『江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)』

「天界、天使、天女、異国、空中、真空、眼界、火災、温室、灯火、歌曲、技術、世俗、世間、相違、相応、遮断、顛倒、便利、癡人、凡人、名誉、唱歌、理髪、
 非常、不思議、不可説、秘密、錬金術、犯罪、罪人、重罪、罰金、盗聴、牢獄、典獄、護身、毒薬、自殺、
 所得、財物、私財、販売、負債、損害、保証、課税、関税、税関、相続、遺失、
 初夜、受胎、胎児、堕胎、堕胎薬、母乳、私通、食物、疲労、睡眠、疾病、重病人、消毒、消毒薬、大小便、上厠、裸形、文身、畸形、
 調子にのって、少し書きすぎてしまったが、こういう新らしい感じの言葉が凡て経文の中にあるということは、私には一つの驚きであった。」

(江戸川乱歩 「「吾妻鏡」「国訳一切経」その他」 より)


『江戸川乱歩全集 
第29巻 
探偵小説四十年(下)』

光文社文庫 え 6-30

光文社
2006年2月20日初版第1刷発行
873p+1p 口絵(カラー/モノクロ)2p
文庫判 並装 カバー
定価1,200円+税
カバーデザイン: 間村俊一
カバーオブジェ・コラージュ: 勝本みつる
オブジェ撮影: 松浦文生



昭和36年7月桃源社より刊行された『探偵小説四十年』を底本とし、増補・訂正。
図版(モノクロ)多数。


江戸川乱歩全集28-29


目次:

隠栖を決意す 〔昭和十三・四・五年度〕
 昭和十三年度の主な出来事
 新潮社の江戸川乱歩選集
 甲賀・大下・木々傑作選集
 小栗作、久生演出の放送劇
 昭和十四年度の主な出来事
 淋しい貼雑帳
 新作大衆小説全集
 ヴァン・ダインの死
 松本泰
 昭和十五年度の主な出来事
 隠栖を決意す
末端の協力 〔昭和十六・七年度〕
 資料皆無の昭和十六年度
 隣組防空群長となる
 町会役員となる
 昭和十七年度
 町会副会長となる
 清話会で講演
 建川中将と暗号問答
 「吾妻鏡」「国訳一切経」その他
 「乱歩再出発」
 陸海軍報道部と情報局
 探偵作家の従軍
 情報官と対談会
 海軍兵学校卒業式に参列
 庭園の変貌
愈々協力に励む 〔昭和十八・九年度〕
 昭和十八年度の主な出来事
 職場慰問激励演説
 日本軽金属と足尾銅山
 小笠原町会長
 翼賛壮年団
 町会の仕事
 文士町会役員座談会
 一人息子の入隊
 戦争中唯一の長篇
 井上良夫との文通
 昭和十九年度の主な出来事
 文報小説部会
 食糧査察
 参謀本部駿河台分室
 町会の増産協力運動
 航空機増産協力大会
戦災記 〔昭和二十年度〕
 昭和二十年度の主な出来事
 私の身辺の主な出来事
 家族を疎開させる
 空襲罹災記
 月給取り志願
 栄養失調
 地下の別宴
 白菊塚の調査
 戦争末期に死亡した作家たち
 蘭郁二郎
 甲賀三郎
 田中早苗
 大阪圭吉
 井上良夫
 〔余白に〕 罹災直後の手紙
探偵小説復活の昂奮 〔昭和二十一年度〕
 昭和二十一年度の主な出来事
 探偵小説界と私の身辺の出来事
 二十年末より二十一年秋までの日記
 探偵雑誌「黄金虫」計画
 「幻の女」を読む
 「宝石」創刊と横溝の「本陣」
 雄鶏社の推理叢書
 クレイグ・ライス
 双葉、植草両君と知る
 「心理試験」映画化
 角田喜久雄の長篇
 第一回土曜会
 水谷準作家専業となる
 ウソ発見器
 捜査会議に列す
 小栗虫太郎
 五つの探偵雑誌
 吉良運平の翻訳計画
 「宝石」第一回当選作家
探偵作家クラブ結成 〔昭和二十二年度〕
 昭和二十二年度の主な出来事
 当時の現役探偵作家
 甲賀三郎全集
 伊藤逸平と「黒猫」
 苦楽探偵叢書
 警視庁見学
 探偵作家クラブ結成
 物故探偵作家慰霊祭
 探偵小説行脚
 公職追放となる
 最も多く本の出た年
 九種の探偵雑誌創刊
 〔余白に〕 当時の翻訳事情
探偵小説第三の山 〔昭和二十三・四年度〕
 昭和二十三年度の主な出来事
 石川一郎
 女銭外二
 アンコール
 昭和二十四年度の主な出来事
 捕物作家クラブ
 坂口安吾
 西尾正
 海野十三
 「天狗」と岩谷選書
 百万円懸賞
 第三の山、五人男
 光文社の神吉晴夫
 二人の師匠
 夜の男の生態
「幻影城」出版と文士劇 〔昭和二十五・六・七年度〕
 昭和二十五年度の主な出来事
 「新青年」の思い出
 ラジオ探偵劇
 抜討座談会
 白石潔と「鬼」と「断崖」
 アンコールの減少
 「新潮」の探小特集号
 探偵作家と将棋
 昭和二十六年度の主な出来事
 山本禾太郎
 「幻影城」出版
 文壇盛衰記
 「クイーンの定員」そのほか
 鈴ケ森の長兵衛
 昭和二十七年度の主な出来事
 ふるさとの発見
 探偵作家クラブ五周年
 浅草「花月」の文士劇
涙香祭と還暦祝い 〔昭和二十八・九年度〕
 昭和二十八年度の主な出来事
 新宿ペンクラブ
 お化けの会
 早川ミステリ
 三味線を習う
 日本探偵小説全集
 母の喜寿祝い
 翻訳ブームの曙光
 昭和二十九年度の主な出来事
 「二十面相」のラジオとテレビ
 「続幻影城」出版
 ラジオ「安楽椅子」
 「探偵小説三十年」出版
 黒岩涙香祭
 三越劇場の文士劇
 涙香座談会と法要
 玄関先の河内山
 還暦祝賀会
 江戸川乱歩氏還暦祝賀会の記
小説を書いた一年 〔昭和三十年度〕
 昭和三十年度の主な出来事
 祖先の墓を発見
 四夫婦京都旅行
 バー「乱歩」について
 創元社「世界推理小説全集」
 江戸川乱歩賞
 生誕碑除幕式
 講談社「書下し長篇全集」
 「十字路」について
 春陽堂「江戸川乱歩全集」
 「化人幻戯」のこと
 〔余白に〕 私の本棚
英訳短篇集の出版 〔昭和三十一年度〕
 昭和三十一年度の主な出来事
 翻訳家ミステリ・クラブ
 宇宙旅行協会
 探偵小説論争
 大下宇陀児還暦の会
 玄々社「科学小説全集」
 春陽堂「長編探偵小説全集」
 河出「探偵小説名作全集」
 小山「日本探偵小説代表作集」
 第二回江戸川賞
 木々・シムノン会談
 豪華本「犯罪幻想」
 英訳短篇集
 川崎克伝
 結びの言葉
追記 〔昭和三十二年以降〕
 長篇時代きたる
 推理小説第四の山
 「宝石」の編集に当る
 四つの著書
 「日本推理小説大系」
 高血圧に悩む
 蓄膿症の再手術
 私の創作力と蓄膿症の関係
付録
 江戸川乱歩作品と著書年度別目録(下)
 江戸川乱歩既刊随筆評論集目録
写真人名索引
人名索引
 
解題 (山前譲)
註釈 (新保博久)
解説 (山前譲)
私と乱歩 (朱川湊人)




◆本書より◆


昭和二十一年:

「この企画発表後間もなく無断飜訳が許されなくなり、といってロイヤルティ送金の道もなく、結局飜訳は全く駄目(だめ)になってしまった。占領中は昔のベルン条約も通用しないので、古い作品でも、飜訳は出来ないことになったのである。」
「その後、自由出版会社が古いシャーロック・ホームズの訳なら差支えないだろうというので、一二冊延原君の旧訳を出版したところ、誰かがイギリス本国へ知らせたらしく、英国外務大臣の署名で占領軍司令部へ抗議書が来たということで、出版社は司令部の出版関係の課へ呼び出され、賠償金をとられるという騒ぎが起ったのを覚えている。これに懲りて、どの出版社も飜訳には全く見向かなくなったのだが、そのとき、ドイルの息子さんに、ホームズものの飜訳を許してくれるよう、誰の手を経てだったか、申し込んだところ、息子さんのところへドイルの心霊が現われて、日本には断じて飜訳を許すなと命じたから、お断りするという返事だったという噂を耳にしたことがある。ドイルは心霊現象の信者であり、息子さんも同様だったのであろう。そしてその裏にはやはり「敵国」の感情があったのである。」

「そのとき、どういう話をしたのか、今では全く忘れているが、小栗君はなかなか批評好きで、ジャーナリズムの内情などにもよく通じていたので、小説論ばかりでなく、稿料の話とか、ジャーナリズム遊泳術めいた話なども出たのであろう。
 たった一つ、そのとき小栗君がこういったのを、今でも覚えている。
 「江戸川さん、結局ぼくはあなたにかなわなかったですよ」
 「そんなことはないよ。君の方がぼくより一枚上の作家じゃないか」
 「いや、そうじゃない。結局ぼくは負けたですよ」
 それだけの会話であった。筆名を全国的に知られていることでは、わたしの方が上だったかもしれない。それは通俗物を書いたからで、決して自慢にならないのだが、小栗君は多分そういう虚名の広さのことをいったのであろう。しかし、小栗君ほどの作家が、わたしに一目おいているという感じを受け、それがわたしの虚栄心を満足させたので、この会話が深く印象に残ったのにちがいない。」
「しかし、小栗君は残る作家であった。今なお小栗君の本は出版されている。探偵小説が語られる場合には、必ず小栗虫太郎君の名が出る。「宝石」三十二年八月号の文壇作家座談会でも小栗君はたびたび話題にのぼったし、また幸田文(こうだあや)さんのお話で、露伴翁(ろはんおう)が小栗君を認めていたことが、はじめてわかった。」











































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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