種村季弘 『東海道寄り道紀行』

「旅は一直線ではなく、方々に好奇心を引っ張られて寄り道をするのがおもしろい。また現地のほうも思いもかけない隅々まで寄り道をしてもらわなければ、うれしくないだろう。私はむしろ不器用な旅をするのが好きだ。」
(種村季弘 「水源は富士山」の錯覚」 より)


種村季弘 
『東海道寄り道紀行』


河出書房新社 
2012年7月20日 初版印刷
2012年7月30日 初版発行
156p 初出一覧ほか2p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,600円(税別)
装幀: 山元伸子


「*本書は単行本未収録のエッセイ集です。」



没後刊行紀行文集。本文中地図14点、図版3点。


種村季弘 東海道寄り道紀行 01


帯文:

「探索踏査の途中下車旅!
待望の単行本未収録紀行集ついに刊行
歴史・民俗・伝説・温泉・酒を訪ねて出かけよう。
鉄道に揺られて街道の奥のまた奥へ、まだまだ知らない日本に出会う。」



目次 (初出):

「水源は富士山」の錯覚 狩野川流域 (〈東海道寄り道紀行〉 1 『ラパン』 1998. 11)
奈良王の隠れ里 富士川・早川を上って西山・奈良田温泉へ (2、同上、1999. 1)
湯中浮遊の極楽 奥大井の旅 (3、同上、1999. 5)
花祭の里紀行 天竜の支流 (4、同上、1999. 7)
今昔木曾街道繁盛記 名古屋駅から中央線へ (5、同上、2000. 1)
奥美濃 花奪い祭の里 美濃白山馬場への道 (6、同上、2000. 4)
だじゃの木訪問記 美濃・揖斐川流域 (7、同上、2000. 7)
足助街道 塩の道 矢作川・巴川流域 (8、同上、2001, 1)
塩の道・星の糞 水窪から青崩峠へ (9、同上、2001. 7)
妖怪かワニか 川の町・三次散策 JR三江駅・三次駅 (『ラパン』 1999. 3)
列車は我輩と同年配 高山本線・奥飛騨列車旅行 (『ラパン』 1999. 10)
鬼ノ城 古代山城と桃太郎伝説 (『ラパン』 2000. 10)
おむすび温泉 倉真温泉+法泉寺温泉 (『うるおい倶楽部』 1998. 1号)
金色の極楽浄土 芝川・瓜島温泉 (『うるおい倶楽部』 1998. 2号)
縮地気妖の怪 (『群像』 1988. 9)



種村季弘 東海道寄り道紀行 02



◆本書より◆


「鬼ノ城」より:

「ところで、桃太郎の鬼ヶ島征伐の話はどなたもご存じだろう。(中略)このおとぎ話の桃太郎が大和朝廷から派遣された吉備津彦(きびつのひこ)、征伐される鬼のほうは製鉄技術に長けた温羅(うら)という渡来人だったという、いわばある種の原話が吉備国に古くから行われていたらしい。そしてその温羅が立てこもって吉備津彦軍を迎えたのが、今回探訪する謎の山城=鬼の城だというのである。」

「吉備津彦が温羅を捕らえて首をさらし物にした。それでも温羅の首がうなり続けたので、首を犬に食わせてこの釜の下に埋めた。それでもまだ首は十三年間うなり続けた。よくよく「まつろわぬ民」だったのだ。」

「そういえばご当地のパンフレットに、表紙からは「桃太郎伝説――ヒーロー・吉備津彦」の物語、裏表紙からは「温羅伝説――アンチヒーロー・温羅」の物語が読める、リヴァーシブルな編集をした一冊がある。体制好きと反体制ファン、その両者とも無関心ではいられない鬼ノ城の謎というわけだ。その謎はしかし簡単には解けそうにない。」




◆感想◆


「妖怪や盗賊が出現しやすい」「境になる場所」「血なまぐさい戦争の地」であり、そこでは「熊坂長範」(盗賊)が旅人を襲い、「吉備津彦」「ヒーロー」「体制」)が「温羅」「アンチヒーロー」「反体制」)を退治する。とはいうものの、「いまや正義の味方の桃太郎=吉備津彦より鬼の温羅に人気がある」。そうすると、「ヤクザ」を殺して温泉客を人質に籠城した「金嬉老」はヒーローなのかアンチヒーローなのか。「日光の射し加減で」人が「異形の化物」に見える「四五六(しごろく)谷」や、遠くのものが近くに見える「縮地気妖の怪」のように、対立する二元が入りまじり、「稲生物怪録」の武勇少年「稲生武太夫」と魔王「山本太郎左衛門」が友情を交わす、人も妖怪も悪も正義も体制も反体制も現実も夢も生も死もリヴァーシブルな「極楽浄土」「温泉」こそが、寄り道しつつ到達すべき目的地だということなのでしょうか。

















































































































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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趣味: 図書館ごっこ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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