柴田有 『グノーシスと古代宇宙論』

「グノーシスは伝統的宇宙論を神話によって否定した。それは星辰論の政治イデオロギー的側面に対する反発を前面に押し出しているが、当時の文化一般をより原理的に踏まえた上での批判となりかねないのであった。」
(柴田有 『グノーシスと古代宇宙論』 より)


柴田有 
『グノーシスと古代宇宙論』
 

勁草書房
1982年1月20日 第1版第1刷発行
1987年7月15日 第1版第5刷発行
ix 284p
A5判 丸背紙装上製本
カバー ビニールカバー
定価3,500円



著者はグノーシスの本質規定(ある文献が「グノーシス主義」文献であるかどうかを判断する基準)として「星辰拒否」をあげています。
古代宇宙論では星は地上の万物の支配者ですが、グノーシス神話によると宇宙は悪しき造物主(デミウルゴス)が作ったものなので、星もまた悪しきものなのであります。グノーシス主義者によると、人間はデミウルゴスとかそんなんでなしに、ほんとうのたった一人の神さまに由来するものなので、星なんかよりずっと偉いのであります。
わたしなどはたいへん厭世的ですが、冬の星空についうっかりみとれてしまったりするので、まだまだであります。


柴田有 グノーシスと古代宇宙論 01


帯文:

「ヘレニズム世界を駆け抜けた異端思想グノーシス。グノーシスとは何か、なに故異端なのか? 古代宇宙論に着目、初めてグノーシスの本質規定を明らかにした画期的ヘレニズム思想史」


目次:

はじめに
略号について

第一章 「ポイマンドレース」とその情況
 1 「ポイマンドレース」の情況
 2 「ポイマンドレース」の教え
  《世界の原理》
  《世界の素材》
  《世界の原型》
  《世界の創造》
  《人間創造と堕落》
  《人間の救済》
  《宣教と頌栄》
 3 「ポイマンドレース」のグノーシス思想
  「アスクレピオス」との比較
  「鍵」との比較
 4 結び
 補遺一 二つの二元論
 補遺二 「ポイマンドレース」全文

第二章 古代宇宙論の伝統
 1 伝統陣営のグノーシス反駁
  我々の課題
  Pグノーシス思想の再構成
  プロティノスの応答
  他のプラトン主義者の応答
 2 「古代宇宙論」の定義
  人間生活の原理としての星辰界
  人間の最高身分としての星辰界
 3 文化中枢としての古代宇宙論
 4 結び

第三章 古代宇宙論を継承する者
 1 アレクサンドリアの神学
 2 “キリストもカエサルも”
  カエサルの昇天
  ユスティノスのキリスト観
  キリストの昇天
 3 帝国国教への転回
  ラクタンチウスとコンスタンチヌス
  「継ぎ木」の思想構造
  ラクタンチウスの法理論
 4 中世へ
 結論

あとがき

文献表
索引



柴田有 グノーシスと古代宇宙論 02



◆本書より◆


「はじめに」より:

「本書は古代宇宙論についての一考察である。宇宙論という言葉から、ギリシア以来の古代天文学とか天体論を想像していただけるなら、それは我々の対象とほぼ一致する。ただし我々が取り上げたのは、天体の構造や運動といった自然学そのものではなく、自然学的知識と不可分に結びつく観念や思想の面である。
 古代以来、知識は常に宗教との密接な関連をもっている。自然学ももちろんその例外ではない。宇宙論はなおさらである。このことをもっとも端的に示すのは、宇宙論において新説を唱えた者が、決まって無神論者(とか反国家)の烙印をおされた事実である。古代の地動説を唱えたアリスタルコス、星辰は「神々」ではなく、「火」にすぎぬものと主張したエピクロス、星辰を悪魔視したグノーシス主義者、星辰神を否定して唯一の神をかかげたキリスト教徒、さらに後世のコペルニクスたちは皆そうであった。したがって宇宙論の前景を天文学とするなら、後景には宗教が配置されていると見ることができる。宇宙論はそういう奥行きを持った知識なのである。」
「大づかみに言えば、本書は、宗教思想と融合した面での宇宙論を論じている。宇宙論の奥行きには宗教と見分け難く混じた部分があり、ここに主として注目した。そこで我々の基本課題は、宇宙論のそうした側面を照らし出し、言表化し、自覚的に把握することである。」
「したがって、誤解を避けるために一言させていただくと、我々は古代宇宙論と宗教との結びつきを問題にしているのであって、純自然学的な宇宙論については価値判断を試みていない。(中略)知識はそれぞれの時代と生活の中で生きている。そういう知のあり方をこそ描こうとしているのだ。」
「我々の議論は、次の章区分にしたがって展開するだろう。第一章“「ポイマンドレース」とその情況”は、グノーシス主義の研究である。(中略)私見によれば、グノーシスの本質規定の問題はまだ未解決であり、このことは「グノーシス」という用語の混乱と表裏一体である。(中略)したがって我々は、グノーシス思想の本質規定からやり直さなければならなかった。その際、古代宇宙論に着目することが、有効な方法であることを認識するはずである。」
「第二章“古代宇宙論の伝統”は本稿の意味での古代宇宙論を主題としており、したがって、宗教(いわゆる異教)との接合部に着目しつつ宇宙論の輪郭を描いている。」
「第三章“古代宇宙論を継承する者”は、古代宇宙論とキリスト教との切り結びを扱っている。前章が異教と宇宙論の関連に触れるとすれば、本章はキリスト教と宇宙論という問題に眼を向けている。(中略)キリスト教教父たちの作品をおもに考察した。」
「最後に、本書の表題について述べよう。「グノーシスと古代宇宙論」としたのは、全体の構成をグノーシス研究から始めていることと関連する。古代宇宙論が宗教と結び合っている事実とその意味は、グノーシス思想を理解することによって鮮明な輪郭をともなったものとなる。グノーシス研究は古代宇宙論への視覚を決めるものである。こういうわけでグノーシスは我々の出発点であり、宇宙論は目標なのである。表題はここから来ている。」












































































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

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将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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