『定本 柳田國男集 第二十九卷 雜纂Ⅰ』 (新裝版)

『定本 柳田國男集 
第二十九卷 (新裝版)』 

雜纂Ⅰ

筑摩書房 
昭和45年10月20日 第1刷発行
524p 目次5p 口絵(モノクロ)1葉
菊判 丸背バクラム装上製本 機械函
定価980円

月報 29 (8p):
先生と津軽(森山泰太郎)/柳田先生と和歌(森直太郎)/ただ一度の恩師(中井信彦)/柳田先生の学恩と代々木村の昨今(服部知治)/回想(矢倉年)/次回配本/図版(モノクロ)2点



全31巻・別巻5巻。本文正字・正かな。


柳田国男集 二十九


内容 (初出):

地方文化建設の序説 (大正十四年十月、地方三十三卷十號)
都市建設の技術 (昭和二年二月、三月、都市問題四卷二號、三號)
都市趣味の風靡 (昭和二年一月、週刊朝日十一卷六號)
二階から見て居た世間 (大正九年一月、東方時論五卷一號)
古臭い未來 (大正九年六月、東方時論五卷六號)
特權階級の名 (大正十三年三月、「時局問題批判」)
政治生活更新の期 (大正十三年三月、「時局問題批判」)
普通選擧の準備作業 (大正十三年三月、「時局問題批判」)
移民政策と生活安定 (大正十四年六月、「成人教育」)
文化史上の日向 (大正十四年六月、「成人教育」)
日本の人口問題 (大正十四年八月一日、十五日、通俗經濟講座第九輯、第十輯)
國際勞働問題の一面 (大正十三年十月、東京朝日新聞)
農村往來に題す (昭和二年八月、農村往來創刊號)
靑年と語る (大正十四年十二月、新政二十四號)
靑年團の自覺を望む (大正五年七月、奉公一六三號)
國語史論 (昭和九年四月、「國語學講習録」岡書院)
國語史のために (昭和二十八年七月、國語學第十二輯)
國語の管理者 (大正十六年一月 〈昭和二年一月〉、新政四卷一號)
日本が分擔すべき任務 (昭和二年一月、ラ・レヴォ・オリエンタ八年一號)
當面の國際語問題 (大正十四年十月六日~八日、朝日新聞)
今日の郷土研究 (昭和九年五月、郷土教育四十三號)
エクスプレッション其他 (大正十三年八月、女性改造三卷八號)
再婚の是非 (大正八年九月、同人第三十九號)(原題、「小さな手帖から(五)」)
人の顏 (大正十四年八月、女性八卷二號)
潟に關する聯想 (明治四十二年十一月、斯民四卷十號)
佐渡の海府から (大正九年八月、解放二卷八號)
越中と民俗 (昭和十二年一月、高志人二卷一號)
小さい問題の登録 (昭和十年九月、民間傳承一號)
銕輪區域 (昭和十一年一月、民間傳承五號)
採集手帳のこと (昭和十一年五月、民間傳承九號)
村の個性 (昭和十一年八月、民間傳承十二號)
セビオの方法 (昭和十三年四月、民間傳承三卷八號)
感覺の記録 (昭和十五年十月、民間傳承六卷一號)
ことわざ採集の要領 (昭和十六年十一月、民間傳承七卷二號)
新たなる目標 (昭和十七年六月、民家傳承八卷二號)
傳統と文化 (昭和十七年十一月、民間傳承八卷七號)
信仰と學問 (昭和十七年十二月、民間傳承八卷八號)
昔を尋ねる道 (昭和十八年一月、民間傳承八卷九號)
氏神樣と教育者 (昭和十九年一月、民間傳承十卷一號)
教育の原始性 (昭和二十一年八月、民間傳承十一卷一號)
木曜會だより (昭和二十一年八月、民間傳承十一卷一號)
民俗學研究所の成立ち (昭和二十二年八月、民間傳承十一卷六・七號)
民俗學研究所の事業に就いて (昭和二十三年七月、民間傳承十二卷七號)
垣内の話 (昭和二十三年九月、民間傳承十二卷八・九號)
採訪の新らしい意味 (昭和二十五年六月、民間傳承十四卷六號)
人を喚ぶ力 (昭和二十五年十一月、民間傳承十四卷十一號)
祭禮名彙と其分類 (昭和十一年七月、民間傳承十一號)
服裝語彙分類案 (昭和十三年二月、三月、民間傳承三卷六號、七號)
食料名彙 (昭和十七年六月、七月、八月、九月、十月、十一月、十二月、民間傳承八卷二號、三號、四號、五號、六號、七號、八號)
宅地の經濟上の意義 (大正二年三月、郷土研究一卷一號)
屋敷地割の二樣式 (大正二年五月、郷土研究一卷三號)
規則正しい屋敷地割 (大正二年十月、郷土研究一卷八號)
馬の寄託 (大正二年十月、郷土研究一卷八號)
人狸同盟將に成らんとす (大正二年十月、郷土研究一卷八號)
鴻の巣 (大正二年十二月、郷土研究一卷十號)
動物盛衰 (大正二年十一月、郷土研究一卷九號)
若殿原 (大正三年十二月、郷土研究二卷十號)
用水と航路 (大正三年八月、郷土研究二卷六號)
蟹噛 (大正三年九月、郷土研究二卷七號)
山に住んだ武士 (大正四年七月、郷土研究三卷五號)
美濃紙現状 (明治四十二年)
茨城縣西茨城郡七會村 (明治四十二年)
親のしつけ (昭和十四年十月三、四、五日、大阪朝日新聞)
日本の母性 (昭和十七年十二月、週刊朝日四十二卷二十五號)
狗の心 (昭和九年八月、早稻田文學一卷三號)
喜談小品 (昭和八年四月、週刊朝日二十三卷二十一號、昭和十四年五月十七日、アサヒグラフ三十二卷二十號)
喜談日録 (昭和二十一年一月、二月、三月、四月、展望一號、二號、三號、四號)
地方見聞集 (明治四十四年、四十五年、法學新報)
文明の批評 (未刊草稿)
準備なき外交 (未刊草稿)
蒼海を望みて思ふ (未刊草稿)
國民性論 (未刊草稿)
兒童語彙解説 (未刊草稿)

内容細目
あとがき




◆本書より◆


「國際勞働問題の一面」より:

「熱帶の島々は勿論、阿弗利加大陸でも中央の森林帶に、太古以來の生活を續けて來た者は、曾て他人の爲に働くと言ふ經驗無く、又我爲にも働く必要が無かつた。食物は採れば有り、身は裸なり、うんと永く眠り、起きては丹念に弓箭投槍などを製し、野鳥野獸を獵し、又は隣部落と鬪ふことを考へ、折々は祭があつて歌ひ又踊るのである。斯の如き怠惰生活を勿體無いと謂ひ、勤勉を教へるなどと稱して、彼等を引出して無理に使ひ、植民地貿易の根柢たる生産事業を經營したのが、是が最近迄の植民政策であつた。」

「又土人が文明國で言ふ意味に於て、働かずに居りたがると言ふ事には、同情をする者が至つて少い。」
「併し土人とても、決して全然の怠け者では無い。自分々々の風習に從つては、時としては白人も及ばぬ根氣を以て、心身を極度に働かせる。戰爭や狩獵の如き半分樂しみの骨折は勿論吹矢筒とか太鼓とかの工藝品中にも、二年三年掛つて完成する美しい物が少くない。船なども立派にほり上る土人は多くある。農作牧畜の如きも、皆自分々々の慣習に從つて、精を出して遣つて居る。只だしぬけに引出されて意味の判らぬ機械的の作業に、時計で働かされることは、馴れないから迚も忍ぶことが出來ぬのである。それに生活が概して樂である。要求が至つて尠い。我々文明國人の最も厄介とする所の食物を獲る手段でも、例へば一本のサゴ椰子の樹を伐倒すと、じつとして食つて居て一家族數週を支へるだけの澱粉がとれる。半分食ひかけて退屈して第二の樹を倒し、或はわざと腐らせてそれに發生する茸などを賞玩する。パプア、メラネシヤの住む島々には、こんな境遇の者がまだ却々多いのである。
 彼等の慣習に合はぬと云ふ點から論ずれば、所謂組織的勞働は却つて奴隷制よりも甚だしい。」



「喜談小品」より:

「三馬の浮世風呂では獨り者のあたじけ無しが、舞茸を食つて躍り出した話を、趣向にした一節が有名であるが、此作者は多くの江戸人と同樣に、まだ舞と踊との區別をよくは考へてゐない。この話は既に近世文學の研究者が心づいてゐる如く、最もありふれた前代の説話集から借用してゐるのだが、二つを比べて見るとまだ一方の話の面白味が、十分に消化せられてゐない感がある。
 三人の木樵が連れ立つて山に入つて行くと、向ふから三人の尼が手に何物かを持つて、舞ひながら山を降りて來る。これはどうしたことかと尋ねて見たところ、今この大きな菌を食べたら、急にかうして舞ひたくなつて、自分でも止めることが出來ぬのだといふ。それは不思議だと男たちも貰つて食つて見る。果せるかな、無性に舞ひ始めて、末には男女六人が山中を狂ひまはつたといふ話。これなどは經驗でも無くまた事實談でも有り得ない。舞茸の成分に假に今日の生物學者を成ほどといはせるやうな、一種の昂奮劑を含んでゐるにしても、我々がはじめてその事實を知るのには、何かまた別途の機會がなくてはならなかつた。さうしてこの意味有りげなる中世の一話は、いはゞその知識の應用に過ぎなかつたのである。
 尼と山人とは人間の最も舞ひ難き階級に屬してゐる。それが六人も入り亂れて舞つたといふ點に、この説話の可笑し味はあつたのだらうが、なほその以外に群といふものゝ力がこんなことをさせたといふところにも意味がある。幾ら自然が靈妙であつても、人を舞はしめる植物までは用意しなかつたらう。これには社會の無意識の計畫があつて、驚いてこの效果に參與させたものと、解して置くのが先づ穩當である。以前私がまだ田舎にゐた時に、隣に剽輕な人に可愛がられる小僧がゐた。それが女たちの多く集まる家に來て、庭さきの朝鮮なすびの實を採つて食つた。これはキチガヒナスビともいふさうだが本當だらうか。私は食べて見るといつて一握(つか)みほどの種子を生呑みにした、さうするとまだ消化してもしまふまいと思ふ間に、もう發狂して三日ばかり大騒ぎをしたことがある。これなどは確かに傳承の暗示であつた。蘭領インドの東の島々の土人は、囘教の信仰があるので自殺することが出來ず、どうしても死にたいといふ際には大麻の種子を服して、狂人になつて人を斬つてまはり、しまひには鐵砲で打ち取られて望み通り死ぬといふ。これをアモック(amok)と稱して珍らしい社會現象となつてゐるが、これもまた半分しか麻の實に責は無かつたのである。
 だから何故に舞茸と謂ふかの問ひに對して、食べると舞ふからといふ答へは確實でない。食へば舞ひたくなると我々が信じてゐたばかりである。」
























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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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