『没後15年記念 長谷川潔 展』 (三鷹市美術ギャラリー 1995年)

『没後15年記念 
長谷川潔 展
その、言語を超えた精神世界』 


三鷹市美術ギャラリー 
1995年7月18日 発行
69p 29.7×21cm 並装
編集: 三鷹市美術ギャラリー/浅倉祐一朗
制作: 大塚巧藝社

挟込 「お詫びと訂正」 (1p)


三鷹市美術ギャラリー
1995 7月18日(火)―8月20日(日)



出品作図版100点、参考図版2点。


長谷川潔展 その、言語を超えた精神世界 01


「ごあいさつ」より:

「三鷹市美術ギャラリーでは第7回目の企画展といたしまして、《没後15年記念 長谷川潔展――その、言語を超えた精神世界――》を開催いたします。」
「1891年(明治24)横浜に生まれた長谷川潔は、22歳のとき文芸同人誌『聖盃』(のちに『仮面』と改題)の表紙絵を担当したことをきっかけに版画の世界にはいりました。当初は木版画でしたが銅版画にも関心をもち、1918年(大正7)には大戦終結を待ってパリに向かいます。数年で銅版画技法を身につけ帰国する予定でしたが、マニエール・ノワールとの出会いが、結果的には一度も帰国することなく89年の生涯をパリの地に終わらせることとなりました。それほどにマニエール・ノワールという、当時ほとんど忘れられていたといってもよい銅版画の一技法は彼をとらえて離さなかったのです。
 長谷川はマニエール・ノワールの研究を独自にすすめる一方で、ビュラン、ポアント・セッシュ、オー・フォルト、アクアタントなど、あらゆる銅版画の技法をみずからのものとし、フランスにおいてすでに1930年代に高い評価を得ることとなりました。以後、個展開催、作品買い上げ、数多の授賞歴等枚挙に遑がなく、1966年にはフランス文化勲章を受章しています。」
「長谷川が習得した様々な技法はやがてマニエール・ノワールへと収斂されてゆきます。漆黒の闇は深みを増し、60年代に入ると、墨に五彩ありとする東洋の美に通じるノワール(黒)が、独自の宇宙観にもとづいた精神世界を築きあげます。71年、みずから育て上げた刷師が亡くなるとマニエール・ノワールによる作品は姿を消します。しかしこの10年間に制作された作品は、まるでそのことを予期していたかのように長谷川の画業の頂に位置しているといえます。生をもつ鳥獣草木も、生をもたない物質たちも一様に昇華され私たちに語りかけてきます。それは言葉にならない言葉ですが、その、私たちと彼らとのあいだに架けられたモノクロームの虹こそが長谷川潔の芸術世界なのです。
 本展覧会は、渡仏以前の初期作品から60年代の代表作まで100点を展示し、その芸術世界を紹介するとともに、没後15年を経た今、あらためてその精神と技法の「幸福な」出会いを再考してみようとするものであります。」



長谷川潔展 その、言語を超えた精神世界 02


目次:

謝辞
ごあいさつ (主催者)

長谷川潔の黒 (大河内菊雄)
精神と物質に架かるモノクロームの虹 (浅倉祐一朗)

図版
 1 丘上の牛(大島) (1914 板目木版)
 2 海岸の帆船(小笠原島) (1916 板目木版)
 3 洋人の庭 (1916 板目木版)
 4 風景(小笠原島) (1917 板目木版)
 5 失われた宝石 (1920 板目木版)
 6 カーニュの風景(カーニュの教会)〈未完成〉 (1921 板目木版(多色刷))
 7 ムードンの陸橋 (1921 板目木版(多色刷))
 8 ケンタウロス (1921 木口木版)
 9 旅回りのサーカスの女 (1922 オー・フォルト)
 10 レダ (1922 オー・フォルト/ポアント・セッシュ)
 11 夢想 (1922 石版)
 12 シャイイの積藁 (1923 オー・フォルト)
 13 アルルのはね橋 (1923 オー・フォルト)
 14 子供の顔(四分の三観面) (1923 石版)
 15 カーニュの風景 (1923 オー・フォルト/ポアント・セッシュ)
 16 サン・メームの村 (1924 ポアント・セッシュ)
 17 髪を結う女 (1924 ポアント・セッシュ)
 18 日蝕 (1925 ポアント・セッシュ/ビュラン)
 19 思想の生まれる時 (1925 ポアント・セッシュ)
 20 教会の道(サン・メーム) (1925 マニエール・ノワール)
 21 ヴィーナスの誕生 (1926 木口木版)
 22 貝殻 (1926 木口木版)
 23 金魚鉢の中の小鳥 (1927 ポアント・セッシュ)
 24 サーカスの女 (1927 ポアント・セッシュ)
 25 小さな金魚鉢 (1928 ポアント・セッシュ)
 26 ロエの村道 (1928 マニエール・ノワール)
 27 アネモネと野草 (1929 ポアント・セッシュ)
 28 カーネの水車小屋 (1929 マニエール・ノワール)
 29 ル・ブールジェ空港 (1930 ポアント・セッシュ)
 30 アレキサンドル三世橋とフランス飛行船 (1930 マニエール・ノワール)
 31 ニューヨーク上空のポアン・ダンテロガシオン号 (1930 マニエール・ノワール)
 32 コップに挿した種子草 (1931 ポアント・セッシュ)
 33 林檎と葡萄 (1931 マニエール・ノワール)
 34 オレンジと葡萄 (1932 マニエール・ノワール)
 35 シャトー・アルヌーの寺院 (1932 マニエール・ノワール)
 36 竹取物語(かぐや姫物語) (1933 ポアント・セッシュ/ビュラン)
 37 二つのアネモネ (1934 アクアタント)
 38 コップのダリア (1935 マニエール・ノワール)
 39 モトリコの漁村(スペイン) (1936 ポアント・セッシュ)
 40 裸婦 (1936 ビュラン)
 41 サン・ジロラーモ (1937 ポアント・セッシュ)
 42 三つのアネモネ (1937 マニエール・ノワール)
 43 三羽の燕、雲、樹(パリ、日本大使館仏国大統領招宴用メニュー) (1938 ビュラン)
 44 村の礼拝堂〈未完成〉 (1939 ポアント・セッシュ)
 45 雲 (1940 ポアント・セッシュ)
 46 ジャ・ド・ブーファン(エクス・アン・プロヴァンスのポール・セザンヌの家) (1940 ポアント・セッシュ)
 47 一樹(ニレの木) (1941 ポアント・セッシュ)
 48 シャトー・ド・ヴェヌヴェルの窓 (1941 ビュラン)
 49 フォンヴィエイユの古い水車 (1942 オー・フォルト)
 50 庭(仏陀の顔と) (1943 ポアント・セッシュ)
 51 花(切子ガラスに挿したアネモネと草花) (1944―45 アクアタント)
 52 宝石と香水 (1946 オー・フォルト)
 53 木の葉の上の魚 (1950 ビュラン)
 54 くりとかたつむり (1950 ビュラン)
 55 閉じた窓 (1951 アクアタント)
 56 コップに挿した野花(春) (1951 ビュラン)
 57 コップに挿した野花(秋) (1951 ビュラン)
 58 フレジュスの古代羅馬の灯台 (1952 マニエール・ノワール)
 59 窓辺の猫 (1952 マニエール・ノワール)
 60 置き忘れられた人形 (1953 ビュラン)
 61 コップに挿した野草 (1953 ビュラン)
 62 アカシヤの老樹 (1954 オー・フォルト)
 63 木と月 (1954 オー・フォルト)
 64 窓辺の卓子 (1954―55 マニエール・ノワール)
 65 半開の窓 (1956 ビュラン)
 66 野辺の月 (1956 オー・フォルト)
 67 アトミック時代と平和(クリスマス・カード) (1957 ビュラン)
 68 静物 (1958 マニエール・ノワール)
 69 瑠璃球のある静物 (1959 マニエール・ノワール)
 70 瓶の秋草(ピエ・ド・シェーヴル) (1959 マニエール・ノワール)
 71 小鳥と落葉 (1959 マニエール・ノワール)
 72 薔薇と封書 (1959 マニエール・ノワール)
 73 卓上の人形 (1960 マニエール・ノワール)
 74 セードルの実のある静物画 (1960 マニエール・ノワール)
 75 チューリップと三蝶 (1960 マニエール・ノワール)
 76 木の根と小鳥 (1960 マニエール・ノワール)
 77 コップに挿した種子草 (1961 マニエール・ノワール)
 78 薔薇と時 (1961 マニエール・ノワール)
 79 小鳥と胡蝶 (1961 マニエール・ノワール)
 80 骰子独楽と幸福の星 (1961 マニエール・ノワール)
 81 飼いならされた小鳥(西洋将棋など) (1962 マニエール・ノワール)
 82 飾り棚のオブジェ (1962 マニエール・ノワール)
 83 幾何円錐型の宇宙方程式 (1962 マニエール・ノワール)
 84 狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話) (1963 マニエール・ノワール)
 85 酒盃の草花 (1963 マニエール・ノワール)
 86 薔薇と果実[花と果実] (1963 マニエール・ノワール)
 87 小鳥と魚の友愛 (1964 マニエール・ノワール)
 88 小鳥と二つの枯葉 (1964 マニエール・ノワール)
 89 砂漠の薔薇と海の星 (1964 マニエール・ノワール)
 90 静物画・仮装したる狐(フィンランド童話) (1965 マニエール・ノワール)
 91 コップに挿したアンコリの花(過去・現在・未来) (1965 マニエール・ノワール)
 92 メキシコの鳩 静物画 (1966 マニエール・ノワール)
 93 ジロスコープのある静物画 (1966 マニエール・ノワール)
 94 瓶に挿した種草 (1966 マニエール・ノワール)
 95 本の上の小鳥 静物画 (1967 マニエール・ノワール)
 96 オパリンの花瓶に挿した種子草 (1968 マニエール・ノワール)
 97 草花とアカリョム (1969 マニエール・ノワール)
 98 時 静物画〈手彩色〉 (1969 マニエール・ノワール)
 99 時 静物画 (1969 マニエール・ノワール)
 100 水浴の少女と魚 (1971 ポアント・セッシュ)
 
銅版画の技法
出品目録
長谷川潔略年譜



長谷川潔展 その、言語を超えた精神世界 04



◆本書より◆


「フランスへ来たばかりの頃、メゾチントの古い銅版画を見て、日本で聞いたこともなかったし、非常に特徴のある技術だと思ったんです。ところが忘れられた技法でフランス人もよく知らないんです。ですから他の技術と同じように、僕は随分本を買って読んだんです。その当時見付けた技術書というのは、殆ど読みました。18世紀のアブラハム・ボスの本も手に入れました。ところが技術書というのは、相当くわしく書いてあるようで簡単でしかも重要なところはぬけている。(笑)
 メゾチントの場合にはベルソーという特別な道具が必要でそれを技術書の挿画などで見ることはできても、本物はどこにもないんですね。2・3年探しましたよ。パリで見付からずようやく英国製のものを手に入れたのが、1922年です。暗中模索でいろいろやってみて、独創的下地を作ることに成功し、発表できるような版画ができたのが、1924年なんです。

 フランスでメゾチントのことをマニエール・ノワールといいますが、ちょっと間違えられやすい言葉で、ただ単に「黒い様式」というのではなく、マニエール・ノワールは、(17世紀にジーゲンという人が創った)特殊なベルソーという道具で、版画に下地を作った銅版画のみに用いられる言葉です。

 長谷川仁ほか編『白昼に神を視る』新装・改訂普及版(白水社)より」



長谷川潔展 その、言語を超えた精神世界 03



こちらもご参照下さい:

『京都国立近代美術館所蔵 [長谷川潔作品集]』












































































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