アントナン・アルトー 『ヴァン・ゴッホ』 (粟津則雄 訳/筑摩叢書)

「私は、流星のごとき不在を、燃えあがるふいごのごとき不在を持っている。」
(アントナン・アルトー 「力の鉄床」 より)


アントナン・アルトー 
『ヴァン・ゴッホ』 
粟津則雄 訳

筑摩叢書 303

筑摩書房
1986年10月25日 初版第1刷発行
1990年1月30日 初版第5刷発行
188p 目次2p モノクロ図版2p 
カラー図版2葉
四六判 並装 カバー
定価1,340円(本体1,301円)
装幀: 原弘



本書「あとがき」より:

「本書におさめた文章のなかで『ヴァン・ゴッホ 社会が自殺させた者』及び『神経の秤』は、『ヴァン・ゴッホ』と題して、一九七一年に新潮社から上梓したものである。」
「今回、筑摩叢書におさめるにあたって、『神経の秤』とともに彼の初期を代表する作品のひとつである『芸術と死』を加えた。」
「新版に際して、旧訳に能うかぎり手を加えたのはもちろんだが、『アルトー全集』増補新訂版(Ed. Gallimard)その他を参照して、旧訳の底本に見られた読みのあやまりや誤植を正し、新たに訳註を付した。」



アルトー ヴァンゴッホ 01


帯文:

「狂気に隣接して生きた詩人にして残酷演劇の実践者アルトーの、最晩年に一気に書下された美術論の傑作。「単なる批評的産物というよりも、この異様な詩人がゴッホに覚えた全身的な共感が生み出した血の叫びとでも言うべきもの。」最初期の作品『神経の秤』および『芸術と死』(本邦初訳)を加える。図版4点収録。」


目次:

ヴァン・ゴッホ
 序文
 追記
 社会が自殺させた者
 追記
 追記

神経の秤
 〔たしかに私は感じたのだ〕
 私信
 第二の私信
 第三の私信
 或る地獄日記の断片

芸術と死
 或る種の不安の……
 女占者の手紙
 エロイーズとアベラール
 明るいアベラール
 毛のウッチェロ
 力の鉄床
 自動人形
 愛のガラス

訳註
あとがき (1971年2月/1986年8月)




◆本書より◆


「ヴァン・ゴッホ」より:

「こうして、社会は、自分が厄介払いをしたいとか、遠ざけておきたいとか思ったすべての人間たちを、精神病院で窒息させてしまったわけです。彼らが、或る種のいどく不潔なふるまいに関して、社会の共犯者になることを拒んだためにね。」

「ヴァン・ゴッホは、全生涯を通じて、異様な力と決意とをもって、彼の自我を求め続けた。
 もっとも、彼は、この自我に至りつけないのではないかという不安から、狂気の発作に襲われて自殺したわけではない。
 それどころか、彼は、その自我に至りつき、自分がいかなる存在であり、何者であるかを見出したばかりだった。そしてそのときに、社会の一般的な意識が、彼が、社会から離れ去ったことへの罰として、
 彼を自殺させたのである。」

「すべての狂人のなかには、理解されざる天才がいて、かつて彼の頭のなかで輝いていたこの天才の観念が人びとをおそれさせたわけだが、この天才は、人生があらかじめ彼に課した八方ふさがりの状態から抜け出す道を、錯乱のなかにしか見出しえなかったのだ。」

「ヴァン・ゴッホは正しかった。人は無限のために生きることができるし、無限によってのみ満足することができる。この地上と諸天体には、無数の偉大な天才を満足させられるだけの無限がある。そして、ヴァン・ゴッホが、おのれの生全体を無限にさらしたいという欲求をみたしえなかったのは、社会が彼にそれを禁じていたからだ。
 はっきりと、意識的に禁じていたからだ。
 ジェラール・ド・ネルヴァルや、ボードレールや、エドガー・ポオや、ロートレアモンにたいする迫害者がいたように、ヴァン・ゴッホの迫害者がいたのである。」

「それに、いかなる人も、自分だけの力で自殺しはしない。
 いかなる人も、ひとりで生れはしなかった。
 いかなる人も、ひとりで死にはしないのだ。
 だが、自殺の場合は、肉体にたいして、われとわが生を奪い去るというような不自然な行為を決意させるには、一群の悪しき存在が必要なのだ。
 そして、私は思うのだが、究極の死の瞬間においては、つねに、他の誰かがいて、われわれから、われわれ自身の生命を奪うのだ。」



「明るいアベラール」より:

「あわれな男よ! あわれなアントナン・アルトーよ! 星たちによじのぼり、おのれの弱さを諸要素の方位基点と対質させようと試み、自然の、微妙な、あるいは凝固した各面のそれぞれから、ゆらぐことのない思考と、しっかりと立ったイメージとを作りあげようと努めているこの不能者、これこそまさしく彼なのだ。」
「アルトーにとって、喪失は、彼がのぞんでいるあの死のはじまりだ。だが、去勢された男とは、なんと美しいイメージだろう!」



「毛のウッチェロ」より:

「私は、私の歩みが引きずってゆくこの世のあらゆる石や、ひろがりのはなつ燐光が、私を通して、それぞれの道を辿るのを感ずる。それらは、私の頭の牧場のなかで、ただひとつの暗黒のシラブルから成る語を形作る。君は、ウッチェロよ、君は、ただ単に、一本の線となることを、或る秘密の高められた段階となることを、学ぶのだ。」
























































































































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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