荒井健 注 『李賀 中国詩人選集 14』

「長安有男兒
二十心已朽
長安(ちょうあん)に男児(だんじ)あり
二十(はたち)にして 心(こころ)已(すで)に朽(く)ちたり」

(李賀 「贈陳商」 より)


荒井健 注 
『李賀 
中国詩人選集 14』

編集・校閲: 吉川幸次郎/小川環樹

岩波書店 昭和34年2月20日第1刷発行/昭和39年9月15日第5刷発行
204p 口絵(モノクロ)2p 折込地図1葉
新書判 角背布装上製本(薄表紙) 機械函
定価220円

付録 (4p):
中国の旧詩の翻訳(荒井健)/杜詩、その註、など(斎藤勇)



本書「解説」より:

「いま見ることのできる李賀の詩は、現行の詩集に二百四十二首、その他二首、計二百四十四首である。(中略)ここにはその三分の一弱、七十四首を選んだ。」
「底本には「宋宣城(せんじょう)本・李賀歌詩篇四巻外集一巻」(民国七年〔1918〕董氏誦芬室影印)を用い、その他諸種のテキストを参照し、底本以外のテキストによった個所には、その書名を注記した。」



李賀 中国詩人選集1


目次:

解説

李憑(りひょう)の箜篌(くご)の引(うた)
残糸の曲
出城 権璩(けんきょ) 楊敬之(ようけいし)に寄す
弟に示す
七夕
春坊正字(しゅんぼうせいじ)の剣子(けんし)の歌
貴公子 夜闌(やらん)の曲
雁門の太守の行(うた)
大堤の曲
蘇小小(そしょうしょう)の歌
天を夢む
唐児の歌
河南府試 十二月楽辞 并(なら)びに閏(じゅん)月 十三首 うち七首
浩歌(こうか)
秋来る
秦王飲酒
洛姝(らくしゅ) 真珠
南園 十三首 うち四首
 (第一巻 五十八首うち二十七首)

金銅仙人 漢を辞するの歌 并(なら)びに序
老夫 玉を採るの歌
黄家洞
南山の田中の行(うた)
酒罷(や)み 張大徹(ちょうだいてつ) 贈を索(もと)む 時に張初めて潞(ろ)幕を效(さず)く
仁和里(じんわり)雑叙 皇甫湜(こうほしょく)
宮娃(きゅうあ)の歌
致酒の行(うた)
感諷 五首
三月 行宮(あんぐう)を過ぐ
 (第二巻 五十五首うち十四首)

昌谷(しょうこく)読書 巴童に示す
巴童答う
将に発せんとす
崇義里 滞雨
陳商に贈る
愁いを開く歌
楊生の青花紫石硯の歌
石城の暁
昼の短きを苦しむ
昌谷の詩
 (第三巻 五十六首うち十首)

艾如張(がいじょちょう)
猛虎の行(うた)
苦篁(くこう) 調嘯引(ちょうしょういん)
払舞歌詞(ふつぶかし)
箜篌(くご)の引(うた)
巫山(ふざん)は高し
相勧酒(そうかんしゅ)
北中の寒
公 門を出づる無かれ
高軒過(こうけんか)
韋仁実(いじんじつ)兄弟の関に入るを送る
洛陽城外 皇甫湜(こうほしょく)に別る
官来らず 皇甫湜先輩の庁に題す
長平の箭頭(せんとう)の歌
江楼の曲
塞下の曲
神絃の曲
野の歌
神絃
将進酒(しょうしんしゅ)
美人 頭を梳(くしけず)るの歌
帰夢に題す
 (第四巻 五十首うち二十二首)

少年を啁(あざ)ける
 (外集 二十三首うち一首)

年譜
跋 (小川環樹)
略図



李賀 中国詩人選集2



◆本書より◆


「解説」より:

「李賀(791~817)は二十七歳で死んだ。中国は詩の王国だけれども、花火のように、一瞬のきらめきと共に、いっさいを燃焼し尽くして倒れる型の詩人はまれなのだ。
 李賀は「鬼才」と呼ばれた。この言葉は、かれの為にできた。他の文学者をさすことは、中国においては、ない。鬼は日本語のオニとはちがい、死者、すなわち亡霊を意味する。鬼才とは、幽霊や妖怪など超自然の事物によって、鬼気せまる神秘な雰囲気をかもし出す異常感覚者をさす。鬼才の語は、かれの死後二百年を経て、宋(そう)代の随筆集「南部新書(なんぶしんしょ)」に、「李白(りはく)を天才絶(最高の天才)と為(な)す。白居易(はっきょい)を人才絶と為す。李賀を鬼才絶と為す。」と、初めて記される。
 死せる美女に対する思慕の念にあふれる「蘇小小(そしょうしょう)の歌」、真夜中の墓場をえがく「感諷(かんぷう)(其の三)」、さまざまの化け物の現われる「神絃曲」等を見よ。そこには極度にロマンチックな幻想の世界が展開される。元来、中国の文学は、夢幻的なイメージの創造を得意とはしない。大半は日常のありふれた経験をテーマとし、その傾向は時代が下るにつれて次第に強まる。かれは中国文学史上孤立した詩人と見なしてよい。」
「しかし、李賀以前にこうした文学が全く存在しなかつたわけではない。紀元前三百年ごろ、揚子江沿岸に生まれた韻文「楚辞(そじ)」の主要な作者・屈原(くつげん)(前343~前278)は、新鮮で豊富な想像力にみちた諸作品を書いたが、かれの残した「離騒(りそう)」こそ、李賀の詩のみなもとであるとは、唐代以来の定説である。」
「激動する自己の心理を、李賀ほど率直に告白した詩人は、古典主義的諦念のためにロマン主義的憧憬(どうけい)が見失われがちな中国にあっては、やはり型破りの存在であった。
 告白されたかれの心理は非常に暗い。この世は悪意にみちているというペシミスティックな感慨がくり返し現われる。」
「李商隠の筆に成る「李賀小伝」の中に、やせた細い体でまゆは濃く爪が長かったと記されているこの詩人は、人格的にも円満などとはおよそ縁のない男であった。その傲慢さをかねがね憎んでいた いとこ が、かれの死後、報復の為に他人の秘蔵していたその遺稿をだまし取って便所へ投げこんだとか、かれの名声を聞いて尋ねて来た元稹(げんじん)(779~831 白居易とならび称せられる中唐の詩人)に、お前なんか何だと、召使に命じて玄関払いを食わせたとか、面白すぎる伝説も生まれているが、李商隠はまた、当時の人がしばしばかれを排斥し中傷したとも記して、あらゆる面で不遇であったその短い一生をいたんでいる。」



「残絲曲」より:

「綠鬢少年金釵客
縹粉壺中沈琥珀

緑鬢(りょくひん)の少年(しょうねん) 金釵(きんさ)の客(きゃく)
縹粉(ひょうふん) 壺中(こちゅう) 琥珀(こはく)沈(しず)む

つややかな髪の若者。金のかんざしの少女。
空色のつぼには酒が琥珀色に沈む。」



「雁門太守行」より:

「黑雲壓城城欲摧
甲光向日金鱗開
角聲滿天秋色裏
塞上燕脂凝夜紫
半卷紅旗臨易水
霜重鼓聲寒不起
報君黃金臺上意
提攜玉龍為君死

黒雲(こくうん) 城(しろ)を圧(あっ)し 城(しろ)摧(くだ)けんと欲(ほっ)す
甲光(こうこう) 日(ひ)に向(むか)い 金鱗(きんりん)開(ひら)く
角声(かくせい) 天(てん)に満(み)つ 秋色(しゅうしょく)の裏(うち)
塞上(さいじょう) 燕脂(えんじ) 夜紫を凝(こ)らす
半(なか)ば巻(ま)ける紅旗(こうき) 易水(えきすい)に臨(のぞ)み
霜(しも)は重(おも)く 鼓声(こせい) 寒(さむ)くして起(おこ)らず
君(きみ)の黄金台上(おうごんだいじょう)の意(い)に報(むく)いて
玉竜(ぎょくりゅう)を提攜(ていけい)し 君(きみ)が為(ため)に死(し)せん

黒雲が城を圧する、城はくだけんばかりだ
よろいの光は日にきらめき、金色のうろこが開いたよう
つのぶえの音(ね)が天に――秋空のなかに――響き渡り
城壁の上の真紅の血潮は、よる、紫に凝固し
半ば巻かれた赤い旗が、易水(えきすい)に向って垂れ
霜が厚く太鼓の音は、寒むざむとして冴(さ)えない
黄金台を築いて招いて下さったあなたのおこころざしに報い
玉竜の剣をひっさげ、あなたの為に死ぬのだ」



「感諷五首 其三」:

「南山何其悲
鬼雨灑空草
長安夜半秋
風前幾人老
低迷黃昏逕
裊裊靑櫟道
月午樹無影
一山唯白曉
漆炬迎新人
幽壙螢擾擾

南山(なんざん) 何(なん)ぞ其(そ)れ悲(かな)しきや
鬼雨(きう) 空草(くうそう)に灑(そそ)ぐ
長安(ちょうあん) 夜半(やはん)の秋(あき)
風前(ふうぜん) 幾人(いくにん)か老(お)ゆ
低迷(ていめい)す 黄昏(こうこん)の逕(みち)
裊裊(じょうじょう)たり 青櫟(せいれき)の道(みち)
月(つき)午(ご)にして 樹(き)に影(かげ)無(な)く
一山(いっさん) 唯(た)だ白暁(はくぎょう)
漆炬(しっきょ) 新人(しんじん)を迎(むか)え
幽壙(ゆうこう) 螢(ほたる) 擾擾(じょうじょう)たり

南山は、どうして、かくも悲しげなのだ。
亡霊のむせび泣きは雨となり、人影もない草むらに降りそそぐ。
長安の、この夜ふけ。秋風に、幾人が生命のほのおを消されつつあるだろう。
ほの暗い、たそがれの小道。
ゆらゆら搖れる、青い くぬぎ の並木。
月が中天にかかって、樹に影はなく、
山はすべて、青白い暁の光。
鬼火が死者の花嫁を迎え、奥深い墓穴にはほたるが群がり飛ぶ。」



「將進酒」より:

「勸君終日酩酊醉

君(きみ)に勧(すす)む 終日(しゅうじつ) 酩酊(めいてい)して酔(よ)え

お勧めする、一日中、徹底的に酔って酔って酔い給え。」































































































































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