『江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯』

「すると、その小さいへやの中に、ボンヤリと光っているものがあるのです。水中電燈が、へやのゆかにおいてあるのです。ハッとして、なおよく見ると、おお、そこには、じつにきみの悪いへんなやつが、うごめいていたではありませんか。
 そいつは人間のかたちをしていました。しかし、ふつうの人間ではありません。」

(江戸川乱歩 「海底の魔術師」 より)


『江戸川乱歩全集 
第17巻 
化人幻戯』

光文社文庫 え 6-22

光文社
2005年4月20日初版第1刷発行
678p+1p 口絵(カラー/モノクロ)2p
文庫判 並装 カバー
定価933円+税
カバーデザイン: 間村俊一
カバーオブジェ・コラージュ: 勝本みつる
オブジェ撮影: 松浦文生



第21回配本。
昭和29年から30年にかけて発表された少年探偵もの2篇と、短篇・長篇・連作小説の乱歩執筆分各1篇、計5篇が収録されています。


江戸川乱歩全集17


目次:

鉄塔の怪人
 先生のことば
兇器
 自作解説
悪霊物語
 自作解説
化人幻戯
 乱歩曰く
 自作解説
海底の魔術師
 作者のことば

解題 (新保博久)
註釈 (平山雄一)
解説 (新保博久)
私と乱歩 (戸川安宣)




◆本書より◆


「化人幻戯」より:

「庄司武彦は対象を包むよりも、対象に包まれることを好む性癖を持っていた。彼は幼少のころ、自分の所有に属するあらゆる玩具や箱の類を、部屋の片隅に円形にならべて、その丸い垣の中に坐っていることを好んだ。そうして二次元的にだけでも外界と遮断(しゃだん)していれば、心がおちつき、暖かく安らかであった。少年時代にはよく病気をして、蒲団(ふとん)の中に包まれていることが好きであった。包まれた状態に居たいために、強(し)いて病気になる傾きがあった。青年時代には一室にとじこもって読書することを愛した。部屋は狭いほどよかった。汽車の客車を地上に固定して住居にしている西洋人の写真などを見ると、うらやましくて仕方がなかった。サーカスのホロ馬車の中のすまいや、和船の船頭一家の狭くるしい生活などにも、なにかしら甘い郷愁があった。
 それが、やっぱり郷愁に相違ないことを教えられたのは、今から三年ほど前、精神分析の本を読んだときであった。「胎内願望」とか「子宮内幻想」とか書いてあった。赤ん坊が胎内を出ても、手足を縮めて小さくなっている、あれの延長なのである。空漠(くうばく)たる外界に恐怖して元の狭く暗く暖かい胎内に戻りたい願望である。彼はこの「胎内願望」とか「子宮内幻想」とかいう文字に、ゾッとするような嫌悪(けんお)を感じた。自分の秘密を見すかされた嫌悪である。しかし、嫌悪すればするほど、願望そのものは、いよいよ強くなって行くようであった。」












































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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