『土方巽全集Ⅱ』 (普及版 全二冊)

「なぜ髪の毛を長くしているのか、と聞かれるでしょう。私は死んだ姉を私の中で飼っているんです。」
(土方巽 「暗闇の奥へ遠のく聖地をみつめよ」 より)


『土方巽全集Ⅱ』 
[普及版]

編集委員: 種村季弘・鶴岡善久・元藤燁子

1998年1月21日 初版発行
2005年8月20日 普及版初版印刷
2005年8月30日 普及版初版発行
403p 口絵i  
A5判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,800円+税
装画: 中西夏之
装丁: 渋川育由



本書「解題」より:

「本冊には、「対談・インタビュー・講演」、「舞踏譜」(三種、未発表)、「未発表草稿」、「補遺」(一篇)を収録した。」


本文中図版79頁。


土方巽全集Ⅱ 01


帯文:

「アンダーグラウンドのバイブル

舞踏の創始者=土方巽の肉声がわれわれに語りかけるものとはなにか……
インタヴュー、対談、講演録のほか、舞踏譜、未発表草稿、最新の年譜を収録。
魂を揺さぶる、待望の普及決定版、ここに完結!」



帯背:

「暗闇の奥へ
遠のく聖地へ」



土方巽全集


帯裏:

「アンダーグラウンドなどがすべて風化していくのも、外部のせいじゃなく、
やってる人間たちの問題なんじゃないかと思うんですね。
すぐ自分の外側に砂漠を設定して、水もないなどと言う。
そんなことを言う前に、
自分の肉体の中の井戸の水を一度飲んでみたらどうだろうか、
自分のからだにはしご段をかけておりていったらどうだろうか。
自分の肉体の闇をむしって食ってみろと思うのです。
ところが、みんな外側へ外側へと自分を解消してしまう……

「肉体の闇をむしる……」より」


土方巽全集Ⅱ 02


目次:

対談・インタヴィュー・講演
 肉体の闇をむしる…… (聞き手: 澁澤龍彦)
 暗黒の舞台を踊る魔神 (聞き手: 佐藤健)
 暗闇の奥へ遠のく聖地をみつめよ (対談: 宇野亜喜良)
 光と闇を駆け抜ける (対談: 唐十郎)
 「おおー」と風だるまが座敷に…東北人の訪問 (対談: 吉行淳之介)
 森羅万象を感じとる極意 (対談: 白石かずこ)
 白いテーブルクロスがふれて (対談: 中西夏之)
 風だるま (講演)
 東北から裸体まで――土方巽の遺言 (聞き手: 山口猛)
 舞踏行脚 (講演)

舞踏譜
 舞踏に関する覚え書き
 舞踏のための資料
 「なだれ飴」のためのスクラップ・ブック (全一冊)
 舞踏のためのスクラップ・ブック集より

未発表草稿

[補遺] 或る場所にある卵ほどさびしいものはない

年譜 (構成: 土方巽アーカイヴ 森下隆)
解題 (鶴岡善久)



土方巽全集Ⅱ 03

「舞台「肉体の叛乱」より」(撮影: 中谷忠雄)



◆本書より◆


「暗黒の舞台を踊る魔神」より:

「何万年もの歴史の中で、人間ははぐれてしまった。子供というのは、欲望がいっぱいあるし、感情だけをささえに生きているために、できるだけはぐれたものにであおうとする。ところが大きくなるにしたがって、自分のはぐれているものをおろそかにして、他人との約束ごとに自分を順応させる。それではぐれていない、と過信してしまう。飼いならされてしまうわけですね。」

「ヒマさえあれば押入れにはいっていましたね。実にねやすいところなんですね。人間というのは腹の中からでてきたとたんに、自分の身長だとか体重だとかをはかるすべを失ってしまうんですね。だから身の高さをはかれない。何センチということではなくですよ。もちろん空の高さもはかれない。(中略)押入れの中ではゴツンゴツンと頭をぶつけて、なんとなくはかれる場所のような気がするんですよ。」



「暗闇の奥へ遠のく聖地をみつめよ」より:

「かいつまんでいいますと、私は劇団という形が嫌なんですよ。集約的な人間関係が性に合わなくて、やはりふとんの中へもぐって好き勝手なことをしていたいわけです。私のコミュニケートの方法は、人間関係を外側に求めないで、一個の体の中でいつもはぐれている自分と出くわす、自主的にその人に出くわさせるようにするのです。」

「ですから私は誰にでも踊りはできるし、教わるなんて、何しに来たのか、っていうんです。」



「風だるま」より:

「昔、坊さんの景戒(きょうがい)って人が、『日本霊異記』を書いたんですが、その著者が自身のことを夢に見た。延暦七年戊辰の春、三月十七日の夜見た夢であります。
 景戒は、夢の中で自分が死んだ時に薪を積んで、死んだ自分の身を焼いた。景戒の魂が自分の身が焼けるそばに立って見ていますと、思うように身体が焼けない。それで自分で小枝を折ったり取って来たりして、焼かれる自分の身を突き刺して、串刺しにしてひっくり返すようにして焼いた。同じように焼いてる他人にも教えて私のようによく焼きなさい、と言いました。それで自分の身の足や膝や関節の骨、腕(かいな)、頭部、みんな焼かれて切れ落ちました。そこで景戒の魂は声を出して、大声を出して叫ぶんです。ところがそばにいる人の耳には聞こえないらしい。そこでその人の耳のそばに口をつけて遺言を言おうとしてがんばるんだけど、その人は聞こえないのか、答えません。それで景戒「ははあ、死んだ人の魂は声がないから、私の叫ぶ声の音が聞こえないのだろうな。」と思ったと書いてあるわけです。
 ところがちょっと待てよ、それはちょっとおかしいぞ? この景戒の書いてる文章がね、夢を見てる最中の話じゃなくて、夢から覚めて字にしたもので、こんなにさっさと書けるわけがない。私の風だるまは風に吹かれてこういうふうな坊さんの書いた、自分の骨の焼けてゆく思いを考えながら畷を歩いてくるわけです。
 片一方は火葬ですよね、ところがその風だるまは自分の体を風葬してる、魂を。風葬と火葬だ、それがいっしょくたになって何とかして叫ぼうと思うけれども、その声は風の哭き声と混ざっちゃうんですね。風だるまが叫んでるんだか、風が哭いてるのか混ざっちゃって、ムクムクと大きくなっちゃって、やっと私の家の玄関にたどりついたのです。どんな思いでたどり着いたのか? 今喋った坊さんの話と風だるまが合体して、そこに非常に妖しい風だるまの有様がひそんでいるのです。風だるまは座敷にあがって来ても、余り物を喋らない。囲炉裏端にペタッと座っている。そうすると家の者が炭を、これもまた何も聞かないで、長いこと継いでいるんですね、私は子供の時にそういう人を見て、何と不思議なんだろう、何となく薄気味悪いけど親しみが持てないわけでもないし、一体何が起ったんだろうかと思いました。」

「しかしよく雨が降ってるんですよ。それで私も縁側に座ってキャベツ畑にジャージャーっと降る雨を見てるわけですね、その縁側が重要ですよ。すると雨ってのはどこから始まってどこで終るのか、始まりも終りもないような雨が持っている時間の中に、まわりの空間も混っちゃって時間も空間も見さかいがない。そうしてキャベツが腐るように、私も芯から腐ってしまうんじゃないだろうか。そこでは、日本舞踊でよく言う「間」がありますね、その「間」も腐っちゃう。「間腐れ」って言うんですよ。間腐れになっちゃう、ああ、これは大変だ。そこで押入れの中へとっとっとっとっと逃げてゆくとかね。これは外から見たらわからないでしょう。ところが私は必死にそういうことと格闘していたわけだ。」



土方巽全集Ⅱ 04



















































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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