白川静 『中国の古代文学 (二)』 (中公文庫 BIBLIO)

「しかし嵆康は、(中略)強烈な自己主張をやめなかった。」
(白川静 『中国の古代文学 (二)』 より)


白川静 
『中国の古代文学 (二) 
史記から陶淵明へ』
 
中公文庫 BIBLIO B-20-8

中央公論新社 1981年2月10日初版発行/2003年7月25日改版発行
464p 
文庫判 並装 カバー
定価1,190円+税

「『白川静著作集 8 古代の文学』平凡社、二〇〇〇年四月刊
(初出は『中国の古代文学(二)』中央公論社、一九七六年一一月刊)」



本文中図版(モノクロ)多数。


白川静 中国の古代文学


カバーそで文:

「古い国家の羈絆から解き放たれ、自らの運命に生きはじめた孤独な生活者たち。彼ら「士人」は体制への埋没を拒否し、自然の情感に沿って天の道に合しようとした。
「天道是なるか非なるか」と厳しく問うことによる文学精神の成立から、現実を避けて桃源郷を求める創作詩にまでいたる、文化の道筋を探る。」



目次:

第一章 『史記』の世界
 一 運命について
 二 司馬遷父子
 三 『史記』の文章
 四 失われた本紀

第二章 辞賦文学
 一 辞と賦
 二 悲歌の系譜
 三 宮廷の賦
 四 政治と文学

第三章 楽府と古詩
 一 歌謡復興
 二 民衆の歌謡
 三 楽府の展開
 四 『古詩十九首』

第四章 創作詩の胎動
 一 前漢の故事と歌謡
 二 由縁ある歌
 三 悲憤詩と胡笳十八拍

第五章 建安の文学
 一 建安の時代
 二 三曹の文学
 三 七子の徒

第六章 正始と太康
 一 清談の風
 二 阮籍の詠懐詩
 三 嵆康と七賢
 四 太康の文学

第七章 陶淵明と謝霊運
 一 江南の地
 二 帰去来の人
 三 桃花源の記
 四 謝霊運と山水詩

第八章 士人と文学
 一 客と士
 二 文学史的な諸問題
 三 比較文学的な諸問題

参考文献
図版解説
あとがき




◆本書より◆


「第一章 『史記』の世界」より:

「中国における古代的共同体の解体は、最終的には、春秋戦国期以後に急激に進行する。人びとは古い共同体の羈絆から解き放されるとともに、みずからの運命に生きるべき孤独な生活者となる。」


「第六章 正始と太康」より:

「籍(引用者注: 阮籍)は容貌すぐれ、志気宏放、もと済世の志があったが、魏晋の際に天下にこと多く、名士の性命を全うする者少きをみて世事を棄て、酣飲をこととした。酒は忘憂のものといわれるが、かれにとってはそれは世事を絶つ隔壁であり、別に壺中の天地を求めることであった。仕官を避けていたかれが、府中に酒があると聞いて歩兵校尉の職を志願したというのも、ふざけた話であるが、このふざけがかれの身を守る方法であった。かつて晋の武帝が通婚を求めたが、籍は酔うこと六十日、使者は口上を述べることもできずに引きあげた。酒はまた礼俗に反逆し、世事を罵倒する方法であった。かつて母を喪ったが、そのとき人と棊を囲んでいてやめず、局が終ると酒を飲むこと二斗(斗は酒器の名)、ひとたび号呼し、血を吐くこと数升。人の弔うものあるも散髪箕踞、酔うて直視し、嵆喜が弔問にきたときには白眼でこれをみたが、琴酒を携えてきた弟の嵆康に対しては、青眼を以て迎えた。
 かれの奇矯反俗の行為は、その本伝や『世説新語』などに多く伝えられている。書を読めば数か月も門を出ることがなく、山に入っては数日反らず、老荘を好んでときに身の在ることを忘れるので、時人はかれを痴と称した。心に憂のあるときは、駕を命じて途の窮まるところに至り、号哭して反った。」
「世俗的な礼法に対して、これほどの倨傲を示したかれも、人間関係については極度に慎重であった。かれはすでに「人はともに儔(たぐひ)を為すべからず。木石と隣を為すに如かず」といい、「禽生獣死」(「大人先生伝」)することを願って、時事についてはすべて沈黙を守った。」
「おそらく「木石と隣を為す」という荒涼たる孤独と、すべての価値規範を否定する「禽生獣死」の自然態のうちに、かれは生の本源的なものを求めていたのであろう。そのようなかれの心象を示すのが、「詠懐詩」八十二首である。」

「詠懐詩」は、その一首一首が完成された詩とはいえない。(中略)その表現には類想が多く、類句が多く、卒然として詠をなしたとみられるもののみである。その心象は一首の定型のうちに形象化しうるという性質のものではない。それは茫々として覩ることなき寥廓の世界に向って、中夜にひとり放たれる慟哭の詩である。かれの「窮途の哭」が、詩の形をかりて歌われたものにすぎない。しかしその意味で、これほど全的な自己表現の方法も、かつてなかった。「詠懐詩」が群作の形式をとることを必然としたのは、それが十分な意味で思想詩であったからである。」






















































































































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