マルグリット・ユルスナール 『青の物語』 吉田加南子 訳

「影が、商人たちの踵にぴったり貼りついている。小さくて黒い影は蝮のようだ。女だけが影を持っていなかった。商人たちはそれを見て、女はたぶん幽霊なのだろうと思った。」
(マルグリット・ユルスナール 「青の物語」 より)


マルグリット・ユルスナール 
『青の物語』 
吉田加南子 訳


白水社
1994年8月25日印刷
1994年9月10日発行
144p 
19.4×12.4cm 
丸背紙装上製本 カバー
定価1,700円(本体1,650円)
装丁: 東幸央



本書「解題」より:

「三篇ともすべて一九二七年から一九三〇年の間に書かれている。一九二七年にはマルグリット・ユルスナールは二十四歳だった。」
「この短い作品集を構成している三篇のうちで『青の物語』だけが未発表である。『初めての夜』は、一九二九年十二月に『ルヴュ・ド・フランス』誌(九巻六号、通巻二十三号)に、マルグ(Marg)・ユルスナールの署名のもとに発表された。「マルグリット・ユルスナール」と署名された『呪い』は、一九三三年一月に『メルキュール・ド・フランス』誌の八二九号(四十四巻)に発表された。」



Marguerite Yourcenar: Conte Bleu, Le Premier Soir, Maléfice, préface de Josyane Savigneau, Editions Gallimard, 1993。


ユルスナール 青の物語


帯文:

「ユルスナールが
若き日に遺した三つの物語
サファイアの青のイメージで彩られた、
西欧とオリエントの幻想的な
からみ合いを描く表題作ほか、いずれも
未発表の短篇を収める。」



帯背:

「初期の未発表短篇」


目次:

青の物語
初めての夜
呪い

解題 (ジョジアーヌ・サヴィニョー)
訳者あとがき――情念の辺境あるいは辺境の情念 (吉田加南子)




◆本書より◆


「青の物語」より:

「彼らは洞窟の中を膝をついて進まなければならなかった。洞窟を外界と繋げているのは、狭くてひび割れた口だけだった。だが深い窪みは初めに考えたよりも広く、目が闇に慣れると、あちらこちらの岩の割れ目の間から、かけらのような空がのぞいているのがわかった。地下の中央部には、水のとても澄んだ湖があった。イタリアの商人が深さを測ろうと硬貨を投げると、その落ちてゆく音は聞こえず、水の表面に沸き立つような泡が立った。まるで不意に目覚めたセイレーンが、青い肺を満たしていた空気をすっかり吐き出したようだった。ギリシアの商人は、貪欲な手を水に差し入れてみた。水は染物屋の桶の中で煮えたぎっている汁のように手首まで染めたが、サファイアを掴み取ることはできなかった。サファイアはまるで、海の水よりも濃いこの水の上を進んでゆく鸚鵡貝の船隊のようだった。すると若い女は、編んだ長い髪をほどいて水に浸した。サファイアは、髪が編む黒い網の、絹のようになめらかな目に引っかかるように捉えられた。」

































































































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