C. G. ユング 他 『人間と象徴 下』 河合隼雄 監訳

「このようにして、心の合った人や、志を同じくする人が、普通の社会的関係や、組織内の関係を超えて、グループをつくり出すのである。そのようなグループは他と葛藤することはない。それは他と異なり独立しているだけである。血族関係や普通の興味など一般に知られている絆は、異なった類の結合――自己を通じての絆――にとって代わられる。
 まったく外界に属しているすべての行為や義務は、無意識の秘密の動きに明らかに害を与える。無意識の絆を通じて、志を同じくする人が集まるのである。たとえ理想的な動機によって動かされていても、広告や政治的な宣伝によって人々に影響を与える試みが破壊的となるのもこのためである。」

(M.-L. フォン・フランツ 「個性化の過程」 より)


C. G. ユング
M.-L. フォン・フランツ/J. L. ヘンダーソン/J. ヤコビー/A. ヤッフェ
『人間と象徴
― 無意識の世界 下』 
河合隼雄 監訳


河出書房新社
1975年9月20日 初版発行
1981年4月3日 13版発行
302p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,500円
装幀: 森啓



本書「訳者あとがき」より:

「この本は、Carl G. Jung 編の、Man and his Symbols, Aldus Books, 1964 の全訳である。」
「再版にあたって
 本書は、難解なユングの考えをできるかぎり平明に伝えようとするものとして、発刊以来ひろく歓迎されてきた。ただ、大部の書物であるだけに高価で入手が困難という難点があった。そこで今回の再版にあたっては、(中略)2部に分割して再編し、入手容易な形態に変更することになった。」



左開き・横組。本文中図版(モノクロ)多数。


ユング 人間と象徴 02


帯文:

「夢、神話、絵画などの解明を通じて読者を無意識界へいざなうユング心理学入門」


帯背:

「無意識への案内」


帯裏:

「■宮城音弥(日本大学教授)
……ユングは従来、性格を内向性、外向性に分類したことでしか知られていないが、彼の心理学はそのようなものにかぎられていない。われわれの心の奥底、無意識の世界をあきらかにすることによって人間の精神を解明しようとするものである。
 本書はユング自身およびユングの高弟たちによる「夢」を中心とした無意識の世界への案内書である。ユングとテレビ対談を行って好評を博したフリーマンの努力によって、難解と考えられるユングの考えを一般の人にわかりやすく叙述された本書が出版され、その訳書がわが国で公にされることを心からうれしく思う。」



目次:

Ⅲ 個性化の過程 (マリー=ルイス・フォン・フランツ/訳: 河合隼雄)
 心の成長のパターン
 無意識の最初の接近
 影の自覚
 アニマ――心のなかの女性
 アニムス――心のなかの男性
 自己――全体性の象徴
 自己との関係
 自己の社会的側面

Ⅳ 美術における象徴性 (アニエラ・ヤッフェ/訳: 斎藤久美子)
 聖なるものの象徴――石と動物
 円の象徴
 象徴としての現代絵画
 物にひそむたましい
 現実からの後退
 対立物の合一

Ⅴ 個人分析における象徴 (ヨランド・ヤコビー/訳: 並河信子・阪永子)
 分析の開始
 初回の夢
 無意識にたいする恐れ
 聖者と娼婦
 分析の発達過程
 神託夢
 不合理への直面
 最後の夢

結論 (M.-L. フォン・フランツ/訳: 西村洲衛男)
 科学と無意識


訳者あとがき (河合隼雄、1972年3月/1975年8月)
索引



ユング 人間と象徴 03



◆本書より◆


「個性化の過程」(フォン・フランツ)より:

「われわれよりも、より安定して、根づいている文化圏に生きている人たちは、人格の内的な成長のために意識の功利主義的な態度を捨てる必要性を理解するのに、さほどの困難を感じない。私はかつて、ある年輩の婦人に会った。彼女は外的な仕事に関しては、その生涯にあまり何もやりとげてはいなかったが、実際はむずかしい夫とよき結婚を成しとげ、成熟した人格を何とかつくりあげてきていた。彼女が、その生涯に“何もしなかった”と不平をもらしたときに、私は中国の賢者、荘子による話をした。彼女は、それを、たちまち理解して強い安息を感じたのである。次に、その話を述べる。

  大工の匠石が旅の途中、社のそばにある櫟の大木を見た。匠石は、その櫟に感嘆している弟子に、“これは無用な木だ。舟をつくればすぐにくさってしまうだろうし、道具をつくればこわれてしまうだろう。この木では何も有用なものがつくれない。だから、こんなに古木になったのだ”といった。
 しかし、その夜、宿屋で眠りにつきかけると、匠石の夢に櫟の古木が現われて言った。“お前はどうして、私を、さんざし、梨、橘、りんごなど実のなる木と比較したのだ。それらは実が熟さないうちにさえ、人間に攻め荒らされてしまう。大枝は折られ、小枝はさかれる。自分たちの長所が自分自身に害をなしていて、天寿を全うできない。これはあらゆるところに生じることで、このためにこそ私はまったく無用であろうと、長年のあいだつとめてきたのだ。愚かな人間よ、もし私が何らかの点で有用であれば、これだけの大きさになり得たであろうか。そのうえ、お前も私も自然の創造物にすぎない。たんなる創造物がいかにして、他の創造物より上に立って、その価値判断をくだせるのか。お前、無用な人間よ、お前が無用の木について何を知ることがあろう。
 大工は目覚め、その夢について想いをこらした。弟子が、どうしてこの木が社の保護につとめているのかと彼にたずねたとき、彼は、“だまれ、何も言うな。その木はここに意図して生えているのだ。もし他の場所であれば人間がよくは取り扱わなかっただろう。もしそれが社の木でなかったならば、切り倒されていたかも知れない”と言った。
  (荘子「人間世篇第四」)

 この大工は明らかに夢を理解したのだ。彼は自分の運命を素朴に充足させるということが人間の最大の仕事であり、われわれの功利主義的な考えは、無意識の要請にたいしては道をゆずらねばならないことを知ったのである。この隠喩を心理学の言葉におきかえるならば、この木は個性化の過程を象徴し、われわれの近視眼的自我に教訓を与えているということができる。
 運命を充足した木の下には――荘子によれば――ひとつの社があった。それは自然の加工されないままの石であり、その上で人々はその地を“所有している”土着の神に捧げ物をする。社の象徴は、個性化の過程を実現するためには何をなすべきかとか、一般に正しいとされるものは何かとか、普通どのようなことが起こるかなどと考えることをやめ、無意識の力に意識をもって身をまかせねばならないという事実を示している。内的な全体性――自己――が今、ここで、この特定の状況に何をなすことを望んでいるかを知るためには、ひたすら耳を傾けて聞かねばならないのである。」




こちらもご参照下さい:

C. G. ユング 他 『人間と象徴 ― 無意識の世界 上』 河合隼雄 監訳



























































































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難破した人々の為に。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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