白川静 『漢字の世界』 全二冊 (平凡社ライブラリー)

「人はその氏族神の守護する、その産土(うぶすな)神の住む地を離れると、たちまちあらゆる異神邪霊と相対するのである。郷土の外は、邪霊の遍満する世界とされていたのである。」
(白川静 『漢字の世界』 より)


白川静 
『漢字の世界
― 中国文化の原点 1』
 
平凡社ライブラリー 470/し-2-3

平凡社 2003年6月10日初版第1刷発行
313p
B6変型判 並装 カバー
装幀: 中垣信夫
定価1,200円+税



白川静 
『漢字の世界
― 中国文化の原点 2』
 
平凡社ライブラリー 474/し-2-4

平凡社 2003年7月10日初版第1刷発行
354p
B6変型判 並装 カバー
装幀: 中垣信夫
定価1,200円+税



『漢字の世界』は1976年、平凡社「東洋文庫」として刊行され、『白川静著作集』第二巻『漢字II』(平凡社、2000年)に収録、本書はそのライブラリー版。
本文中図版(モノクロ)多数。


「平凡社ライブラリー版 あとがき」より:

「『漢字の世界』は、『字統』において一字ごとに解説した文字を、いわば問題史的に部類を分ち、その系列に従って解説を試みたものであり、その総論的なものである。全書を十二章に分って、その生活の体系に従って基本の観念を概説することを主意としたものであるから、各字について字説として深く立入ることはないが、全体的な統貫は却って得易いのではないかと思う。」


白川静 漢字の世界


「1」 カバー裏文:

「漢字はどのようにして生まれたのか。
甲骨文字・金文資料を駆使して、
「神話」「呪詛」「戦争」「宗教」「歌舞」などの
主題ごとに、漢字のもつ意味を体系的に語る。
古代人の思考に深くわけ入り、
漢字誕生のプロセスを鮮やかに描出した、
白川文字学の真骨頂。」



「2」 カバーうら文:

「象形文字である漢字は、中国古代人の
目に映る「世界」の象徴的表現であった。
『字統』において詳説された漢字の意味を、
本書は系統的・問題史的に語ってゆく。
博識と明快な論理で、単なる字形の解釈を越え、
ことばの始原に行きつく、
無類の「ことば」「ことがら」典。」



「1」 目次:

第一章 文字原始
 漢字の起原
 六書と文字学
 文字事始
 字と名
 
第二章 融即の原理
 神の杖
 左右考
 巫祝王
 祝告と呪詛
 隠された祈り
 みこともち

第三章 神話と背景
 帝の使者
 天上の世界
 河神と岳神
 四凶の地

第四章 異神の怖れ
 断首祭梟
 道路の呪詛
 玉桙の道
 
第五章 戦争について
 鼓うつもの
 〓(漢字: 「阜」-「十」)の字系
 師と学
 虜囚の歌

第六章 原始宗教
 アニミズムの世界
 シャーマニズム
 歌舞の起原
 楽神虁について

図版解説



「2」 目次:

第七章 言霊の信仰
 言語について
 言部雑説
 祝禱の文学
 金匱の書

第八章 原始法の問題
 法の原義
 古代の裁判
 刑罰について
 修祓の儀礼

第九章 聖地と祀所
 高木の神
 社の形態
 奠基について
 宗廟の儀礼
 斎める季女

第十章 生産と技術
 生産の形態
 農耕儀礼
 都邑の造営
 職能者について

第十一章 世に在りて
 家族関係
 感情と表現
 人体の文字
 医術について

第十二章 生命の思想
 寄物陳思
 衣に寄せて
 死者の書
 眞と僊

図版解説
参考文献
あとがき (昭和51年)
平凡社ライブラリー版 あとがき (平成15年)
事項索引




◆本書より◆


「文字原始」より:

「中国には、わが国のアヤツコのような初生の際の儀礼を伝えていない。しかしかつてその俗があったことは、産・彦・顔などの字形によってこれを確かめることができる。初生のときだけでなく、成人の際にも死喪のときにも凶礼のときにも、文身を施す儀礼があった。文身の俗はのち失われ、中国人は断髪文身を異俗とし未開としたが、文関係の文字の形象は、かれらもかつて文身族であったことを示している。」
「文字の発明によって、人類は未開から文明に進んだ。しかし文明を開いた文字は、その背後に長い未開の世界を負うている。象形文字である漢字は、いわば文明以前の、長い集積の上に成り立つものであった。伝承の上でも記録の上でも、のちには失われた遠い過去の世界が、そこに残映をとどめている。それは化石のようにみずから語ることをしないが、われわれはそこから、古代文字の背景にある古代を発掘することができよう。また古代文字成立の基盤をなす、その社会の実態を確かめることができる。この書は、そのことを試みようとするのである。」



「異神の怖れ」より:

「四凶放竄の説話は、このようにして悪神を四裔に放ち、これを辺境に呪禁として封ずる古代の儀礼を説話化したもので、これによって現実の秩序が維持されるのである。」
「四凶放竄の説話にみえる追放の諸儀礼は、すべて境域における邪霊の呵禁、すなわち呪禁の法に関しており、四凶放竄の説話は、その実修方法の典型を示す神話である。それはひとり境界において行なわれるのみでなく、境界に通ずる道路、邑里の外はみな邪神のおそれのあるところであり、その呪禁が行なわれた。人はその氏族神の守護する、その産土(うぶすな)神の住む地を離れると、たちまちあらゆる異神邪霊と相対するのである。郷土の外は、邪霊の遍満する世界とされていたのである。」



「原始宗教」より:

「古代の文化の究極するところは音楽にあった。孔子はかつて斉に遊んで古楽の詔(しょう)を聞き、「三月、肉の味を知らず」([論語]述而篇)というほど心酔した。(中略)シャーマンの喧噪を極める楽鈴の音から、善と美を尽くすと賛歎される古楽章の洋々たる楽音に至る楽の展開のうちに、中国古代の文化の発展の姿をみることができよう。」


「聖地と祀所」より:

「わが国には、(中略)水の女の伝承が、式部説話の形で広く分布する。泉のわくところは聖所とされ、これを守る巫女があった。中国の古代にも、そのような水の女の説話はあったであろう。六朝期の説話集である[捜神後記(そうしんこうき)]に、姑舒泉(こじょせん)の話がみえている。臨城県の南四十里に蓋(がい)山があり、登ること百歩ばかりのところに姑舒泉がある。むかし舒の娘が父と薪をとりに来てそのまま動かなくなり、おどろいた父が家に急を告げに帰るうちに、娘の姿はみえなくなってしまう。母は、娘が音楽を好んだというので、試みに泉の前で弦歌を奏すると、湛(たん)然たる清泉の中から一双の朱鯉があらわれた。いまも弦歌の声を聞くと、泉の水がわきあがってくるというのである。おそらく、水の女の系列に属すべき説話であろう。[太平御覧](巻一八九)に引く[白沢(はくたく)図]に、「井の神を吹簫(すいしょう)女子といふ」とあり、井泉の神は女子とされていたようである。」



















































































































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ひとでなしの猫

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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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