G・ド・ネルヴァル 『東方の旅 下』 篠田知和基 訳 (世界幻想文学大系)

「その話にすっかり興味をそそられてゆくうちに、私は名高きハーキムの生涯を知りたいと思うようになった。歴史家は彼のことを、ネロとヘリオガバリスを足して二で割った狂暴な狂人として描いている。しかし、ドルーズ族の目から見れば、彼の行動もまったくちがったふうに説明されるだろう。」
(ネルヴァル 『東方の旅』 より)


G・ド・ネルヴァル 
『東方の旅 下』 
篠田知和基 訳
 
世界幻想文学大系 31 B 

国書刊行会 
昭和59年2月25日 印刷
昭和59年2月29日 初版第1刷発行
431p 口絵(折込)1葉
四六判 丸背紙装上製本 貼函
定価3,200円
造本: 杉浦康平+鈴木一誌
挿画: 渡辺冨士雄

月報 41:
ネルヴァルとフリー・メーソン(大浜甫)/夢にはどのような縁(へり)があるか――ネルヴァルの場合(天澤退二郎)/幻想文学の冒険⑤幻想小説の変貌(森茂太郎)/次回配本/図版1点



本書「あとがき」より:

「これはジェラール・ド・ネルヴァル(一八〇八年―一八五五年)畢生の大作『東方の旅』(一八五一)の全訳である。」
「なお、思うところがあって解説的な注は付さなかった。」



全二冊です。
本来は函にカバーが付いていて、いろいろ文字が書いてあるのですが、紛失しました。


ネルヴァル 東方の旅 下 02


目次:

ドルーズ族とマロ族
 第一部 レバノン山の王侯
  I 山岳地帯
  II 混成部落
  III 城館
  IV 狩り
  V ケスルーアン
  VI 戦闘
 第二部 囚われ人
  I 朝と夕暮
  II フランス人学校訪問
  III アッカレ
  IV ドルーズのシャイフ
 第三部 カリフ・ハーキムの物語
  I ハシッシュ
  II 飢饉
  III 王宮の貴女
  IV モリスタン牢
  V カイロの大火
  VI 二人のカリフ
  VII 出発
 第四部 アッカル――アンチ=レバノン
  I 客船
  II ギリシャ人司祭夫妻
  III アッカの昼食
  IV マルセイユ人の冒険
  V パシャの晩餐
  VI 手紙(断片)
 第五部 エピローグ
  I
  II
  III

ラマダンの夜
 第一部 スタンブールとペラ
  I バリク=バザール
  II スルタン
  III 死者たちの大苑
  IV サン=ディミトリ村
  V 故宮の冒険
  VI ギリシャ人村
  VII 四人の美女
 第二部 芝居と祭り
  I イルディス=ハーン
  II ペラ見物
  III カラグーズ
  IV 水鑑定人
  V スクタリのパシャ
  VI デルヴィシ
 第三部 講釈師
  カフェの講釈
  朝の女王と精霊の王ソリマンの物語
   I アドニラム
   II バルキス
   III 神殿
   IV メロ
   V 青銅の海
   VI 幻
   VII 地下世界
   VIII シロアの洗い場
   IX 三人の職人
   X 会見
   XI 王の夜宴
   XII マクベナク
 第四部 バイラム
  I アジアの水郷
  II 大祭の前夜
  III 後宮の祭り
  IV アトメイダン

あとがき (篠田知和基)



ネルヴァル 東方の旅 下 03



◆本書より◆


「ドルーズ族とマロ族」より:

「女優とか、女王とか、女流詩人とかに対して抱く恋心についてはまじめな人々が軽口を叩くことが多い。心よりも想像力をかきたてるものだというわけだ。しかしそういった狂恋は、しばしば錯乱や死に至ることもあるのだし、少なくとも、時間と財産と知性とを大いに犠牲にすることだけは確かなのだ。なるほど恋をしているつもり、病気になったつもり、ただそれだけだと言うかもしれない。しかし、私においては、つもりということは事実そのものなのだ!」


同第三部「カリフ・ハーキムの物語」より:

「ハシッシュは神にひとしくしてくれる」と見知らぬ男は深い声でゆっくりと言った。
「そのとおり」とユースーフは勢いこんで言った。「水しか呑まない連中には、物事の大雑把で物質的な上べしか見えないものだ。酔いは肉体の目を曇らせるかわりに、魂の目を開けてくれる。精神は、肉体という重たい拘束から解き放たれて飛びたってゆく。牢番が鍵をかけ忘れて眠っちまったすきに逃げだす囚人みたいにね。あとは空と光の中を、楽しく自由に飛び回る。精霊(ジェニー)と親しく話し、突然の魅力的な啓示を受けて目が眩む。言いようもない幸福感に浸されて軽々と飛んでゆき、実際はほんのわずかのあいだが、永遠に続くような気がする。それほど、いろいろな感覚がすばやくひき続いてゆく。おれの場合、いつも、繰り返し現われる夢がある。同じでいながら、その都度、ちょっとずつちがっている。すばらしい幻にふらつきながら川舟に戻って、目をとじると、風信子石、柘榴石、エメラルド、ルビーといったものが絶え間なく流れてゆくのが見え、それを背景にしてハシッシュのすばらしい幻が浮かびあがってくる……、無限のかなたからやってくるように、神々しい姿が見える。詩人が描いたどんな女よりも美しい。胸に沁み入るような優しさで微笑んで天から降りてきてくれる。天使なのか妖精なのか分らない。その女が小舟の中のおれの横に腰を下ろすと、つまらない舟の木の板が螺鈿に変わり、銀の川に浮かんで、香りのいい風に吹かれて走りだす」
「不思議な、いい夢だ!」と見知らぬ者は頭を揺らしながら呟いた。
「それだけじゃない」とユースーフは続けた。「ある晩のことだ。いつもより少し量を減らしていた。酔いから醒めてみると、舟はロッダ島の鼻の先を通っている。夢の中そっくりの女がおれのほうを覗きこんでいる。その目は、人間にしちゃあまりにも神々しく輝いていた。ヴェールがちょっとめくれて、宝石ずくめの胴衣が月の光できらきら光った。おれの手が、女の手にさわった。柔らかくて、しっとりして、花びらみたいにみずみずしい手だ。指輪の金細工が手に触れたんで、間違いなく現実だってことが分かった」」

「モリスタンは、今日ではカラウームのモスクに隣接しているが、かつては広大な牢獄で、その一部が狂暴な狂人にあてられていた。オリエント人がいかに狂人を敬うといっても、危害を加える恐れのあるものまで自由にしておくわけではなかった。翌日、暗い独房の中で目を覚ましたハーキムは、農民の着物を着ている以上どんなに猛り狂っても、どんなにカリフだと言い張っても無駄なことをただちに了解した。それに牢内には、すでに五人のカリフと、相当な数の神がいたのである。神という肩書も、もうひとつと同じく、いささかもいい結果をもたらすものではなかった。それにハーキムは、夕べ鎖を引きちぎろうとしてさんざん骨折ったあげく、彼の神性も、かよわい肉体に捉われている以上、インドのブッダやその他のおおくの至高存在の化身同様、あらゆる人間の悪意と物質的な力の法則に従うことを余儀なくされていることを悟っていた。」

「狂人の一人は、さまざまのかけらを集めて、ガラス片をちりばめた法王冠のようなものを作りあげていた。彼は、きらきら光る刺繍をつけた法衣をはおっていたが、それは自分で、金ぴかの切れ端で作ったのだ。
「おれは〈カイマルゼマン〉(世紀の首領)だ。いまこそ時が来たのだ」と言うのである。
「嘘だ」とほかの男が言う。「おまえは本物じゃない。おまえは〈下級神〉に属していて、おれたちを騙そうとしているんだ」
「それじゃおまえの考えでは、おれさまはいったい何なんだ?」と先の男が問い返す。
「反逆霊の最後の王のタムラートだ! セレンディップ島でおまえを打ち破ったもののことを覚えていないのかね、つまりアダム、かく言うおれのことだ。おまえの槍と楯は、戦利品として今でもおれの墓にかかげられている」
「おまえの墓とは!」と一方は笑いとばした。「場所さえどこかも分らんじゃないか。もう少しそいつを話してもらおうかね」
「おれが墓のことを言うのは、それなりの資格があってのことよ。人間たちのあいだに六回も生まれ、定められていたとおり六回死んだからな。そのたびに見事な墓を作ってもらったよ。それよりおまえのほうこそ、墓を見つけるのはむずかしいだろうに、何たっておまえたち死霊は、死神の中でしか生きられないんだからな!」
その言葉で引きおこされた一同の嘲罵の声は、気の毒な精霊の皇帝に向けられた。彼は怒り狂って立ちあがったが、その冠を、自称アダムが手の甲で払い落とした。彼は相手にとびかかり、かくして五千年を経たのち(彼らの計算ではそうなる)、二人の讐敵の戦いが今にも繰り返されようとしたところへ看守がやってきて、牛の神経の鞭で二人を引き離した。」
「これらの狂人たちの会話に、ハーキムがあきらかに興味をもって、聞き耳をたて、二こと三こと声をかけてあおりまでしたのはなぜだったろうか。それら知性の迷い出してしまったものたちのなかにあって、ただ一人理性をしっかり保っていた彼はまた静かに思い出の世界に戻っていた。狂人たちは、彼の厳かな態度がかもし出す奇妙な効果に気圧されるのか、誰一人彼のほうに目をあげなかったが、それでも、なぜかそのまわりに寄り集まってくるのだった。それは、夜が明けそめるころ、まだ現われ出ない光のほうに向きを変える植物にも似ていた。
突然自分が予言者であるとか、神であると感じたりするものの魂の中においていかなることが起こっているかは、ただの人間に知りようがないとしても、少なくとも神話や物語は、それら神的存在の知性が肉体の束の間の絆を脱しようとする不安定な時期に、どれほどの苦悶や迷いを覚えるものかを想像させてくれる。時としてハーキムもオリーブ山上の人の子キリストのように自分自身について疑うことがあった。とりわけ彼の想念を茫然とさせたことは、神性の観念がはじめて与えられたのがハシッシュの陶酔の中だということだった。「ということは」と彼は自問するのだった。「すべてであるものよりも強いものが存在するということなのだろうか、そして、そのような威力を引き起こしうるものが、ただの野の草であっていいものだろうか? 確かに、一匹の虫がソロモンより強いことは証明された、この精霊の王が倚りかかっていた杖に穴をあけて、真ん中から折ってしまったのだから。だが、もしも私が本当に〈アルバール〉(永遠)であるなら、私にくらべればソロモンなどなんだろう?」」

「王女はヴェールをかけていたが、ハーキムはその声に気がついた。そして彼女の傍で宰相のアルジェヴァンがにこやかに、落ち着き払って案内をしているのを見ると、憤激を抑えることができなくなった。
「ここには、さまざまな迷妄にとりつかれたものがおります。あるものは精霊の王だと名のり、あるものはアダムそのものだと言い張っております。しかしながら一番の野心家は、こちらにごらんになられます、お兄君さまと驚くほど似かよった狂人でございます」
「まあ本当に不思議なこと」とセタルムルクは言った。
「そうです! ところで、この似ているということが不幸のもとでして、カリフに生き写しだと言われておりますうちに、自分でもカリフだと思いこんでしまったまではいいのですが、そのうちそれではあきたりなくなって、今度は神だと言いだす始末です。みじめな農夫にすぎないのですが、ほかのもの同様、幻覚剤の乱用で頭がおかしくなっているもので……ですが、カリフおんみずからの前へ出たときこのものが何と言うか、これは興味のあるところでございましょう……」
「悪党め!」とハーキムは叫んだ。「きさまはわしに似た傀儡を作りだして、わしの身がわりをさせているんだな?」」



「朝の女王と精霊の王ソリマンの物語」より:

「しかしアドニラムの故郷がどこなのか、それは誰も知らなかった。どこから来たのか、それも謎だった。これほど実際的で、しかも深く広範な知識の数々をどこで究めたのか、知るものはなかった。彼はすべてを作り出し、すべてを見通し、すべてをやり遂げるように見えた。生まれはどこなのか、どんな種族に属しているのか、それは誰にも窺い知ることのできない秘密だった。(中略)人間嫌いの彼はアダムの子孫たちの只中にあっても、異邦の民のように孤独だった。(中略)彼は人間を超えていた。そこには光明の精霊と闇の鬼神とに通ずるところがあった。」

「「精霊よ、あなたはいったいどなたですか?」
「そなたの父祖のそのまた父の霊じゃ。働くもの、苦しむものの祖先じゃ、さあ来るがよい。わしの手がそなたの額をなでれば、もはや火の中でも息ができよう。今まで弱気など見せなかったおまえだ、恐れずに来るがよい……」
アドニラムは突然、沁みとおるような熱に包まれるのを感じた。身を焼かずに元気づけてくれる熱だ。(中略)神秘的な道連れがすでにその中へ姿を消した火の中へ、見えない手が導いてくれた。
「ここはどこです? お名前はなんとおっしゃるのです? どこへ連れていって下さるのですか?」と彼は低くたずねた。
「地球の只中……人の世の魂の中、そこにはわれらが父エノクの、地下の宮居が建っている。エジプトではヘルメスと呼ばれ、アラビアではエドリスの名のもとに崇められるお方の」
「不滅の力よ! おお主よ! それでは本当なのですか? あなたは……」
「そなたの祖先、人にして……芸術の徒、そなたの師にして、守護者、私はかつてのトバル=カインだ」
沈黙と闇の世界により深く潜ってゆくにつれて、アドニラムはますます、我とわが目を疑った。それでも次第に我を忘れて、未知の魅惑にひたっていった。」
「突然彼は身震いした。トバル=カインが話していた。「そなたの足が踏んでいるエメラルドの岩塊は、カフ山の根であり軸でもある。そなたの父祖の住まいの近くに来たのだ。ここは、ひとりカインの系列のもののみが、治める地だ。この花崗岩の城砦の下、近寄りがたい洞穴の只中に、われわれはようやく自由を見出したのだ。アドナイの妬み深き専制は、ここまでは達しない。ここでは、滅びることなしに『知恵の木』の実を食べることができる」
アドニラムはほーっと静かな溜息をついた。今までずっとのしかかっていた重荷が、はじめてとり除かれたような気がした。」
「アドニラムは、彼には何を目的としているのか了解のできない仕事にいそしんでいる群衆のあいだを通っていった。大地の母胎の中のこの明るさ、この空のような天蓋は彼を驚かせた。彼が立ちどまると、トバル=カインが話した。「ここは火の聖域だ。地球の熱はここから生まれる。われわれがいなければ、地球は寒さで滅びてしまうだろう。われわれはさまざまな金属も作っている。その蒸気を液化して、この天体の中の血管に送りこんでいるのだ。」」
「「アドナイ神というのは、巧みではあっても力弱き神だ、寛大であるよりは、妬み深い神なのだ! 彼は火の霊を無視して、泥で人間をこしらえた。そのあとで、自らの作品と、そのみじめな被造物に対する火の霊たちの同情に怖れをなし、彼らの涙を一顧だにせず人間に死ぬべき運命(さだめ)を与えたのだ。そこがわれわれと根本的に異なるところだ。火から作られた地上の生命は、すべて中心に存在する火によって引きよせられる。われわれはその償いとして、中心火が外縁に引きよせられ、外に放散されるように欲した。その両原則の交換が、果てしない生命だった。
諸世界の外周をおさめているアドナイは、大地を塗りこめて、この外側への放射力を遮断した。その結果、大地も、その住民たちと同じように死ぬことになった。(中略)太陽でさえ光を弱めた。五、六千年のうちには、太陽はまさしく死滅することになろう。」」
「「わが子よ、眠りと死がそなたとともにあらんことを。勤勉でありながら迫害されるものよ、そなたが苦しむのは私のせいなのだ。エバが私の母だった。光の天使エブリスが、エバの腹に火花をしのびこませた。それが私をつき動かし、私の種族を再生させてゆく。泥土をもって捏ねられ、囚われの魂を入れられたアダムが、私を養ってくれた。エロヒムの子である私は、このアドナイの作った試作物を愛した。(中略)私は、この善い親の老後の日々をみてやり、幼な子アベルを守り育てた。それを彼らは私の弟と呼んだ。おお! おお!
私は地上に殺害を教える前に、心を堕落させる苦渋と不正と忘恩を思い知らされた。絶え間なく働きつづけ、貪欲な土地から食べ物をむしりとり、人間たちの幸福のために大地に実りを結ばしめる鋤を発明し、彼らのために、万物の満ちあふれるエデンの園を作ってやった。それを彼らは失ってしまった! 私は一生を無駄にしたのだ。しかも不公平のきわみとしてアダムは私を愛してくれなかった! エバは、私をこの世に生みだしたがために楽園を逐われたことを、忘れはしなかった。彼女の利に盲いた心は、アベルにのみふりむけられた。アベルは甘やかされ高慢になって、私をあらゆるものの召使いのように扱った。アドナイも彼の側についた。それ以上に何があったろう。(中略)私が不平を訴えると、両親は、神は公平だと言った。われわれは神に犠牲を捧げた。ところが、私が実らせた麦の夏の初穂の束は侮蔑をもって投げ捨てられた……。妬み深い神はそうやってつねに創意に富んだ豊饒な才能を押しのけ、つまらない精神に、力と迫害の権利とを与えたのだ。そのあとのことは知っていよう。しかし、そなたの知らないことがある。それは、私の種を断とうとしたアドナイが、劫罰として、私を愛していたわれらの妹アクリニアを若いアベルに花嫁として与えたということだ。そこからジン、すなわち火の元素から発したエロヒムの子と、泥土から生まれたアドナイの子らのあいだの最初の戦いがおきたのだ。
私はアベルの命の火を消した……」」

「「わが父の尊顔を拝したであろう」と彼はアドニラムに言った。「父上が髪をなでておられるのは、アダの子たちだ。ジャベルは天幕を建て、駱駝の皮を縫うことを教えた。わが兄弟ジュバルは、シノールやハープに絃を張って、そこから音をひきだすことをはじめた」
「ラメクとセラの子よ」と、それを受けてジュバルが、夕べの風のように心地よい声で言った。「あなたは、われら兄弟よりはるかに偉大で、祖先たちまで治めている。戦さと平和の技芸がおこったのは、あなたからだ。
あなたは金属を治め、最初の鍛治をおこした。あなたは人間たちに金、銀、銅、鉄を与え、それをもって知恵の木のかわりとした。金と鉄が、彼らを力の絶頂へ押しあげた。アドナイに対するわれらの仇を討つにあたって、それは恐るべきものになるだろう。トバル=カインに讃えあれ!」
その叫びに和して、四方八方から地霊の群れの恐ろしい喚声があがった。地霊たちはふたたび、いっそうの熱意をこめて仕事に戻り、永遠の工房の天蓋に、鎚音が響きわたった。アドニラムは自ら職人として、この職人こそが王である世界で、心の軽さと、深い誇りを覚えた。
「エロヒムの種族の子よ」とトバル=カインは言った。「勇気をとり戻せ。そなたの栄光は隷従のうちにある。そなたの祖先は、人間の技を恐るべきものにした。そのために、われわれの種族は断罪されているのだ。わが種族は、二千年のあいだ戦った。それでもわれわれを滅ぼすことはできなかった。なぜなら、われわれは不死の要素からできているからだ。」」



ネルヴァル 東方の旅 下 01



こちらもご参照下さい:

G・ド・ネルヴァル 『東方の旅 上』 篠田知和基 訳 (世界幻想文学大系)
種村季弘 『畸形の神 ― あるいは魔術的跛者』
ハンス・ヨナス 『グノーシスの宗教』 秋山さと子/入江良平 訳
荒井献 『トマスによる福音書』 (講談社学術文庫)



































































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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