J・L・ウェストン 『祭祀からロマンスへ』 (丸小哲雄 訳/叢書・ウニベルシタス)

「聖杯とはひとつの生命力であり、けっして死にたえることはあるまい。」
(J・L・ウェストン 『祭祀からロマンスへ』 より)


J・L・ウェストン 
『祭祀からロマンスへ』 
丸小哲雄 訳

叢書・ウニベルシタス

法政大学出版局
1981年11月2日初版第1刷発行
271p 凡例・はしがき・目次ix 索引vii
四六判 丸背布装上製本 カバー
定価2,400円



本書「凡例」より:

「本訳書の底本は Jessie L. Weston: From Ritual to Romance (Cambridge University Press, 1920) である。」


本書「訳者あとがき」より:

「イギリスの中世文学者・文化人類学者であり、アーサー王伝説、特に聖杯伝説の研究者であるジェシー・L・ウェストン女史(一八五〇―一九二八)が、ギリシア芸術、演劇、叙事詩、宗教、哲学の背後にある祭祀的葛藤の型を跡づけたJ・G・フレイザー、ギルバート・マレィー、F・M・コンフォード、A・B・クック、それにジェーン・ハリスン女史の影響を受けて、彼らの祭祀についての見解を聖杯ロマンスの起源に適用しようと試みたのが本書である。一般的に、聖杯ロマンスの起源はキリスト教起源説、あるいは非キリスト教的・ケルト的民間伝承起源説と考えられていたが、ウェストン女史は双方の主張を正当にかつ綿密に評価しながら、聖杯伝説の起源をギリシア・オリエントに発した農耕民族の豊饒儀礼(フェニキア、エジプト、バビロニア、ギリシアに伝わるタムムズ=アドーニス信仰)にその淵源を求めることによって、究極的に解明した。」


ウェストン 祭祀からロマンスへ


帯文:

「フレイザー、クック、ハリスン等の影響の下に、聖杯ロマンスの淵源をギリシア・オリエントの豊饒儀礼に探った著者のライフ・ワーク。従来のキリスト教起源説、ケルト的民間伝承起源説を根底から覆し、文学の背後に存在する祭祀的原型を跡づけた本書は、T.S. エリオットをはじめ、多くの文学者・研究者たちに影響を与えた。」


帯背:

「文学の人類学的
淵源を究明する」



カバーそで文:

「ジェシー、L. ウェストン
1850―1928。イギリスの中世文学者・文化人類学者。フレイザー、クック、ハリスン等の影響の下に一貫して聖杯ロマンスの起源を追究、とくに本書は30年余にわたる研究を集大成した記念すべき研究書として、1920年度の The Rose Mary Crawshay Prize を受賞、また、T.S. エリオットは20世紀の詩の出発を告げる長詩『荒廃国』において本書から多くの示唆を受けた。本書のほかに、『ガーウェイン卿の伝説』(1897年)、『パーシヴァル卿の伝説』(1906-9年)、『聖杯の探究』(1913年)、『中世の主要な詩人たち』(1914年)等がある。」



目次:

凡例

はしがき
第一章 序論
第二章 主人公(ヒーロー)の任務
第三章 水の解放
第四章 タムムズとアドーニス
第五章 中世及び近代の自然祭祀の諸形式
第六章 シンボル
第七章 剣舞
第八章 巫医(メディシン・マン)
第九章 漁夫王
第十章 聖杯の秘密 (1)秘儀
第十一章 聖杯の秘密 (2)ナアセーン派文書
第十二章 ミトラとアッティス
第十三章 危険な礼拝堂(チャペル)
第十四章 作者

訳者あとがき
索引




◆本書より◆


「第二章 主人公の任務」より:

「いままで述べてきたことを分析してみると、わたしたちはその結果をいくつかの明確な項目に分類することができるのに気づく。

 (イ) 「探求」の主要な目的は、負傷、病気または老齢による病弱に苦しむひとりの王に健康と活力とを回復させることである、という意味での証拠資料については一般的な合意がある。
 (ロ) そして、ある不思議な、説明のつかない理由によって、王の病弱が悲惨にも王国に波及し、国土から植物を奪い去るか、または国土を戦禍にさらすことになる。
 (ハ) いずれの場合においても、王は若々しい活力と麗わしさとを回復するだろう、と明確に述べられている。
 (二) ガーウェインが物語の主人公である場合と、物語がパーシヴァルに関係している場合とにおいては、いずれにも、国土に降りかかる災厄は長びく旱魃のそれであり、旱魃によって植物は全滅し、国土は荒地になってしまうのである。主人公の問いの効果は水路に水を回復させ、再び国土を肥沃にすることである。」

「物語は、ひとりの王の活力と王国の繁栄との間には密接な関係があることを当然のこととしており、支配者の力が負傷、病気、老齢、あるいは死によって弱まり、あるいはそこなわれてゆくに従って、国土は荒地となり、そして、主人公の任務は国土に回復をもたらすこととなる。」



「第六章 シンボル」より:

「わたしたちは次のような結論に達した。すなわちあの偉業は、まず第一に利他主義的な性格のもので、世俗的なものであれ、あるいは精神的なものであれ、探求者その人に生ずるはずの利益の問題ではなく、むしろ他人のために獲得されるべきはっきりとした恩恵――王に降りかかったある懲罰のために最も悲惨な結果が彼の王国にもたらされるが、その懲罰の悲惨な結果から支配者と国土とを解放するという恩恵――の問題であった。
 さらにわたしたちは、ひとりの者の病いがあらゆる人々の災厄になるという支配者とその国土との、この密接な関係は、一二世紀の宮廷詩人の豊かな想像力から生まれた、たんなる文学的な作り話でなく、古代における実際の、不屈の生命力をもち、深く根をはった信仰である、ということを知った。わたしたちは、キリスト教紀元の数千年前までその跡をたどることができるし、今日では、それが生死の決定を伴っていたものであるのに気づく。
 さらにまたわたしたちは、この民間信仰には、ある種の儀式慣行の中にみずからを表現する傾向があることを見出す。これらの儀式慣行は、程度の差はあれ、祭祀行事の特徴をとどめており、これらの慣行は祭祀行事の残存なのである。」



「第七章 剣舞」より:

「自然のエネルギーに刺激を与えるものとしての運動、なかんずく集団運動と呼びうるものの重要性は、未開民族の間には広く認められる。彼らにとって舞踏は、さらに発達した社会で祈祷に当てられている位置と同じ位置を占めている。この点に関して、フォン・シュレーダー教授は次のような見解を述べている。「注目すべきことは、未開民族たちの信仰によれば、舞踏が、文化のより高い発展段階において敬虔な祈祷に支えられているのと同じ力と重要性とをもっているように見えるということである。」彼は中央アメリカのタラヒューマラ Tarahumara ・インディアンの事例を引いている。家族全員が田畑で働いているあいだ、その家の舞踏場で絶え間なく踊ることがひとりの男の役目になっている。もし彼がその任務をおこたるようなことになれば、他の者たちの労働は徒労に終るであろう。」


「第八章 巫医」より:

「先に述べた証拠を目の前にすれば、治療師または巫医は、きわめて初期の時代から劇的豊饒祭祀のなかで重要な役割を果たしていたということ、そして彼は、初期祭祀形式の粗野な典型である現代の民衆劇の中に依然として生き延びているということは否定できないように思われる。ガーウェイン卿のようなきわめてロマンス的で騎士道にかなった人物に治療技術が帰せられているということは、次の事実、すなわち、その物語の初期の、そして文学以前の段階においては、彼が伝承的に治療師に当てられていた役割、つまり植物霊を表象するものとしての死者あるいは負傷者の生命と健康とを回復させる役割を演じていたという事実に依存するかも知れないということは、すくなくとも可能性がある。」


「第九章 漁夫王」より:

「かくして、祭祀の残存した、かつ認知されたさまざまな形式を考慮するならば、わたしたちは最初期の、混交されることのもっとも少ない聖杯物語の版本の中心人物は死者であり、探求者の任務は彼の生命を回復させることであると判断してもいいのではないだろうか。」


「第十一章 聖杯の秘密 (2)」より:

「わたしは過去三〇年以上にわたって聖杯伝説とロマンスを注意深く研究してきたが、その結果、わたしが強く確信しているのは次のことである。すなわち、人を当惑させる複合体全体の根本的起源は、秘教的な観点から生命崇拝と見なされている植物祭祀の中に、ただここにのみ見出されるべきものである。キリスト教伝説、そして伝承の民間説話が完成されたロマンスの集成(コープス)に寄与するところがあったのは疑いのないところだが、しかし、それらは実際には補足的、従属的な特徴なのである。」































































































































































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将来の夢: 石ころ。

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