大林太良 『銀河の道 虹の架け橋』 

「アラスカのエスキモーのところにも銀河は他界への道だという考えがある。あるシャマンは死んだことがあったという。死者の村を訪れ、また旅を続け、銀河に沿って自分の墓に辿り着いた。彼(の魂)はまた自分の肉体に入って生き返り、自分の冒険を語ったという。」
(大林太良 『銀河の道 虹の架け橋』 より)


大林太良 
『銀河の道 虹の架け橋』
 

小学館 1999年7月10日初版第1刷発行
813p 口絵(カラー)4p
A5判 丸背クロス装上製本 カバー
定価7,980円(本体7,600円)
ブックデザイン: 守先正



本書「序文」より:

「この本が目的としたことは、まず何よりも銀河と虹についての伝承や信仰についての資料を全世界から集成して、いわばコルプス(corpus 資料集成)を作ることであった。次に、こうして集まった資料を記述し、それにもとずいていくつかの問題について研究することである。」


大林太良 銀河の道 虹の架け橋1


帯文:

「人びとは天空に
なにを見てきたのか…。
霊魂の道、虹蛇など、「銀河」と「虹」の神話・伝承・信仰を
全世界的視野から集大成。
大林民族学の代表作、書き下ろしで堂々完成。」



帯裏:

「銀河は夜空にかかり、虹は昼間の中空に立つ。銀河は荘厳な白銀の二股の帯であり、虹は華麗な多彩の太鼓橋である。銀河は時間と季節によってその位置を変えはするが、恒常的に存在している。ところが、虹は儚い一過性のものであり、その出現は一つの事件でもある。
このように銀河と虹は対照的な性質をもつ自然現象である。
この銀河と虹は、世界中どこからでも観察でき、人類が遠い昔からそれについて多種多様な観念や伝承を育み、伝え、また拡めてきた。この二つの自然現象について全世界から資料を集め、考察してみるのがこの本で私が行ったことである。
(本文より)」



目次:

序文
序章
 一 なぜ銀河と虹か
 二 研究の歴史と資料
 三 東地域と西地域

第一部 銀河の道
 第一章 東アジア
  一 物としての銀河と季節
  二 牽牛織女とそれ以前――中国古代
  三 天を裂いて出来た天の川――中国近代
  四 銀河占い――中国近代
  五 天の竜――中国近代
  六 スカーフと天の水槽――中国少数民族
  七 星の妹脊(いもせ)の銀河(あまのがわ)――日本
  八 天安河(あめのやすかわ)――日本
  九 頭の禿げた烏と鵲(かささぎ)――朝鮮
  一〇 東アジアまとめ
 第二章 東南アジア大陸部
  一 白象の道・豚の道――タイ系諸族
  二 季節の境――チベット=ビルマ系諸族
  三 東南アジア大陸部まとめ
 第三章 東南アジア島嶼部
  一 不純一な縁辺諸島
  二 ナーガ(竜蛇)か道か――インドネシア
  三 東南アジア島嶼部まとめ
 第四章 オセアニア
  一 航海の目印――メラネシア
  二 銀河は魚――ミクロネシア、ポリネシア
  三 川と他界――オーストラリア
  四 オセアニアまとめ
 第五章 北・中央アジア
  一 天の狩人のスキーの跡と鳥の道――アルタイ系・ウラル系諸族
  二 魚を獲る川――東北アジア諸族
  三 北・中央アジアまとめ
 第六章 北アメリカ
  一 宇宙柱と空の背骨――西部諸族
  二 精霊の道――平原・東部諸族、南西部諸族
  三 北アメリカまとめ
 第七章 中・南米
  一 霊魂の道・タピアの道――北部諸族
  二 循環する川――アンデス諸族
  三 蛇と蠕虫と駝鳥――アマゾン・南部諸族
  四 中・南米まとめ
 第八章 南アジア
  一 水牛の道
  二 天なるガンジス
  三 南アジアまとめ
 第九章 西アジア
  一 神の玉座から流れ出る川
  二 藁盗人の道
  三 西アジアまとめ
 第一〇章 ヨーロッパ
  一 乳の道と宇宙の箍(たが)――古代
  二 聖なる道・巡礼の道――中世・近代
  三 俗なる道・戦争の道――近代
  四 ヨーロッパまとめ
 第一一章 アフリカ
  一 神々の道
  二 蛇との関係・季節の交替
  三 灰と残り火
  四 アフリカまとめ

第二部 虹の架け橋
 第一章 東アジア
  一 二つの虹と白蛇
  二 虹の橋――日本
  三 池から上る虹・雨水を飲む虹――日本
  四 虹と財宝、市(いち)――日本
  五 虹は竜――中国古代
  六 雌雄の虹――中国古代
  七 虹の奇譚――中国六朝以後
  八 虹の黄金・虹の帯――中国近代を中心に
  九 刺繍小町――中国南部少数民族
  一〇 不幸な恋と虹の帯――中国南部少数民族
  一一 死体から発生した虹――中国南部少数民族
  一二 虹に乗って昇天――朝鮮
  一三 東アジアまとめ
 第二章 東南アジア大陸部
  一 水を飲む蛇と悪い死に方――インドシナ
  二 精霊の道・天への梯子――ミャンマー
  三 魚を捕り蟹を食べるモチーフ――アッサム
  四 東南アジア大陸部まとめ
 第三章 東南アジア島嶼部
  一 神霊の橋――台湾、フィリピン
  二 錦蛇が虹に――マレー
  三 鹿と水蛇――西部インドネシア
  四 病気や死の予兆――スラウェシ
  五 虹の両面価値性――東部インドネシア
  六 東南アジア島嶼部まとめ
 第四章 オセアニア
  一 蛇の唾・精霊の道――メラネシア
  二 虹は道・虹は舟――ミクロネシア、ポリネシア
  三 虹蛇と至高神――オーストラリア
  四 オセアニアまとめ
 第五章 北・中央アジア
  一 蛇と下紐――アイヌ
  二 リボンの大蛇――ツングース諸族
  三 天の帯――シベリア諸民族
  四 虹の橋とシャマン――テュルク・モンゴル諸族
  五 人さらいの虹――テュルク・モンゴル諸族
  六 虹と他界・虹と英雄――チベット
  七 北・中央アジアまとめ
 第六章 北アメリカ
  一 上界と下界の通路――北部諸族
  二 虹を指さすな――中部・南部諸族
  三 北アメリカまとめ
 第七章 中・南米
  一 井戸から上る虹蛇――中米・南米北部
  二 双頭の虹蛇――中部アンデス地域
  三 子宮の中の蛇・頭の血から出来た虹――アマゾン地域
  四 虹蛇に変身した少年――チャコ地方
  五 中・南米まとめ
 第八章 南アジア
  一 インドラの弓――全インド
  二 天の腸・天の臍――中部インド
  三 南アジアまとめ
 第九章 西アジア
  一 虹の出現――古代
  二 アラーの帯――近代
  三 西アジアまとめ
 第一〇章 ヨーロッパ
  一 虹の女神――古代
  二 虹の暴飲と金の鉢――近代
  三 ビフレストの橋――北欧
  四 恐ろしい虹・崇めるべき虹――中欧
  五 性の転換――バルカン
  六 多彩なバルト海地域
  七 さまざまな名称
  八 ヨーロッパまとめ
 第一一章 アフリカ
  一 虹蛇と狩猟――中央アフリカ
  二 虹蛇になった祖母――西アフリカ・スーダン
  三 至高神の頸飾り――東アフリカ・南アフリカ
  四 その他さまざまな表象――アフリカ各地
  五 アフリカまとめ

第三部 全体的考察
 第一章 分布の大勢
  一 銀河
  二 虹
 第二章 銀河と虹の文化史
  一 さまざまな銀河の道
  二 流れる銀河
  三 農耕民の銀河・狩猟民の銀河
  四 虹蛇と民族移動
  五 虹の図像学
  六 虹の架け橋
  七 虹の弓の歴史
  八 禁忌の系譜
  九 東南アジアとオセアニア
  一〇 至高神との関係
  一一 天他界と他界への橋
 第三章 銀河と虹のシンボリズム
  一 虹は不気味だ
  二 異常な性・過剰な性
  三 蛇と大地
  四 天と地・銀河と虹の類似と対照
  五 迸る体液・赤と白
  六 虹の色
  七 月は危険だ
  八 月と近親相姦、月を食べる蛇
  九 霊魂の蝶
  一〇 おわりに

図版目録
引用文献
索引



大林太良 銀河の道 虹の架け橋2



◆本書より◆


「第一部 銀河の道」より:


「第一章 東アジア 二 牽牛織女とそれ以前――中国古代」より:

「銀河をはさんでの牽牛織女という表象が生まれるに当たっては、やはり西方からの刺激があったように思われる。もっと限定していうと、内陸アジアを通ってのイランからの影響である。これについて井本英一は次のように論じている。
 
  「七夕の起源的なものは、イラン中世語書『ブンダヒシュン』にみられる。ここでは天河ダーイチャ河をはさんで、原人と原牛が立つ。原人は生命力が弱ると原牛の魂を受けて再生するのである。(中略)」

 そして井本は七夕は再生儀礼だったと考えている。」

「銀河が海に通じている考えとしては『博物志』に載った厳君平の話が有名である。

  「旧説によると、天河と海とは互いに通じているという。ちかごろ、海岸の近くに住む男が、毎年八月になると必ず一艘の浮槎(いかだ)が近所に流れつき、しかもそれが来る時期も帰る時期も一定しているのに気づいた。不思議に思って彼は、この筏の上に家を造り、食料を用意して乗り込んだ。すると筏はひとりでに滑り出した。最初の十日間は日月や星を空に見ることができたが、そのうち昼夜の区別がつかなくなり、さらに十日目ほどして、城廓のような屋敷が立ち並ぶところに着いた。見ればはるか彼方の宮中では機を織る女たちが大勢いる。すると一人の男が牛を牽いてそばに来て、河岸で牛に水を飲ませようとしたが、この男を発見して驚き、どうしてここまで来たか、と尋ねた。男は一部始終を語り、ここはどこかと問うと、牽牛の男は帰って蜀郡の厳君平に問えと答えた。
 男は岸にも上らず、筏に乗ったまま、また地上にもどった。蜀に行って厳君平に告げると、『先日、客星(ふうらい)が牽牛星のところに侵入したのを見たが、月日を計えてみると、それがお前だった』と語った」。

その一方で、黄河の源を尋ねて銀河に達した話にも厳君平が登場する。」
「厳君平は、漢代の成都にいた有名な占い師である。」



「第六章 北アメリカ 一 宇宙柱と空の背骨――西部諸族」より:

「アラスカのエスキモーのところにも銀河は他界への道だという考えがある。あるシャマンは死んだことがあったという。死者の村を訪れ、また旅を続け、銀河に沿って自分の墓に辿り着いた。彼(の魂)はまた自分の肉体に入って生き返り、自分の冒険を語ったという。」


「第二部 虹の架け橋」より:


「第二章 東南アジア大陸部 一 水を飲む蛇と悪い死に方――インドシナ」より:

「ベトナム山地のモン=クメール系およびオーストロネシア系諸民族のところにおける虹の表象は、虹は殺人や悪い死に方と関係があり、虹は水を吸う怪物であり、虹を指すのは危険だというような、まがまがしい不吉なものである。」


「第六章 北アメリカ 一 上界と下界の通路――北部諸族」より:

「アレグザンダーによると、北アメリカでは銀河に並んで、虹の橋もしばしば霊魂の径である。」

「クランツによると、グリーンランドのエスキモー(イヌイト)は、大部分は他界を海の底深くに求めている。しかし他の者は、死者の魂は虹を渡って天に行くのだという。霊魂は大変軽々と星に向かって飛翔するので、旅の第一夜にはもう月に到着し、そこで他の霊魂たちと踊ったり、球戯を楽しむほどである。北極光は、グリーンランド原住民の考えでは霊魂の踊りに過ぎない。」

「ヴァンクーヴァー島のクワキウトル族では、銀河が宇宙柱と同一であるが、時には虹が同じ機能を果たす。つまり、ある地域集団の起源神話によれば、一人の祖先が一人の食人精霊によって誘拐された。この新入者が食人者の家の背後にある溝を見つめると、虹のような外観の何かが、その穴から立っていた。この穴にはあらゆる動物を見ることができた。そのときこの新入者は「これが冬の家の食人者の柱だ。呪的な贈物だから、これを受けとれ」と知らされた。またある部族の物語によると、食人精霊の家の中に聖なる部屋があり、そこには仮面や生命の水などの宝物がある。また食人精霊の柱もある。この柱は虹に似ていて、動物が一杯いる穴の中に立っている。
 食人者自身は世界の北の端に住むと見なされている。アレグザンダーによると、彼は元来は極光(オーロラ)によって典型化されている戦神だったのであろう。
 虹は恐ろしいものである。この観念はいろいろな形で現れる。」




「第七章 中・南米 一 井戸から上る虹蛇――中米・南米北部」より:

「同じくコロンビア南部高地に住むインディオ(中略)も、虹(Etskituns)は、虹が立っているのに外に出た者に、身体中に発疹を生じさせる。そして虹にふつう伴っている微雨に濡れると身体に悪いから、直ちに水浴しなくてはいけないという。虹が立つと、彼らは屋内にとどまり、煙草を虹の方向に吹いたり、吐いたりする。」


大林太良 銀河の道 虹の架け橋3























































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本