マルコ・ポーロ 『完訳 東方見聞録 2』 愛宕松男 訳注 (平凡社ライブラリー)

マルコ・ポーロ 
『完訳 東方見聞録 2』 
愛宕松男 訳注
 
平凡社ライブラリー 327/ま-9-2 

平凡社 
2000年2月15日 初版第1刷
472p
B6変型判(16.0cm) 並装 カバー
定価1,300円(税別)
装幀: 中垣信夫
カバー画: 16世紀に刊行された地図の一部(モンゴル周辺)



「平凡社ライブラリー版 凡例」より:

「本書は、小社より東洋文庫一八三巻として一九七一年三月に刊行されたものの第二三刷(一九九七年十二月刊)を底本としたものである。」


「東洋文庫版 凡例」より:

「本書は、ルイギ・フォスコーロ・ベネデットの手になるイタリア語訳『マルコ・ポーロ旅行記』集成本を、アルド・リッチの英訳――Aldo Ricci: The Travels of Marco Polo, translated into English from the Text of L. F. Benedetto. London, 1931. について全訳したものである。」


本文中図版(モノクロ)。全二冊。


東方見聞録 2


カバー裏文:

「現在の天津郊外より台湾海峡に至る長大な
運河に沿っての福建へのたび、チパング島への
遠征(元寇)、さらには極寒のロシアなど、
広大な地域にわたって産業や宗教、習慣、
迷信などを見聞してゆくマルコ・ポーロ。
インド洋を経由するスパイスコースで帰路に
着き、ヴェニスを発って二十六年という
長い旅の終わりをむかえる。」



目次:

平凡社ライブラリー版 凡例
東洋文庫版 凡例
中世ヨーロッパの度量衡及び貨幣の換算表

地図
マルコ・ポーロ元朝領域行程略図
モンゴル帝国・元朝並びに四カン国世系表

第五章 大運河沿線の公道による福建への旅程
 一四四 カチャンフ市
 一四五 チャンル市
 一四六 チャンリ市
 一四七 タンディンフ市
 一四八 カタイ人の風習
 一四九 続カタイ人の風習
 一五〇 壮麗なる都市シンジュマツー市
 一五一 大都市〔リンジン〕シウジュー
 一五二 ピンジュー市
 一五三 〔シウジュー〕リンジン市
 一五四 カーンの大マンジ国征服
 一五五 コイガンジュー市
 一五六 パウキン市
 一五七 カウイウ市
 一五八 〔ティンジュー〕ティジュー市
 一五九 ヤンジュー市
 一六〇 ナンキン地方
 一六一 サーニァンフ市
 一六二 シンジュー市
 一六三 カイジュー市
 一六四 チンギァンフ市
 一六五 〔カンジュー〕チアンジュー市
 一六六 スージュー市
 一六七 キンサイ市
 一六八 カーンがキンサイ市から徴集する巨額な税収入
 一六九 大都市タンピンジュー
 一七〇 フージュー王国
 一七一 フージュー市
 一七二 ザイトゥン市

第六章 南海経由の帰国航路
 一七三 インドに関する報告、その国のさまざまな人種ともろもろの不思議について、まずインド通いの海船について
 一七四 チパング島
 一七五 暴風雨の中を生き残ったカーンの軍勢が敵地の都市を占領したこと
 一七六 偶像教徒のいろいろ
 一七七 チャンバ国
 一七八 大ジャヴァ島
 一七九 ソンドゥール島とコンドゥール島
 一八〇 ペンタン島およびその他の島々
 一八一 小ジャヴァ島
 一八二 ファーレック王国
 一八三 バスマン王国
 一八四 サマトラ王国
 一八五 ダグロイアン王国
 一八六 ランブリ王国
 一八七 ファンスール王国
 一八八 ネクヴェラン島
 一八九 アンガマン島
 一九〇 セイラン島
 一九一 大マーバール地方
 一九二 ムトフィリ王国
 一九三 使徒聖トーマスの遺体を安置する土地について
 一九四 バラモン教徒の発祥地ラルの地方
 一九五 続セイラン島
 一九六 堂々たるカイル市
 一九七 コイラム王国
 一九八 コマリ国
 一九九 エリ王国
 二〇〇 メリバール王国
 二〇一 ゴズラート王国
 二〇二 ターナ王国
 二〇三 カンバエット王国
 二〇四 セメナット王国
 二〇五 ケスマコラン王国
 二〇六 男島と女島
 二〇七 スコトラ島
 二〇八 モグダシオ島
 二〇九 ザンジバール島
 二一〇 中インド、すなわちアバシュ地方
 二一一 アデン王国
 二一二 エシエル市
 二一三 デュファール市
 二一四 カラトゥ市
 二一五 コルモス市

第七章 大トゥルキー国事情
 二一六 大トゥルキー国
 二一七 カイドゥ王の王女とその勇壮果敢ぶり
 二一八 アバガ・カンが王子アルゴンを派遣して戦わしめた始末
 二一九 王位を求めてアルゴン帰京の途につく
 二二〇 アコマットのアルゴン邀撃
 二二一 アコマット攻撃を議するアルゴン
 二二二 アルゴンに対する将領たちの回答
 二二三 アルゴン、使者をアコマットに派遣す
 二二四 アルゴンの使者に対するアコマットの回答
 二二五 アルゴン軍とアコマット軍の会戦
 二二六 アルゴンを逃さんとひそかに謀る貴族たち
 二二七 アルゴン、自由の身となる
 二二八 アルゴン、その叔父アコマットを死に処せしむ
 二二九 貴族たち、アルゴンに忠誠を誓う
 二三〇 アルゴンの没後、キアカトゥ王位につく
 二三一 キアカトゥの没後、バイドゥ王位につく
 二三二 北地に居住するカンチ王の話
 二三三 「常闇の国」
 二三四 広大なルシア国とその住民
 二三五 「大海」への関門
 二三六 西北タルタール国の歴代諸王
 二三七 アラウとバルカの間に生じた戦争
 二三八 バルカ、諸軍を率いてアラウに向け進撃す
 二三九 部下将兵に対するアラウの訓辞
 二四〇 アラウ軍とバルカ軍の激戦
 二四一 続アラウ軍とバルカ軍の激戦
 二四二 バルカの勇壮な奮戦
 二四三 西北タルタール王国におけるトタマングゥの即位
 二四四 トクタイ、ノガイを召喚してトロブガの死についての釈明を求む
 二四五 トクタイ、使臣をノガイのもとに派遣す
 二四六 トクタイのノガイ親征
 二四七 部下に対するトクタイの訓辞
 二四八 ノガイ王の奮戦

文献解題 (愛宕松男)
索引




◆本書より◆


「一六七 キンサイ市」より:

「この信仰のゆえに、マンジ人たちは死をいささかもおそれない。(中略)更に加えて彼等は、他のどの国人にもまして感情に激し易いから、一時の興奮にかられ悲嘆にくれるのあまり、しばしばよく自殺する。たとえばある男が他人の顔を平手で殴ったとか頭髪を引っぱったとか、あるいはその他の方法でその感情を害し立腹せしめたというような場合、この加害者の身分が高くて仕返しをしようにもできないようだと、被害者は無念のあまり相手の邸の戸口で首を吊り、仕返しにもまさる侮辱と無礼を相手に加えるのである。」

「バヤン将軍がキンサイ市を包囲した時に起こった奇蹟だけはどうしても述べないではいられない。それはファクフール王が都を逃げ出した時のことである。多数のキンサイ市民も船に乗りこみ、市の一辺を流れている幅広く深い河にしたがって脱出した。ところがこの脱出の最中ににわかに河水が干上がって、河床が露呈してしまった。バヤンはこれを聞くと現場に急行し、脱出者をことごとく駆り立てて市内に帰還せしめた。すると見るも奇怪な一匹の魚が河床の彼方から此方にかけて乾いた山のような巨体を横たえているのが見いだされた。この怪魚はたっぷり百ペースの長さをしており、しかも幅は長さに比べて全くふつりあいなもので、全身を毛におおわれていた。若干の大胆な男が向こう見ずにもこの魚の肉を食ったところ、その大部分は命を失ってしまった。ところでわたくし、すなわち本書の著者たるマルコ・ポーロ氏はこの怪魚の首を偶像教の寺院で親しく目覩したものである。」



「一七〇 フージュー王国」より:

「この地方に関して特筆すべきことは、住民がどんな不浄なものでもかまわず食用に供することである。たとえば人肉でも、それが病死者のものでない限り、平気で食用する。すべて天寿を全うせずして横死した人間の肉ならどれでも好んで食用し、とても美味な御馳走だとさえ言う。したがって戦場に赴く男たち、つまり兵士たちであるが、彼等は残忍きわまりない連中であって、頭髪をすっかり刈り込み、顔のまん中に剣の刃のような印を藍色でつけ、隊長以外はみな徒歩で手に手に槍・刀剣をとり、それこそ常に人を殺してまず血をすすり次いで肉を争い食うという輩である。この連中はいつも誰かを殺して血を飲み肉をくらおうとしてその機を狙っているのである。」


「一七五 暴風雨の中を生き残ったカーンの軍勢が敵地の都市を占領したこと」より:

「最後に、これまで言い漏らしていたいま一つの不思議な話を付け加えることにする。チパング島のある町で、敵兵の一隊がカーンの二将軍の手に捕えられた。彼等は投降を拒んだので、両将軍は全員の死刑を宣告し、斬首せよと命令した。この命によって捕虜は次々と首を打ち落とされたが、そのうちの八名だけはどうしても首を斬ることができなかった。これは彼等が身につけているある種の石にそなわる魔力によるものだった。実際のところ、彼等は腕の内側で皮膚の下、肉の上のところに一個の石を挿入し、外部からはわからないようにして身につけていた。この石には呪術がかけられていて魔力を発揮し、刃物では絶対に殺されないことになっている。二将軍は、この八名だけが剣を加えてもいっこうに死なない所以を知るや、あらためて撲殺せよと命じた。すると魔石の威力も利かなくて、たちまち八名は殺されてしまったのである。」


「一七六 偶像教徒のいろいろ」より:

「しかしこの一事だけは是非とも知っておいてもらいたいからお話しするが、チパング諸島の偶像教徒は、自分たちの仲間でない人間を捕虜にした場合、もしその捕虜が身代金を支払いえなければ、彼等はその友人・親戚のすべてに
 「どうかおいで下さい。わが家でいっしょに会食しましょう」
と招待状を発し、かの捕虜を殺して――むろんそれを料理してであるが――皆でその肉を会食する。彼等は人肉がどの肉にもましてうまいと考えているのである。」



「一八六 ランブリ王国」より:

「もう一件とても奇妙なことがらがあるからお伝えしたい。それはほかでもない。この国のたいていの男が長さ一パームの尾をほんとうにつけていることである。もっともかかる男たちは、都邑には住んでいないで、山間の盆地に居る。その尾はほぼ犬の尾ぐらいの大きさで毛がない。
 この地にはまた一角獣が多く棲息している。」



「一八九 アンガマン島」より:

「島民は嘘いつわりではなく全くほんとうに、頭も歯も眼もが犬に類している。頭部は特にそれがはなはだしくて、まるっきり猛犬そっくりである。この島には香料が豊富に産出する。土人の性情は非常に残忍で、人をいけどりにすれば、それが同種族人でない限り、すべてそれを食ってしまう。ここには香料の類ならどんな種類でも多量に産出する。」


「一九一 大マーバール地方」より:

「彼等は動物はもとより、生あるものはどんなものでも殺さない。したがって羊肉が食べたいとか、もしくはその他の獣肉・鳥肉がほしい場合には、サラセン人だとかないしは彼等のこの信仰と習慣とに従わない連中に依頼して屠殺してもらうのである。
 またもう一つの習慣は、男女を問わず毎日朝夕の二回ずつ水浴し、これを済まさなければ飲食しないのである。日に二回の水浴をしない者は、我々が異教徒を見るのとまさに同じように見なされる。
 食事に際して彼等は右手だけを使用し、左手では食物に触れることをいっさいしない。清浄なもの・美麗なものに対しては必ず右手を用いてこれを取り扱い、左手は一般にやむをえずしなければならない厭な行為・不浄な行為、たとえば鼻の孔を掃除するとか尻を拭くとかいった動作にあてる。彼等はまた飲み物の場合、必ず各自にめいめいのカップを使い、決して他人のカップで飲むことをしない。飲み方にもきまりがあって、唇をカップに付けるようなことなく、ただカップを高く差し上げてそこから飲み物を口中に流しこむ。どんなことがあってもカップに唇を付けたり、自分のカップで他人に飲ませるようなことはやらない。」

「この王国の裁判は、殺人者・盗竊(とうせつ)者その他の犯罪者に対してとても厳重な処罰を加える。負債についても次のような法規と習慣とが行なわれている。すなわち債権者から何度も繰り返し返済を催促された債務者が、いつも弁済を約束しておきながら一日延ばしに支払いを怠っているような場合、債権者は次の方法をとるのに成功すれば、有効な請求ができるのである。それはほかでもない、債権者が債務者の周囲に円を描くのである。こうされると債務者は、支払いを完了するか、ないしは少なくともその日のうちに全負債を返済できるに足るだけの担保を提供しない限り、この円から外へ出ることが許されない。それにもかかわらず負債者が返還もせず、またその日の中に支払いを完了するだけの担保をも提供しないで、ずうずうしくもこの円から外へ出るようなことがあれば、彼は法規と正義の違反者となるわけで、王は即刻これに所定の処罰たる死刑を科するのである。
 ところでマルコ氏は、王自身がこの種債務督促手段に訴えられた実例を目覩(もくと)した。それは王が外国商人からある物品を購入しながら、手もとの不如意により代価を支払わず、度重なる商人の督促をほったらかしていたところ、これでは商売の損失がたまらないとして、その商人が、王の城外出遊を伺い王とその乗馬の周囲にすばやく円を描いてしまったのである。王はこうされるや、手綱をしめて前進するのをやめた。こうなっては商人が満足するだけの支払いを済まさない限り、その場から動くわけにはゆかない。折から近傍でこの様子を見ていた民衆は大いに驚き、口々に言い合った。
 「御覧よ、王だってあのように法律に従っておられるよ」
王はこれに答えて言った。
 「この法規を制定した余が、自分に不都合だからといってそれを破ってよいものだろうか。
 否、余は誰にもましてこの法規をよく守らねばならないのだ」」

「またこの地の住民の間には、いわゆる観相術に通じた者が少なくない。観相術とは、相手が男であれ女であれ、その性格が善であるか悪であるかを洞察する術であって、彼等は相手を一見するなり、ただちにその性格を識別してしまう。誰かがある獣や鳥を見かけた場合でも、彼等はその意味を的確に測知できる。彼等は誰よりもよく各種の兆候に注意を払い、それが吉兆であるか凶兆であるかを誤たず予告する。かかる次第だから、この地の住民は誰でも、彼がどこかに出かける場合、その途上で鼾(いびき)やくさめの声でも聞こうものなら、さっそくその場に坐りこんで一歩も前進しようとしない。そしてもう一度くさめの声が聞こえると、初めて起ち上がって歩みを続けるが、二度目のくさめがどうしても耳に入らなければ、彼はその旅行を断念して帰宅するのである。
 更にまた彼等に言わしむれば、日々にチョイアックという不吉な時刻がある。たとえば月曜日では昼間の第一時半が、火曜日では第三時がそれに当たり、水曜日だけにはこの不吉の時刻がないといったぐあいに、年間を通じての毎日についてそれぞれの不吉時刻があるとする。この不吉時刻に関しては、もっぱらその詳細と意義とを記録した書物が発行されている。」



「一九三 使徒聖トーマスの遺体を安置する土地について」より:

「奇蹟については以上で十分申し述べたから、次には聖トーマスが殺害された模様を、土地の人々の伝えによって記述してみよう。その時、聖トーマスは森の庵から戸外に出て神への祈りをささげていた。ところでこの地方は名に負う世界一の孔雀多棲地であるから、聖トーマスの周りにはあちこち多数の孔雀が群がっていた。彼がこうして祈りをささげつつあった時、ガヴィ族に属するさる異教徒が、聖人の周りに群がる孔雀を仕とめようとして矢を射こんだのである。このガヴィ族は、元来そこに聖人が居るとは気がつかなかった。彼は確かに孔雀に射当てたと思ったが、しかし矢は孔雀にではなくて聖人の右脇にぷっつりと命中していた。このような次第で矢傷を受けた聖人は、それでもなお静かに神への祈りを続けていたが、結局この傷が因となって死んだのである。」


「二〇七 スコトラ島」より:

「またこの島のキリスト教徒は世界でも類のない魔術師である。大司教は彼等にかかる魔法を使わせたくはないので、彼等に警告し勧告するのであるが、聴かれないのがその実状である。島民に言わすれば、彼等の祖先が昔から行なってきた所だから、自分たちも同様にそれを行ないたいというのである。島民がこのように魔術を行ないたがるので、大司教もそれをなんともできず、ほかに方法がないままに黙過している。かくしてこの島のキリスト教徒はほしいままに魔術を行なっているわけなのである。
 以下少しくこの魔術について説明しよう。この魔術師たちは実に不可思議の術を心得ていて、欲する所はほとんどなんでも行なうことができる。たとえば、海賊船が島民に何か危害を加えようものなら、彼等はさっそくこの術によって海賊船を抑留し、完全な賠償がなされるまでは決して島を去らしめない。あるいは海賊船が既に島を離れて航海中であるようなら、たとえ順風が吹いていても、彼等はただちにそれを逆風に変え、その結果やむなく島に引き返さざるを得なくさせてしまう。このように彼等は欲するがままの風を吹かせることができるのである。」




こちらもご参照下さい:

マルコ・ポーロ 『完訳 東方見聞録 1』 愛宕松男 訳注 (平凡社ライブラリー)
フランセス・イエイツ 『シェイクスピア最後の夢』 藤田実 訳











































































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Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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