『京都国立近代美術館所蔵 [長谷川潔作品集]』

『京都国立近代美術館所蔵 
[長谷川潔作品集]』

L'Œuvre de Kiyoshi Hasegawa Collection de Musée National d'Art Moderne, Kyoto
京都国立近代美術館 編

光村推古書院
2003年3月12日 初版第1刷発行
231p 
27×19cm 丸背紙装上製本 カバー
定価2,400円+税



本書「凡例」より:

「図版には、京都国立近代美術館が所蔵する長谷川潔の全作品188件、及び参考資料2件を掲載した。」


「京都国立近代美術館の長谷川潔コレクションについて」より:

「あらゆる版画技法を研究し精通していた長谷川ですが、なかでも最も大きな意味を持ったのはマニエール・ノワールでした。18世紀には盛んであったのに写真製版の技術が生まれて、20世紀初頭には全く顧みられることもなかったこの技法に着目し、書物などを手がかりに、苦心の末独特の技術を創案しました。(中略)苦心の研究の結果、銅版画用のインクで唐墨の褐色や青味を帯びた黒を表すことに成功し、作品によってインクを使い分け、その黒色は微妙に作品毎に異なると長谷川は言っていました。今回の作品集はカラー製版で印刷しますが、長谷川の狙いの一端が出ればと願っています。」


表紙は薄めの堅表紙。本文用紙はマット紙で、裏がやや透けるのが気になりますが、よい印刷です。


長谷川潔作品集 01


目次:

京都国立近代美術館の長谷川潔コレクションについて (内山武夫)
長谷川潔の芸術 (島田康寛)

図版
 1 ダンス (1914 板目木版・手彩色) 文学雑誌『仮面』表紙
 2 丘上の牛(大島) (1914 板目木版)
 3 金色に躍れる男 (1915 板目木版・黄金刷り) 文学雑誌『仮面』表紙
 4 ダンス A (板目木版)
 5 ダンス B (板目木版)
 6 風(イェーツの詩に寄す) (1915 板目木版)
 7 海辺の小屋 (1915 板目木版)
 8 海岸の帆船(小笠原島) (1916 板目木版)
 9 魚見小屋 (1916 板目木版・色刷り)
 10 僧院の畑 (1916 板目木版)
 11 洋人の庭 (1916 板目木版)
 12 短歌雑誌『水甕』(第3巻 第5号)表紙・裏表紙 (1916 板目木版)
 13 種子草 (1916 板目木版・紺紙に黄金刷り)
 14 牧神の午後(ステファン・マラルメの牧歌) (1916 板目木版)
 15 海岸の家の群 (1917 板目木版・ベージュ紙に特別ボカシ試刷)
 16 海岸の木挽小屋 (1917 板目木版・ベージュ紙に特別ボカシ試刷)
 17 メニュー用小品銅版画〈試作〉 (1917 オー・フォルト)
 18 野いちご〈試作〉 (1917 オー・フォルト)
 19 水差し〈試作〉 (1917 オー・フォルト)
 20 『転身の頌』(日夏耿之介第一詩集) (1917 板目木版) 9点(表紙/蔵書票/転身/黙祷/晶光詩篇/AB INTRA/羞明/古風な月/哀憐)
 21 ムードンの陸橋 (1921 板目木版・色刷り試刷)
 22 カーニュの風景(カーニュの教会)〈未完成〉 (1921 板目木版・色刷り試刷)
 23 レダ (1922 オー・フォルトとポアント・セーシュ)
 24 『新しき小径』(堀口大学詩集)表紙・カット (木口木版) 2点
 25 若い花屋の娘〈試作〉 (1922 石版・試刷)
 26 キャンペレの古い家〈未完成〉 (1922 板目木版・色刷り試刷)
 27 キャンペレの古い家 A〈未完成〉 (1923 石版・試刷)
 28 キャンペレの古い家 B〈未完成〉 (1923 石版・試刷)
 29 若い女の顔 (1923 石版・試刷)
 30 子供の顔 (1923 石版・試刷)
 31 子供の顔 (1923 石版・試刷)
 32 ヴァロリスの村 (1924 板目木版・ベージュ紙に特別ボカシ刷)
 33 サン・メームの村 (1924 ポアント・セーシュ(ダイヤモンド刻)試刷)
 34 水辺脱衣 (1924 ポアント・セーシュ(ダイヤモンド刻)試刷)
 35 『月下の一群』(堀口大学訳詩集)表紙 (1925 木口木版)
 36 『日夏耿之介定本詩集』表紙・エキスリブリス (1925 木口木版) 6点
 27 日蝕 (1925 ポアント・セーシュとビュラン)
 38 奇術 (1925 ポアント・セーシュ、手彩色)
 39 思想の生れる時 (1925 ポアント・セーシュ、手彩色)
 40 水浴の少女 (1925 ポアント・セーシュ)
 41 プロヴァンスの古市(グラース) (1925 マニエール・ノワール)
 42 南仏古村(ムーアン=サルトゥー) (1925 マニエール・ノワール)
 43 鳥と花 (1926 木口木版・色刷り) 巴里ギメー美術館に於ける杵屋佐吉演奏会プログラム用木版画
 44 『砂の枕』(堀口大学詩集)カット (1926 木口木版) 2点
 45 “Le Japon traditionnel”(『昔の日本』巴里祭刊)表紙・カット (1926 木口木版) 3点
 46 金魚鉢の中の小鳥 (1927 ポアント・セーシュ)
 47 ヴォルクスの村 (1927 マニエール・ノワール)
 48 葡萄と梨 (1927~28 ビュラン)
 49 ロエの村道 (1928 マニエール・ノワール)
 50 ラ・コル村風景 (1928 板目木版・色刷り試刷)
 51 小さな金魚鉢 (1928 ポアント・セーシュ)
 52 水浴の女 (1929 ポアント・セーシュ(ダイヤモンド刻)試刷)
 53 アネモネと野草 (1929 ポアント・セーシュ、日本紙特別刷り)
 54 農家と雲 (1929 ポアント・セーシュ)
 55 カーネの水車小屋 (1929 マニエール・ノワール)
 56 サン・ポール・ド・ヴァンスの村 (1929 マニエール・ノワール)
 57 小鳥と花(春陽会展カタログ表紙) (1930 木口木版)
 58 アレキサンドル三世橋とフランス飛行船 (1930 マニエール・ノワール)
 59 ニューヨーク上空のポアン・ダンテロガッション号 (1930 マニエール・ノワール)
 60 アネモネ (1930 ポアント・セーシュ)
 61 オーバーニュ風景 (1931 マニエール・ノワール)
 62 窓辺の草花 (1931 ポアント・セーシュ)
 63 コップに挿した種子草 (1931 ポアント・セーシュ)
 64 シャトー・アルヌーの寺院 (1932 マニエール・ノワール)
 65 オランジュと葡萄 (1932 マニエール・ノワール)
 66 薔薇とハートの1〈未完成〉 (1932 アクアタント)
 67 ダリア(愛の天使の窓掛)〈未完成〉 (1932 ポアント・セーシュ)
 68 民謡集『支那の夜』(フランス創作木版画協会出版)挿絵 (1932 木口木版) 5点
 69/70 『竹取物語』(本野盛一仏訳、パリ・リーヴル・ダール協会出版)特装本/普及本 (1933 ビュラン) 40点
 71 エッフェル塔と雲 (1933 ビュラン)
 72 マルキシャンヌの村(東ピレネーの村) (1934 ポアント・セーシュ)
 73 二つのアネモネ (1934 アクアタント)
 74 ソリエスの村 (1935 ポアント・セーシュ)
 75 伊太利アッシジのサンタ・キヤラ古寺 (1935 ポアント・セーシュ)
 76 コップのダリア (1935 マニエール・ノワール)
 77 裸婦 (1936 ビュラン)
 78 モトリコ漁村(スペイン)[モトリコの教会] (1936 ポアント・セーシュ)
 79 サン・ポール・ド・ヴァンスの風景 (1936 ポアント・セーシュ)
 80 サン・ジロラーモの門(イタリア、ペルジヤ) (1937 ポアント・セーシュ)
 81 サン・ジミニャーノ風景(イタリア) (1937 ポアント・セーシュ)
 82 花瓶に挿したコクリコと種草 (1937 ビュラン)
 83 花瓶に挿したコクリコと種草 (1937 ビュラン)
 84 三つのアネモネ (1937 マニエール・ノワール)
 85 ジゴンダ古村の礼拝堂 (1938 ポアント・セーシュ)
 86 聖体を受けたる少女 (1938 ポアント・セーシュ)
 87 三羽の燕、雲、樹 (1938 ビュラン) 駐仏日本全権大使仏国大統領招宴用メニュー銅版画
 88 小さなアネモネ (1939 アクアタントとヴェルニ・ムー)
 89 村の礼拝堂〈未完成〉 (1939 ポアント・セーシュ)
 90 ジャ・ド・ブッファン(ポール・セザンヌの家) (1940 ポアント・セーシュ)
 91 一樹(ニレの木) (1941 ポアント・セーシュ)
 92 レ・ボウの風景 (1941 ポアント・セーシュ)
 93 シャトー・ド・ヴェヌヴェルの窓 (1941 ビュラン)
 94 ヴェヌヴェルの丘上の古い農家 (1942 ポアント・セーシュ)
 95 野草(コクリコと矢車草) (1943 ビュラン)
 96 切子グラスに挿したアネモネと草花 (1944~45 アクアタント)
 97 花/Fleurs (1944~45 アクアタント) 『銅版画』(ジャック・プチ書房刊)のうち
 98 宝石と香水 (1946 オー・フォルト)
 99 コップに挿した枯れた野花 (1950 ビュラン)
 100 くりとかたつむり (1950 ビュラン)
 101 木の葉の上の魚 (1950 ビュラン)
 102 開かれた窓 (1951 ビュラン)
 103 彫像のある静物 (1951 ビュラン)
 104 コップに挿した野花(春) (1951 ビュラン)
 105 コップに挿した野花(秋)[種草] (1951 ビュラン)
 106 開かれた窓と小鳩(1952年賀状用) (1951 ビュラン)
 107 パリの小鳩嬢〈平和と繁栄の使節〉(1952年賀状用) (1951 ビュラン)
 108 フレジュスの古代羅馬の燈台 (1952 マニエール・ノワール)
 109 窓辺の猫 (1952 マニエール・ノワール)
 110 窓辺の花瓶 (1952 マニエール・ノワール)
 111 黄金律(1953年賀状用) (1952 ビュラン(ヴェラン皮刷り))
 112 黄金率(1953年賀状用) (1952 ビュラン)
 113 コップに挿した野草 (1953 ビュラン)
 114 若木 (1953 オー・フォルト)
 115 置き忘れられた人形 (1953 ビュラン)
 116 野薊 (1953 オー・フォルト)
 117 クリスマスの夕べ (1953 ビュラン)
 118 木と月 (1954 オー・フォルト)
 119 アカシヤの老樹 (1954 オー・フォルト)
 120 窓上の人形 (1954 オー・フォルトとビュラン)
 121 地球(1955年賀状用) (1954 ビュラン) 
 122 窓辺卓子 (1954~55 マニエール・ノワール)
 123 仏国大統領エリゼ宮饗宴メニュー用銅版画 (1955 ビュラン) 2点
 124 半開の窓 (1956 ビュラン)
 125 再生したる林檎樹 (1956 オー・フォルト)
 126 フランス版画家協会晩餐会メニュー用銅版画 (1956 ビュラン)
 127 野辺小禽 (1957 ビュラン)
 128 アトミック時代と平和(クリスマス・カード) (1957 ビュラン)
 129 玻璃球のある静物 (1959 マニエール・ノワール)
 130 小鳥と落葉 (1959 マニエール・ノワール)
 131 瓶の秋草(ピエ・ド・シェーブル) (1959 マニエール・ノワール)
 132 薔薇と封書 (1959 マニエール・ノワール)
 133 樹と村の小寺院(フランス版画家協会のために) (1959 オー・フォルト)
 134 卓上 (1959 ビュラン)
 135 卓上の人形 (1960 マニエール・ノワール)
 136 チュウリップと三蝶 (1960 マニエール・ノワール)
 137 セードルの実のある静物画 (1960 マニエール・ノワール)
 138 木の根と小鳥 (1960 マニエール・ノワール)
 139 コップに挿した種子草 (1961 マニエール・ノワール)
 140 薔薇と時 (1961 マニエール・ノワール)
 141 骰子独楽と幸福の星 (1961 マニエール・ノワール)
 142 小鳥と胡蝶 (1961 マニエール・ノワール)
 143 飾り棚のオブジェ (1962 マニエール・ノワール)
 144 幾何円錐型と宇宙方程式 (1962 マニエール・ノワール)
 145 飼馴らされた小鳥(草花と種子) (1962 マニエール・ノワール)
 146 飼馴らされた小鳥(西洋将棋等) (1962 マニエール・ノワール)
 147 花と果実 (1963 マニエール・ノワール)
 148 酒盃の草花 (1963 マニエール・ノワール)
 149 狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話) (1963 マニエール・ノワール)
 150 『長谷川潔の肖像』(「現代版画の巨匠」豪華限定版叢書、マヌエル・ブルッケール出版社刊) (1963 本) 
  1 花〈表紙〉 (マニエール・ノワール)
  2 アカリョムの中の小鳥〈扉〉 (ビュランとポアント・セーシュ)
  3 古村 (ポアント・セーシュ)
  4 薔薇 (マニエール・ノワール)
  5 若木 (オー・フォルト)
  6 蝶のいる静物 (マニエール・ノワール)
  7 コップに挿した野花 (ビュラン)
  8 玻璃球のある静物 (マニエール・ノワール)
  9 ニレの老樹 (ポアント・セーシュ)
  10 窓からの眺め (マニエール・ノワール)
 151 小鳥と二つの枯葉 (1964 マニエール・ノワール)
 152 小鳥と魚の友愛 (1964 マニエール・ノワール)
 153 砂漠の薔薇と海の星 (1964 マニエール・ノワール)
 154 美食家協会メニュー用銅版画 (1964 マニエール・ノワール)
 155 幸福の小鳥(1965年賀状用) (1964 マニエール・ノワール、手彩色)
 156 仮装したる狐 静物画(フィンランド童話) (1965 マニエール・ノワール)
 157 コップに挿したアンコリの花(過去・現在・未来) (1965 マニエール・ノワール)
 158 ジロスコープのある静物 (1966 マニエール・ノワール)
 159 瓶に挿した種草 (1966 マニエール・ノワール)
 160 メキシコの鳩 静物画 (1966 マニエール・ノワール)
 161 メキシコの種子草 静物画 (1967 マニエール・ノワール)
 162 メキシコの魚 静物画 (1967 マニエール・ノワール)
 163 本の上の小鳥 静物画 (1967 マニエール・ノワール)
 164 オパリンの花瓶に挿した種子草 (1968 マニエール・ノワール)
 165 草花とアカリョム (1969 マニエール・ノワール)
 166 時 静物画 (1969 マニエール・ノワール)
 167 小鳥と花と果物(賀状用) (1969 マニエール・ノワール、手彩色)
 168 横顔 (1970 マニエール・ノワール)
 169 水浴の少女と魚 (1971 ポアント・セーシュ)
 170 ニオンスの村 (1923 油彩・キャンヴァス)
 171 ヴォルクスの村 (1930 油彩・キャンヴァス)
 172 ヴェーゾン・ラ・ロメーヌ (1937 油彩・キャンヴァス)
 173 白い花瓶に挿した薔薇その他 (1938 油彩・キャンヴァス)
 174 白い花瓶に挿した草花 (1948 油彩・キャンヴァス)
 175 コップに挿したボルビイリス (1948 油彩・キャンヴァス)
 176 コップに挿した草花 (1948 油彩・キャンヴァス)
 177 種子草写生 (1935 墨)
 178 草花写生 A (1935~36 墨・淡彩)
 179 草花写生 B (1935~36 墨・淡彩)
 180 種子草写生 (1936 墨)
 181 聖体を受けたる少女 (1946 サンギン)
 182 若い娘 (1947~48 サンギン)
 183 若き女の顔 (不詳 サンギン)
 184 種子草 (1953 セピヤ・インク)
 185 根の付きたる種子草 (1953 青墨)
 186 ヴェヌヴェルの古い農家 (1953 青墨)
 187 枯草 (1956 墨(毛筆描写)
 188 灌木の一枝 (1956 墨・淡彩)
 参考1 「名墨集」(18葉のうち) (不詳 墨・拓本) 5点
 参考2 庭のベンチ(ジェイムズ・ティソ原作) (1883 マニエール・ノワール)

年譜
所蔵作品総目録

京都国立近代美術館の概要



長谷川潔 作品集 02



◆本書より◆


長谷川潔作品集 03

「ダンス」
「金色に躍れる男」
(板目木版)


長谷川潔作品集 04

短歌雑誌「水甕」表紙・裏表紙
「種子草」
(板目木版)


長谷川潔作品集 05

「奇術」
「思想の生れる時」
(ポアント・セーシュ)


長谷川潔作品集 06

「小鳥と花」
『砂の枕』(堀口大学詩集)カット
「鳥と花」
(木口木版)


長谷川潔作品集 07

“Le Japon traditionnel”表紙・カット
民謡集『支那の夜』挿絵
(木口木版)


長谷川潔作品集 08

「樹と村の小寺院」
「木と月」
(オー・フォルト)


長谷川潔作品集 09

「メキシコの種子草 静物画」
「仮装したる狐 静物画(フィンランド童話)」
(マニエール・ノワール)


長谷川潔作品集 10

「根の付きたる種子草」
(青墨)
「灌木の一枝」
(墨・淡彩)


島田康寛「長谷川潔の芸術」より:

「長谷川潔のマニエール・ノワールは、1959年頃から、彼が創案した刻線下地から古典的な刻点下地へと変化していく。刻線下地によるマニエール・ノワールは画面をいきいきとしたものにしたが、自己の思想や哲学を表現するために静的な画面を必要とした彼は、刻点下地を用い、さらに「半調子の数を制限し、黒色を最大限に深め、明るい部分を出来るだけ強め」ることによってその効果を高めようとしたのである。こうして最大限に深められた黒色の背景は、暗示的、精神的空間としての役割を果たすことになり、東洋絵画独特の絵画空間を近代的に変容させることにもなった。しかも、一見同じに見えるこの黒色も、よく見るとそれぞれの作品によって微妙に色合いが異なり、墨に五彩ありとする東洋の精緻な感覚がここにみごとに生かされていることも明らかである。
 刻点下地による深い黒色のマニエール・ノワール作品が見られるようになるのと平行して、その主題もまた静物画に帰着する。そこに登場する草花や種子草、また鳥や魚、あるいは砂時計や玩具や人形という平凡な主人公たちは、それぞれの存在を声高に主張せず、静かにそれぞれの位置に在る。長谷川潔はこれらのものたちの組み合わせ方、配置の仕方の中に、何らかの意味――彼にとっての美であり、真理であり、神であるものを暗示しているのである。」
「マニエール・ノワールという技法は先にも述べたように微細なささくれを丹念に削ったり、ならしたりしていく、少しの狂いも許されない、気の遠くなるような作業であるから、正確な観察力と繊細な感覚、沈着さと明晰さ、そしてこれを成し遂げる強い意志を必要とする。これはまさに、長谷川潔の天禀に沿うものであり、彼が自然に見入っている時の姿にも似ている。この技法の採用が彼の自然観察の態度を深めたのか、彼の自然観察の態度がこの技法を必要としたのか、おそらくこの二つともが相互に作用しているのであろう。技術や技法が単なるそれではなく、必然的要求として血肉化したものであることこそ芸術家にとっての至福と言うべきであるが、長谷川潔とマニエール・ノワールの関係にこの好例を見ることが出来る。」



長谷川潔作品集 11

「小鳥と魚の友愛」
(マニエール・ノワール)



こちらもご参照下さい:

長谷川潔 『白昼に神を視る』
『没後15年記念 長谷川潔 展』 (三鷹市美術ギャラリー 1995年)
駒井哲郎 『増補新版 銅版画のマチエール』
堀口大學 『月下の一群』 (第一書房版 複刻)
堀口大学 『水かがみ』
『日夏耿之介全集 第一卷 詩集』
『齋藤磯雄著作集 I 文學研究 他』











































































































































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

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