宮下健三 『ミュンヘンの世紀末』 (中公新書)

宮下健三 
『ミュンヘンの世紀末
― 現代芸術運動の源流』
 
中公新書 758 

中央公論社
昭和60年3月15日印刷
昭和60年3月25日発行
202p 目次4p
新書判 並装 ビニールカバー
定価520円
装幀: 白井晟一



本書「はじめに」より:

「ミュンヘンの世紀末をいろどる芸術は、「ユーゲントシュティール」(「青春(ユーゲント)」の様式)と呼ばれた広汎な芸術運動である。」
「本書の最終章でも触れるように、第一次世界大戦は、せっかく開花した芸術の花を無残に散らし、ミュンヘンの芸術運動を四散させてしまった。そして大戦直後のミュンヘンは、レーテと国防軍や右翼との内戦の場となり、この混乱のなかから、ヒトラーに率いられるナチスが登場する。今日から回顧すると、世紀転換期のベル・エポックのミュンヘンは、「ただ一度しかない、二度と帰らぬ」二〇世紀ドイツ文化の青春だったのかもしれないように思われる。」



本文中図版(モノクロ)多数。


宮下健三 ミュンヘンの世紀末 01


帯文:

「ただ一度だけ華麗に花咲いたドイツ文化の青春の芸術を探る」


帯裏文:

「一九世紀末から今世紀の初頭にかけてバイエルンの都ミュンヘンには、数多くの若き才能が群れ集い、豪華な文芸誌インゼル、諷刺漫画誌ジンプリチシスム、モード雑誌ユーンゲントなどが一斉に刊行された。ドイツの世紀末芸術ユーゲントシュティールは、文字通り「青春の様式」だった。そして、ここには浮世絵や貞奴の影響も見逃せない。ナチの独裁と二つの世界大戦を経た今日、今世紀ただ一度だけ花咲いたドイツ文化の青春を描く。」


目次:

はじめに

Ⅰ 世紀末ミュンヘンの散歩
 バイエルンの州都ミュンヘン
 ミュンヘン中央駅に降りたつ
 ミュンヘンの中心街
 中世以来の商業の中心、マリーエン広場
 ボヘミアンの溜り場、シュヴァービング
 オペラ劇場、そしてビアホール
 都市ミュンヘンの魅力

Ⅱ シュヴァービングの世紀末
 マックス・ハルベ邸の大晦日
 大学裏のカフェと酒房
 ミュンヘン詩人群と「クロコディール」
 フランチスカ・ツー・レヴェントロフ伯爵夫人
 世紀末の女性モード

Ⅲ 世紀末ミュンヘンの建築
 ダルムシュタット郊外のベーレンス館
 オルプリヒの『祝婚の塔』とルートヴィヒ館
 リーマーシュミットのシャウシュピールハウス内装
 ミュンヘン新市庁舎とバイエルン州立博物館
 壮大なドイツ博物館
 ヴィラ・シュトゥックとフォトアトリエ・エルヴィラ

Ⅳ ユーゲントシュティールの絵画
 シュトゥックとベックリン
 ユーゲントシュティールの画家たちの特徴
 シュトラットマン、カンディンスキー、クレー
 フォーナ
 ウンディーネ
 踊る女性
 エロスとタナトス

Ⅴ ユーゲントシュティールの雑誌
 『パーン』誌の創刊
 『インゼル』誌の登場
 イラスト雑誌『ユーゲント』の刊行
 『インゼル』と『ユーゲント』のジャポニスム
 諷刺雑誌『ジンプリチシムス』
 ウィーンの雑誌『ヴェル・サクルム』

Ⅵ ドイツ文学の青春
 リルケとフォーゲラー
 若きホーフマンスタール
 詩人兼編集者ビーアバウム
 トーマス・マンの青春
 ヴェーデキントとイプセン

Ⅶ ベル・エポックの終焉
 第一次世界大戦の意味
 ドイツの青春の四散
 第一次世界大戦の過程
 詩と絵に見る戦争の惨禍
 ミュンヘン・レーテの時代
 ナチズムの台頭
 二〇世紀ドイツ文化の束の間の夢

あとがき

地図
 ミュンヘン中心部
 ドイツ中央部主要幹線
主要参考文献



宮下健三 ミュンヘンの世紀末 02



◆本書より◆


「世紀末ミュンヘンに忘れることができないのは、シュヴァービングの美女レヴェントロフ伯爵夫人(一八七一~一九一八)だ。このレヴェントロフ伯爵夫人は、北ドイツのフーズムの典型的なプロシアの州長官の貴族の家に生まれ、プロイセン貴族特有の厳格な教育を受けたが、どうしても画家になりたくて、ミュンヘンへやってくる。(中略)男性優位の社会因習に反した生き方を貫いた彼女は、生涯その息子ロルフの父親を隠しぬいて、ただ母親の子としてしか認めなかった。保守的だった当時の上流社会にセンセーションを惹き起こしたのは当然である。
 やがて、彼女は、シュヴァービングの「翔んでる女性」として、文学者や芸術家の人気の的となった。同時代人の伯爵夫人像を引用してみると、「彼女はデンマーク人のタイプで、小さく華奢で、しなやかで、お化粧はせず、口紅をつけたほんとうのパリ女よりもずっとパリ的で、少々生意気で、たいへん機智があり、少し感傷的だった」(ヴァルター・オルデン)、ルートヴィヒ・クラーゲス(一八七二~一九五六)は「この魅惑的な女神」を「異教的な聖女」と呼んだ。」
「少女時代にニーチェの『ツァラツストラ』にかぶれ、フーズムの町で少年少女たちのイプセン・クラブに属し、自由な生き方に憧れた彼女は、その主人公エレンに託して自己を表現している。「彼女は自分の生活が満たされている時だけ、自分が正常で、存在する権利があると感じていた。」彼女の作品によく出てくる「人生を享受する(ジッヒ・アウスレーベン)」というスローガンで、一八九〇年代の人びとは、「個人的な行為のアナーキズム」を特色づけたが、このスローガンは当時のほかの小説にもよく出てくる。彼女のこうした人生の評価には、明らかにニーチェと恋人クラーゲスの影響が見られる。この二人は、ディオニソス的陶酔に満たされた人生を、生の最高の高揚の形式と見なしていた。」




Fanny zu Reventlow
From Wikipedia, the free encyclopedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Fanny_zu_Reventlow



◆今日の一曲◆


そういうわけで、今日の一曲は1931年のドイツ映画『会議は踊る』より「唯一度だけ(Das gibt's nur einmal)」であります。





自分などは1980年代なスキゾキッズなので、加藤登紀子ヴァージョン(「唯ひとたびの」)で愛聴したであります。
加藤登紀子さんといえば紅の豚もよいですが昭和初期ジャズソングカバーアルバム『夢の人魚』(1983年)がいかにも80年代な名盤なのできくとよいです。80年代といえばルー・リードやトム・ウェイツやダグマー・クラウゼらによるオムニバスアルバム『クルト・ワイルの世界~星空に迷い込んだ男』(1985年)もいかにも80年代なのできくとよいです。80年代のレトロブームについておおいにレトロに語りたいところでありますが、語らないであります。






















































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