松浦静山 『甲子夜話 5』 (東洋文庫)

松浦静山 
『甲子夜話 5』 

中村幸彦・中野三敏 校訂
東洋文庫 338

平凡社
昭和53年9月27日 初版第1刷発行
xi 382p 
17.3×11.7cm 
角背クロス装上製本 機械函
定価1,300円
装幀: 原弘



本書「凡例」より:

「本書は静山(せいざん)松浦清(まつらきよし)著『甲子夜話(かつしやわ)』正編百巻を六部に分かち、巻六十六から巻八十一までを収録したものである。」
「底本には松浦素氏蔵、「平戸藩 楽歳堂蔵書」本を用いた。」



本文中図版多数。


甲子夜話 五


内容:

凡例

甲子夜話目録 巻之六十六~巻之八十一

甲子夜話 
 巻六十六~巻八十一




◆本書より◆


「巻六十九」より:

「諸客集会せし雑話の中にて一人云けるは、今は故人なるが、葺屋町川岸に荒物商売する田村屋只四郎と云者あり。異人にて、諸蟲何と云こともなく取り喰ふ。蛇、蛙、蚯蚓(みみず)を始め、皆生ながら食ふ。大小の諸虫かく為ざるは無し。常に人に戒て曰。蚰蜒(ゲヂゲヂ)蠼螋(ハサミムシ)は食すること勿れ。必ず毒ありと。年六十を過て終れり。我問ふ。酒を飲しや。答ふ。下戸には非れど、高陽徒にもあらずと。今なほ識る者多し。」


「巻七十一」より:

「世に薯蕷(ヤマノイモ)鰻になると云伝ふは、何かにも其言の如し。先年のこととよ。西鄙の領内にて岸の上に自然生の薯蕷ありしが、其根岸下に出て、澗流に浸りたる所半ば鰻に化しゐたりと。」
「然るに最奇なるは、近年のこととよ、某なる者、薯蕷を食せん迚切断けるに、其中より釣針出たり。菜根の中に鉤有るべき理なし。かゝれば鰻魚も時として薯蕷に変ずること有りやと。又一事可咲は、或寺不如法のこと有迚、地頭より穿鑿あり。寺よりは曽て無しと云ゆゑ、後は家捜しをなすとき、厨下を視れば、一籠を覆せり。開て見れば、中に鰻魚あり。検使果して破戒の物ありと云へば、主僧駭応して曰。この物今迄は山芋にて有しがと、人皆拍掌せりとぞ。」



「巻七十三」より:

「我邸中の僕に、東上総泉郡中崎村(中略)の農夫源左衛門、酉の五十三歳なるが在り。この男嘗(かつて)天狗に連往れたりと云。その話せる大略は、七歳のとき祝に馬の模様染たる着物にて氏神八幡宮に詣たるに、その社の辺より山伏出て誘ひ去りぬ。行方知れざるゆゑ、八年を経て仏事せしに、往ざきにて前の山伏、汝が身は不浄になりたれば返すと云て、相州大山にさし置たり。夫より里人見つけたるに、腰に札あり。能く見れば国郡其名まで書しるせり。因て宿送りにして帰家せり。然るに七歳のとき着たりし馬を染たる着物、少しも損ぜざりしと。これより三ヶ年の間はその家に在しが、十八歳のとき嚮(さき)の山伏又来り云ふ。迎に来れり。伴ひ行べしとて、背に負ひ目を瞑(ネム)りゐよ迚(とて)、帯の如きものにて肩にかくると覚へしが、風声の如く聞へて行つゝ、越中の立山に到れり。この処に大なる洞ありて、加賀の白山に通ず。その中塗に二十畳も鋪(しきた)らん居所あり。ここに僧、山伏十一人連坐す。(中略)此とき初て乾菓子を食せりと。」
「又十九歳の年、人界へ還す迚、天狗の部類を去る證状と兵法の巻軸二つを与へ、脇指を帯させ、袈裟を掛けて帰せしとぞ。
始め魔界に入しとき着ゐたりし馬の着服、并に兵法の巻軸と前の證状と三品は、上総の兵神に奉納し、授けられし脇指と袈裟は今に所持せりと。予未見。」
「又南部におそれ山と云高山あり。この奥十八里にして、天狗の祠あり。ぐひん堂と称す(中略)。この所に毎月下旬信州より善光寺の如来を招じ、この利益を頼でハクラウの輩の三熱の苦を免れんことを祈る。そのときは師天狗権現その余皆出迎ふ。如来来向のときは炬火白昼の如しと。
又源左衛門この魔堺にありし中、菓子を一度食して、常にもの食ふことなし。因て両便の通じもなしと。
以上の説、彼僕の所云と雖ども、虚偽疑なきに非ず。然ども所話曽て妄ならず。何かにも天地間、この如き妖魔の一界あると覚ゆ。」



「巻七十六」より:

「『礼』月令季秋之月の粂に、爵入大水為蛤と見へて、集註には、爵蛤ト為ルハ飛物化シテ潜物ト為ル也とあり。爵は雀と同じ。大水とは海なりと古註にあれば、雀海水に没して沙土なる蛤と化するなり。近頃領内の人の目撃せし迚聞しは、食物にせんとて取たる蛤の大なるが中、その肉鳥雛の卵を破て出たる後の如く、眼ありて未だ羽毛生ぜず、屈りてありしと。さすれば蛤より雀と化するように見ゆるが、月令の如く雀の蛤と為りたるの後か。」

「蛇の鮹(たこ)に変ずるは、領内の者往々見ることあり。蛇海浜に到り、尾を以て石に触れば、皮分裂し、その皮迺(すなはち)脚となる(中略)。又蛇、首より中身のあたりは、皮翻り、鱗ある所腹内となり、皮裡却て身外となる。総じて鮹は紅白色なるに、蛇化の者は身純白、腹長ふして脚短く、その形尋常と殊なり。又游泳せずしてたゞ漂ふのみ。且その変ぜしあたり血色殷々海水を染て、方五六尺にも及ぶと。人々所云小異あれども大率この如し。」



「巻七十九」より:

「故観世新九郎の話に、彼家に神祖より拝領の羊皮の小鼓あり。その鼓霊ありて、時として鳴らず。或る御能のとき持出たるに鳴らず。その日雨天にもあらず、又何も調子に障るべきことも無ければ、種々手を尽したれども鳴らず。仍つて代鼓を以て御用勤め畢り帰宅せしが、余り不審に思ひ、箱より取出して打みるに、その音常の如く好し。何(いか)なることにや。度々斯のごときこと有るとぞ。」



松浦静山 『甲子夜話 6』 (東洋文庫)













































































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