小池滋 『英国鉄道物語』

小池滋 
『英国鉄道物語』


晶文社
1979年11月30日 初版
1980年1月20日 二刷
279p 索引v 
ロンドン近郊鉄道図(折込)2葉
19.3×15.6cm 
丸背紙装上製本 カバー
定価1,200円
ブックデザイン: 平野甲賀



本文中図版(モノクロ)多数。


小池滋 英国鉄道物語 01


カバーそで文:

「世界最初の鉄道事故はどのように起ったか?
ロンドンにロンドン駅がないのはなぜか?
シャーロック・ホームズの乗った汽車は時速何マイルで走ったか?
 鉄道をめぐる肩の凝らない話題を楽しみながら、文豪ディケンズや、名探偵ホームズの生みの親コナン・ドイルを道案内に、世界で最初に鉄道の走った国、ヴィクトリア朝英国の生活風景を描きだす。」

「私の専門分野が19世紀のイギリス文学であることから、同じ19世紀に生まれた鉄道との関係をたどってみることができないだろうか、と思いついたのです。
 そうすれば、日本の鉄道好きの人たちに、19世紀のイギリスの鉄道が持つ深い意味、日本では考えも及ばないほど鉄道が一般の生活や思考の中に根を張って生きている事実を、伝えることができないか。
小池滋」



目次:

Ⅰ イギリスの鉄道の発達と文学
 1 開通式の明暗
 2 馬車と運河の時代
 3 近代的鉄道会社の誕生
 4 鉄道建設ブーム
 5 駅長驚クコトナカレ
 6 破壊怪獣
 7 鉄道の民衆化
 8 鉄道マニア
 9 鉄道王登場
 10 カーライルと鉄道
 11 「ハドソンの銅像」
 12 「死」の後を追って
 13 ディケンズとトルストイ
 14 ステイプルハーストの事故
 15 他の作家の反応
 16 群雄割拠から統合へ

Ⅱ ロンドンのターミナル
 1 ターミナルとその名前
 2 ユーストン
 3 セント・パンクラス、キングズ・クロス
 4 ブロード・ストリート
 5 リヴァプール・ストリート
 6 フェンチャーチ・ストリート
 7 ロンドン・ブリッジ
 8 キャノン・ストリート、チャリング・クロス
 9 ホーバーン・ヴァイアダクト
 10 ウォータールー
 11 ヴィクトリア
 12 パディントン
 13 マリルボン

Ⅲ ロンドンの地下鉄をめぐって
 1 地表線
 2 チューブ
 3 文学にあらわれた地下鉄

Ⅳ 鉄道と推理小説
 1 推理小説と科学的思考
 2 客車の構造
 3 客車の中の密室
 4 時刻表のトリック
 5 時刻表の迷宮
 6 鉄道探偵の登場
 7 ドイルと鉄道
 8 地下鉄と推理小説

あとがき
索引



小池滋 英国鉄道物語 02



◆本書より◆


「イギリスの鉄道の発達と文学」より:

「当時イギリス最大の商工業都市であり、産業革命の中心地として、政治上の首都ロンドンにはり合わんばかりのマンチェスターと、イギリス最大の港、原料搬入と製品搬出の重要拠点であるリヴァプールの間は、道路にとっても運河にとっても、まさにドル箱路線である。だから、そこの交通手段の権利を握っている道路所有者や運河所有者、すなわち「土地」からの利益により生活を維持している貴族や大地主などの保守勢力に対して、新しい科学である工業力を武器として、鉄道によるなぐり込みをかけたのが、金の力をバックとする新興ブルジョワ階級であったのは、至極当然のことだった。
 このように考えると、リヴァプール・アンド・マンチェスター鉄道の開業は、ちょうど同じ頃に全イギリスの国論を二分して争われていた問題、選挙法の改正と同じ程度の政治的重要性を持っていた、と言っても決して誇張にはなるまい。土地を生活基盤とする封建勢力と、金力のみに頼る近代市民階級の争闘の最前衛であった。そして、その両方の戦場において、ウイリアム・ハスキッソンの果たした役割は注目すべきものだった。彼は頭の古いがりがり亡者の保守党の政治家たちを説得し、世の中の情勢が変りつつあることを教え、政敵たる自由党の主張する自由貿易論や、選挙法の正論にも耳を傾け、何とか妥協の道を見出すようにと辛抱強く工作したのだった。」
「だから、リヴァプールとマンチェスター間の鉄道会社の設立についても、自分たちの利害が害われると感情的に反対する人たちに、理非を説いて実現にまで漕ぎつけたハスキッソンの喜びと満足は、儀礼的に開通式に招かれたお偉方のそれとは違ったもの、真に心から湧き出たものであったろうし、彼こそはこの記念すべき日の主賓として、もっともふさわしい人間であったはずだ。その彼が、こともあろうに新鉄道の事故犠牲者第一号になってしまったのだから、運命というのは皮肉なものである。
 その上またこの事故は、単に運命の皮肉ないたずら以上のことを、当時のイギリス人に、そしてまた現代のわれわれにも、教えてくれる。工業化と科学技術とは、たしかに人類に進歩と未来への希望をもたらしてくれる。そして鉄道こそその新しい福音のもっとも確実な象徴のように思えた。だからこそ民衆は警官を押しつぶさんばかりの熱意で線路端を埋めつくし、大声で万歳を唱えたのであろう。だが、科学の恩恵は、一人の人間がハンドルを動かすだけで、十頭以上の馬の力とスピードを与えてくれる素晴らしい蒸気機関車は、人間にただ幸福と夢をもたらしてくれるだけのものではなくて、一歩まかり間違えば、とんでもない災難と不幸をもたらすもの――このことをたった一日の出来事が目(ま)のあたりに見せてくれたのである。十九世紀の人間が産業科学に対して抱いた感情は、ちょうど現代のわれわれが原子力に対して抱いているそれと似ていて、あこがれと疑惑、驚異と嫌悪、賛歎と反撥、というような相矛盾した反応であり、しかもそれを観念としてではなく、実感と体験から抱かされたのだ。」













































































































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難破した人々の為に。

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