
 一 尼連禅河東岸の史跡
 二 旧王舎城付近の史跡
 三 那爛陀付近の史跡

巻第十
 一 伊爛拏鉢伐多国
 二 瞻波国
 三 羯朱嗢祇羅国
 四 奔那伐弾那国
 東印度境
 五 迦摩縷波国
 六 三摩〓(漢字: 口+旦)吒国
 七 躭摩栗底国
 八 羯羅拏蘇伐剌那国
 九 烏荼国
 一〇 恭御陀国
 南印度境
 一一 羯餕伽国
 一二 憍薩羅国
 一三 案達羅国
 一四 駄那羯磔迦国
 一五 珠利那国
 一六 達羅毗荼国
 一七 秣羅矩吒国

巻第十一
 一 僧伽羅国
 二 恭建那補羅国
 三 摩訶剌侘国
 四 跋禄羯呫婆国
 五 摩臘婆国
 六 阿吒釐国
 七 契吒国
 八 伐臘毗国
 西印度境
 九 阿難陀補羅国
 一〇 蘇剌侘国
 一一 〓(漢字: 貝貝+隹)折羅国
 一二 鄔闍衍那国
 一三 擲枳陀国
 一四 摩醯湿伐羅補羅国
 一五 信度国
 一六 茂羅三部盧国
 一七 鉢伐多国
 一八 阿点婆翅羅国
 一九 狼掲羅国
 二〇 波剌斯国
 二一 臂多勢羅国
 二二 阿軬荼国
 二三 伐剌拏国

巻第十二
 一 漕矩吒国
 二 弗栗恃薩儻那国
 〓(漢字: 者+見)貨邏故地
 三 安〓(漢字: 口+旦)羅縛国
 四 闊悉多国
 五 活国
 六 瞢健国
 七 阿利尼国
 八 曷邏胡国
 九 訖栗瑟摩国
 一〇 鉢利曷国
 一一 〓(漢字: 口+四)摩〓(漢字: 口+旦)羅国
 一二 鉢鐸創那国
 一三 淫薄健国
 一四 屈浪拏国
 一五 達摩悉鉄帝国
 一六 尸棄尼国
 一七 商弥国
 一八 朅盤陀国
 一九 烏〓(漢字: 金+煞)国
 二〇 佉沙国
 二一 斫句迦国
 二二 〓(漢字: 貝貝+隹)薩旦那国
 跋
 讃

補注
解説 (水谷真成)
主要参考文献一覧

『大唐西域記』玄奘紀行図 (折込み地図)

索引



玄奘 大唐西域記2



◆本書より◆


「巻一」より:

「竜池 国の東辺にある城の北の天祠の前に、大きな竜池がある。諸竜が形を変えて牝馬にまじわり、竜駒を生ませた。多悪で馭(ぎょ)しにくく、竜駒の子になってやっと馴らして乗ることができた。それでこの国には善馬を多く産出するのである。これを先達の話にきけば、「近いころ金花と号する王があり、政教に明敏な人であった。竜を感服させて乗り物にしていた。王がまさに死なんとするとき、鞭(むち)が竜の耳に触れるや、竜はたちどころにもぐりかくれてしまい、今に至っている」
 とのことであった。城中には井戸がなくその池の水をとっている。そこで竜は人に姿を変え婦人達と会した。婦人達の生んだ子供は勇敢で、脚(あし)の速さは奔馬に追いつくほどであった。このようにして次第に染まり人々はみな竜種となり、力をたのみ威をふるい、王の命令に服さないようになった。そこで王は突厥(とっけつ)を引き入れてこの城の人を殺した。老若みな殺しにしてほとんど生き残るものはなかった。城は今は荒れはてて、人煙もとだえてしまった。」

「先達の話によれば、次のようであった。
 「先ごろこの国の先王は深く三宝を敬っておりましたが、おりしも遠く出かけて仏陀の聖跡を参拝しようと思いたちました。そこで同腹の弟にあとのことを取り仕切るように命じました。その弟は命を受けるや、ひそかに自分の手で男根を断ち切りました。ことの起こらない前に予防しようとしてでありました。これを金の函(はこ)に緘(かん)封し王にたてまつりました。王は、
 『これはどういう意味なのか』
 とたずねますと、弟は、
 『お帰りの日になったらお開(あ)けください』
 とお答えしました。そこですぐさま執事に手渡し、兵隊に守護させました。王が帰ってまいりますと、はたして讒(ざん)言して、
 『王が国を取り締まらせましたのに、[王弟は]中宮の風紀を乱しました』
 と申すものがありました。王は聞くや激怒し、厳罰に処しようとしました。弟は、
 『責めを逃れようというのではありませんが、どうか金函をお開けください』
 と申します。王は弟の言葉のまま開けてよくよく見ますと、なんと切断した男根でした。王は、
 『これは何の異物か? 何を明らかにしようとするのか?』
 といいますと、弟は、
 『王が先ごろ遠方へ行かれますとき、あとのことを取り仕切るように命じられました。私は讒言を受けることもあろうかと思い、男根を切断し、自ら証明しようといたしました。いま、予想どおり兆(きざし)があらわれてきました。どうか御照覧を垂れ賜わらんことを』
 と、お答えしました。」」



「巻三」より:

「ここから復(ふたた)び烏鐸迦漢荼城に還(かえ)り、南して信度(インダス)河を渡る。河は広さ三、四里で西南へ流れている。清く澄み鏡のようで、急流はただよい流れている。毒竜・悪獣がその河の中に穴をつくり住んでいて、もし宝物や珍しい花・果(なりもの)の種子および仏舎利を所持して渡ろうとするものがあれば、その船は多くの場合沈没してしまう。」


「巻四」より:

「石室の東南二十四、五里で大きな涸(かれ)池に至る。傍に窣堵波がある。昔、如来がここを通られた。その時獼猴(さる)が蜜を手に持ち仏に奉った。仏は水で薄めさせて人々に行きわたるようにさせられた。獼猴は喜んで躍(おど)り上がったところ、坑(あな)に落ちて死んでしまったが、この福徳の力で人間界に生まれることができた。」


「巻五」より:

「大施場の東の合流口では、日ごとに数百人の人が自ら溺(おぼ)れて死ぬ。かの国の土俗の言い伝えに、天に生まれることを求めようと思えば、ここで絶食して河中に身を沈め[溺(でき)死す]ればよく、中流で沐浴(もくよく)すれば罪障は消滅するとのことである。こういうわけで、外国や遠方から人々がやって来て集まり止まり、七日間断食をし、その後、命を絶つのである。山に住む猿や野に住む鹿は水辺に群れをなしてたわむれ、あるものは流れに水浴びをして返って行くもの、あるものは絶食して死ぬものなどがある。ちょうど戒日王の大施の時に、一匹の猿が河岸で、群れから離れて、樹の下でじっとして食を絶ち、数日経た後に自ら飢えて死んでしまった。」


「巻十」より:

「この国の南方、海に面して秣剌耶(マラヤ)山がある。高い崖に嶮しい嶺、洞穴のような谷に深い谷川がある。この山の中に白檀(びゃくだん)香樹や栴檀儞婆(チャンダネーヴァ)樹がある。樹の状は白檀に類しており、区別することはできない。ただ盛夏に高い所に登り遠望して、大蛇がまといついている木があればそれと分かる。その木の性が冷たく涼しく感じられるので、蛇がとぐろを巻くのである。遠くから見定めると、矢を射て記号としておき、蛇が冬眠に入った後にはじめて伐採するのである。羯布羅(カルプーラ)香樹は松のような幹に異なった葉をつけ、花も実も殊なっている。伐採したばかりの時には湿っているので、まだ香りはない。木が乾いた後に木目に従い切ると、その中に香りがある。その形状は雲母のようで、その色は氷雪のようである。これがいわゆる竜脳香である。」

















































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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