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J・シャイエ 『魔笛 ― 秘教オペラ』 (高橋英郎/藤井康生 訳)

「結論を言えば、パパゲーノとモノスタトスは、それぞれ《空気》と《大地》であり、タミーノとパミーナは、《火》と《水》である。彼らの上方では、一定の類縁関係にあるザラストロと夜の女王が、《太陽》と《月》を表わしている。つまり、伝統的な宇宙開闢神話が忠実に描かれている。」
(J・シャイエ 『魔笛――秘教オペラ』 より)


J・シャイエ 
『魔笛 ― 秘教オペラ』 
高橋英郎/藤井康生 訳


白水社
1976年10月25日第1刷発行
1978年10月20日第2刷発行
369p 参考文献・図版解説xiii 
別丁図版(モノクロ)16p
四六判 丸背布装上製本 貼函
定価2,700円



Jacques Chailley "La Flûte enchantee - Opéra maconnique" 1968

本文中図版(モノクロ)多数。


シャイエ 魔笛1


本書「解題」(藤井康生)より:

「本書は、『魔笛』の個別研究という形をとりながら、ユニークなモーツァルト論であり、音楽論でもあるのだが、何よりも言葉と音からなる「芸術作品」にいわば神話的解釈の光を当てるという方法論こそ注目されねばならないだろう。」
「『魔笛』にもそうした「おとぎ話」(神話)の主人公たちのイニシエーションが描かれているが、この作品は不思議な現実性(リアリティ)と具体性をもっている。それは、そのイニシエーションが現実の「フリーメイスン結社」の儀礼を母体としているからである。」



本書「訳者あとがき」(高橋英郎)より:

「モーツァルトが『魔笛』の台本作製に積極的に加わっていたこと、しかも、フリーメイスンの思想により一貫して書かれた台本に作曲を進めたこと、そして、冒頭の和音が女性原理を象徴する《5》の数からなり、この作品が(中略)時代思潮に一歩先んじたフェミニスムのオペラであること等々、シャイエは驚くべき実証と推論のもとに論旨を展開している。
 ザラストロ、夜の女王はいったい何者か、魔法の笛とはなにか、なぜタミーノは日本の狩衣を着て現われるのか、パミーナのもつ短刀はなにを意味するのか、なぜパパゲーノの笛は五つの音を吹くのか、なぜパパゲーナは大地を杖で叩くのか……読者は興味つきない教示をうけるだろう。(なかには、タミーノ=パミーナのカップルに比べて、パパゲーノ=パパゲーナ組があまりにも低い位置しか与えられていないことに驚かれる向きもあろう。)」



シャイエ 魔笛2


目次:

第一部 これまでの経過
 第一章 周知のこと
 第二章 伝説と誤解
 第三章 台本――作者は一人か四人か?
 第四章 台本改作の伝説
 第五章 台本の出所
 第六章 台本とその変転の歴史
 第七章 モーツァルトとジングシュピール
 第八章 十八世紀におけるヴィーンのフリーメイスン結社
 第九章 モーツァルトとフリーメイスン結社
 第十章 『魔笛』にみられるフリーメイスン結社とフェミニスム

第二部 隠された意味を求めて
 第十一章 五つの和音の解釈
 第十二章 台本の宇宙開闢神話
 第十三章 主な登場人物――二つの天体と四大元素
 第十四章 副次的人物
 第十五章 他の諸シンボル
 第十六章 通過儀礼の試練
  一 最初の気絶
  二 試練の許可
  三 作業の開始と入信者たちの討議
  四 反省の部屋
  五 儀礼の試練
 第十七章 台本からスコアへ

第三部 作品分析
 第十八章 概観
  第一幕
   一 タミーノの準備
   二 パミーナの準備
   三 入信式への請願
  第二幕
   一 導入部
   二 儀礼の試練
   三 エピローグ
 第十九章 序曲
 第二十章 第一幕
  第一景――夜の女王の領地
   第一番 導入部――蛇と三人の侍女
   第一番(A) 台詞の場――タミーノの目覚めとパパゲーノの登場
   第二番 パパゲーノのアリア
   第二番(A) 台詞の場
   第三番 タミーノのアリア――肖像画
   第三番(A) 台詞の場――誘拐物語
   第四番 夜の女王のアリア――タミーノの使命
   第四番(A) 台詞の場
   第五番 五重唱――タミーノ、パパゲーノ、三人の侍女
  第二景――ザラストロの城の豪華なエジプト風の部屋
   第五番(A) 台詞の場
   第六番 三重唱
   第六番(A) 台詞の場
   第七番 教訓の二重唱
  第三景――叡知の神殿の前
   第八番 フィナーレ
 第二十一章 第二幕
  第一景――ザラストロの聖なる林
   第九番 僧侶たちの行進
   第九番(A) 台詞の場――入信者たちの討議
   第十番 僧侶たちの合唱を伴うザラストロの祈り
  第二景――反省の部屋
   第十番(A) 台詞の場
   第十一番 僧侶たちの二重唱
   第十一番(A) 台詞の場
   第十二番 五重唱
   第十二番(A) 台詞の場
  第三景――パミーナに対する大地の試練
   第十二番(B) 台詞の場
   第十三番 モノスタトスのクープレ
   第十三番(A) 夜の女王の啓示
   第十四番 夜の女王のアリア――パミーナに対する彼女の呪い
   第十四番(A) 台詞の場
   第十五番 ザラストロのアリア
  第四景――タミーノに対する空気の試練
   第十五番(A) 台詞の場――パパゲーノとパパゲーナに対する水の試練
   第十六番 三人の童子の三重唱
   第十六番(A) 台詞の場――いわゆる空気の試練
   第十七番 パミーナのアリア
   第十七番(A) 台詞の場
  第五景――ピラミッド内部の地下室
   第十八番 僧侶たちの合唱
   第十八番(A) 台詞の場――最後の試練の準備
   第十九番 三重唱――タミーノ、パミーナ、ザラストロ
   第十九番(A) 台詞の場――パパゲーノに対する火と大地の試練
   第二十番 グロッケンシュピールを持ったパパゲーノのクープレ
   第二十番(A) 台詞の場――パパゲーナがパパゲーノの大地の試練に加わる
  第六景――小さな庭園
   第二十一番 フィナーレ
  第七景――タミーノとパミーナに対する火と水の試練
  第八景――再び第六景の庭園
  終景――聖なるものに達したカップル
 第二十二章 結論

付録資料
 I ザイフリートからトライチュケ宛の手紙
 II 『演劇と音楽のための月刊誌』(ヴィーン、一八五七年)の匿名論文



解題 (藤井康生)
訳者あとがき (高橋英郎)

別刷図版の解説と出典
参考文献



シャイエ 魔笛3



◆本書より◆


「台本の宇宙開闢神話」より:

「これまでに述べたことから明らかになってきたように、『魔笛』の内容は、根本的には、《昼》と《夜》、ザラストロと夜の女王、《男》と《女》に象徴される二つの反対概念の争いに焦点がしぼられる。よく言われているように、それが《善》と《悪》、あるいはフリーメイスン結社とその敵の争いであるというのは不当な単純化であり、誤解もはなはだしい。
 実際、夜の女王が、《悪》を表わしているなどとはどこにも言われていない。《夜》は闇であるが、それ自体悪いことではない。しかし、それは《昼》と対立する。(中略)『魔笛』の本質は、《男性界》と《女性界》という二つの世界の争いを象徴的に図解してみせることにある。その争いは、所定の清め式を受けた後に《夫婦(カップル)の秘儀》のなかで新たに完全に結ばれることによって解決されるだろう。」



「結論」より:

「『魔笛』の筋は、好意的な軽蔑をもってたえず非難されてきた「道化役者(アルルカン)のマンドのようにつぎはぎだらけの作り話」であるどころか、見事に構成され、厳密な展開の仕方を見せる象徴的なフィクションである。ただ、そのことに気づくためには、(中略)そのありのままの姿に近づく必要がある。《象徴主義》という言葉は文学史のなかでそれほど明確な意味をもっているわけではないが、『魔笛』はある意味で、『ペレアスとメリザンド』と同じくらい《象徴主義的》であると言ってよいだろう。どちらの作品も、舞台上に見られる事柄は目に見えない現実の形象(イメージ)や反映にすぎず、そのような現実のみが背後で真の行為を構築しているのである。さらにここでは、『ペレアス』以上に、いっさいの論理が、心理ではなく、さまざまのシンボルの連繋から生まれ、いかなるリアリズムも排除されている。そうした諸シンボルを音楽的に表現するにあたり、モーツァルトは、ドビュッシーと同じく、彼の能力のすべてを傾けた。彼の音楽は言葉とその潜在的意味とを詮索し、とどまるところなく音楽の魔術的な力を最大限に発揮している。それは、「人間の情念を変え、憂鬱な人を陽気にし、女嫌いに恋心を起こさせる」に違いない《魔法の笛》である。そして、そのおかげで《男》と《女》は、手に手を取って、《水》と《火》に直面し、こうして《黄金時代》の偉大な統合の光に達することができるのである。」























































































































































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ひとでなしの猫

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うまれたときからひとでなし
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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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