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『日夏耿之介全集 第一卷 詩集』

「夫(か)の狂人のごとく 庶人のごとく 情人のごとく
騷人のごとく わたくしに唯唯在るは
柔軟無碍(むげ)自由自在の有翼(うよく)の繁産(はんざん)の想像のみだ」

(日夏耿之介 「道人跪拜録」 より)


『日夏耿之介全集 
第一卷 詩集』

監修: 矢野峰人/山内義雄/吉田健一

河出書房新社
1973年6月30日初版発行
1991年11月30日3版発行
609p 目次1p 口絵(モノクロ)i
B5判 丸背布装上製本 貼函
装本: 杉浦康平・辻修平
装画: 長谷川潔

月報 1 (8p):
轉身の頌とふたたびめぐりあって (金子光晴)/日夏、辰野兩先生囘想 (小堀杏奴)/椿山莊の夜 (中野重治)/日夏さんのこと (吉田健一)/長谷川潔畫伯の裝畫 (齋藤磯雄)/雅號について (井村君江)/題簽: 樂水子雲



本書「解題」より:

「本卷には日夏耿之介の全詩作品、初出及び校異、詩作品一覽を收録した。」
「習作として作者自身が除いた最初期の作品は省き、短歌、俳句、小唄等の主なものは第八卷で取捨し收録する。」



本文一段組、「拾遺篇」は二段組、「初出及び校異」は三段組。
正字・正かな。


日夏耿之介全集01 01

左側の黒いのが函、右側の黄色っぽいのが筒状の函カバーであります。


日夏耿之介全集01 02

本体表紙と月報であります。


日夏耿之介全集01 03


目次:

轉身の頌
 詩集轉身の頌序
 再刻本の序
 轉身
  宗教
  かかるとき我生く
  Une Jouissance
  喜悦は神に
  非力は猥褻瀆也
  快活な VILLA
  雙手は神の聖膝の上に
  空氣上層
  海の市民
  ある刹那に諷へる歌
  白き雪の上の大反射
  心を析け渙らすなかれ
 黙禱
  黙禱
  吐息せよ
  ある宵の祈願の一齣
  魂は音樂の上に
  心望
  愛は照る日のごとし
  怕しき夜の電光體
  癡者をして
  死と愛と
 晶光詩篇
  (霄は悲しび)
  (地平は紫に暮れ)
  (秋の日 黄にただれ墜ちて)
  (こころの重錘落ちたり)
  (薄暮の街路 銀にひかり)
  (小さき鳩の叫びごゑ!)
  (たましひは夜の月にやどる)
  (かぎりもなき悲哀を汲み取り)
  (大氣はあけぼのに醉ひて)
  (やはらかき雙つの手 半霄をすべり來て)
  (市民の跫音は恆にもの悲しくまろび)
  (靑く哭しめる)
 AB INTRA
  AB INTRA
  汚點
  塵
  靑き隕石
  白馬の歌
  洞穴を穿て
  夜の思想
  紅宵
  王領のめざめ
  驕慢
  夏落葉
  少人に予ふる歌
  騷擾
  雲
  眞珠母の夢
 羞明
  悲哀
  羞明
  訪問
  崖上沙門
  無言禮拜
  血
  嬉戲と横臥
  ある跪拜のときに
  畏怖
  輕舸の歌
  心虚しき街頭の散策者
  海光
  災殃は日輪にかがやく
  死あらむのみ
  花の中の死
  抒情即興
  かげ
  さかしき星
  闇の化怪
  海底世界
  憤怒
  墜ちきたる女性
  野心ある咳
  寂寥
  神領追憶記
  黑瞳
  照る日の下に
  伶人の朝
  靑き神
  漂泊
  遊民序歌
  坂路に於ける感觸
  白き足
  うるはしき傀儡なれど
  翫賞
  涙を喰ふ者
  火の寵人
古風な月
  古風な月
  聖痕
  園囿閑春
  悲劇役者の春の夜
  傳説の朝
  痴情小曲
  神學教授
 哀憐
  挨拶
  春娃と萬象
  愛の王者
  三鞭酒
  房星
  金色のエロス
  太陽は世界を牽く

黑衣聖母
 詩集黑衣聖母の序
 煉金秘義
  道士月夜の旅
  蠱惑の人形
  青面美童
  非哀
  浴船
  夜の誦
 舊約風の世界
  神前に在りて
  尸解
  黑色
  心の一夜
  骨丘の鬼
  しかし笛の音はない夜の事
  庚申宵宮
  虚空護摩壇
 黑衣聖母
  雲の上の聖母像
  黑衣聖母
  生神母畫像の前
  殉情捨離
  賢こき風
  古賢石文
  翔空引
  箴言體
 痛悔の經
  灰の巒
  人生倦怠
  靑き偶像
  儂が身の夜半
  夏の午後
  薄暮の旅人
  儂を制作つた神さまよ
  儂は疑惑の幺微體
  儂が病院
  疾む鳥
  枯坐
  索迷
  吐息するもの影
  左道の末徒
  午後の心
  觀想
  入山
 崇物教徒
  書齋に於ける詩人
  懇ろなる神威
  丘の上の忍默
  八月のミンストレル
  古ながらの鶯
  上代伽藍
  稚狗
  重要の夜
  檞樹及子供
  日曜日
  地に蠢く公孫樹
  炎
  驛遞夫
  光おびただしき異族
 記憶の舌
  葬列
  單音の神の言葉
  安易
  咳
  古簡新聲
  詩感
  記憶の舌
  一夜
  光塵
  斷橋
  Imagination
  愁夜戲樂第七番
 心の郷土
  久遠偶像

黄眠帖
 意匠
  夜のこころ
  道人跪拜録
  夜闌經
  夜の法會
  月光愁夜
  山院秋晩圖
  慾界
  夜半
  密房沙門
 閑情
  一枚の黄色い紙の上に
  〓(漢字: さんずい+寂)かなるこの黄昏
  檞の樹
 非時代的古詩
  民主詩人を咏ず
  東方腐儒の言葉
  農園瞥景を吟ず
  自動車を咏ず
  古代盲僧經
  玉蟲

咒文
 詩集咒文序
 咒文乃周圍
 薄志弱行ノ歌
 塵
 蠻賓歌
 咒文乃周圍自註

拾遺篇
 たそがれの寢室
 洛陽遊民歌
 密會
 光の音樂
 落ちゆく人々
 癡人
 籠城最後の夜に
 春宵秘戲
 わが愛人
 化粧
 ひびき
 寫像
 歩みゆく世界
 星辰讃美
 ある夜の戀人等
 戀人等の散歩
 悲しき歌
 鏡を持てる戀人
 聖性交
 綠柱石ある金冠
 他界消息
 新しき戀人に就て
 紅き彈丸
 日の晩禱
 鈴
 こころの歌
 王の輦
 黑き夜半の月
 人生れむ
 街頭の人氣なき昧爽
 遍光
 足長蜂
 腐蝕する者
 囚人
 思想
 病春浴泉歌
 近代茶寮歌

初出及び校異
詩作品一覽
解題 (井村君江)
詳細目次



日夏耿之介全集01 04



◆本書より◆


「轉身の頌序」より:

「予の肉身は重き空氣の中心から瓦斯體の如くに浮び出でた。觸目するものは悉く皆囘轉しはじめた。遠方に叫ぶ野獸の姿を見た。靑空の中に散布された星群を見た。
 月光惝悦者は日輪の羞明を經て、カアライルが所謂久遠轉身 Perpetual Metamorphoses の星の瞬きを幻感し、かつ祈り、かつ思ひ、讀書と Vision との閑寂な微笑の月日を躊躇せずに受け容れた。」



「AB INTRA」:

「降り積(つ)もる深雪(みゆき)の中の太陽より
慘死せる縞蜥蜴(しまとかげ)の綠金(りよくきん)の屍(しかばね)より
暴風の日の林間濕地(りんかんしつち)より
初夏(しよか)陽炎(やうえん)の瞳の契點(さなか)より
沸きのぼれる銀光水液(ぎんくわうすゐえき)
流動體結晶の水沫(みなわ)の果(はて)
はた悉皆(あらゆる)幻覺の心なす 翼ある天童(てんどう)」



「闇の化怪」:

「化怪(けくわい)は光れり、土螢(つちほたる)のごとし
化怪(けくわい)は夥し 盡きざる也
あらゆる夢を産卵(さんらん)しつつ
闇の徂徠(ゆきか)ふこの夜(よる)をあゆめり
悲嘆(ひたん)するは何人ぞ
夜(よる)を誰何(すゐか)するあるは何人(なんぴと)ぞ
惡(ああ) 化怪(けくわい)は世にみちみちわたれり
われは何故にかく夜を安臥しうるか」



「海底世界」:

「靑き水面(みなも)を透(すか)して
日はほの赤くさせり

魚鱗(ぎよりん)のむれ 亂れ擾(さや)ぎて
海草(かいさう)の隙(あはひ)に匿れ しばしば
雜色(ざつしき)の埃及模樣(えじぷともやう)を織りなせしかば
なかば錆びたる沈沒船の碎片は
黑色砂丘(こくしよくすなやま)のいただきに金字塔(きんじたふ)を築きたり
水死者の蹠(あなうら)たかきよりきたる

魚鱗(ぎよりん)のむれみだれさやぎ いま
若き新來者(まらうど)を相抱擁(いだき)たり
覩(み)よ ここにして不思議なる觀念(こころ)の裡(うち)に
靑ざめし死者の笑顏(ゑがほ)を
死者は踊(をど)れる也 狂へる也
魚は魚とむすび 貝は貝とむすび
惡(ああ) 人は人と相接すなり

まとゐは盡(つ)きねど
水死の人 人魚(にんぎよ)と化(な)り
碎片は塔をなす
滄溟(おほわだ)の底(そこひ)にして
人すべて鱗族(りんぞく)たるをえうす

ああ 日(ひ)はほの赤(あか)くこの世界を訪(おとづ)るる」



「咒文乃周圍」:

「 夢たをやかな密咒(みつじゆ)を誦(ず)すてふ
蕃神(かみ)のやうな黄老(おきな)が逝(さ)つた
「秋(さはきり)」のことく「幸福(さいはひ)」のことく「來(こ)し方(かた)」のことく

 冬天(とうてん)に咒文(じゆもん)をふりまき
風狂(ふうきやう)の老漢(おきな)が逝(い)んだ
燼(もえざし)のことく 流鶯(りうあう)のことく 秘佛(ひぶつ)のことく

 侏儒樂(しゆじゆがく)を咒文に口寄せ
わらはやみの詩翁(おきな)も逝(い)んだ
魚(いろくづ)のことく 御饗(みあへ)のことく 蘭燈(ともしび)のことく

 蟲書(ちゆうしよ)をもて咒文を石記(しる)す
幻人(げんじん)の道老(おきな)は逝(い)んだ
肉(ししむら)のことく 茯苓(ぷくりやう)のことく 擲梭(ひ)のことく

 梟木(けうぼく)に咒文を彫(ゑ)り刻(きざ)みつ
美目(びもく)なせる佚老(おきな)も逝(い)んだ
泥(ひぢ)のことく 悲谷(ひこく)のことく 古酒(こしゆ)のことく

 沙漏(しやろう)をもて咒文を撰(せん)ず
展樂(てんがく)の頽人(おきな)も逝(い)んだ
浪(へなみ)のことく 牡鹿(をじか)のことく 權道(けんだう)のことく

 夢(ゆめ)ほのぼのと密咒を誦(ず)すてふ
浄巾(じやうきん)の黄老(おきな)は逝(さ)つた
月(つきよみ)のことく 燔肉(ひもろぎ)のことく 密人(みいら)のことく

 沒藥(もつやく)に咒文を嗅ぐてふ
灰心(くわいしん)の神人(おきな)も逝(い)んだ
煙(けぶり)のことく 色身(しきしん)のことく 魔媼(まあう)のことく

 天庿(てんぺう)を咒文にをろがむ
くぐつやみの羸老(おきな)も逝(い)んだ
宵(さよ)のことく 空漏日(くろび)のことく 瘴癘(しやうれい)のことく

 弦索(げんさく)をもて咒文を聽きわく
黄貂衣(くわうてん)の幽人(おきな)は逝(い)んだ
雪(みゆき)のことく 流沙(りうさ)のことく 塵表(ぢんぺう)のことく

 蘭引(らんびき)を咒文にうけぶてふ
折伏(しやくぶく)の杖者(おきな)が逝(い)んだ
風(いぶき)のことく 誣罔(ふまう)のことく 夸者(くわじや)のことく

 髑髏(ひとがしら)に咒文を現(げん)ず
玄默(げんもく)の皓髪(おきな)も逝(い)んだ
霧(さぎり)のことく 蟢子(ささがに)のことく 誕妄(およづれ)のことく

 あはれ 夢まぐはしき密咒(みつじゆ)を誦(ず)すてふ
邪神(かみ)のやうな黄老(おきな)は逝(さ)つた
「秋(さはきり)」のことく 「幸福(さいはひ)」のことく 「來(こ)し方(かた)」のことく」



日夏耿之介全集01 05



























































































































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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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