『シャルル・ノディエ選集 第四巻 異色小説集』 (篠田知和基 訳)

「ノディエによれば、夢は他の惑星で過ごした日々の思い出、自分のかつての生活の断片的記憶に他ならない。そして、最も幻想的な夢でさえ、かつて土星や金星や水星で起こった出来事に対応しているのだ。」
(アレクサンドル・デュマ 「アルスナールの思い出」 より)


『シャルル・ノディエ選集 
第四巻 異色小説集』 
篠田知和基 訳


牧神社 1976年5月30日初版第1刷発行
337p 
A5判 丸背布装上製本 機械函 
定価2,600円
装幀: 田辺輝男



本書「凡例」より:

「本書の総題を『異色小説集』としたのは編者の責任である。作者自身が小説と呼んでいたものは巻頭の「テレーズ・オベール」だけで、あとは『大革命の思い出』に含められるもの(「リディヴィーヌ」は『コント』に含められている)である。」
「最後の「テルミドール反動」には、「エヒウ同盟」と題した第二部があるが、紙数の都合上割愛した。」



目次:

テレーズ・オーベル
逮捕状その後
パリの牢獄 統領時代
リディヴィーヌ
テルミドール反動

アルスナールの思い出(抄) (アレクサンドル・デュマ/訳: 田中義広)
訳者あとがき




◆本書より◆


「テレーズ・オベール」より:

「それはときには、とても卒直で純真な喜びの陶酔であり、わずかなもので満ち足りる子供のような簡単な幸福の表現だった。でもそれより、現実の対象を持たず、それが表わされる時と所と状況には関係のない考えのなかに迷いこむような、なにかわからない漠然とした悲しみのことのほうが多かった。感情をもったものならだれにとっても、愁いというものは、過ぎ去った苦しみの思い出に由来するとは限らないのかもしれない。それは、ときには恐れている苦しみを試してみようとする心の無意識な動きであったり、あるいはその用意をするようにと言う警告の声なのかもしれない。彼女の首は限りなく細く、重さを支えきれないのか、その上の頭はほとんどいつも、どちらかの肩の上に、気品に満ちた、投げやりな様子で傾いているのだった。そのような習慣はおそらく欠点にはちがいない。でもそれは、どのような完全さをもってしても償うことのできない魅力を持った欠点だった。」


アレクサンドル・デュマ「アルスナールの思い出」より:

「一八二三年、シャルル・ノディエはアルスナール図書館の館長に任命され、それまで住んでいたショワズール通りを引払って新しい住居に落着いた。
 ノディエはすばらしい男である。悪徳というものを知らなかったが、多くの欠点を持合わせ、その欠点も天才的な人間の独創性を構成するたぐいのものであった。彼は浪費家で、無頓着で、怠け者で、それもフィガロが怠け者であったように、好んで怠け者となるのだった。」

「幾度、ノディエは恋をしただろう。それは彼自身にもわからないほどだ。その上、偉大な詩人の常として、いつも彼は現実と夢を混同したものだ。自らの想像が産みだした空想を慈しむあまり、その実在を信じこむに至ったのだ。」

「先にノディエの欠点のことを述べたが、彼の最大の欠点は、少なくともノディエ夫人の目には、蔵書狂である。この欠点はノディエには幸福をもたらしたが、その妻には絶望をもたらした。
 というのは、ノディエが稼いだ金が書物に変わってしまうからである。どうしても家計に必要な二、三百フランを調達しに出かけて、一巻の稀覯書、一部限定版をかかえて帰ってきたことが、いったい幾度繰り返されたことだろうか。」

「ノディエには偏屈なところがあった。白パンよりも黒パンを、銀器よりも錫器を、本物の蝋燭よりも安物の蝋燭を好んだ。」

「ノディエによれば、夢は他の惑星で過ごした日々の思い出、自分のかつての生活の断片的記憶に他ならない。そして、最も幻想的な夢でさえ、かつて土星や金星や水星で起こった出来事に対応しているのだ。」







































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本