オウィディウス 『転身物語』 田中秀央・前田敬作 訳

「「ああ、ぼくはなんという不幸な男だろう!」とさけぼうとしたが、口から言葉が出てこなかった。出てきたのは、うめき声だけで、それがかれの言葉だった。無残にも変りはてた顔に涙がこぼれおちた。」
(オウィディウス 『転身物語』 「アクタエオン」 より)


オウィディウス 
『転身物語』 
田中秀央・前田敬作 訳


人文書院 
昭和41年6月25日 初版発行
昭和56年12月10日 重版発行
598p 巻末折込「ギリシア神話地図」1葉
四六判 丸背布装上製本 貼函
定価3,200円



本書「解説」より:

「ギリシア・ローマ神話の集大成であり、百科全書であるという本書の特徴を考えて、かなり詳しい脚注をつけた。」
「本文中に挿入したさし絵は、一七九一年にウィーンで出版された三巻本のドイツ語抄訳(中略)の多数の銅版画のなかから選んだものであるが、画家(複数)については、はっきりした記載がないので詳細はわからない。」



本文中図版(モノクロ)14点。


オウィディウス 転身物語 01


帯文:

「今日、人工に膾炙されたギリシア・ローマ神話は、すべて本書を原典としている。天地創造から筆をおこし、不思議な転身・変形を絢爛艶美に描いたこの物語は、蓋し、ヨーロッパ文学の最高の古典でもある。」


帯背:

「ギリシア・ローマ神話の一大蒐集」


オウィディウス 転身物語 02


目次:

巻一 
 序詞
 世界の創造
 四つの時代 巨人族(ギガンテス)
 狼に変身したリュカオン
 人類滅亡の大洪水
 あたらしい人間の祖デウカリオンとピュラ
 大蛇ピュトン
 月桂樹になったダプネ
 牝牛になったイオ 百眼のアルグス 葦になった妖精シュリンクス
 太陽神の息子パエトン
巻二
 太陽神の車を馭するパエトン
 ヘリアデスの転身
 白鳥になったキュクヌス
 ユピテルに犯されたカリスト
 星になったアルカス
 烏はなぜ色が黒くなったか
 馬になったオキュロエ
 「おしゃべり石」のバットゥス老人
 メルクリウスとヘルセ
 「嫉妬」にとりつかれたアグラウロス
 牡牛に化けたユピテルとエウロパ
巻三
 カドムスの亡命とテバエ建設
 アクタエオン 水浴をのぞかれたディアナ
 ユピテルとセメレ
 両性の快楽を知ったティレシアス
 美少年ナルキッススとエコ
 神々を信じないペンテウス
 海豚(いるか)になったテュレニアの水夫たち 狂乱のバッカエ
巻四
 ミニュアスの娘たち
 ピュラムスとティスベ 桑の実
 ウェヌスとマルスとの密通(みそかごと)
 レウコトエとクリュティエ
 サルマキスとヘルマプロディトゥス
 狂気に陥ったアタマスとイノ ティシポネ
 老カドムスとハルモニア
 英雄ペルセウスと巨人アトラス
 アンドロメダ 海の怪物
 メドゥサ
巻五
 ピネウスの乱
 プロエトゥス
 ポリュデクテス
 ムサたちをとらえようとしたピュレネウス
 ムサたちとピエリデスとの歌合戦
 プルトの恋 ケレスとプロセルピナ
 泉になったアレトゥサ トリプトレムスとリュンクス
巻六
 ミネルウァとアラクネとの技(わざ)くらべ
 ニオベとその子供たち
 蛙になったリュキアの農夫たち
 生皮をはがれたマルシュアス
 ペロプスの左肩
 プロクネとピロメラ
 北風神ボレアス
巻七
 イアソンとメデア
 アエソンの若返り
 ペリアス
 メデアの逃亡
 アテナエの英雄テセウス
 アエアクスと蟻の民たち(ミュルミドネス)
巻八
 ニススと祖国を裏切ったスキュラ
 迷路 アリアドネの冠
 空中を飛行するダエダルスとイカルス
 鷓鴣(しゃこ)になったペルディクス
 カリュドンの野猪
 メレアグロスの死
 ほろほろ鳥になったメレアグロスの姉妹たち
 アケロウスとテセウス
 島になったペリメレ
 ピレモンとバキウス
 飢餓(ファメス)にとりつかれたエリュシクトン
巻九
 アケロウスとヘルクレス
 ネッススに誘拐されたデイアニラ
 ヘルクレスの最期 十二功業
 アルクメナのお産とガランティスの機転
 ドリュオペとロティス
 イオラウスの若返り テバエの乱
 ビュブリスの不倫の恋
 男に変身したイピス
巻一〇
 伶人オルペウスとエウリュディケ
 キュパリッススの悲しみ
 美少年ガニュメデス
 花になったヒュアキントゥス
 春を売るプロポエティデス ケラスタエ
 象牙の人形に恋したピュグマリオン
 没薬になったミュラ
 アドニスの誕生
 アタランタ アドニスの転身
巻一一
 オルペウスの死
 ミダス王のかがやかしい厄難
 アポロとパンとの歌合戦 ミダス王の耳
 ラオメドン トロイアの築城
 プロテウスの予言 ペレウスとテティス
 ケユクスのもとに身をよせたペレウス ダエダリオンの転身
 石になった狼
 ケユクスの難破
 夢
 アルキュオネとケユクスの転身
 潜水鳥になったアエサクス
巻一二
 アウリスのイピゲニア
 キュクヌスの転身
 カエネウスはどうして男になったか
 ラピタエ人とケンタウルス族との戦い
 ネレウスの十二人の息子たち
 アキレスの死
巻一三
 アキレスの武具をめぐる争い
 王妃ヘクバの最期
 メムノンの遺灰からうまれた鳥たち
 アニウスの客となったアエネアス
 スキュラ
 アキスとガラテアの恋物語
 グラウクス
巻一四
 スキュラと魔女キルケ
 猿になったケルコペス
 クマエのシビュラ
 アエネアスに救出されたアカエメニデス
 風神アエオルスの贈物 ウリクセスとキルケ
 ピクスとカネンス
 鳥になったディオメデスの仲間たち
 アエネアスの船 アルデア
 アエネアスの神化
 ポモナとウェルトゥムヌス アナクサレテの転身
 ロムルスとヘルシリア
巻一五
 ミュスケルス クロトン
 ピュタゴラスの教え
 エゲリアの転身 ヒッポリュトゥスの蘇生
 タゲス ロムルスの槍 キプス
 ローマの疫病を救ったアエスクラピウス
 カエサルの昇天
 跋詞

解説 (前田敬作)
索引



オウィディウス 転身物語 03



◆本書より◆


「世界の創造」より:

「まだ海も陸もなく、すべてをおおう空もなかったころ、自然のすがたは、宇宙の全体にわたって見わたすかぎりただ茫漠たる広がりであった。それは、混沌(カオス)とよばれ、形状も秩序もないひとつの塊りであった。生気のない堆積といおうか、まだ事物としてのまとまりをもたない諸要素が、へだてもなく雑然とひしめきあっているだけであった。そこにはまだ、あふれる光をこの世にそそぐティタンもいなかったし、新月の弦をしだいに大きくしていくポエベもいなかった。大地もまだ、それをつつむ大気のなかに浮びながらみずからの重さをささえてはいなかったし、アムピトリテも、陸地のながい岸辺にそってその腕をさしひろげてはいなかった。そこには、大地も海も空気も存在していたけれど、陸は歩くことができないし、海も泳ぐわけにはいかず、大気には光がなかった。それらのどれひとつとして、まだみずからのすがたやかたちをもっていず、たがいに反目し、さまたげあっていた。おなじひとつの集まりのなかにあっても、寒さは暑さと、湿気は乾燥と、重さは軽さとたえず拮抗していた。
 このようないがみあいに終止符をうったのは、これらよりはるかに秀でた自然であった。この神なる自然は、天から地を、地から水をわかち、重くるしい大気から澄みわたった大空をきりはなした。こうして、これらのものの縺れをほぐし、くらい混乱から解きはなつと、それぞれに異なった居所をあたえ、平和と友愛のきずなをもってすべてのものをむすびあわせた。重さというもののない蒼穹の火ともえる力は、天のいちばん高いところに翔(か)けのぼって、そこに居をさだめた。軽さの点でこれに最も近いのは、空気で、したがってそのすぐ下に位置した。これらふたつのものよりも濃密な大地は、かたい物質を引きよせ、みずからの重さのために下降していった。四方にひろがった水は、いちばん外側の位置をしめ、すでにかたまった大地をとりかこんだ。
 このような造物主がいかなる神であったにせよ、かれは、混沌とした物質の塊りを整理し、区分し、それぞれの場所に配置しおわると、まず大地を、どちらから見ても不同なところがないように、ひとつの巨大な球のかたちにつくりあげた。それから、海を四方にひろげ、はげしい風によって波浪をおこし、陸地の周辺にのびた海岸線をくまなくとりまくようにした。さらに、泉や、大きな湖や池をこしらえ、流れおちる河の両側には、まがりくねった岸をつくった。河たちは、さまざまな方向にながれ、途中で大地のなかに吸いこまれてしまうものもあれば、はるかに流れくだり、渺々(びょうびょう)たる大海原のふところにいだかれ、みどりなす河辺のかわりに、断崖の岩を洗うものもあった。神はまた、平地をひろがらせ、谷をくぼませ、森には樹々の葉をしげらせ、峨々たる山をそびえさせた。さらに、空を区切って、右側にふたつの圏を、左側にもふたつの圏を設け、その真中には、これらよりも暑い五番目の圏をつくった。そして、空にいだかれた地塊をも、注意ぶかくおなじだけの数に仕切った。それで、大地には、五つの地帯ができた。中央にひろがった地帯は、はげしい暑さのために住むことができないし、両端のふたつの地帯は、ふかい雪におおわれている。しかし、神は、それらのあいだに残りのふたつの地帯をおき、暑さと寒さをまぜあわせて、ほどよい気候をあたえた。」
「こうして、すべてのものがそれぞれの定住地にわけへだてられると、ながいあいだ混沌たる塊りのなかにうずもれていた星たちが、燦然(さんぜん)と空いちめんにかがやきはじめた。さて、これらのどの領域にもそれぞれ固有の住民が住みつくように、まず天上界には、星たちと神々が座をしめた。水は、美しい鱗をひらめかす魚たちのねぐらとなり、大地には、獣たちが住みつき、ながれ動く大気は、鳥たちをうけいれた。
 しかし、これらよりもけだかく、ふかい知力をやどし、他のすべての生物たちを支配することのできる存在が、まだ欠けていた。そこで、人類が、人間が、うまれてきたのである。この人間は、よりよき世界の始源者である神、あの万物の造物主が神の種子からつくったのかもしれないし、あるいは、けだかい天空からわかれてきたばかりの土がまだ天上の種子の名ごりをとどめていたころ、イアペトゥスの息子がそれに河の水をまぜて、万物をつかさどる神々のすがたに似せてこしらえたのかもしれない。ほかの動物たちが頭をたれて、いつも眼を地上にそそいでいるのに反して、人間は上にむけられた高貴な顔をもち、その瞳(ひとみ)を星辰のかなたにむけることをゆるされた。こうして、まだかたちもない土くれであった大地は、転身によって、それまで知られていなかった人間という装(よそ)おいを身につけることになったのである。」



「四つの時代」より:

「まず最初にできたのは、黄金の時代であった。そこには、司直もなく、法律もなかったが、おのずから誠実と徳義がおこなわれていた。人びとは、刑罰も知らず、怖ろしい目にあわされることもなかった。なにしろ、青銅板に罰則を掲示しておどかすわけでもなければ、請願者の群が裁判官の顔を見てこわがらなくてはならないようなこともなく、裁判官などいなくても、だれでも安心していることができるのであった。たとえば、松の木にしても、無残にも伐りたおされて、故郷の山中から海原につれだされ、船となって見もしらぬ土地を訪れねばならないようなことはなかった。人間も、自分の住んでいる土地の浜辺しか知らなかった。町々も、まだ深い濠などをめぐらしてはいなかったし、真鍮(しんちゅう)でつくったまっすぐなラッパもまがった角笛(つのぶえ)もなく、甲冑も剣もなかった。軍隊がなくても、各民族は、なんの心配もなく、しずかな平和をたのしんでいた。」


「あたらしい人間の祖デウカリオンとピュラ」より:

「かれがこう話しおわると、ふたりはさめざめと泣いた。それから、こうなった上は天の力にすがり、神託によって救いをもとめようと決心した。そこで、さっそくケピススの流れのほとりへいった。河の水は、まだ澄んではいなかったが、すでにもとの河床をながれていた。ふたりは、汲みとった水を着物と頭にふりかけてから、聖なる女神の神殿の方に歩んでいった。神殿の屋根は、きたない苔(こけ)のためによごれ、祭壇には、火が消えたままだった。神殿の階段(きざはし)のそばまで近づくと、ふたりは地にひれ伏し、ふるえながら冷たい石に接吻し、やがてこういった。「おお、正当な祈りによって神々のみこころをうごかし、そのお怒りをやわらげることができますものなら、テミス女神さま、どうしたら滅亡した人類をもとどおりにすることができるかをお示しください。そして、いと慈悲ぶかい女神さま、水に没した世界に救いをお垂れください!」すると、あわれを感じた女神は、つぎのような神託をくだした。「この社(やしろ)より出ていけ。そして、なんじらの頭をおおい、衣服の帯をとき、なんじらの大いなる母の骨を背後に投げよ!」
 ながいあいだ、ふたりは、おどろきのあまり呆然としていたが、やがてピュラが最初に沈黙をやぶって、女神の命令にしたがうことをこばんだ。そして、ふるえる声で、女神さま、どうかおゆるしください、わたしは自分の母の骨を投げたりして、母の霊をけがすことはとてもできません、と切願した。そうしながらも、ふたりは、ふかい神秘につつまれた謎めいた神託の文句をなんどもこころのなかでくりかえし、その意味を考えた。やがて、プロメテウスの息子は、エピメテウスの娘をやさしくなぐさめて、こういった。「わたしの考えがまちがっていなければ、神託というものは、神聖なものであって、けっしてわたしたちに罪をすすめるものではない。わたしが思うのに、大いなる母とは、大地のことで、女神が骨とおっしゃったのは、大地の胎内にある石のことなのだ。つまり、石をわたしたちの背後に投げよということなのだよ」
 ティタンの娘は、良人のこうした解釈をみとめはしたが、それで望みがかなえられるとはおもえなかった。それほど、ふたりには神託が信じられないのであった。しかし、いちどためしてみたところで、なんの害があろうか。そこでかれらは、神殿を出て、布で頭をおおい、着物の帯をとき、命じられたとおり石をうしろに投げた。すると、それらの石は――もし昔の伝承がそれを証言しなかったら、だれにも信じられないことだが――石に固有の強情な固さをうしなって、徐々にやわらかになり、やわらかいままなにかの形をとりはじめた。やがてしだいに大きくなり、柔和さをくわえると、まだ明確ではないが、ちょうど粗(あら)けずりの大理石からうみだされる未完成の彫像にも似た人間のすがたが、なんとか見てとれるようになった。そして、水気をふくんだ、土でできた部分は、肉となり、かたくて、こちこちの部分は、骨にかわり、石目(いしめ)は、そのまま血管となった。こうして、神のご意思によってたちまちにして、男の手によって投げられた石は、男の人間のすがたになり、女の手が投げた石からは、女人のすがたがうまれてきた。」



「太陽神の車を馭するパエトン」より:

「太陽神の宮殿は、壮麗な円柱にささえられて空たかくそびえ、きらめく黄金と炎のような赤銅に燦(さん)然とかがやいていた。破風(はふ)壁は、まばゆいばかりに美しい象牙の浮彫りにかざられ、正面の二枚の扉は、銀光をはなっていた。しかし、材料よりも、それを仕上げた名工の腕の方がさらにすぐれていた。というのは、ムルキベルは、大地を帯のようにとりまく大洋、地球、そして地球の上にひろがる天空、この三つのものを銀の扉にみごとに浮彫りにしていたからである。海には、水いろの神々が大勢いる――ほら貝を吹きならすトリトン、変化(へんげ)自在なプロテウス、巨大な鯨たちの背を多くの腕でたたいているアエガエオン、さらにドリスとその娘たち。これらの娘たちは、泳いでいるのもあれば、岩の上にすわって緑の髪を干(ほ)しているのもあり、魚にまたがったのもいる。ひとりとしておなじ顔だちの者はないが、かといって、まったくちがっているのでもなく、いかにも姉妹らしく見える。」


「白鳥になったキュクヌス」より:

「パエトンの父ポエブスは、あれ以来、日蝕のときのようにすっかり意気沮喪し、壮麗な輝きをうしなってしまった。光をきらい、自分自身と昼をにくみ、ひたすら悲傷にしずんでいたが、やがてその悲しみに怒りがくわわり、世界にたいするおのれの任務をさえこばむにいたった。「ああ、もうたくさんだ」と、かれはいった。」


「馬になったオキュロエ」より:

「運命の秘密は、このほかにもまだ語りのこされていたが、かの女は突然ふかいためいきをもらし、あふれる涙に頬をぬらしながら、「運命がわたしをさまたげ、これ以上語ることをゆるしてくれません。声も出せなくなっていきます。髪さまのお怒りをまねいたこんな予言の術など、それほどありがたいものではなかった。未来のことなぞ知らなかった方が幸福だったわ。ああ、もう人間の姿もわたしからうばわれていくらしい。だんだん牧場の草がたべたくなってくる。ひろい野原を駈けめぐりたい気がする。ああ、わたしは、馬に似た姿に変っていく。」」
「かの女はこう語ったが、その最後の部分は、なにをいっているのかわからないほど言葉が不明瞭であった。やがて、それはもう言葉ではなくなり、さりとて馬のいななきでもなく、馬の真似をしている人間の声のようであった。とみるまに、こんどははっきりと馬のいななく声になって、草に腕を、いや、脚をのばした。」



「牡牛に化けたユピテルとエウロパ」より:

「アゲノルの娘は、この牛がとても美しく、すこしも兇暴なところがないのを見て、たいそう驚嘆したが、いかに柔和な牛であっても、初めのうちは手をふれるのをこわがった。しかし、しばらくすると、牛のそばに近よって、その白い口もとに花をさしだした。恋する神は、いたくよろこんで、愛の歓喜を思いつつ乙女の手に接吻した。それ以上のことは、やっとの思いで先までのばしたのである。かれは、乙女にじゃれついたり、みどりの草の上をはねまわったり、雪のように白い体軀(からだ)を褐色の砂の上によこたえたりした。こうして、いつしか乙女の恐怖心が消えていくと、かれは、手でかるく叩いてもらうために胸をむけたり、摘(つ)みたての花環をかけてもらうために角をさしだしたりした。娘の方でも、この牡牛がだれであるとも知らずに、とうとうその背にまたがった。すると、神は、しだいに岸辺のかわいた地面からはなれて、そのいつわりの足を波にひたした。そして、そのままずんずん先へすすんで、とうとうはるか沖までつれ去った。乙女は、すっかり仰天して、あとにしてきた海岸の方をふりかえり、左手を牛の背にあてがい、右手で角をしっかりとにぎりしめていた。かの女の衣服は、風にふくらんではためいた。」



こちらもご参照下さい:

オウィディウス 『変身物語』 中村善也 訳 (岩波文庫) 全二冊













































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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