齋藤晌 『漢詩大系 13 李賀』

「長安(ちやうあん)に男兒(だんじ)有(あ)り、
二十(にじふ) 心(こころ) 已(すで)に朽(く)ちたり。
 長安に一人の男がいるが、まだ二十(はたち)なのに、心はもう朽ち果てている。」

(李賀 「贈陳商」 より)


齋藤晌 
『漢詩大系 13 李賀』


集英社 昭和42年9月30日初版発行
393p 口絵(カラー)i 口絵(モノクロ)viii
A5判 角背布装上製本 貼函
定価1,200円

月報 (4p):
斎藤先生の李長吉の譯注が出ると聞いて(石田幹之助)/思ひ出(浅野晃)/白玉樓中千百五十年(原田憲雄)/次回配本(第二十三回)/図版(モノクロ)1点



本書「解題」より:

「本書は、本文は呉正子本に基き、更に王琦本によって増補した。註解は王琦本が一番詳細で諸家の説を綜合した観があるので、これに準拠し、(中略)諸家の説を自由に取捨して最も妥当と思われるものをとり、決定しがたいものは自家の見解に従った。」


李賀全詩集。斎藤晌(さいとう・しょう)は明治31年生、文学・法学博士。
本文中図版(モノクロ)多数。


李賀 漢詩大系1


目次:


李賀略傳
李賀年譜
解題
李長吉歌詩敍 (杜牧)

卷之一 共五十八首

 李憑箜篌引
 殘絲曲
 還自會稽歌 并序
 出城寄權璩楊敬之
 示弟
 竹
 同沈駙馬賦得御溝水
 始爲奉禮憶昌谷山居
 七夕
 過華清宮
 送沈亞之歌 并序
 詠懷二首
 追和柳惲
 春坊正字劍子歌
 貴公子夜闌曲
 雁門太守行
 大堤曲
 蜀國絃
 蘇小小墓
 夢天
 唐兒歌
 綠章封事
 河南府試十二月樂詞 并閏月
  正月
  二月
  三月
  四月
  五月
  六月
  七月
  八月
  九月
  十月
  十一月
  十二月
  閏月
 天上謠
 浩歌
 秋來
 帝子歌
 秦王飲酒
 洛妹眞珠
 李夫人
 走馬引
 湘妃
 南園十三首

卷之二 共五十五首
 金銅仙人辭漢歌 并序
 古悠悠行
 黃頭郎
 馬詩二十三首
 申胡子觱篥歌 并序
 老夫採玉歌
 傷心行
 湖中曲
 黃家洞
 屏風曲
 南山田中行
 貴主征行樂
 酒罷張大徹索贈詩時張初效潞幕
 羅浮山人與葛篇
 仁和里雜敍皇甫湜
 宮娃歌
 堂堂
 勉愛行二首送小季之廬山
 致酒行
 長歌續短歌
 公莫舞歌 并序
 昌谷北園新筍四首
 惱公
 感諷五首
 三月過行宮

卷之三 共五十六首
 追和何謝銅雀妓
 送秦光祿北征
 酬答二首
 畫甬東城
 謝秀才有妾縞練改從於人 秀才引留之不得後生感憶座人製詩嘲誚賀復繼四首
 昌谷讀書示巴童
 巴童答
 代崔家送客
 出城
 莫種樹
 將發
 追賦畫江潭苑四首
 潞州張大宅病酒遇江使寄上十四兄
 難忘曲
 賈公閭貴壻曲
 夜飲朝眠曲
 王濬墓下作
 客遊
 崇義里滯雨
 馮小憐
 贈陳商
 釣魚詩
 奉和二兄罷使遣馬歸延州
 答贈
 題趙生壁
 感春
 仙人
 河陽歌
 花遊曲 并序
 春晝
 安樂宮
 蝴蝶舞
 梁公子
 牡丹種曲
 後園鑿井歌
 開愁歌
 秦宮詩 并序
 古鄴城童子謠
 楊生靑花紫石硯歌
 房中思
 石城曉
 苦晝短
 章和二年中
 春歸昌谷
 昌谷詩
 銅駝悲
 自昌谷到洛後門
 七月一日曉入太行山
 秋涼詩寄正字十二兄

卷之四 共五十首
 艾如張
 上雲樂
 摩多樓子
 猛虎行
 日出行
 苦篁調嘯引
 拂舞歌辭
 夜坐吟
 箜篌引
 巫山高
 平城下
 江南弄
 榮華樂
 相勸酒
 瑤華樂
 北中寒
 梁臺古意
 公無出門
 神絃曲
 神絃
 神絃別曲
 綠水詞
 沙路曲
 上之囘
 高軒過
 貝宮夫人
 蘭香神女廟
 送韋仁實兄弟入關
 洛陽城外別皇甫湜
 溪晚涼
 官不來題皇甫湜先輩廳
 長平箭頭歌
 江樓曲
 塞下曲
 染絲上春機
 五粒小松歌 并序
 塘上行
 呂將軍歌
 休洗紅
 野歌
 將進酒
 美人梳頭歌
 月漉漉篇
 京城
 官街鼓
 許公子鄭姬歌
 新夏歌
 題歸夢
 經沙苑
 出城別張又新酬李漢

外集 共二十二首
 南園
 假龍吟歌
 感諷六首
 莫愁曲
 夜來樂
 嘲雪
 春懷引
 白虎行
 有所思
 嘲少年
 高平縣東私路
 神仙曲
 龍夜吟
 崑崙使者
 漢唐姬飲酒歌
 聽穎師琴歌
 謠俗

補遺
 靜女春曙曲
 少年樂



李賀 漢詩大系2



◆本書より◆


「李賀略伝」より:

「李商隠はまた、「長吉生時二十七年、位は奉礼太常に過ぎず、時の人も多くこれを排擯毀斥(はいひんきせき)す」としるしている。多くの人から排斥されたというのだ。
 李藩侍郎が李賀の歌詩を集めて、序を書こうと思ってまだできあがらなかった。賀の表兄(母方の従兄)に賀の古馴染の男があったので、これを呼びむかえて、この草稿中にないものを捜(さが)してもらいたいと頼んだ。その人は感謝の言葉を述べ、そのうえ、こうお願いした。「わたしは彼の作品を全部持っています。それに改作している個所も多いのを見ています。お集めになったのをお渡しいただけば、よく見て改正して進ぜましょう」。李公は喜んで原稿を手渡した。何年間もそのままにして消息がなかった。李公は怒ってまた呼びよせて詰問した。その人が言った。「わたしは賀と小さいときから内でも外でもいっしょに生活して、その傲慢で人をないがしろにするのに、腹が立ち、いつか怨みを晴らそうと思っていた。いただいた原稿も、もとからあったのも、いっしょに便所(かわや)のなかに投げすててしまいました」。李公は大いに怒って、叱りつけて追い出した。しばらく溜息をついて口惜しがった。だから賀の作品は後世に伝わるものが少ないという(幽閑鼓吹)。」



「示弟」より:

「病骨猶能在
人間底事無
何須問牛馬
抛擲任梟盧

病骨(びやうこつ) 猶(なほ) 能(よ)く在(あ)り、
人間(じんかん) 底事(なにごと)か無(な)からん。
何(なん)ぞ牛馬(ぎうば)を問(と)ふを須(もち)ひん。
抛擲(ほうてき)して 梟盧(けうろ)に任(まか)さん。

わたしは病気だが、とにかくまだ生きているよ。
人の世には、いろんなことがあるもんだ。
他人に牛といわれようが、馬といわれようが、そんなことは問題じゃない。
賽(さい)を抛(ほう)って丁と出ようが、半と出ようが、それは賽の目次第さ。」



「雁門太守行」:

「黑雲壓城城欲摧
甲光向月金鱗開
角聲滿天秋色裏
塞上燕脂凝夜紫
半捲紅旗臨易水
霜重鼓寒聲不起
報君黃金臺上意
提攜玉龍爲君死

黑雲(こくうん) 城(しろ)を壓(あつ)して 城(しろ)摧(くだ)けんと欲(ほつ)す。
甲光(かふくわう) 月(つき)に向(むか)って 金鱗(きんりん)開(ひら)く。
角聲(かくせい) 天(てん)に滿(み)つ 秋色(しうしよく)の裏(うち)。
塞上(さいじやう)の燕脂(えんじ) 夜紫(やし)を凝(こ)らす。
半(なかば)紅旗(こうき)を捲(ま)いて易水(えきすゐ)に臨(のぞ)む。
霜(しも)重(おも)く鼓(つづみ)寒(さむ)うして聲(こゑ)起(おこ)らず。
君(きみ)が黃金臺上(わうごんだいじやう)の意(い)に報(むく)い、
玉龍(ぎよくりよう)を提攜(ていけい)して君(きみ)が爲(ため)に死(し)せん。

黒雲が陰々(いんいん)と城の上におおいかかって、あわや、城が摧(くだ)けそうだ。たちまち雲のさけまから漏れてくる月の光! 戦士の鎧(よろい)やかぶとにキラキラ反射して金(きん)の鱗(うろこ)のように閃(ひらめ)く。空いちめんにひびく角笛(つのぶえ)の声(こえ)、秋の色が深い。要塞の血のいろの赤土(あかつち)からは夜気が凝(こ)ってたちこめている。
 易水の河のほとりで、粛々(しゅくしゅく)と隊伍をととのえ、紅い旗をなかば捲いて、しずまりかえって待っている。きびしい霜の寒さに、打ち鳴らす鼓(つづみ)の音も凍りついて聞こえる。男のなかの男ぞと頼まれた厚い知遇に酬ゆるときが、いよいよ来たのだ。手に手に剣をひっさげて、いざや死のうよ、君がため。」



「秋來」より:

「思牽今夜腸應直
雨冷香魂弔書客
秋墳鬼唱鮑家詩
恨血千年土中碧

思(おもひ)牽(ひ)きて今夜(こんや) 腸(はらわた)應(まさ)に直(なお)かるべし。
雨(あめ)冷(ひややか)にして香魂(かうこん) 書客(しよかく)を弔(とむら)ふ。
秋墳(しうふん) 鬼(き)は唱(うた)ふ 鮑家(はうか)の詩(し)。
恨血(こんけつ) 千年(せんねん) 土中(どちゆう)に碧(みどり)なり。

わが思いにひかれて今宵は腸もまっすぐに硬直してしまいそうだ。雨がつめたくふりしきるなかを、いにしえびとの香(かお)り高き魂があらわれて、筆をとるわたしを弔いに来たという。秋のさびしい墓場から幽霊が鮑明遠の死者のなげきの詩をうたいだした。死者の恨みをこめた血が凝りかたまり、千年たった今も土の中で碧い玉となって残っているのだ。」



「南山田中行」より:

「秋野明
秋風白
(中略)
石脈水流泉滴沙
鬼燈如漆點松花

秋野(しうや) 明(あきら)かに
秋風(しうふう) 白(しろ)し。
(中略)
石脈(せきみやく) 水(みづ)流(なが)れて 泉(いづみ) 沙(すな)に滴(したた)る。
鬼燈(きとう) 漆(うるし)の如(ごと)く 松花(しようくわ)に點(てん)ず。

秋の野は明るく、
秋の風は白い。
(中略)
石脈(せきみゃく)に水が流れ、
さらさらと、泉(いずみ)が砂に滴(したた)る。
まるで漆(うるし)の燈(ともしび)のような鬼火(おにび)が
松かさにかかって光っている。」



「感諷 其三」:

「南山何其悲
鬼雨灑空草
長安夜半秋
風前幾人老
低迷黃昏徑
裊裊靑櫟道
月午樹立影
一山唯白曉
漆炬迎新人
幽壙螢擾擾

南山(なんざん) 何(なん)ぞ其(そ)れ悲(かな)しき。
鬼雨(きう) 空草(くうさう)に灑(そそ)ぐ。
長安(ちやうあん) 夜半(やはん)の秋(あき)、
風前(ふうぜん) 幾人(いくひと)か老(お)ゆ。
低迷(ていめい) 黃昏(くわうこん)の徑(こみち)、
裊裊(でうでう)たり 靑櫟(せいれき)の道(みち)。
月(つき)午(ご)にして 樹(き) 影(かげ)を立(た)て
一山(いちざん) 唯(ただ)々 白曉(はくげう)。
漆炬(しつきよ) 新人(しんじん)を迎(むか)へ、
幽壙(いうくわう) 螢(ほたる)擾擾(ぜうぜう)。

 終南の山は、なんでこんなに悲しげなんだ。物怪(もののけ)のような雨がさびしい草原にふりそそいでいた。長安の都では、この夜ふけ、秋風が吹くままに、いくたりということなく人々が年老いてゆくことだろう。
 そこはかとなく薄暗い小路をたどってゆくと、なよなよと揺(ゆ)れ動く青いくぬぎの並木道。
 あたまの真上(まうえ)に月が出ていた。木々の影が根本(ねもと)からまっすぐに立っている。まるで山全体が夜明けのように真白く明るい。
 あっ、火の魂(たま)が新しい死人を迎えているのだ。
 おくまった暗い墓穴のまわりに螢(ほたる)がちらちらみだれ飛んでいる。」



李賀 漢詩大系3



























































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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