アテナイオス 『食卓の賢人たち』 柳沼重剛 編訳 (岩波文庫)

「すると法律家ウルピアヌスが口を挿(はさ)んで、「その解放奴隷(apeleutheros)っていうことばは誰の文に出てくるのかな」と言った。誰かがプリュニコスの喜劇に『解放奴隷たち』(Apeleutheroi)というのがあるし、メナンドロスの『鞭打たれる女』にも解放された女奴隷(apeleuthera)というのが出てくる……と答えると、ウルピアヌスが重ねて、「同じ解放奴隷というのに exeleutheros というのがあるだろう。あれとその apeleutheros とどう違うのかな」と言ったが、その問題はあとにしようということになった。」
(アテナイオス 『食卓の賢人たち』 より)


アテナイオス 
『食卓の賢人たち』 
柳沼重剛 編訳
 
岩波文庫 青/33-675-1 

岩波書店 
1992年4月16日 第1刷発行
500p 
文庫判 並装 カバー
定価770円(本体748円)



本書「凡例」より:

「本書はアテナイオスの『食卓の賢人たち』の抄訳である。」
「多くの読者の興味を惹きそうな箇所を選んで訳し、それぞれの箇所に表題をつけ、さらにその末尾に、原典の第何巻のどこからどこまでの訳であるかを、カッコの中に示した。」



本書「解説」より:

「本書は、著者アテナイオスが、彼の友人でローマの騎士階級に属するラレンシスという人がある日催した宴のありさまを、やはり彼の若い友人であるティモクラテスに報告した手紙ということになっている。前菜から始まって、次々に出される料理を楽しみながら、その料理の材料や料理法や食器や食べかた等々について、この宴に招かれた客たちが薀蓄を披露する。だから全体は長大な一篇の対話篇だということになる。」


アテナイオス 食卓の賢人たち


カバー文:

「舞台は2世紀頃のローマ。次々と出される料理を楽しみながら、その材料や料理法や食器や食べ方等々について、家に招かれた客たちが競って薀蓄を披露する。知ったところでたいして役に立つとも思えぬ話も少なからずあるが、しかし無類に面白い。この奇書の著者については、その名アテナイオス以外、ほとんど何も分っていない。」


目次:

凡例

無花果
シトロン
真珠
臓物など
奇妙な用語についてウルピアヌスとキュヌルコスが喧嘩をすること
パン
塩漬魚
冷たい飲み物
マケドニアの結婚祝賀宴
アテナイの食事の簡素さ
「口開け」――食欲を増進する食べ物
ホメロス風アテナイ式晩餐賛歌
アテナイの賢人たちの食事観
スパルタの宴会
クレオパトラとアントニウスの宴
犬儒派のキュヌルコスが豆スープのために弁じてストア派の哲学者と喧嘩したこと
水力オルガン
ホメロスに見られる宴会
哲学者は史実を曲げること
魚屋
パラシトス・食客・太鼓持ち
召使い・奴隷
アンティアスまたは「聖魚」または「美魚」
穴子

魚奇談
魚をめぐる笛吹きドリオンの機知
魚狂い人名録抄
動物学者アリストテレス
キャベツ
南瓜
料理人の自慢話風大演説

酒の割りかた
酒を愛したアルカイオスの詩、および、ふたたび酒の割りかた
いろいろな酒の飲みかた
なぞなぞ
ふたたびなぞなぞについて
プラトンに対する非難
贅沢な国民――ペルシア人
贅沢な国民――シュバリス人
贅沢な人間――アルキビアデス
贅沢な人間――アレクサンドロス
一夫一婦、一夫多妻、側室
エロスについて
遊女たちの逸話――グナタイナ
遊女たちの逸話――ライス
少年愛について
笑わせ屋(道化)
音楽の功徳
踊りいろいろ
果物さまざま――梨
果物さまざま――棗椰子
果物さまざま――干し無花果
鳥さまざま――雉
鳥さまざま――孔雀
料理人の権威
コッタボス遊戯
花冠
香油
宴の終わり

訳注
解説




◆本書より◆


「魚奇談」より:

「ポリュビオスは『歴史』の第三四巻で、ピュレネ山脈を越えてガリアへ入ると、ナルボ川までは平原で、その平原の中をイッレベリス川とロスキュノス川が流れており、それぞれの川の名をもつ都市を貫流しているが、その都市の住民はケルト人だと言っている。さらに彼は言う、この平原に「掘り魚」と称される魚がいる。またこの平原は土地がやせていて、ぎょうぎしばがたくさん自生している。この草の下は砂地で、これを二、三ペキュス(一メートルから一メートル半)も掘ると、川から分れて流れている水にぶつかる。この水といっしょに魚も枝分れした流れに入り込んで、餌を求めて地下を泳いでいる(この魚たちはぎょうぎしばの根が好きなのだ)。その結果この平原中どこでも地下の魚がたくさんいることになり、人々は地面を掘っては捕っている。テオプラストスによるとインドには川から陸へ上がり、また蛙のようにぴょんと跳ねて水の中に帰る魚がいる。外見はマクセイノスという魚に似ているという。同じペリパトス派のクレアルコスが『水中動物』という著述の中で、「陸(おか)上がり魚(うお)」と呼ばれる魚のことをいろいろ述べているのを忘れたわけではない。彼の文章はこんなのだったと思う。「陸上がり魚」はアドニスと呼ばれることもあるが、水から出て休息するところからこの名を得た。全体は赤っぽく、鰓(えら)から尾まで、体の両側に白い筋が一本すっと通っている。体は丸っこくて平(ひら)たくない。大きさはケストリュコスという、岸に近い所にいる鯔(ぼら)と同じぐらい、体長はせいぜい八ダクテュロス(一四―一五センチ)である。全体として最もよく似ているのは「雄山羊」と呼ばれる魚で、ただ違うのは、こちらの方には口の下に「山羊のひげ」と俗に言われている黒い斑点があることである。「陸上がり魚」は「岩場の魚」の一種で、岩のごつごつした所で生活している。海がおだやかな時は、打ち寄せる波に乗って陸へ上がり、石ころの上で長時間休息し、しかも太陽の方に体を向ける。十分に眠ると波打ち際までころがって行く。すると波がまたこの魚をつかまえて、海へとさらってくれるのである。陸へ上がって目を覚ましている時は、天気が良ければ陸に上がるパレウディアステスと呼ばれる水鳥、例えばかわせみ(?)とか千鳥とかクレクスに似た鷺(さぎ)とかいう鳥に対して警戒する。こういう鳥は、天気の良い日には陸に餌を求めて、時々この魚にぶつかる。しかし魚の方は見るが早いか跳ねてもがいて、水の中に飛び込んでしまう。
 このクレアルコスはさらにこういうことも言っている。しかもさっき私が引き合いに出したキュレネのピロステパノスなんかよりよく分かるようにだ。「ある魚は、喉笛(のどぶえ)などというものはないのに声を発する。例えばアルカディアのクレイトル付近の、ラドンという川にいる魚がそうである。声を出すだけではない、えらいざわめきになるのだ」。ダマスコスのニコラオスは『歴史』の第一〇四巻で、「ミトリダテス戦争の頃プリュギアのアパメイアで地震があって、大地が震動したために、それまではそこになかった湖ができ川ができ、涌き水が出るようになった。そのほとんどはまた消えてなくなったが、それとは別にこの地方には、ちょっと塩辛い、緑がかった青い水が噴き出し、海から遠く隔たっているのに、この付近一帯に、貝だの魚だのそのほかの海の生物だのがいっぱい出てきた。」
 それから魚の雨が降ってきたという話も私は知っている。パイニアスは『エレソスの為政者』の第二巻で、何人かの人が方々で魚の雨を見ている、またおたまじゃくしでも同じことがよく起こっていると言っている。ヘラクレイデス・レンボスは『歴史』の第二一巻で、「マケドニアのパイオニアと小アジア北端のダルダニアでは蛙の雨が降って、その数があまりにも多かったので、道といわず家の中といわず蛙だらけになった。はじめの二、三日は人々は蛙を殺して戸締まりをして、天からのお恵みを大いに活用した。しかしそのうちに、そんなことをしてもしようがなくなった。家じゅうの容れ物という容れ物に蛙が詰め込まれ、ほかの食べ物といっしょに煮たり焼いたりされていた。そのうえ水も飲めない、外へ出ようと足を踏み出すこともできない。蛙が山積みになっているからだ。あげくに死んだ蛙の匂いに参って、人々は土地を捨てて逃げ出した。」
 ……[中略]……
 リュキアの「魚占い師」のことも言わないわけにはいかないね。これについてはポリュカルモスが『リュキア史』の第二巻で紹介している。こういうのだ、「海に向かってずっと行くと、海岸にアポロンの聖林がある。そこには砂浜に接して池がある。予言を受けたいと思う者は、二本の木の棒を持って参入する。それぞれの棒には焼いた肉が一〇個ずつつけてある。神主が沈黙のうちに聖林に面してすわる。一方お告げを受けに来た者は棒を池の中に投げ込んで、どうなるかを見守る。さて棒を投げ込んだ後、池には海水がみちてくる。すると魚の大群がやって来る。その多さと種類に驚嘆して、今まで見たこともないこの光景に見入っていると、今度は魚の大きさを見て、これは何事か神のおわしますかと思えてくる。予言の司(つかさ)が魚の有様を神主に伝え、伺いに来た者は神主から自分の願いごとについてのお告げを聞く。大きなはた、灰色は鯊(はぜ)、時には鯨や鋸鮫(のこぎりざめ)、それに見たこともない魚や妙な姿の魚まで現れるのである。」」








































































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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