窪田般彌 『老梅に寄せて』

「老いを知らぬ梅の一生は
いつまでも薔薇色のまま
いささか狼狽の色は隠せない
周章老梅よ」

(窪田般彌 「老梅に寄せて」 より)


窪田般彌 
『老梅に寄せて』


書肆山田
2002年11月20日 初版第1刷
106p 初出・著者紹介3p
21.6×14.6cm 仮フランス装 カバー
定価2,400円+税
装幀: 亜令



本書「あとがき」より:

「『西方の短歌』(一九八四)以後、折にふれて発表した作品がたまったので、ささやかな詩集を編むことにした。」


窪田般彌 老梅に寄せて 01


帯文:

「死がない生活は深刻だ
死がない人生は残酷だ
おお死よ 詩の無限の戯言よ!」



帯裏:

「この世に残るものは何もない
この何もないものが残るだけ」



目次 (初出):

老梅に寄せて (「midnight press」 1999.4)
花虫類奇譚 (「ユリイカ」 1996.9)
魔術師メルランの墓 (「GANIMEDE」 9号/1997.4)
ウソの唄 (「ユリイカ」 1999.7)
緑の死相 (「毎日新聞」 1985.10.16)
秋黄昏 (「朝日新聞」 1988.10.7)
椿 (「朝日新聞」 1983.2.1)
秋海棠 (「岩礁」 92号/1997.9)
日日是口実 (「岩礁」 93号/1997.12)
嬉遊曲 (「ユリイカ」 1998.3)
飛雲抄 (「反世界」 10号/1999)
痴愚神礼賛 (「夏夷」 7号/1999.8)
秋の歌 (「ユリイカ」 1994.3)
サディ氏に寄せる哀歌 (「ユリイカ」 1993.5)
譚詩 (「ユリイカ」 1987.7)
哀悼歌 (「流域」 19/1986.7)
Light Verse (「世界日報」 1985.9.10)
懐疑的なるクリスマス (「詩学」 1987.2)
革命暦 (「現代詩手帖」 1988.9)
虫けら (「詩学」 1985.9)
夏の思い出 (「ぴぃぷる」 1984.7)
清水康雄を送る歌 (「るしおる」 37/1999.6)
哀れなリュトブフ (「現代詩手帖」 1987.4)
養花天 (「駟駱」 1986.7)
世界の寓話 (「本の手帖」 1987.9)
魔につかれて (「朔」 1986.1)
薄暮の旅人 (「GANIMEDE」 22号/2001.8)
戯歌 (「ユリイカ」 2001.12)

あとがき

初出記録――
窪田般彌(くぼたはんや)――



窪田般彌 老梅に寄せて 02



◆本書より◆


「秋黄昏(こうこん)」より:

「世紀病の悲しい秋が
伐採された樹木の霊に取りつかれ
造成された昔の森にやってきた」

「超高層ビルは地上の塵芥(ごみ)よ 文明の墓石だ」

「迷いこんだ木の葉が一枚舞い落ちる
枯葉ふむ足の感触はつねに神秘だ
秋のこころは
愁をはらむ時の色
暗い永遠さながらの」



「椿」より:

「庭園よ 私はお前をつくり直そう
せめて夕暮れから
夜明けまで生きつづけて」



「戯歌」より:

「どこかで砂漏刻(すなどけい)が
無心にこぼれおちている
せわしく非情の時をつっ走る人生よ
またたき一つの
瞬時の現在(いま)とは何なのか

ゆっくりと行け
ゆっくり急げなどと言うな
どこまでもゆっくりだ
這うだけのでんでん虫みたいに
加速知らずのあののろさには無為の魅力がある

世間はやたらに忙しがっている
能率 能力 脳天気 おまけに
急げ急げのファーストフードだ
世界には置きざりにされた賤民たちの
絶望と敵意と恨みとがむき出しになっているのに

のろ間とそしられ
愚かなるロバの如しと笑われても
あわてずにゆっくり行こう
追いぬかれることなんか気にするな
スピードは狂騒社会の罰当りだ

明日は遠い国に旅立つ者には
蝸牛(かぎゅう)ののろさは無冠の無為だ
ゆったりと流れる時に身をまかそう
もくもくとわずかな牧草を反芻している
のんき坊主の牛たちのように」

「さあ ゆっくり行こう 貯めるなら
利息のつかない無為の時を貯えよう
大量生産と消費経済はむなしい蝸角(かかく)の争いだ
おお バラ色の皺腹の
桑原桑原の人生よ!」




◆感想◆


窪田般彌さん最後の詩集である本書は未読だったのでネット古書店で西脇順三郎『近代の寓話』復刻本を注文したついでに650円で売られていた本書も注文しておいたのが届いたので読んでみました。ほぼ新品でした。

そこで本書ですが、「しがない」と「死がない」、脳「軟化」と「南下」のしゃれは、西脇順三郎さんの詩のパクリというか引用です(「脳南下症」に関しては晩年の多田智満子さんもしきりに引用していました)。西脇順三郎の長編詩『壤歌』などと同傾向の、言語遊戯による諧謔を交えての「道化」的立場からの文明批判です。功利的競争社会はわたしもだいきらいですが、だいきらいなものについては考えるのもいやなので、詩にはできればそういうものは入れてほしくないというのがほんとうのところです。



















































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