『郡司正勝 刪定集 第一巻 かぶき門』 (全六巻)

「世話物の題材は、多くは殺人とか心中とか犯罪とか、今日ならニュース種になるような事件、新聞の三面記事に載る事件で、これをすぐ舞台にのせたのである。(中略)こういう心中事件や殺人事件を舞台にのせるのは、舞台というものが非業の死をとげた人間を弔ってやる場所であるという心意伝承も、一つにはあった。」
(郡司正勝 「元禄かぶきと新浄るり」 より)


『郡司正勝 刪定集 
第一巻 かぶき門』


白水社
1990年11月15日 印刷
1990年11月30日 発行
376p 
口絵(モノクロ)2p 図版(モノクロ)2p
四六判 丸背布装上製本 
ビニールカバー 貼函
定価4,500円(本体4,369円)
装丁: 石黒紀夫

月報第1号 (8p):
数寄と傾奇(林屋辰三郎)/本物の先達(西山松之助)/かぶきの美学(中村幸彦)/演劇記号学としての郡司学(山口昌男)/怪の芸能(赤江瀑)/郡司さんに負うもの(渡辺守章)/編集部から



「日本の古本屋」サイトで最安値(送料込で8,400円)のセットがあったので注文してみました。最安値なので使用感があるかとおもいきや、ほぼ新品でした。


郡司正勝刪定集第一巻 01


帯文:

「歌舞伎・舞踊・民族芸能・民俗学・江戸学などの広範囲な分野にわたり、きらびやかで豊かな発想によって日本人の精神風土を重層的にとらえた「郡司学」を、全六巻にわたって体系的に集大成。」


帯背:

「体系的な
歌舞伎通史」



帯裏:

「各巻内容
第一巻 かぶき門
 四百年におよぶ歌舞伎史を掘り下げた、独自の点描史。
第二巻 傾奇の形
 戯曲・演技・演出などの構造を、新たな切口で捉える。
第三巻 幻容の道
 人間の原初の動きに立ち帰って伝統舞踊の理念を探る。
第四巻 変身の唱
 放浪芸や見世物などの民間芸能を踏査に基づいて考察。
第五巻 戯世の文
 江戸の戯作者、狂言作者、芝居風俗などの諸論を収録。
第六巻 風流の象
 記号論を越えた記号論風傑作「童子考」を軸に編集。
各巻順に隔月配本。」



目次 (初出):

かぶきの展望
 かぶきの展望 (「歌舞伎」改題/岩波講座「日本文学史」8 昭和33年11月/『かぶき論叢』(思文閣出版)収録、「歌舞伎戯曲の展開」)

慶長の含笑
 遊女芸の系譜 (書下し)
 三味線の登場 (「初期かぶきの一考察」改題/「歴史日本」2巻10号 昭和18年10月/『かぶき――様式と伝承』(寧楽書房)収録)
 若衆かぶき以前の少年芸 (「演劇研究」4 昭和45年3月、早稲田大学演劇博物館/『かぶき論叢』収録)

元禄の開化
 元禄かぶきと能 (「能と元禄かぶき」改題/「能」7巻3号 昭和28年3月/『かぶきの発想』(弘文堂)収録)
 元禄かぶきと新浄るり (「かぶきと浄瑠璃の交流」改題/『日本の文学4 元禄復興』(至文堂) 昭和41年5月)
 元禄かぶきにおける開帳物 (「国文学研究」7輯 昭和27年10月/『かぶきの発想』収録)
 近松とかぶき (「解釈と鑑賞」22巻1号 昭和32年1月/『かぶきの発想』収録)

天明の花盛
 かぶきと人形浄るり (『日本の文学5 江戸市民文学の開花』(至文堂) 昭和42年4月)
 豊後浄るりと所作事の展開
 天明かぶき (「歌舞伎の隆盛・天明期」改題/『講座日本文学8 近世編Ⅱ』(三省堂) 昭和44年3月)
 天明期の世話物――桜田治助の場合 (「歌舞伎」24号 昭和49年4月)

化政の爛熟
 化政度のかぶきの動向 (「芸能史研究」18号 昭和42年7月)
 生世話物の成立 (「江戸世話物の成立」改題/「歌舞伎」1巻3号 昭和44年1月)
 かぶき・浮世絵の新風 (「歌舞伎・浮世絵の新風」改題/「歴史教育」 昭和39年12月/『鉛と水銀』収録)
 治助・京伝・南北 (「国文学研究」旧18輯 昭和18年12月/『かぶきの発想』収録)
 化政度の舞踊 (「文化文政の舞踊」(国立劇場第四回舞踊公演パンフレット) 昭和42年11月)
 江戸から明治へ (「歌舞伎・江戸から明治」改題/「文学」53巻11号 昭和60年11月)

劇場小史
 近世初期のかぶき劇場と興行 (「近世初期のかぶき劇場」改題/「国文学」7巻15号 昭和37年12月)
 近世後期のかぶき劇場 (「国文学」8巻4号 昭和38年3月)

解題
 守屋毅 郡司学における「かぶき」と「かぶき史」

初出一覧



郡司正勝刪定集第一巻 02



◆本書より◆


「かぶきの展望」より:

「かぶきの演劇としての流れは、大きくみて、舞踊劇としての要素と、セリフ劇としての要素と、この二つを論じなければ十分ではあるまい。
 かぶきを含めた日本の古典演劇史は、一面からみると、そのすべてが舞踊史だということもできる。」
「どうも日本の古典芸能を通じての本質のなかに、窮極は、舞踊的境地を最高のものとして考え、これを支えていたものがあるようにおもわれる。
 また日本の演劇は、かならずしも戯曲(文学性)を芸の上にあるものとはみてこなかった。つまり、文学性をそれほど必要としてこなかったようにみうけられる。これもその舞踊性と関係があるようにおもう。」

「かぶきの出発点となった、ややこ踊も念仏踊もかぶき踊も、当時の「風流(ふりゅう)」の一環のおどりにすぎない。したがって、その性格も風流という祭礼や盆の魂祭りにともなう芸能の形式に掣肘されているはずである。つまり民俗の祭式の構成の影響をうけないはずがないということである。かぶきの発生期における演劇的構成法は、すなわち風流踊の構成法であったといってまちがいはなかろう。
 お国が「かぶき踊」をもって、諸記録にあらわれた慶長八年の翌年(一六〇四)の八月に、豊臣秀吉の七周忌のためにおこなわれた豊国神社臨時祭の風流は、中世から近世への最後の、そして最大のショーであった。上京下京の五百人が、それぞれ組をわけ、風流の飾りものをつくして、踊りまわり、さらに警固五百人、床木持五百人が出たと記録されているが、その光景を描いた屏風絵にも、その絢爛豪華な風流旋風のさまをみることができる。それは中世の能にみられるような静的な「舞」ではなく「飛つはねつ踊上り飛上り拍子を合、乱拍子、上求菩提と蹈鳴らし、手を尽くしてそ打たりける」と記されている、あきらかに「おどり」であった。」



「元禄かぶきと新浄るり」より:

「この世話物というのは、当時の庶民社会の生活面を舞台に反映させたものである。こういう性格はかぶきの出発点からの特質である。世間の最も新しい事象、とくにかぶいたる現象をすぐに舞台に取り入れるのは、かぶきの本来の使命でもあった。そういう意味では浄るりよりも近世的な性格を出発点からもっていたのである。
 世話物の題材は、多くは殺人とか心中とか犯罪とか、今日ならニュース種になるような事件、新聞の三面記事に載る事件で、これをすぐ舞台にのせたのである。社会劇というよりは、異常なショックを与えるような事件を、すぐ舞台で見せるのが世話物の元の意義だったと思う。(中略)こういう心中事件や殺人事件を舞台にのせるのは、舞台というものが非業の死をとげた人間を弔ってやる場所であるという心意伝承も、一つにはあった。」



「化政度のかぶきの動向」より:

「南北の作品は、「四谷怪談」など、完成度という点においては、はるかに近松の諸作品におとる。しかし、南北の作品全篇が含むそのエネルギーと発想は、グロテスクな頽廃の極をあらわしながらも、解体期の新鮮な視角と新風をはらんでいる。作品の完成度の問題は、その時代時代の要求がしからしめるものだとおもう。ことに生きている社会の実相を、もっとも敏感に、反映する舞台芸術としてのかぶきにおいては、とくに、そのことをいっておかなくてはならないかとおもう。」


「治助・京伝・南北」より:

「京伝と南北には、もともと感覚的な、異常な鋭さに共通のものがあったのでもあろうが、ひとつには、化政度の世紀末的な頽廃気分が両者をひとしく包んでいたのであろう。しかし、京伝はその感性の繊細さの中に天明振(てんめいぶり)の明るい遊びをのこし、南北には図太く暗い陰惨な血の匂いに幕末を間近に感じさせずにはおかないものがある。あるいはそれは、京伝の文学と、南北のドラマとの質のちがいであったかもしれぬ。」


「江戸から明治へ」より:

「こうした世紀末的な世相の頽廃は、じかに演劇に反映したとともに、民衆は、その悪相を凝視することによって、たしかな写実の目と時勢の流れを感得したにちがいなかった。
 その世界構造は、勧善懲悪の枠をはめられていたにしても、それは政府のお仕着せのお題目を大声に唱えながらも、目は黙って崩れてゆく悪の諸々相を眺めて、同時代の感性で身振いしていたに相違ないのである。」



郡司正勝刪定集

















































































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本