レーモン・ルーセル 『ロクス・ソルス』 (岡谷公二 訳)

「どちらの場合も、卑怯な迫害を受けた無垢な存在が、試練に打ち勝って、自分に災厄や危険をもたらした手先その人を救いにやってくるのであった。」
(レーモン・ルーセル 『ロクス・ソルス』 より)


レーモン・ルーセル 
『ロクス・ソルス』 
岡谷公二 訳


ペヨトル工房
1987年5月24日発行
185p
21×13.2cm
並装(フランス表紙) 函
定価2,500円
造本: ミルキィ・イソベ

Raymond Roussel : Locus Solus, 1914



本書「解説」より:

「本書は、レーモン・ルーセル(一八七七~一九三三)の長篇小説『ロクス・ソルス』 Locus Solus (一九一四)の全訳である。」


ルーセル ロクスソルス 01


函カバー文:

「輝く水アカ=ミカンス
断頭された首が百年後に喋り始める
ガラスの死体蘇生装置
踊り子の髪の毛は音をだす
血の汗をかく小人
肉のない唇が話す
血文字を書く雄鶏
音を奏でるタロット・カード
糸の先に吊られた脳
空飛ぶ水球の影が殺人を犯す
痛みを与えない磁気抜歯装置
奇数棒のシストラム
歯を運ぶ奇妙な装置、空飛ぶ撞槌
水中を遊泳する電気猫
青や茶色の歯や歯根で作られた巨大なモザイク
生きながら埋葬されてしまったアーグ
暗殺の調教を受けた巨大な鳥
女王の発作は、無実の人々を処刑しなければおさまらない
突然鳩に変えられ飛び去ったウルフラ
無敵の護衛たる力士ヴィルラス
電気は脳に浸透して、死後硬直に打ちかった
水を引き寄せる力を持つ金塊
死者の頭に蘇生剤を注入する
爪に錫メッキする男
タツノオトシゴの水中レース」



目次:

第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章

解説 (岡谷公二)



ルーセル ロクスソルス 02



◆本書より◆


「第一章」より:

「友人の科学者マルシャル・カントレル先生は、四月初めのこの木曜日に、モンモランシーの美しい別荘をとりまく広大な庭園を見に来てくれと、数人の親しい人たちともども、私を誘ってくれていた。
 ロクス・ソルス荘――これが、この大邸宅の名前だ――は、カントレルが、すぐれた成果を生み出している、さまざまな研究に落ち着いて没頭している静かな隠れ家である。この人里離れた場所(ロクス・ソルスというラテン語の訳語)では、彼は、パリの喧騒に少しも煩わされず、その一方、研究の必要上、どこか特殊な図書館に行かねばならない時とか、学界で、好評嘖々(さくさく)の講演を行い、その中でセンセーショナルな発表をする時とかには、十五分足らずで首都までゆくことができる。
 彼のたえざる発見に感嘆し、その研究の完成を骨身を惜しまず助けている熱心な弟子たちにかこまれて、カントレルが、一年の大半を暮しているのは、このロクス・ソルス荘である。別荘の中には、沢山の助手が働く、設備の完備した模範的な実験室がいくつかある。そして彼は、大資産家で、係累のない独身者ときているので、目的のさまざまな、苦労の多い研究の途中で、どんな物質上の困難が生じても平気で、心おきなく、全生活を科学に捧げている。」



「解説」より:

「ルーセルのもう一つの長篇小説『アフリカの印象』(一九一〇)の邦訳を読まれた方々は、彼がこの作品において、その独自な世界を一層ゆるぎなく確立しているさまを御覧になるだろう。
 本質的な点では、ほとんどなにも変わっていない。たとえば構成は、ここでもきわめて単純である。『アフリカの印象』が、アフリカのポニュケレ国に漂着したヨーロッパの客船リュンケウス号の船客たちの演じる演芸大会の描写と説明にほぼ終始しているとすれば、『ロクス・ソルス』の方は、パリ郊外モンモランシーに住む科学者マルシャル・カントレルが、その広大な邸内に設置した発明品の数々を、一群の人々が数時間にわたって見てまわるだけの話である。
 人の意表をつく奇想が、応接のいとまもないほど次々と現われるところも同じだ。『アフリカの印象』において、チターを弾く大みみずや、仔牛の肺臓製のレールの上を辷ってゆく鯨のひげで作られた奴隷の彫像や、河水の中にさまざまなイメージを描き出す水中花火に驚いた人々は、ここでは、撞槌に似た軽飛行機が人間の歯を使って作り出すモザイクや、「アカ=ミカンス」と呼ばれる光り輝く液体でみたされた巨大な水槽の中に浮かぶダントンの首や、特殊な薬を脳に注射されて生きかえり、その生涯でもっとも運命的な場面を演じている死者たちの住むガラス張りの建物に目をうばわれるだろう。
 ただし、『アフリカの印象』が、奇想の数々が呈示される第一部と、その奇想の種明かし――それ自体が奇想から成り立っているのだが――がなされる第二部とにはっきりと分けられているのに対し、『ロクス・ソルス』では、発明品の一つ一つについて、その都度カントレル博士の口を藉りて説明が加えられる、という仕組みになっていて、こちらの方が構成としては有機的である。
 文体自体も変わらない。それは、『アフリカの印象』では、河水を利用した自動織機の、『ロクス・ソルス』では撞槌に似た軽飛行機の内部構造の説明に典型的に見られるように、マニアックなまでに克明で、正確である。読者は時として、小説よりも機械のマニュアルを読んでいるような錯覚にとらわれる。」

「ルーセルの文体の秘密は、どれほど少ない言葉で、どれほど多くの内容が表現できるか、の賭けにあったと思われる。これは彼が自分に課した唯一の、そして至上の命令であり、規則であった。この規則のあまりにも厳密な適用は、ときにはアクロバット的な構文を生み出しているほどである。」
「ルーセルは、規則がなければなにもできなかった。彼自身の表現に従うなら、「規則マニア」だった。彼が文章に課したこの規則は、彼が「方法(プロセデ)」と呼んだ、もう一つの隠れた規則とあきらかに連動している。」

















































































































































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本