『江戸川乱歩全集 第30巻 わが夢と真実』

「(問) あなたが生れ替ったら(どうなさいます)。
(答) たとえ、どんなすばらしいものにでも二度とこの世に生れ替って来るのはごめんです。」

(江戸川乱歩 『わが夢と真実』 より)


『江戸川乱歩全集 
第30巻 
わが夢と真実』

光文社文庫 え 6-23

光文社
2005年6月20日初版第1刷発行
955p+1p 口絵(カラー/モノクロ)2p
文庫判 並装 カバー
定価1,295円+税
カバーデザイン: 間村俊一
カバーオブジェ・コラージュ: 勝本みつる
オブジェ撮影: 松浦文生



本書「解題」より:

「【わが夢と真実】
 大正十五年から昭和三十二年にかけて雑誌、新聞、書籍に発表した随筆と書下ろしの原稿をまとめて、乱歩が自身をコラージュした随筆集で、昭和三十二年八月に東京創元社より刊行された。」
「【海外探偵小説作家と作品】
 早川書房の世界探偵小説全集(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)に書いた解説文を中心に、主に昭和二十八年から三十年にかけて発表した海外探偵小説の作家作品紹介を作家別にまとめ、昭和三十二年四月に早川書房より刊行された。」
「基本的に早川書房版を底本としたものの、元版では(中略)田中潤司の執筆ないし翻訳による作家紹介が同列に扱われているが、乱歩全集という性格上、これらを省いた。」



第22回配本。
『わが夢と真実』に図版(モノクロ)多数。


江戸川乱歩全集30


目次:

わが夢と真実
 自序
 一頁自伝
 ふるさと発見記
 祖先発見記
 父母のこと
 恋と神様
 乱歩打明け話
 旅順海戦館
 レンズ嗜好症
 ビイ玉
 こわいもの
 私の十代
 活字との密約
 わが青春記
 恋愛不能者
 二十代の私
 二十年前の日記
 私の探偵趣味
 活弁志願記
 小説を書くまで
 妻のこと
 処女作
 三十歳のころ
 処女出版
 幻影の城主
 忘れられない文章
 今一つの世界
 群集の中のロビンソン
 残虐への郷愁
 放浪記
 槐多「二少年図」
 同性愛文学史
 二人の師匠
 サイモンズ、カーペンター、ジード
 耽綺社
 講談社もの
 江戸川乱歩全集
 精神分析研究会
 蓄膿症手術
 怪人二十面相
 戦争と探偵小説
 町会と翼壮
 庭園の変貌
 戦災記
 空襲の美観
 疎開、敗戦、探偵小説の復興
 戦後の猟書
 新人翹望
 推理小説の黎明
 関西行脚
 探偵小説第三の山
 「クイーンの定員」その他
 私の初役
 戦後初の文士劇
 大舞台
 芝居風狂
 勘三郎に惚れた話
 「昔ばなし」
 六十の手習
 夜間人種
 私の顔
 外套と帽子
 きらいなもの
 蒐集癖
 海草美味
 わが家のミソ汁
 酒とドキドキ
 私の本棚
 私の机
 私の読書遍歴
 書斎の旅
 集書
 わたしの古典
 遠大なる方向
 早大と探偵小説
 好人病
 還暦所感
 還暦祝賀会
 生誕碑除幕式
 二銭銅貨
 英訳短篇集
 既刊随筆評論集目録
 人名索引

海外探偵小説作家と作品
 はしがき
 アタイヤ
 アリンガム
 アンブラー
 イネス
 ヴァン・ダイン
 ウォーリス
 ウォーレス
 ウールリッチ
 カー
 ガードナー
 ガボリオー
 キッチン
 ギルバート(A)
 クイーン
 クリスティー
 グリーン(A)
 グリーン(G)
 クロフツ
 コリンズ
 コール
 ザングウィル
 シムノン
 スカーレット
 スタウト
 スピレイン
 セイヤーズ
 チェスタートン
 チャンドラー
 テイ
 デイヴィス(D・S)
 デイヴィス(M)
 ディケンズ
 ドイル
 ドゥーゼ
 ノックス
 バークリー
 ハート
 ハメット
 ハル
 ビガーズ
 ヒューム
 ヒルトン
 フィアリング
 フィルポッツ
 ブラマ
 ブリーン
 ブレイク
 フレッチャー
 ベイリー
 ポー
 デュ・ボアゴベ
 ポースト
 ポストゲイト
 ホームズ
 マクドナルド(J・R)
 ミラー(M)
 メイスン
 ライス
 レヴィン
 ロースン
 ワイルド
 江戸川乱歩略年譜
 
解題 (山前譲/新保博久)
註釈 (平山雄一)
解説 (山前譲)
私と乱歩 (勝本みつる)



◆本書より◆


「こわいもの」より:

「大人になると、人くさくなって、少年の肌を失うが、それと同じように、こわいものがなくなるのは、少年の鋭敏な情緒を失うことで、私には少しもありがたくないのである。もっとこわがりたい。何でもない、人の笑うようなものに、もっとこわがりたい。」


「わが青春記」より:

「私には「青春期」というような花わらい鳥歌う時期がなかった。その遠因は、私が子供のころ、「いじめられっ子」だったことにあるらしい。」
「私は子供のころ病身で、器械体操がまるでできなかったので、同級生の物笑いとなり、それが「いじめられっ子」の最上の資格となった。病気でよく学校を休む。一つは「いじめられっ子」がいやで休みもしたが、ほんとうに病身でもあった。病床の空想生活が現実の生活よりも楽しかった。
 休むものだから、学課も優等とはいかなくなり、その方の魅力もだんだんとおとろえて、学校が一層面白くなくなった。現実社会というものが私の敵になった。(中略)「いじめられっ子」にされたというよりも、こちらがそれに適する性格に生れ、育っていたともいえるのだが、いずれにしても、このことが、私の生涯に最も強く響いていることはまちがいない。」
「私に青春時代のなかったもう一つの原因は、恋愛を解しなかったことにある。」
「恋愛ばかりでなく、すべての物の考え方がだれとも一致しなかった。しかし、孤独に徹する勇気もなく、犯罪者にもなれず、自殺するほどの強い情熱もなく、結局、偽善的(仮面的)に世間と交わって行くほかはなかった。そして、大過なく五十七年を送って来た。子を生み、孫を持ち、好々爺(こうこうや)となっている。
 しかし、今もって私のほんとうの心持でないもので生活している事に変りはない。小説にさえも私はほんとうのことを(意識的には)ほとんど書いていない。」
「際立(きわだ)った青春期を持たなかったと同時に、私は際立って大人にもならなかった。間もなく還暦というこの年になっても、精神的には未成熟な子供のような所がある。
 振り返って見ると、私はいつも子供であったし、今も子供である。もし大人らしい所があるとすれば、すべて社会生活を生きて行くための「仮面」と「つけやきば」にすぎない。」



「妻のこと」より:

「しかし、妻をめとって支那ソバ屋もつづけられないので、前に世話をしてもらった就職先をしくじっているので、敷居が高くてごぶさたになっていた同郷の政治家、川崎克先生のところへ、面(つら)をおしぬぐって、再度の就職を頼みに行ったものである。すると川崎先生は別に叱りもせず、東京市社会局へ入れて下さった。だが、私という男は、またしても、その社会局を、半年でしくじってしまったのである。悪事を働いたわけではない。ただ毎朝起きて、きちんきちんと勤めに出る根気がなかったのである。毎朝同じ時間に起きて同じ出勤をくりかえすことが、私という男には耐えられなかったのである。それからあとの職業転々も、理由はすべて、このなんでもないことにあった。小説家になって、やっと朝起きなくてもよくなり、毎日きまりきった勤めをしなくてすむことになったので、やっと助かったのである。」


「チェスタートン」より:

「深夜、純粋な気持になって、探偵小説史上最も優れた作家は誰かと考えて見ると、私にはポーとチェスタートンの姿が浮かんでくる。この二人の作品が、あらゆる作家と作品を超えて、最高のものと感じられるのである。この二人のほかの作家はいずれも、どこかに不満がある。突飛(とっぴ)なことを書いても根底が平俗であるか、気取っていても薄っぺらであるか、滋味(じみ)はあっても廉(やす)っぽいか、文学的に優れていても探偵小説味が稀薄であるか、なにかしら満足しないものがある。」

「彼は一八八七年聖ポール公立学校に入学したが、在学中の成績については特に見るべきものはなく、後年の彼自身の言葉によれば、当時の彼は、何(いず)れかと云えば孤独で夢見がちな、勉強よりはむしろ詩作にふけりやすい傾向の学生であったと云う。在学中彼は学内雑誌の製作を助けてその文才の一端を示したこともあった。」























































































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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