箱崎総一 『カバラ ― ユダヤ神秘思想の系譜』 (改訂新版)

箱崎総一 
『カバラ
― ユダヤ神秘思想の系譜』 
(改訂新版)


青土社 
1988年4月1日 第1刷発行
1992年8月20日 第6刷発行
448p 索引xii 
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,700円(本体2,621円)
装幀: 高麗隆彦



本書「あとがき」より:

「本書は『現代思想』に一九八四年一月号から一九八五年九月号まで二十一回にわたって連載した“ユダヤ神秘思想の系譜”をもとに制作したものである。」


「改訂新版あとがき」より:

「一九八六年に刊行された『カバラ=ユダヤ神秘思想の系譜』が今回好評のうちに改訂新版として出版されることになった。
 この刊行を機にして索引項目の大幅な増加をおこなうことになった。」



本文中図版(モノクロ)多数。


箱崎総一 カバラ 01


帯文:

「ヨーロッパの根底に横たわるもの
西欧思想の根底に横たわるユダヤ教の伝承《カバラ》を、基本的な典籍『創造の書』や、また、『聖書』『タルムード』とならんで第三の聖典ともいわれる『ゾハル』によって解き明かし、情念と信仰の象徴体系として、ユング、フロイトにまで受けつがれて、現代精神医学成立の根拠ともなったその内的宇宙を検証。」



帯背:

「近代合理主義の
影の象徴体系」



目次:

凡例

まえがきにかえて――ニューヨーク市立病院の出会い

第一章 カバラの起源
 Ⅰ シルクロードのユダヤ人
 Ⅱ タルムードの成立
 Ⅲ 死海の書
 Ⅳ メルカバの秘儀

第二章 創造の書
 Ⅰ 宇宙創造
 Ⅱ 象徴の言語
 Ⅲ 母なる文字

第三章 預言者たち
 Ⅰ ガビロールの受難
 Ⅱ 聖人マイモニデス
 Ⅲ 盲人イサクと聖なる言葉

第四章 光輝の書
 Ⅰ 光輝の書の誕生
 Ⅱ 旧約とカバラ
 Ⅲ 隠れたる神
 Ⅳ 死後の霊
 Ⅴ カバラ伝承

第五章 カバリストの系譜
 Ⅰ カロの生涯
 Ⅱ コルドベロとルーリア
 Ⅲ キリスト教カバリスト
 Ⅳ 偽救世主サバタイ・ツヴィ

第六章 カバラと現代
 Ⅰ カバラ復権
 Ⅱ ユングの幻視
 Ⅲ フロイトの原風景

あとがき (1986年5月)
改訂新版あとがき (1988年3月)

索引



箱崎総一 カバラ 02



◆本書より◆


「第二章 Ⅰ 宇宙創造」より:

「タルムードによれば、神の聖なる名前は、ソロモン王の神殿において年一回の“贖罪の日”(The day of Atonement)に最高位の神官によって唯一人、誰も神殿の中にいない時、至聖所内で声高く十回呼ばれることになっていた。
 紀元前五八六年、バビロニヤの王ネプカデネザルによってソロモン王の第一神殿は破壊された。その年まで年一回、贖罪の日に神の名は神殿内で叫ばれていた。神殿破壊後約一世紀間は、ユダヤ神官、非ユダヤ人の間でも聖なる名を示す四文字の正確な発音は知られていた。
 三五〇年、バビロニヤ在住のアモラであるラバ(Raba)は神の名の正確な発音を一般の大衆に教えようとした。
 しかしその後、神の名 YHWH の正確な発音は忘却されてしまった。一説によると、バビロニヤ在住のユダヤ神学者の間では十世紀頃まで、YHWH の正確な発音は知られていたとも伝えられている。一般には、紀元前三世紀以降、聖四文字の正確な発音は忘れさられた。その結果、神の名の別称としてアドナイ(Adonai)が用いられるようになった。アドナイ YHWH という組み合わせの呼称も使用された。さらにエロヒム(Elohim)の呼称も用いられた。
 更にキリスト教神学者によってヘブライ語聖書の研究が進められた結果、YHWH の発音はエホバ(YEHOWAH, JEHOVAH)と発音されるようになった。」
「だが、聖四文字の正確な発音を求める要求が別の方面から強く出されるようになった。それは民間伝承・迷信・悪魔払い(Exorcism)の求めに応えるためでもあった。中世初期の一般医療技術においては神の御名において疾患を起こす悪霊を取り除くことが重要視されていた。新約にもこれに関する記述が認められる。
 そこで中近東・欧州各地に散在していたユダヤ人居住区において、YHWH の正確な発音を探求する動きが活発に展開された。」
「タルムードにも聖四文字の持つ聖なる力についての記述があり、聖四文字の正確な発音をめぐってさまざまな魔術・呪術・悪魔払いなどの通俗的カバリスト(瞑想と思索を主としたカバリストとは区別するための呼称)の活動が展開されたのである。これがつまり“聖四文字の秘儀”なるものの中心課題であった。
 それでは、YHWH の正確な発音はどのようなものであったのか。現代の研究者によればそれは決して紀元前三世紀以来忘れられていたのではなく、キリスト教初期のギリシャ語記述のうちに“ヤウェ”(Yaweh)として記録されていることが指摘されている。さらに、YH は母音が付加されて YAH として『出エジプト記』の詩のうちにも記述されていることが判明した。」
「-YAHU、-YAH は、ヘブライ語の名詞の語尾につくことが多い事実も判明した。また、YHWH は古代ヘブライ語における“ある”(to be)を意味する HWH の動詞形であることが、多くの学者によって指摘されている。
 この神の名の意味について、旧約には次の記述がある。
 “神はモーセに言われた。「わたしは、有って有る者」。また言われた。「イスラエルの人々にこう言いなさい。『〈わたしは有る〉というかたが、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と」”
 この記述のうち、“私は、有って有る者”(Eheyeh-Asher-Ehyeh)が神の名の正確な名称であり、YHWH はその短縮形であろうこと、さらに古代における神の名の原形はおそらく、“YAH-WEH-ASHER-YIHWEH”であったろうと推定されている。」



「第二章 Ⅱ 象徴の言語」より:

「ゲマトリア手法の概要は次のようなものである。単語に含まれた数値の計算値に等しい別の単語は同価である(象徴的に同じ意味を持つ)。循環数、小数は十または百のなかに含めない。単語に含まれた数値を二乗数として計算することがある。各文字の数値は前から後へ加算してゆく。合計千になるゲマトリアの手法は重要である。各文字の数値それぞれは計算せず、その合計した数値のみが有意義であるとすることなどである。ゲマトリア手法は後世にいたり通俗的カバラの主要な関心事となっていった。より神学的、形而上学的な内容を保持しようとする瞑想的なカバリストにとっては、ゲマトリア手法は無価値なものであるとして批判されることになる。
 その他、カバラ思想の通俗化、歪曲化をうながす手段として使用されたのがノタリコン(Notarikon; Latin. notaricum)である。この語はギリシャ語起源であり、速記法という意味である。古くローマ帝国の法廷においても、この手法は用いられていた。記述速度をあげるため、通常は単語を頭文字一字のみに簡略化したのである。エルサレム・タルムードにも、ノタリコンについての記述がある。
 この手法は聖書解釈学の手段としても活用され、単語の文字の総ては簡略化されたノタリコンであり、そこから別の意味がくみとれると考えられることになった。十三世紀頃のドイツにおける通俗的カバリストの間ではゲマトリアとノタリコンはカバラ聖典の解釈にとって不可欠の手段であると考えられるようになっていた。」


































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

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